竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

表紙絵の明治の女秋の声  杉本 寛

2018-09-19 | 


表紙絵の明治の女秋の声  杉本 寛

まずもって、字面がきれい。漢字の間に配された「の」が、見事に利いている。日本語ならではの美しさだ。翻訳不能。こういうところを、俳句作家はもっと大切にすべきだろう。句意は涼しいほどに明瞭だが、これまた翻訳不能。訳したとしても間抜けとなる。ところで、誰にとっても「母」の世代を四季のどれかになぞらえるとすれば、「秋」となるだろう。大正生まれの作者は、表紙絵の明治美人に、どこかで若き日の「母」も感じているのではあるまいか。だから「秋の声」なのである。もちろん、この句をそのまま素直に受け取っておいてもよいのだが、読んでいるうちに、だんだんそんな気がしてきた。『杉本寛集』(自註現代俳句シリーズ・俳人協会)所収。(清水哲男



秋(三秋)天文【秋声】 しゅうせい(しう・・)

◇「秋の声」
雨の音、風の音、木の葉のそよぎにも秋の気がこもって、その響きはしみじみと心を打つ。空気が澄んでいることもあり、耳が敏感になっ
たように感じる。具体的な物音ではなく、秋の気配を「秋の声」として詠まれることもある。

例句 作者

灯を消して夜を深うしぬ秋の声 村上鬼城
湧き水の影のゆらめく秋の声 市村究一郎
聞き耳を立てしが秋の声ならず 相生垣瓜人
死魚なぶる波打際の秋の声 白井房夫
北上の渡頭に立てば秋の声 山口青邨
苔をうつ雨や深山の秋の声 宗祇
寺掃けば日に日にふかし秋の声 中川宋淵
補聴器を外せば秋声庭闇に 富田潮児


秋の声樹木医の所作まねて聴く たけし
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