竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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去年の蔓に蕣かゝる垣根かな (山口素堂)

2018-09-06 | 



去年の蔓に蕣かゝる垣根かな (山口素堂)
      

朝顔 (秋の季語:植物)
     朝顔・蕣・朝皃(あさがお) あさがほ
    ● 季語の意味・季語の解説

 竿、垣根、格子窓(こうしまど)などに左巻きの蔓(つる)を絡め、晩夏から初秋にかけて藍、紺、白、紅、空色などの花を咲かせる。

  去年の蔓に蕣かゝる垣根かな (山口素堂)
      去年=こぞ  蕣=あさがお

  蕣に垣ねさへなき住居かな (炭太祇)
      蕣=あさがお  住居=すまい

 アジア南部原産で、日本へは奈良時代から平安時代にかけて中国から輸入された。

 もともとは、牽牛子(ケンゴシ)と呼ばれる種から漢方薬をとるための植物であったが(ゆえに牽牛花という呼称が今も用いられる)、江戸時代に入ると、もっぱら鑑賞用に栽培されるようになった。

 それ以前は、桔梗(ききょう)や木槿(むくげ)が朝顔と呼ばれていたと考えられるが、牽牛子の花の美しさ、朝早く開いて昼前にはしぼんでしまう儚さが日本人の心をとらえ、この花が朝顔と呼ばれるようになった。

 鑑賞花になってから速やかに庶民の日常に溶け込んだらしく、江戸時代から生活感あふれる句が多い。

  朝皃にほのかにのこる寝酒かな (杉山杉風)

  朝顔に釣瓶とられてもらひ水 (加賀千代女)

 アサガオ 牽牛花(けんぎゅうか)

● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方

 朝顔には、紺、藍、紫、白、紅、ピンク、空色など、様々な色のものがあります。

 ただし、朝顔の色に焦点を定めた俳句の多くは、紺または藍の朝顔を素材としているようです。

 紺や藍の持つ落着きと深みが、日本人の心を捉えるのでしょう。

  朝がほや一輪深き淵の色 (与謝蕪村)

  朝顔の紺の彼方の月日かな (石田波郷)

  堪ゆることばかり朝顔日々に紺 (橋本多佳子)

  朝顔の藍やどこまで奈良の町 (加藤楸邨)

 上の楸邨の俳句を読んでいただけるとわかると思うのですが、この朝顔の紺・藍は、長い歴史を経て風格を帯びた古い町の風景と、よく調和するようです。

  朝顔や小橋の多き小京都 (凡茶)

 また、朝顔の紺・藍は、まだ光の弱い早朝の空の灰紫色と、本当に相性の良い色だと思います。

  朝顔や濁り初めたる市の空 (杉田久女)
     初め=そめ

  朝顔や一本の塔失せし空 (凡茶)

 さて、朝顔は、江戸時代に鑑賞花となると速やかに市井に普及し、庶民の日常風景の中に溶け込みました。

 そのため、朝顔は、生活感のある、人間臭い俳句を詠むのに適した季語となっています。

  郵便の来て足る心朝顔に (富田木歩)

  朝顔の庭より小鯵届けけり (永井龍男)

  朝顔やすでにきのふとなりしこと (鈴木真砂女)

 また、朝早く開いて昼前にはしぼんでしまう朝顔は、儚さ、寂しさを象徴し、時には人の死を意識させる花としても、俳句に詠まれます。

  朝顔やおもひを遂げしごとしぼむ (日野草城)

  朝顔に手をくれておく別れかな (富安風生)

  朝顔や百たび訪はば母死なむ (永田耕衣)
      百=「もも」と読む。

  朝顔や子でありし日は終りし筈 (中村草田男)
      筈=はず

  朝顔や掃除終れば誰も居ず (中村汀女)

 
参照 http://haiku-kigo.com/article/296121981.html
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