細越麟太郎 MOVIE DIARY

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『堕ちた天使*待つ女』の深夜のホテル探偵と、美女だけの会話。

2022年02月15日 | Weblog
●2月14日(火)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-14-11 『堕ちた天使』"The Fallen Angels"<エポソード・!・待つ女> (1993) Propaganda Films.
製作・シドニー・ポラック 監督・アルフォンソ・キュアロン 主演・ローラ・ダン、ダイアン・レイン、マーク・ヘリンジャーバーガー
名優トム・ハンクスが、朋友の監督シドニー・ポラックなどとテレビ番組のために製作した中編ミステリーもので、かなり趣味的な3テーマの作品集。
いかにもレイモンド・チャンドラーの小説が流行した、40年代のロサンゼルスのBホテルを舞台にした深い夜の、落ちぶれたおとなタチのエピソード集。
作家のコーネル・ウールリッチもシナリオを執筆していて、これはハンクスやポラック達が、自分の趣味的な企画をテレビ用にまとめたお遊び映画として面白い。
とくに、第一話の「待つ女」が上出来で、場末の深夜のホテル・ロビーで、ひとりの美女が客を待っているらしく、ヒマなホテル探偵がそれとなく話しかける。
ブルーノ・カーヴィが演じる探偵は、とくに階上の廊下などにも不審な者もいなくて、ひっそりと寝静まっているので、そのブロンド美女に話しかけるしか、やることはない。
美女はテーブルの上のマティーニ・グラスで、口紅のついたタバコをジューっと消したりして、「フィルターつきは嫌いなのよ・・」なんて呟いている。
広いロビーには、カウンターのボーイと、ホテル・ディックと、その美女だけなのだが、この深夜のロビーの雰囲気が、いかにもペイパーバックな感じがいいのだ。
その美女はただ<待っている>だけなのだが、実はホテル探偵をロビーに長居させるだけで、上の部屋では<殺し>の最中だった・・という、それだけの話し。
いかにも、ウールリッチの短編ミステリーの面白さで、この天井が高い古びたホテルの、あのいかにも酸えたカビ臭いムードが、他の映画では味わえない空気でいい。
3つのエピソードは、それぞれにウールリッチの描いたものらしいが、この第一話の<待つ女>の気だるさが、いかにもウールリッチの書きそうなムード。
おそらくはテレビ用のお遊びなのだろうが、この深夜の静かなロビーの、二人だけの何気ない会話の<妙>が、普通のドラマにはない<無為感>がレイジーで・・・。
L Aのダウンタウンの裏通りにある寂れたホテルの深夜、というのは、それだけで<チープ・クライム>の背景になるが、そのムードだけで充分に魅せられる。

●カラー・スタンダード・94分・VHS・★★★☆☆☆

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