はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 003:手紙

2006年03月12日 09時03分04秒 | 題詠100首 鑑賞サイト

ポスト見て今日も手紙が来ていない やっぱり君は忙しいんだ
                    かのこ (短歌*かのこ流)

   下の二句は、声に出してつぶやいたんでしょうね、きっと。
   ポストを家側から開けるかちゃりという音、バイクの音を聞いて
   「郵便屋さんか?」と顔を上げる動作まで目に浮かびます。

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母からの手紙はいつも頼りなくみの字が泳ぐ 帰れないのよ
                  水須ゆき子 (ぽっぽぶろぐ。)

   体が震えました。「みの字が泳ぐ」が特にすごい。
   達筆ゆえか、手がかすかにふるえるのか、「母」の年齢を感じさせ、
   さらに母娘の微妙な気持ちのすれ違いも表現している。
   一字あけが、とても苦しく胸を突きます。

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夕風が手紙をひらくように咲く枝垂れ梅いっぽん風を流して
                    行方祐美 (やまとことのは)

   風景が、さあっと目に拡がっていくような歌です。
   少しずつ暖かくなってきた風に、梅の花が開いていく。
   花を開かせた風を、枝は受け止めるのではなく、自らを泳がせて
   さらりと流していく。
   風流なだけでなく、どことなく〈いなせな〉感じがするのは、
   「いっぽん」のためでしょうか。

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便箋を君がたどれば手紙から解き放たれる青い心臓
                    かっぱ (きゅーりをこのむ)

   手紙の本質ってこれですよね。
   相手が読んでくれることによって、こちらが込めたときめきや体温が
   よみがえる。
   手書きであればなおさら、でしょうか。

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あたたかい言葉まみれの決別の手紙ちいさくちいさくたたむ
                  田丸まひる (ほおずり練習帳。)

   「まみれ」が非常に効いています。どんなに暖かくても意味はさよなら。
   そんな相手の偽善が伝わってきます。
   きっと、立方体に近くなるまで折り畳んだんだろうなあ。
   下二句のひらがなが、そう想像させます。さて、そのあとは?

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