細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『オデッサ・ファイル』は、ウクライナの軍港拠点だったが・・。

2022年03月27日 | Weblog
●3月26日(土)20-40 二子玉川<サンセット傑作座>
0V-022『オデッサ・ファイル』The Odessa File" (1974) Columbia Pictures. A John Woolf Productions. Sony Pictures Entertainment.
監督・ロナルド・ニーム 主演・ジョン・ボイト、マキシミリアン・シェル、マリア・シェル <129分・シネマスコープ>
いま紛争中のウクライナの南に位置する<オデッサ>は、ロシアの戦略的な攻撃拠点として位置されていたらしいので、ふと、この作品を再見してみた。
あの「ジャッカルの日」のフレデリック・フォーサイスのベストセラー小説の映画化で、70年代当時には注目されていた、一種のスパイものなのだが・・・。
しかしいまロシアの狙うオデッサは、地中海に繋がる大きな港町で、地中海への貿易拠点ではあるものの、ここでは問題の港ではなく、ただのスパイ暗号だった。
あの「ブラジルから来た少年」もそうだったが、第二次大戦のあと、ナチスの高官たちは、戦争犯罪での裁判と処刑を逃れるために、南米などに亡命逃走した。
この作品では<オデッサ>は、戦渦の拠点となる筈だった、その港町ではなく、元ナチSS隊員たちの秘密組織が、いまも地下では現存しているらしい情報が流れたのだ。
ルポ・ライターとしてウクライナにいたジョン・ボイトが、まるで私立探偵のように、その拠点を追求していく、というスパイ・サスペンスで、ここでは単独捜査となる。
残念ながら、その<オデッサ>という港町を描くわけではなくて、ドイツのナチス戦犯への、復讐のために奔走する展開は、「ロシアハウス」なども思いおこされる。
太平洋戦争のテーマを多く映画化した時代と同様に、この作品も「寒い国から帰ったスパイ」のように、いま混戦を続けているウクライナの悲惨を悼むばかりだ。
あの名作「居酒屋」などの名女優マリア・シェルが、弟がナチスの高官を演じている関係か、ちらりと顔を出していたのも、ああ、懐かしい時代。

■左中間に上がった高いフライだが、結局はセカンドが捕球。 ★★★☆
●ソニー・ピクチャー・エンターテイメントDVD

●『ドリーム・プラン』は熱狂的なテニス育児の子育ての日々。

2022年03月23日 | Weblog
●3月22日(火)12;20 二子玉川・<109シネマズ・シアター2>
M-005『ドリームプラン』"Dream Plan" <King Richard> (2021) Warner Brothers Studio <シネマスコープ・144分>
監督・レイナルド・マーカス・グリーン 主演・ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、デミ・シングルトン <ワーナー・ブラザース映画>
「ドリーム・プラン」というのは、宇宙計画ではなく、女子テニスの世界チャンピオンになった二人の姉妹を育てた、その熱血オヤジの計画的な育児生活の背景ものがたり。
その姉妹が生まれる前から、世界一のテニス・プレイヤーに育てる教育計画があった、というから、これはテニス映画というよりは、ある種クレイジーな実録家族映画。
アクション・スターのウィル・スミスも、ここでは熱狂的なステージ・パパぶりで、ここまで徹底的に自分の娘二人をテニス選手に扱き育てる、というのは<異常>だ。
あまりワイフの姿は出て来ないのだが、ひたすら夜勤までして、昼間は学校教育はともかく、娘をテニスコートでシゴクという育児は、実話だから文句も言えない。
ただでさえお金のかかるテニスは、かなりエリートの世界だと思うが、黒人の一家が、ここまで苦労して白人の世界であったスペースにこだわった、という背景。
あのエリザベス・テイラーが少女時代に登場した「緑園の天使」では、テニスや乗馬の世界が、アメリカの白人エリートだけの空間だと思っていたが、いまは、こうなる。
ロサンゼルスでも、ビバリーヒルズに住むエリートの庭にはテニスコートとプールが、そのブルジョワのシンボルのように、陽光に輝いているが、これはエリートじゃない。
スポーツ無縁のウィル・オヤジは夜勤のガードマンまでして、とにかく二人の娘を、おそらくサン・フェルナンド・バレー辺りの団地に住み、庶民コートで、娘二人をシゴクのだ。
だから、これは<テニス映画>ではなくて、ひとりの黒人オヤジが、白人たちのエリート空間であるテニスコートで、娘二人を世界チャンピオンに育てるサクセス映画。
つい最近も、テレビで日系ハーフのナオミが、観客からのヤジで涙を見せていたが、まだまだ人種偏見の視線はあり、メジャーリーグの歴史には時間がかかる。
という背景は描かないが、ここでは、クレイジーなまでの<テニス育児オヤジ>の熱血ぶりを、あのウィル・スミスも中年オヤジの熱血と意地を見せているが、長過ぎる凡作。

■レフトがファンブルする間にセカンドを狙いタッチアウト。
●全国で公開中。

●『偶然の旅行者』は原題の<アクシデントに会ったツーリスト>の方が、ワカる。

2022年03月18日 | Weblog
●3月18日(金)13-30 <ニコタマ・サンセット傑作座>
0V-097『偶然の旅行者』"The Accidental Tourist" (1988) Warner Brothers Entertainment Pictures (121分・ビスタサイズ・DVD)
製作・ジョン・マルコヴィッチ 監督・ローレンス・カスダン 主演・ウィリアム・ハート、ジーナ・デイヴィス 、キャスリン・ターナー
最近、もう見ないだろう、と思う、VHSやDVDのコレクションを処分しようと、その決断に迷う作品を見ているのだが、これも決断を迷わせる作品だ。
というのも、この作品は88年当時、ワーナー映画の試写室で見て、大いに感動して、多くの映画雑誌などで絶賛した記憶があるのだが、記憶が薄れていた。
世界の各地を旅しては、その街の魅力などを記事にして、有名雑誌などに執筆していたメーコンという中年のライターは、相変わらずの股旅生活をしていた。
<偶然の旅行者>という邦題は、直訳に近いのだろうが、実際に見ていると、この主人公の人生は<予期せぬ挫折の日々>という意味が近いのではないか、と思う。
海外への取材旅行の多いウィリアムは、旅のコースや目的地は、執筆している出版社の意向があるのだろうが、旅程やホテルは自分で選んでいるような日常。
つまりは、あの西部の荒野を開拓していたフロンティアなどと似たような日々なのだが、当然のように自宅のカミさんとは、ほとんど別居生活が続いている。
一人息子の死から低迷しだした夫婦関係からか、彼もいまだに情緒不安定気味でもあり、そのカウンセラーをしている奇妙な女性ジーナとも、交際がある。
あの名作ミステリーの名作「白いドレスの女」のスタッフ・キャストがそろっての、一種のメンタル・ミステリーなのだが、サスペンスは全くない迷宮ドラマ。
複雑な個人的な心象に悩みの多い現代都会人の、その神経過敏な感情の誤差を描いて行くのだが、どうもシナリオにインパクトがなくて、盛り上がりに欠けたまま。
あのエリア・カザンや、ワイラーがいた50年代だったら、もっと感情的な交錯を、サスペンスフルに描いただろうが、結局は時間切れのドロー・ゲームのようだ。
製作が、あの異色の名優のジョン・マルコヴィッチ、あの本人だとしたら、この作品でも、どこかに顔を出していたのかもしれないが、・・・・。
主演のウィリアム・ハートはデリケートな中年の感情を、曖昧な微笑で演じていたが、71歳で亡くなったというニュースは残念で虚しい。冥福を祈る。

■サードゴロを野手がファンブルしてる間に、セカンドを狙い判定でセーフ。 ★★★☆
●ワーナー・ホームビデオ

●『帰らない日曜日』で再現される、またも階級を越える恋の行方。

2022年03月15日 | Weblog
●3月14日(月)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座 <宣伝試写用サンプルDVD>
OV-20 『帰らない日曜日』"Mothering Sunday" (2021) "Channel Four Television, British Film Institute.
監督・エヴァ・ユッソン 主演・オデッサ・ヤング、ジョッシュ・オコーナー、<104分・ビスタサイズ> 
1924年のイギリスの田園地帯には、農園も兼ね備えた歴代の富豪たちの豪邸が、それぞれの距離を置いて点在していた。
それぞれの歴代の名門家族には、後継の青年や令嬢たちが生活していたが、広い庭園での昼食会や誕生日祝いなどで、交流は常識的に行われていた。
よくイギリス映画では見かけるレンガ造りの2階建てのメゾンは、あの「ロミオとジュリエット」の時代から歴代のライフスタイルで維持されていた。
そして彼らの生活は、伝統的に執事や、料理人の専門コックや、広い庭園を清掃管理する庭師のほかに、女中たちも数人雇用されていて、屋敷は組織化されていた。
しかしあの「ロミオとジュリエット」のように、家族の格式や伝統の異なる人種が、遥かなる庭園や、広い池や小高い丘を離れて、それぞれの生活を維持していた。
これまでにも多くのイギリス映画では、その家族の間のトラブルや恋物語などをテーマにした映画が公開されたので、この特殊な階級の居住スタイルは見て来たものだ。
あのヒッチコック監督の「レベッカ」も、その背景でのミステリーだったし、デヴィッド・リーン監督の「大いなる遺産」なども、この富豪たちの生き様を覗かせていた。
今はもう、この生活背景はないだろうが、この作品は1924年という、まだ世界大戦が勃発する前の、豊かな貴族階級とか名門家族の存続が可能だった、よき時代。
3月の<母の日>には、イギリス中のこのような階級家族のメイドたちが、年に一度の里帰りが許可されるのだが、この作品の屋敷で働くオデッサには帰る実家もなかった。
そのような時代背景での、家族や人間関係を描いているので、小説家への野心のある女中オデッサの胸中と<秘密の恋心>を描いているが、とくに新鮮なアングルはない。
という設定なので、どうして、この時代にこのような一種の<英国特殊階級の秘められた恋の時代劇>を、製作したのか、は、いささか不思議なテイストでもあった。

■左中間のフライだが、高く上がり過ぎ。 ★★★
●5月27日より、新宿ピカデリーなどでロードショー

●『ウェスト・サイド・ストーリー』の懐かしい古臭の親しみと違和感。

2022年03月10日 | Weblog
●3月9日(水)11時45分<二子玉川・109シネコン・①スクリーン>
M-004『ウェスト・サイド・ストーリー』"West Side Story" (2022) 20th Century Fox Studios/ Walt Disney Japan Presents
監督・スティーブン・スピルバーグ 音楽・レナード・バーンスタイン 主演・アンセル・エルゴート、アリアナ・デルボーズ、リタ・モレノ<123分・ワイド>
あの1961年の名作「ウエストサイド物語」は、あの年のアカデミー賞10部門で受賞したことは、まだわれわれの記憶には残っている。
シェークスピアの「ロミオとジュリエット」をベースにして、作曲指揮をレナード・バーンスタインが担当した作品は、ミュージカル映画の伝統を塗り替えたものだった。
それまでは、MGM社が、スタジオで製作して、フレッド・アステアやジーン・ケリーという、希代のタップダンサーを起用して連作していた時代が、変わったのだ。
華麗なスタジオでのミュージカルの舞台を、ニューヨークのブリックリンの、南米やイタリアなどからの移住民たちの住む貧民街を背景にしての若者たちの抗争。
すべてが変革した<ミュージカル>の登場で、当時はたしか松竹ピカデリー劇場で、1年以上ものロードショーをした間、わたしも3回ほど通った記憶がある。
その歴代のヒット作品を、どうして今になってリメイクするのか・・・という単純な疑問で見に行ったのは、どうも、スピルバーグの監督というのが、気になったからだ。
たしかに、時代も場所も設定も音楽も変わっていないが、もちろん、登場する若者たちもいまのキャスティングなのだが、やはりオリジナルは越えられないーーという印象。
どうせやるなら、原曲のメロディは残すにしても、リズムはラップかエイトビートで替えればいいのに、あの時代や音楽感覚で再現していたのには、正直、失望した。
映画的なパワーも感覚も、やはりオリジナルを凌駕するのは無理なはなしだが、老嬢の役で出ていたリタ・モレノの風貌が物語るように、どこか古臭が感じられる。
しかも対立していた移住ラテン系の若者たちと古来の白人たちの抗争が、あの50年代のまま、というのも違和感を終始引きずってしまったのは、わたしだけのノスタルジーか。
すっかり老け込んだリタ・モレノが製作し、気の毒な老醜を厚化粧で隠しているという姿にも、まるで中学時代のクラス会に出てしまったような気まずさを感じてしまった。
当時衝撃のデヴュをしたジョージ・チャキリスには、のちに東京で来日インタヴュしたことがあったが、いまごろは、苦笑しているだろうか。

■ボテボテのサードゴロで、ファースト・オーバーラン。★★☆☆
●全国でロードショー公開中

●『シーソーのふたり』は、呼吸は合うが、なかなか会えない。

2022年03月08日 | Weblog
●3月8日(火)15-00 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-18-13『すれちがいの街角』"Two for the Seesaw"(1962) MGM-UA Mirich Pictures
監督・ロバート・ワイズ 主演・ロバート・ミッチャム、シャーリー・マクレーン <120分・シネマスコープ・モノクローム>
おそらくは、ほとんど主演の会話だけの、まるで舞台劇のような作品で、ニューヨークが舞台なのだが、アパートの中の会話ドラマなので、未公開だった。
ミッチャムはハリウッドで、かなり若い頃から多くのプログラム・ピクチャーにはでていたが、これは珍しくアクションのない、二人芝居の作品。
シャーリー・マクレーンとしても、ヒット作ミュージカルの『スウィート・チャリティ』の前のデヴュ作品のような時期で、日本での公開は見送られていた。
いや、でも、「シーソーのふたり」というブロードウェイのドラマで、ちゃんと邦題もついているので、公開はされたことがあった、のかもしれない。
しかし、双葉十三郎さんが生前にお会いしたときに、「ぼくの採点表」に漏れている公開作品はないはずだ・・・と豪語されていたが、そこにも出ていない。
ということは、この邦題は、テレビ上映か何かの際につけられたのだろうが、要するに<シーソーのふたり>ということは、<なかなか一緒になれない恋人>のこと。
マンハッタンで正業につかない男がミッチャムなのだが、オマハで保健外交の仕事をしていたらしいので、ポケットマネーは持っているようだが、風来坊。
バーで知り合った駆け出しのステージ・ガールのシャーリーも、まだ「スウィート・チャリティ」に出る前の、駆け出しのステージ・ダンサーらしいが、正体不明。
その二人が、アパートで同棲している日々のやりとりが、まだ「重役室」や「ウェストサイド・ストーリー」の前のころのワイズ監督で達者でテンポもいい。
ミッチャムは50年代を中心に、トータルでは80数本のアクション映画に出ていたが、いつも寡黙で、あの傑作「さらば愛しき女よ」の気配は、まだないが・・。
終始アパートの中での、この二人の会話劇なので、あの「アパートの鍵貸します」のようなリズムはないが、ふたりの持ち味で一応は退屈しないドラマ。
わたしがパラマウント映画でアルバイトしていた時代に、シャーリーは、旦那が東京で仕事していた関係で、よくお会いしたが、実に陽気なひとだった。

●舞台ドラマ出身のワイズ監督の好みらしく、まるでブロードウェイのステージドラマ。 ★★★☆☆
■MGM-UA Lazar Disc



●『バリ島珍道中』で観光気分になっていた時代もあった。

2022年03月04日 | Weblog
●3月3日(木)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-17『バリ島珍道中』"Road to Bali (1952) Paramount Pictures. Cinema Life LTD.
監督・ハル・ウォーカー 主演・ビング・クロスビー、ボブ・ホープ、ドロシー・ラムーア <カラー・90分>コスミック出版
ナイル河の流れで、ついバリ島へと行き着いたのは、とくに理由はないが、このご時世で海外旅行なども敬遠しがちの萎縮した気分を、ふと解放したくなった。
というか、ハリウッドのスタジオが50年代に、テレビの連続ホームドラマなどに占拠されだしたせいか、この3人コンビのコメディも旅に出て、珍道中を展開。
というよりも、歌手のビング・クロスビーとコメディアンのボブ・ホープに、グラマーなドロシー・ラムーアは、トリオで世界各地の<珍道中>ものをシリーズにしていた。
シンガポール,アフリカ、モロッコ、アラスカ、南米、そしてこのバリ島など、スタジオの撮影なのだが、こうした旅もののコメディが、かれらの人気を支えていた時代。
戦後のハリウッド文化で、西部劇でのフロンティア・スピリットと、ミュージカルで、人間性の楽天性をジャズの普及とレコード文化の浸透で、われわれの青春は陽気になった。
このシリーズは、そのアメリカ人のハリウッド映画を通じての、実に陽気なエンターテイメント精神を植えつけて、われわれ若者の感覚を見事に洗脳していったのだった。
理屈はともかく、ハリウッドは時代のテレビ文化で、映画製作はマンネリの傾向となり、クーパーは「楽園に帰る」で、ジョン・ウェインは「ドノバン珊瑚礁」で、
そしてこうして人気筆頭のボッブ・ホープと、美声クルーナーのビング・クロスビーまでが、こうして南の島で、難破船の宝もの探しで巨大イカなどと奮闘していたのだ。
だから、このシリーズも、フィリピン沖辺りのバリ島で、原住民たちとトラブルを起こしつつも、陽気に唄って踊るバラエティ・コミックをシリーズ化していたのだった。
でも、この底抜けの陽気なナンセンスで、どれだけ当時のわれわれの日常感覚を、明るく楽しいものにしてくれていたか、それは最高のエンタメの楽天性で、幸福の媚薬でもあった。

■ボテボテのゴロだが、野手の間を抜けて左中間のツーベース。 ★★★☆☆
●コスミックDVD

●『ナイル殺人事件』の懐かしいアガサ・クリスティの旅行ミステリー。

2022年02月27日 | Weblog
●2月26日(土)12-00 <二子玉川・109シネマズ・シアター7>
M-003『ナイル殺人事件』"Death on the Nile (2022) 20th Century Fox Studios, Presents by Walt Disney Studios.
監督・主演・ケネス・ブラナー 共演・アネット・ベニング、トム・ベイトマン、ラッセル・ブランド<127分・シネマスコープ>配給・ウォルト・ディズニー・ジャパン
あのアガサ・クリスティ原作の、名探偵エルキュール・ポワロのシリーズは、「オリエント急行殺人事件」「地中海殺人事件」など映画化されている。
原作を読む程のファンではないが、ミステリー小説好きの当方としては、やはり気になるテーマなので、今回もマスク着用ながら、劇場の大スクリーンで愉しんだ。
毎度のように、ブルジョワな中年の有閑連中が、サマーシーズンの優雅なリゾート地で休暇中に、殺人事件が起こり、なぜか滞在中のポワロ探偵が真犯人を暴く。
という筋立ては同様で、そのリゾート地が今回はエジプトのカイロからナイル河沿いの南に位置する砂漠で、近くに巨大な古代遺産のピラミッドやスフィンクスがある。
わたしも現役時代に、CMのロケーションで、アフリカのチュニジアのサハラ砂漠に言った事があるので、この新作では、ぜひそのロケーションだけでも見てみたい。
ま、ハードボイルド・ミステリー派としては、ポワロよりもフィリップ・マーロウ派なのだが、今回はクセもののケネス・ブラナーが製作監督主演なので、見逃せない。
そのカイロ郊外のナイル河には、あのミシシッピーのショウボートのような、大きなホテル客船が航行していて、ナイル河をカイロからアスワンの辺りまで航海している。
莫大な資産家の娘と結婚したふたりは、家族や介護医師とその看護婦なども従えてのエジプト旅行なのだが、時代は第一次世界大戦の、30年代なのだろう。
おそらく原作のアガサ・クリスティが実際に目にしたエジプトだろうから、あの「オリエント急行殺人事件」の時代設定なのだろうから、スマホやパソコンなど関係ない。
つまり,われわれの先先代くらいも前の時代の設定なのだろうから、あくまでアガサ・クリスティがご自身で見たり旅をしたりの視界での、回顧のブルジョワジー世界。
彼女の描いたミステリーの背景は、1920年代から60年代周辺までの、イギリスのブルジョワ階級の、ヴァカンス・ミステリーが多いので、この作品もその設定を再現している。
という意味では、イギリスの誇るシェークスピア俳優のケネスが、そのプライドにかけてポワロ探偵を演じて、この作品を作った根性には、余計な御託は無用だろう。

■左中間の後方まで伸びたツーベースヒット。 ★★★☆☆☆
●全国でロードショー中

●『ナイル殺人事件』の懐かしいクリスティ・トラヴェル・ミステリー。

2022年02月27日 | Weblog
ナイル殺人事件

●『プードルスプリングス事件』は、マーロウ探偵の「ロング・グッドバイ」の後の事件。

2022年02月23日 | Weblog
●2月22日(火)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-015-12『プードルスプリングス』"Poodlesprings" <1998> HBO Films. Universal Pictures.
製作・シドニー・ポラック 監督・ボブ・ラフェルソン 主演・ジェームズ・カーン、ブライアン・コックス<103分>
あのフィリップ・マーロウ探偵を創作したレイモンド・チャンドラーが、原案を残していたストーリーを、ロバート・B・パーカーが書き上げた探偵もの。
というだけで、マーロウ・ファンには悶絶の名探偵絶品ストーリーを、「コンドル」や「追憶」のシドニー・ポラックがプロデュース。しかし劇場未公開。
名作「ファイブ・イージー・ピーセス」のボブ・ラフェルソンが監督した、というだけで鳥肌ものなのだが、ハリウッド崩壊の時代でテレビ向けとなった異色作品だ。
マーロウ探偵のイメージを踏襲した、B・パーカーの探偵小説は、<スペンサー探偵>のシリーズとして、早川書房からハードカバーで40冊ほども発行された。
当時、チャンドラー、ロス・マクドナルドの、私立探偵ものに熱中していた当方は、そのすべてを買いあさり、読破して、来日したパーカーにも会ったほどの熱狂もの。
2000年直前の世紀末には、通勤サラリーマンで、よく海外出張もしていた幸運で、毎日のように彼のスペンサー小説にはお世話になった、という時代だった。
この作品は、その時代の凋落の最後に製作された、チャンドラー系のウェストコースト・ディテクティブもので、結局は劇場公開されずに、レンタルビデオでの登場。
ロスのダウンタウンで、しがない私立探偵として、家出や離婚騒動の捜査はお断りしていたが、ある日、友人の探偵が電話中に射殺されて、マーロウが事件の乗り出した。
という、毎度おなじみのプロセスなのだが、マーロウは秘書の美女に惚れ込んで結婚したら、彼女が富豪の令嬢で、<プードルスプリング>に新居移転ということになった。
だいたい、しがない探偵は、ダウンタウンの裏通りの安アパートに1部屋のオフィスを構えるのだが、彼らはパームスプリングのような、陽光の豪邸に住みついた。
結局は、そのブルジョアなファミリーに翻弄されて、あの「大いなる眠り」と似たような大家族事件に巻き込まれて行くが、一応はマーロウ探偵もののスタンスは保持。
やはり、マーロウ探偵は、あの「さらば愛しき女よ」のロバート・ミッチャムのイメージが最高だったので、つい、ここでもイメージをダブらせてしまうのだ。

■左中間へのゴロを野手がモタツく間にツーベース。 ★★★☆☆
●レンタルDVDのコピー鑑賞。

●2月22日(火)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-015-12『プードルスプリングス』"Poodlesprings" <1998> HBO Films. Universal Pictures.
製作・シドニー・ポラック 監督・ボブ・ラフェルソン 主演・ジェームズ・カーン、ブライアン・コックス<103分>
あのフィリップ・マーロウ探偵を創作したレイモンド・チャンドラーが、原案を残していたストーリーを、ロバート・B・パーカーが書き上げた探偵もの。
というだけで、マーロウ・ファンには悶絶の名探偵絶品ストーリーを、「コンドル」や「追憶」のシドニー・ポラックがプロデュース。しかし劇場未公開。
名作「ファイブ・イージー・ピーセス」のボブ・ラフェルソンが監督した、というだけで鳥肌ものなのだが、ハリウッド崩壊の時代でテレビ向けとなった異色作品だ。
マーロウ探偵のイメージを踏襲した、B・パーカーの探偵小説は、<スペンサー探偵>のシリーズとして、早川書房からハードカバーで40冊ほども発行された。
当時、チャンドラー、ロス・マクドナルドの、私立探偵ものに熱中していた当方は、そのすべてを買いあさり、読破して、来日したパーカーにも会ったほどの熱狂もの。
2000年直前の世紀末には、通勤サラリーマンで、よく海外出張もしていた幸運で、毎日のように彼のスペンサー小説にはお世話になった、という時代だった。
この作品は、その時代の凋落の最後に製作された、チャンドラー系のウェストコースト・ディテクティブもので、結局は劇場公開されずに、レンタルビデオでの登場。
ロスのダウンタウンで、しがない私立探偵として、家出や離婚騒動の捜査はお断りしていたが、ある日、友人の探偵が電話中に射殺されて、マーロウが事件の乗り出した。
という、毎度おなじみのプロセスなのだが、マーロウは秘書の美女に惚れ込んで結婚したら、彼女が富豪の令嬢で、<プードルスプリング>に新居移転ということになった。
だいたい、しがない探偵は、ダウンタウンの裏通りの安アパートに1部屋のオフィスを構えるのだが、彼らはパームスプリングのような、陽光の豪邸に住みついた。
結局は、そのブルジョアなファミリーに翻弄されて、あの「大いなる眠り」と似たような大家族事件に巻き込まれて行くが、一応はマーロウ探偵もののスタンスは保持。
やはり、マーロウ探偵は、あの「さらば愛しき女よ」のロバート・ミッチャムのイメージが最高だったので、つい、ここでもイメージをダブらせてしまうのだ。

■左中間へのゴロを野手がモタツく間にツーベース。 ★★★☆☆
●レンタルDVDのコピー鑑賞。