竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

おとがひの上にくちびる夏帽子 石倉夏生

2020-05-31 | 今日の季語


おとがひの上にくちびる夏帽子 石倉夏生

ヒトにしかない部位「おとがい」の秘密
現生人類固有の身体的特徴である「おとがい」の起源が明らかになりつつある。この小さなパーツはなぜ生まれ、何のために存在しているのだろうか。
6〜8万年前に、わたしたちは狩猟採集者の孤独な小集団で生きることをやめ、より大きな社会的グループを形成し始めた。この変化によって、わたしたちは非戦闘的な種族となり、体にはさまざまな変化がもたらされた(特に、男性ホルモンの一種テストステロンの減少)。わたしたちの顔が小さくなったのも、これに起因する。そしてその変形が偶然、下顎骨における骨の隆起の出現を引き起こした可能性があるという。

おとがいが進化的機能を欠くからといって、無駄なわけではない。研究者たちによれば、これはわたしたちが高度に社会的な種であり、芸術や、言語や、思考を発達させてきた「進化のシンボル」なのだ

辞書で頤(おとがい)は
1 下あご。あご。
2 減らず口。また、減らず口をたたくこと。また、そのさま。

おとがいのなりたちや意味を知ると
掲句はなかなか意味が深くなってくるのが面白い
このくちびるは語った後なのか、いよいよ語り始めるのか
聞き手にとっては聞きたくないことのようである
夏帽子の影で顔の表情はよく分らないが
どうも妙齢のご婦人のように思えてきた
(小林たけし)

【夏帽子】 なつぼうし
◇「夏帽」 ◇「麦稈帽子」(むぎわらぼうし) ◇「パナマ帽」
夏用の帽子の総称。「麦藁帽」を代表として、日差しを防ぐ目的から鍔の広い物が多い。

例句 作者

かくれんぼ少し覗ける夏帽子 幸田清子
かぶるたびにとられる麦藁帽原爆の記憶 福富健男
しなやかに夏帽子ゆく杉の谿 櫻井博道
それぞれの空持ち寄りて夏帽子 藤田敦子
ただ波を見ているだけの夏帽子 保坂末子
やさしさのすり減つてゆく夏帽子 野木桃花
わが夏帽どこまで転べども故郷 寺山修司
わさび畑見学に来し夏帽子 井口公子
カシニョールの夏帽子来る浜通り 室生幸太郎
ヒロシマに消えに行くため夏帽子 室生幸太郎
ヒロシマの影がかぶさる夏帽子 室生幸太郎
コメント

百選の水分かち合う遍路笠  たけし

2020-05-30 | 入選句




百選の水分かち合う遍路笠  たけし



2020年5月29日㈮ 朝日新聞 栃木俳壇にて石倉夏生先生の選を頂いた

自粛の巣ごもりが続いていて

顔を合わせての句会が無いのでこの新聞での発表はいつも以上に貴重だ



入選者には親しい知人が何人もおられて

みな元気で励んでいつことも伺える

それもまた嬉しい情報にもなっている



掲句は何回か「添削してのもの

これで遍路と水」の取り合わエのの句は作らないことになる
コメント

くつがへる檻に草伸ぶ大夏野 小田垣朱実

2020-05-28 | 今日の季語


くつがへる檻に草伸ぶ大夏野 小田垣朱実

おそらくは実景だろう
富士の裾野を一年かけて一周したことがある
そのおりに目にしたジビエ料理の店の裏庭に
鹿の頭部が枝にいくつも立てかけられているのを見た
そうした罠の類の檻ではないか
そのひっくりかえった檻の中に草がうっそうと伸びている
おそらく作者はしばらく時間を止めたことだろう
(小林たけし)


【夏野】 なつの
◇「卯月野」(うづきの) ◇「五月野」(さつきの) ◇「青野」(あおの)
夏草の生い茂る野原。緑濃く、強い日差しを受けた草の茂みからは草いきれが立つ。「卯月野」は陰暦4月の新緑の頃の野、「五月野」は陰暦5月、梅雨の頃の野である。

例句 作者

ぞろぞろと僧の頭蓋(はち)ゆく青高野 星野明世
たてがみの濡れては乾く夏野かな 柿沼茂
たてよこに富士伸びてゐる夏野かな 桂信子
でんでらの夏野の草か爺やばば 若林つる子
ともがらと歩む夏野を幸とせむ 大西岩夫
ねころんだ夏野から知恵熱 吉浜青湖
やわらかにあたらしき罠夏野原 佃悦夫
わつと夏野がありて大仏殿ありぬ 針呆介
コメント

てんとむしだましに深い空ありぬ 石倉夏生

2020-05-27 | 今日の季語


てんとむしだましに深い空ありぬ 石倉夏生

ぎらごらと照りつく夏空の下
てんとうむしは黙々とその日を営む
おてんようさま」を名にいただいた因果だろうか
おのれの性を疑う様子はみじんもない
難解な句は自分流に分解することにしている
(小林たけし)


【天道虫】 てんとうむし(・・タウ・・)
◇「瓢虫」(てんとうむし) ◇「てんとむし」
テントウムシ科の昆虫の総称。種類が多いがどれも光沢のある半円形の背に、黒、赤、黄色などの様々な斑点を持つ愛らしい甲虫。七星天道を始めその多くは益虫だが、中にはナスなどの葉を食べる二十八星天道(にじゅうやほしてんとう)などの害虫もいる。

例句 作者

天道虫だましの中の天道虫 高野素十
天道虫けふは寝墓に来てねむる 大島民郎
北へ吹く風あり天道虫の飛ぶ 今井杏太郎
てんと虫一兵われの死なざりし 安住 敦
てんと虫一兵われの死なざりし 安住敦
アフリカへぞろぞろてんとむしだまし 四方万里子
伝言は目線の高さてんと虫 加藤つぶら
天道虫だまし己れを欺し生く 吉田未灰
天道虫崩るる納屋の軒低し 中島弥市
天道虫登り詰めれば空がある 野田ゆたか
天道虫石庭の波鮮らしき 出井一雨
指先に風のおもさの天道虫 山元志津香
気分転換ばかりしてゐる天道虫 榊きくゑ
濛々とてんたう虫のとんでゆく 松澤昭
網を持つ子らの手中に天道虫 下野美智子
翅(はね)わつててんたう虫の飛びいづる 高野素十

コメント

大仏は薄目で在す若葉風 尾崎竹詩

2020-05-26 | 今日の季語


大仏は薄目で在す若葉風 尾崎竹詩

大仏は若葉の風を受けているのだからから
鎌倉の大仏だろうと想像する
「美男に在す」を想起せざるを得ないのが惜しいが
半目の大仏の景が清々しく浮かんでくる
(小林たけし)



【若葉】 わかば
◇「谷若葉」 ◇「山若葉」 ◇「若葉風」 ◇「若葉雨」 ◇「窓若葉」 ◇「若葉寒」 ◇「若葉時」 ◇「椎若葉」 ◇「樫若葉」 ◇「橡若葉」
樹木のまだ生え出て間もないみずみずしい葉をいう。木の種類により色調が異なるが、若葉は遍く新鮮で美しい。目にする場所により「山若葉」「谷若葉」と、或いは、それぞれの樹木の名に付けて「樫若葉」「椎若葉」などと詠んだりする。《「草の若葉」:春》

例句 作者

朴若葉子規の無念の畳かな 長谷川櫂
槐若葉払暁に透きとほるとは 恩田侑布子
母校では素直になれよ若葉風 山口木浦木
水晶の念珠に映る若葉かな 川端茅舎
清々し欅若葉や姉見舞う 山﨑ヨシ江
点滴の一つの向う若葉風 山﨑ヨシ江
甲斐信濃呑みつくしたる谷若葉 伊藤翠
百人の子の百の口若葉風 田中不鳴
脊髄にしびれ伝わり若葉寒 髙井太郎
若葉あらしに血をしごかれて広場めざす 堀葦男
若葉からまつすぐに来る朝の風 桂信子
若葉してぐらりと上る熱気球 柄澤徳治
若葉の季ねむりのけむる生地かな 佃悦夫
若葉わさわさ風におどる喜び 荻原井泉水
若葉光風に座右をちりばめる 斎郷梅
若葉冷えサイフォンの水昇りゆく 川辺幸一
若葉山青葉山より谺くる 丸山澄夫
若葉潮 母はかなしきまで黙す 永井江美子
若葉萌ゆ色に百歳樹の強さ 加藤光樹
若葉雨なにかやさしくものを言ふ 西島麦南
若葉青葉ひよいと乳房を見せにけり 植田密
若葉風ころころ笑う人の来る 山岡ゆうこ
若葉風もうあくびして指吸うて 吉田未灰
若葉風足湯に酔ひし足美人 鈴木キヌ子
コメント

夜の新樹こころはげしきものに耐ふ 桂信子

2020-05-25 | 今日の季語


夜の新樹こころはげしきものに耐ふ 桂信子

七七五のリズムが心地よい
たたきこむように響いてきて素直に納得させられる
「夜の新樹」この措辞はこの作者の発見で
後続の句を散見するがどれも及ばない
作者の「こころはげしきもの」を読者は邪推して止まない
(小林たけし)


【新樹】 しんじゅ
初夏の新緑の樹木をいう。日に日に緑を成長させる初夏の木は、みずみずしい中に力強さを感じさせる。「新樹」は語感も良く、特に近年好んで用いられる。

例句 作者

この新樹月光さへも重しとす 山口青邨
すつぽりと鎌倉五山新樹光 中島美代子
ひっそりと新樹の杜の百度石 古市あさ子
一族の遠祖供養や新樹光 倉迫順子
人を待つ夜は名前のない新樹 秋尾敏
余生から余生を引けば新樹仏 大畑蛍魚
信濃いま触れ合ふ音のみな新樹 甲斐由紀子
壺がみな人の顔する新樹光 加藤知子
夏樹さわさわ書架に絵本のあったころ 赤堀碧露
コメント

海近く植田濃くなる出雲かな 寺井谷子

2020-05-24 | 今日の季語


海近く植田濃くなる出雲かな 寺井谷子

作者は出雲大社へ参内する旅の途中だろうか
春日を浴びて清しい風の中歩をすすめる
さきほどからからの植えたばかりの稲穂が目にやさしく映っている
こころなしか海のにおいが強くなってきたように感じたが
早苗もだんだん大きくその緑も濃い
(小林たけし)


【植田】 うえた(ウヱタ)
◇「早苗田」
田植を終わって間もない田をいう。苗は1~2日で根付く。田水が張られ、青く細い苗が水面すれすれに葉先を出している。やがて苗が生長し一面青々となると「青田」と呼ばれる。《青田:夏》

例句 作者

いち早く電柱映る田が植わり 齊藤美規
さつそくに蛙鳴きゐる植田かな 二村いさお
どこまでも植田見えざるもの見たし 髙野公一
みちのくの空の広さの植田かな 佐藤光子
合鴨の百態植田揺すりをり 佐藤さき子
大植田家の中まで水匂ふ 平佐悦子
植田あと見まわる絣母に似て 寺山和子
植田原畦に立つ父遥かなり 岩崎順子
点滴の窓に植田の広がれる 井上秀子
遠目にも植田の苗が襟正す 大上博子
コメント

一角に藤棚残し地鎮祭 川村伊津子

2020-05-23 | 今日の季語


一角に藤棚残し地鎮祭 川村伊津子

私の家には3度の転居に耐えた
50年を超える藤の樹がある
20年前に作った藤棚が5年ほど前の強風で倒れて無残な形になった
それでも根と、息の一部を残したところ
未だに季節になると若葉が勢いよく茂っている
花も往年の勢いにはおよぶべくもないが咲いてくれる

藤は家族の来し方にしっかりと映っているのだ
掲句にひとさらの感傷を感じるのは私だけではあるまい
(小林たけし)

【藤の花】 ふじのはな(フヂ・・)
◇「藤」 ◇「山藤」 ◇「野藤」 ◇「藤棚」 ◇「白藤」 ◇「藤波」 ◇「藤房」 ◇「藤見」
マメ科の蔓性落葉木。山野に自生し、また観賞用として藤棚を作って栽培される。幹の長さ10メートル以上、他物にからみ、右巻き。5~6月頃、薄紫色または白色の蝶形の四弁花を長い花穂で垂れる。

例句 作者

いちやうに年寄る少女谿の藤 柳田芽衣
ひるすぎの背中に藤の余りたる 柿本多映
ふくらはぎの深さに藤の花咲けり 月野ぽぽな
ふるさとの井戸のくらがり藤散りこむ 桂信子
むらさきの風にしだるる藤の花 山川庫
丸太ン棒ころがっており藤の花 森岡洋子
人去れば藤のむらさき力ぬく 澁谷道
何も要らずして藤棚に潜り込む 立岩利夫
喪ごころに言葉こもらふ藤の下 文挾夫佐恵
女の心触れあうてゐて藤垂るる 桂信子
コメント

書道部に走る大筆雲雀東風 たけし

2020-05-22 | 入選句


書道部に走る大筆雲雀東風 たけし

2020.05.22 朝日新聞 栃木俳壇
石倉夏生先生の選を頂いた
雲雀東風は今年覚えた季語で気に入っている
書道部の女子高生の嬌声との
季節感が底通したかとの自得の句だ

女子高生の孫のイメージの句だ

ここのところ心象や懐古的な句が多かったのだが
安心できる俳句は景が浮かぶ俳句だとつくずく実感している

コメント

ひきがへるにも喉仏ありさうな 石倉夏生

2020-05-21 | 今日の季語


ひきがへるにも喉仏ありさうな 石倉夏生

作者は蝦蟇の姿をみているのか、その鳴き声を聞いているのか
おそらく声を聞いてその姿を目で追ったのだろう
思いがけなく近くでそのグロテスクば容を発見
息を呑んだ作者の姿が容易に窺える
そしてその観察は異様にひびく声の出どころまで深い
「ありそうな「」 と言いながら
「きっとある」との確信を持ったに相違あるまい
(小林たけし)


【蟇】 ひきがえる(・・ガヘル)
◇「蟾蜍」(ひきがえる) ◇「蟇」(ひき) ◇「蟾蜍」(ひき) ◇「蝦蟇」(がま) ◇「がまがえる」 ◇「いぼがえる」
太く短い四肢をもつヒキガエル科の最大型の蛙。黒褐色の背面に沢山の疣をもち、のっそりと重たげに歩く姿はグロテスクともいえる。昼は草むらや床下などの暗いところに潜んでいるが、夕方になるとゆっくり這い出してきて蚊などの小さな虫を捕らえて食べる。「がまがえる」の異名。

例句 作者

ひきがへる眠り薬がまだ効かぬ 山田征司
ひとごろしのような空だな蟇 守谷茂泰
みちのくの海の明かりを思う蟇 川辺幸一
やさしいって大変なこと蟇 田中いすず
わがままな文豪のごと蟇 大牧広
ソムリエのエプロン長し蟾蜍 栗林浩
ヒキガヘルつるり腑に落つささめごと 阿川木偶人
リア王の蟇のどんでん返しかな 平井照敏
伊勢みちの途中鳴きたる蟇 桂信子
何とでもなれ振り向かぬ蟇 杉本正明
千年の形状記憶ひきがえる 山崎聰
口下手も愚鈍も承知蟇の貌 秋山石声子
古庭を魔になかへしそ蟇 高浜虚子
向き合いて膨らみきりし猫と蟇 田中朝子

コメント

小満や一升壜に赤まむし 齊藤美規

2020-05-20 | 今日の季語


小満や一升壜に赤まむし 齊藤美規

最近の句にはとんと見受けない絶滅季語のような「小満」

小満の季語に取り合わせた「一升瓶の赤まむし」に奇異を感じたが
そこが俳味だろう
読み手に預けて作者はにんまりとしていることだろう
初老の作者はこの季節
若年時の覇気の衰えに薬店で求めたのがこれなのだ
読者に「お前もどうだ」と嘯いている
(小林たけし)


小満 しょうまん/せうまん
初夏
二十四節気の一つ。陽暦で五月二十一日ごろ。万物が次第に成長して、一定の大きさに達して来るという意味である。

例句 作者

小満やどの田も水を湛へをり 小島雷法子
小満のみるみる涙湧く子かな 山西雅子
小満のまるき柱を抱きをり 柿本多映
小満の人影ふゆる田に畑に 太田 嗟
小満の月へ開けおく納屋の窓 黛執
小満の身を大いなる樹下に容れ 池田秀水
小満の風を青しと遊びけり 草間時彦
小満やあやめにまじる薄荷草 那須弥生
小満や川うごかして手を洗ふ 鳥居おさむ
小満や母に八十二歳の日 平間眞木子
山葵田の小満の水余りけり 鈴木しげを
縦三つを引き小満の勝越しぞ 都筑智子
小満や箭竹篠竹生えしめて 雨滴集 星野麥丘人
小満やみどりさしたる寺の屋根 森澄雄


コメント

ロダンの首泰山木は花えたり 角川源義

2020-05-19 | 今日の季語



ロダンの首泰山木は花えたり 角川源義

花はロダンの首 その花を得たのは泰山木であるという
あの大きな白い花をロダンの首との断定である
ロダン像は「考える人」を浮かべるが「首から上」の像もあって
その顔は大きくおどろく この像をしればこの句は納得できる
得たり の措辞は泰山木の歓喜の声なのだ
(小林たけし)


【泰山木の花】 たいさんぼくのはな
◇「大山木の花」(たいさんぼくのはな) ◇「大盞木の花」(たいさんぼくのはな) ◇「洋玉蘭」(ようぎょくらん) ◇「泰山木蓮」(たいさんもくれん)
モクレン科の常緑高木。原産は北米で明治初年に日本に渡来した。名の通り堂々とした樹形の大木である。初夏、蓮に似た白色の芳香のある大輪の花を開く。

例句 作者

あけぼのや泰山木は蝋の花 上田五千石
そこからの波動泰山木の花 池田守一
まなこ無き魚棲むこころ泰山木 田中亜美
何か吐く泰山木の白さかな 布川直幸
初花は大き真っ白泰山木 山﨑ヨシ江
呱々の声泰山木も一花挙(あ)ぐ 中嶋秀子
夜書いた手紙は泰山木の花 山戸則江
忠魂碑泰山木の花ざかり 平田幸子
日本に住み古り泰山木咲けり 藤木清子
晩年へ一歩泰山木の花 足立幸信
泰山木すこしさがりて水に見る 松澤昭
泰山木ほぐれて封書となる朝 藤本清子
コメント

噴水は永久に白髪且つ怒髪 石倉夏生

2020-05-18 | 今日の季語


噴水は永久に白髪且つ怒髪 石倉夏生


永久に白髪且つ怒髪
噴水をじっと見ている時間はどのくらいだったのか
作者はその実景を白髪の比喩でとらえたのだろう
そして且つ怒髪である
ときに収まり突として音を伴って吹き上がる
これを怒髪と捉えたのが作者の感性
読み手の多くが共感するが
なかなか同じ言葉は浮かばない
噴水の怒髪は作者の言葉であり、他人が使用することは出来ない
(小林たけし)


【噴水】 ふんすい
◇「噴上げ」 ◇「吹上げ」 ◇「噴泉」(ふんせん)
公園や庭園の池などに設けられた、水を高く噴き上げる装置またはその水のこと。噴水は年中あるが飛び散る水の飛沫など、その涼しげな味わいから夏の季語とされる。

例句 作者
噴水のこれまでという高さかな 大竹照子
噴水のぼこぼこ意見すれちがふ 増田豊子
噴水の七変化して夜の街 五十嵐迪子
噴水の先端過去へ折れ曲る 松王かをり
噴水の円周鯉のねむられず 星野明世
噴水の強弱時を忘れをり 住田征夫
噴水の水を活けたる眺めかな 田中美智子
噴水の水裏見せて落ちにけり 石口榮
噴水の終りは傀儡冬夕焼 星野明世
噴水の落ちる時間が虹ゑがく ほりうち紗知
噴水の頂点夜が騒ぎおり 大西昇月
噴水は夏目雅子のようであり 植原安治

噴水まで 水中歩く 春の園丁 伊丹公子
コメント

ただならぬ象の足踏み霾ぐもり たけし

2020-05-17 | 入選句


ただならぬ象の足踏み霾ぐもり たけし



第28回四万十川俳句全国大会から掲句が佳作入選との通知をいただいた

選者は「氷室」主宰の尾池和夫先生 

714句応募苦の中の佳作だからまあまあというところなのだが

掲載写真ようにご丁寧な

主催者からのお手紙と賞状、高知県の銘菓を頂いた



おいしい和菓子に巣ごもり状態の孫たちが喜んでくれた
コメント

そこはかと風の匂ふや宵祭 大豆生田伴子

2020-05-16 | 今日の季語


そこはかと風の匂ふや宵祭 大豆生田伴子

「そこはかとなく」で、はっきりしないが微妙にそう感じられるさまを意味する表現。形容詞「そこはかとない」の部分。
そこはかと匂う風とはいみじくも
祭りの宵に相応しいこの措辞がこの句の骨格だ
作者の高揚した気持ちもじゅうぬんに感じられる
風の匂いには祭りのたくさんの轟も載っている
(小林たけし)


【祭】 まつり
◇「夏祭」 ◇「祭礼」 ◇「宵祭」 ◇「宵宮」 ◇「夜宮」(よみや) ◇「御輿」(みこし) ◇「渡御」(とぎょ) ◇「山車」(だし) ◇「祭囃子」(まつりばやし) ◇「祭太鼓」 ◇「祭笛」 ◇「祭衣」(まつりごろも) ◇「祭提燈」 ◇「祭髪」
祭は春夏秋それぞれにあるが、単に「祭」といえば夏祭を指す(もともとは京都の賀茂祭(葵祭)を「祭」、その他の神社の祭を「夏祭」として区別していたが、今は夏祭一般を「祭」と呼ぶ)。日本人は天地・自然の中に多くの神々の存在を認め敬い、農事の安定と豊穣を願って神に祈り、感謝を奉げ、1年の無事を共に喜び、それを祭として表現してきた。夏祭はもともと夏に多く発生する自然の災難や疫病から守ることを願い、神に祈るものとして始まった。これに対し、春祭は五穀豊穣の祈願、秋祭は収穫の喜びを祝う意味合いがある。《葵祭:夏》

例句 作者

ぎらぎらの祭り皿類晴れわたり 佃悦夫
けふ晴れて鴉呼びあふ祭かな 小野寺教子
こっそり来て尿してゆきし祭かな 金子兜太
この村に気配の見えぬ祭かな 柿本多映
たっぷりと風が生まれるまつりの日 園田芳久
ちちははも神田の生れ神輿舁く 深見けん二
にんげんが見えぬあの町祭笛 谷口慎也
ひょっとこ面探して歩む宵祭 増田信子
ふくらんでいるよ祭のかるめ焼 和知喜八
ふるさとの波音高き祭かな 鈴木真砂女
コメント