竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

やはらかき角に一徹かたつぶり 丈子

2023-05-31 | 第一句集「裂帛」自選

蝸牛のやわらかな角
ここに頑なな意思を秘めている
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さくらんぼ二枚舌には転がらず 丈子

2023-05-30 | 第一句集「裂帛」自選
さくらんぼ

二枚舌を使うようになると素直になれない
丸いさくらんぼを舌に転がす幸せは遠くなる
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浦島草ふいとおんなの気持ちかな 丈子

2023-05-29 | 第一句集「裂帛」自選
 浦島草

浦島草=日陰の湿った山林や竹薮の中に自生する多年草。球形の地下茎から肉太の葉柄(暗緑色で斑点がある)が真直ぐに伸びて、40~50cm程になる。5月頃、短い花茎を生じて花を開く。花の外面は、黄みを帯びた白色に暗紫色の斑点を有し、内面は暗紫色を呈す。花軸の先が細長く伸びて、まるで浦島太郎が釣糸を垂れているようだとしてこの名があるが、見た目には薄気味悪い印象を受ける。烏柄杓や水芭蕉などと同属だが、毒草である。


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この星を看取るがごとく蚊喰鳥 丈子

2023-05-28 | 第一句集「裂帛」自選


この星の不穏な気配が続いている
どの星も砕け散る定めなのだから
蚊喰鳥はそっとその時を看取っている

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学帽に白きカバーの夏ありき 丈子

2023-05-27 | 第一句集「裂帛」自選


小中学生の学帽は絶えて久しいが
夏になると黒野学帽に
白いカバーを被せて着用したものである

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とうすみの風のほとりに来ておろぬ 丈子

2023-05-26 | 第一句集「裂帛」自選


とうすみは灯心蜻蛉
風に運ばれるようなとうすみ
風の辺に一休みしているのを見る


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檀那寺の曝書に雑じり幽霊図 丈子

2023-05-25 | 第一句集「裂帛」自選
 幽霊図

寺の古い経文などの曝書に
なんともおそろしげな幽霊の掛け軸が晒してあった
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叱る母叱らるる子の汗拭かず 丈子

2023-05-24 | 第一句集「裂帛」自選
 叱られて

幼い子が汗だくで泣いている
かまわずしゃがんでいる母親が
声高に叱っている
汗いっぱいの母親は子の汗を拭かない
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涼しさの第一等に埴輪の目 丈子

2023-05-23 | 第一句集「裂帛」自選


千年を超える時代を見てきた埴輪
この先の悠久をも見ていく埴輪
何事にも涼しい目は涼しい
これ以上の涼しさを知らない

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落蟬の落ちる音まで使ひきる 丈子

2023-05-22 | 第一句集「裂帛」自選


蝉の文字通り必死の鳴声
自分の落ちる音まで使い切っているようだ

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香水瓶ひとつひとつに黙秘権 丈子

2023-05-21 | 第一句集「裂帛」自選


抽斗にしまいこんである香水瓶
ひとつひとつに秘められたドラマ
何も語らぬとの固い意志を感じる

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股のぞき真っ逆さまに滝の音 丈子

2023-05-20 | 第一句集「裂帛」自選
 那智の滝

華厳、那智の轟音を耳にしてその滝を
股のぞきした

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百選の水てのひらに晩夏光 丈子

2023-05-19 | 第一句集「裂帛」自選


名水の誉れある湧水までは
長い山路だったがその透明度と冷たさに驚嘆
そろそろ夏も終わる頃の
やわらかな日差しと共に掌にいただいた

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白足袋の足裏はみせぬ阿呆連 丈子

2023-05-18 | 第一句集「裂帛」自選
 阿波踊り

阿波踊りには多くの連がその踊りを
楽しみながら競い合う
足は上げて弾むが決してその足裏は見せない


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炎昼の銀座氷像はヴィーナス 丈子

2023-05-17 | 第一句集「裂帛」自選
 氷像 氷柱 花氷などがあった
昭和中期の銀座のデパート
見た目にも涼しい大きな女性の氷像が置かれていた
それもヴィーナスともなればなおさらだった

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