はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 047:辞書

2006年11月27日 06時17分05秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
いつからか夜ごと新芽が生えてきて辞書に根ざしてゆくゆびのさき
              (小軌みつき) (小軌みつき-つれづれ日和-)

 あまりにも自然に読み込まれていたので、読み終わってから、
「あ、そういえばこの歌のお題が『辞書』なんだっけ」
と気づきました。
 初めは、意味を調べるための道具として利用してきた「辞書」。
 それがいつのまにか、好奇心という「新芽」が生え、辞書を繰ることを目的として辞書を手に取る。
 その変化を歌った、「ゆびのさき」が「根ざしてゆく」という表現に、うっとりとしました。
 なんとなくセクシュアルな匂いすらするのは、読み過ぎでしょうか。

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意味なんて書かれていない逆引きの辞書にしずかな海をみつけて
            (おとくにすぎな) (すぎな野原をあるいてゆけば)

 とても誤解を招きそうな言い方をあえてしますが、すぎなさんのお歌はときどき、読み解きをしていて空しくなってくることがあります。
 語句をひとつずつ検討していけばいくほど、初めに感じた心持ちから遠ざかっていくような。
 この歌もそうで、一読して目の前にしずかで煌めく海が、さあっと拡がり、どんどんどんどん拡がっていきました。
 そんな光景を充分堪能して、さて読み解こうとすると、とたんに陳腐な解釈になってしまう。
 「意味」の書かれていない「辞書」とは何か、「逆引きの辞書」ということは、海の風景から「海」という文字にたどり着いたのか。
 そんなことを考えれば考えるほど、なにかとても無駄なことをしているような気持ちになります。
結局は、僕の力量不足なのでしょうけれども。
 どなたか、この歌にふさわしい、すてきな解釈をお願いします。