自選
震災詠五首
026:震
亡霊のごとくおぼろに富士は浮き気怠く震う市役所の旗
044:護
原子力発電護歌の渦巻ける近き未来を夢想したりき
060:直
がんばれって言ってたじゃない
五か月も直されといて
いまさらこんな
062:墓
生まれないごきぶりたちと
墓の無い肉牛達が
背を預け合う
091:債
まだ色の見えない骨へ
債を積むように置かれる
白菊の茎
震災の歌は歌うまいと決めていました。いや、俺には歌えないだろうと諦めていました。
でも、100首を改めて読み返すとちょうど五首、あの一連の出来事を題材に詠んだ歌がありました。
無意識に触れた歌を挙げると、もっと多いのかもしれない。
これのどこが、と思われるかもしれません。
ふざけてる、と思われるかもしれません。
しかし間違いなくこの五首は、中村成志が意識的に歌っていた東日本大震災詠です。好むと好まざるとにかかわらず。