事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

悪の枢軸

2008-01-27 | 情宣「さかた」裏版

Iraqattack01 前号繰越。イラク攻撃直前クミアイ情宣シリーズ最終回です。もちろん、アメリカ批判は(不幸なことに)これから何度もやることになるのですが……

浅井氏の講演はつづきます。 
核兵器開発が疑われたあのとき、実はアメリカは北朝鮮の核関連施設に奇襲攻撃をかけようとしていたことが報道されています。当然、その足がかりは日本になるはずでした。そして北朝鮮の報復の対象もまた日本に。しかしそのとき日本には【有事法制が無かったので仕方なく】カーター=金日成会談によって収束に向かった経緯があります。また整理してみましょう。

有事法制推進派の認識とその問題点
他国から攻められたときに備えがなかったらどうなるか → 他国から攻められて有事がはじまるのではない

備えあれば憂いなし → 備えがあると有事をもたらす

自分さえ平和であればいいという一国平和主義ではいけない → 日本が有事体制を作らないことこそが国際平和に貢献する

……つまりこの核疑惑の際に、日本における有事法制の不備が軍事行動の足かせになっていることを痛感したアメリカは、その整備を日本に要求し、再軍備をめざす日本の勢力がそれにのった、という構図が見えてきます。ヒートアップするイラク情勢にくらべ、北朝鮮問題は一時の興奮状態を脱した感がありますが(マスコミはあいかわらず騒ぎまくっているとはいえ)、逆に有事法制推進派はこの興奮が残っているうちに法案成立をもくろんでいると言えます。

Iraqattack02  浅井氏は主張します。ブッシュ=小泉に共通する部分として、経済に有効な手段を打ち出すことができず、支持率が下降気味である彼らがやっきになって戦争に突き進む意味をよく考えることと、主権者として、国際社会や子どもたちのためにどんな国にしていくべきなのかを判断し、有事法制にきちんと反対の声をあげるべきだと。

 最後に参加者から興味深い質問がありました。
「いったいどうして日本はこんなアメリカにいつも追随するのでしょう」と。
 官僚出身の浅井氏は明快に答えてくれました。
「どこの会場でもこの質問は受けます(笑)。ものすごく単純化して言えば、戦前の天皇崇拝が、アメリカ崇拝に置きかわっただけ、と言えますね。官僚の世界で言えば、外務省に限らず、霞ヶ関ではとりあえずアメリカの言うことをきいておこうという空気が醸成されていて、新人の頃は日本の独自性を、との気概を持っていたとしても、次第にその空気になじんでいってしまうんですよ。その方が確実に出世も早いしね。
 ただし、アメリカ崇拝に置きかわったといっても、また日本の崇拝の対象がコロッと変わる可能性もあるわけだから、深いところではアメリカは日本をパートナーとして信用しているわけじゃないんです。これはおぼえておいてください。」

60年ほど前、まさしく悪の枢軸国だった日本に、アメリカがそう簡単に心を許すものか、ということだろうか。産業構造において、戦争の存在が前提となっている連合国が。

※「学者として、きちんと検証できることしか言いたくはないけれど……」との前提で浅井氏は、イラクへの攻撃が、莫大な石油の貯蔵量の確保とその安定した供給、つまりアメリカが石油取引のイニシアチブを握るために行われるのではないか、との意見に「……否定はできませんね。」と発言した。

※学校に勤務するものとして、有事法制と少子化の方向が交差する地点が「徴兵制」であることは認識しておかなければ。

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暴走

2008-01-27 | 情宣「さかた」裏版

Asaimotofumi01  クミアイ情宣アメリカ糾弾シリーズ第三弾。発行は2003年2月3日でした。前号はこちら

学者としての冷厳さ、そして伏魔殿(笑)外務省出身らしい現実主義をベースにした浅井基文氏の講演は、それゆえに示唆に富むものでした。
イラク攻撃に関するアメリカの認識と、浅井氏の提示するその問題点を整理してみます。

アメリカの認識
報復と脅威に依存する「抑止」の考え方は、リスクをおかすことに積極的で、自国のひとびと及び彼らの富を賭けるならず者国家(→浅井氏は“ごろつき国家”と呼ぶ)の指導者には有効ではない。→自国民を犠牲にしてもケンカをうってくるはずだ、という認識。

その問題点
現実と遊離している。この考え方が妥当となるのは、アメリカが彼らを攻撃することが避けられなくなったときのみだ。独裁によってためこんだ富と権力を手放すようなリスクを独裁者はおかさない。なけなしの武器をテロリストに渡しても、次の瞬間にはアメリカの報復によって自らの権力基盤が灰燼に帰すことが目に見えている。自国民を犠牲にする賭けに出た独裁者は、近代史上東條英機しか存在しない。

Asaiphoto01 アメリカの認識
急迫した攻撃を行う危険のある相手から自分を守るためには、攻撃にさらされる必要はない。たとえ敵の攻撃の時間、場所についての不確実性が残っていても、われわれ自身を守るための予想行動をとるケースが緊要となる。

その問題点
「武力攻撃が発生した場合には」という国連憲章にあきらかに違反しているし、非現実的な仮定のうえに、急迫性の議論をみずからこわしている。

……これらのアメリカの考え方が認められるとすれば、残るのは【アメリカの一人勝ち】の構図だけだというのです。浅井氏の著作によれば、犯罪を戦争とみなし(診断の誤り)、報復戦争で問題を解決することしか考えない(処方箋の致命的な誤り)ブッシュ政権は、今度は先制攻撃を正当化しようとしているという意味で、頭に血が上って理性を失ったドライバー(ブッシュ)が、交通規則(国際法)を無視し、超大型トラック(アメリカ)を運転して好き勝手に道路を暴走しているとたとえられています。

このドライバーはこんなことも言っています。「テロリストをかくまうものはテロリストだ。テロリストを養うものはテロリストだ。世界をテロの恐怖にさらす大量破壊兵器を開発するものは、その責任をとらなければならない。」この元テキサス州知事には、自分のトラックにどれだけの大量破壊兵器が積まれているかの認識がないのでしょう。ならず者とは誰のことなんだ。

そして日本政府がアメリカのこの姿勢を支持し、イージス艦まで派遣し、有事法制の成立をはかるウラには1994年の北朝鮮の核疑惑があると浅井氏は読み解いています。
次号繰越。 

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有事ふたたび。

2008-01-27 | 情宣「さかた」裏版

Bushstatement クミアイ情宣アメリカ糾弾シリーズ第二弾。
発行日はやはり2003年1月21日。(前号はこちら有事関連はこちら。)

 有事。これもまた日本的な言い換えの一種かもしれません。単なる売春のことを“出会い系”だの“援交”などということばで希釈するのに似て。有事とはすなわち戦争のことじゃないですか。
 今国会で山崎自民党幹事長は、有事法制(つまり戦争準備法案です)をなにがなんでも成立させると発言しています。
 その背景に北朝鮮情勢とイラクの問題が(というよりアメリカの問題なのですが)あることは容易に見てとれます。

 先日、あるテレビ局(サザエさんをやっているところ)の夜のニュースを見ていたら、北朝鮮から帰ってきた万景峰号の帰港に新潟の県議たちが抗議しているニュースに引き続いて、旧正田邸の解体に、大御心に反して(笑)住民が反対して君が代を斉唱しているニュースが流れました。この局の反動ぶりはつとに有名なのですが、そのことを意識しないでいる視聴者にとっては、“有事近し”との印象を与えるに充分な内容でした。

※この新潟県議たちのダーティな噂がオモテに出てこないのはどういうことでしょう。

Manbyongon  どう考えてもおかしくないでしょうか。平和を求めて日朝首脳会談が実現したにもかかわらず、いつのまにか日朝間には思い切り緊張が高まっており、メディアに拉致問題がとりあげられない日はありません。日本のメディアは、太平洋戦争当時から情緒的な報道に終始し、熱が冷めればアッという間に忘れ去っていくのが常だから仕方がないとして(もうあきらめています)、西欧を基準に【極東】の出来事にすぎなかった北朝鮮問題が、【中東】のイラクと同等の問題として世界に発信されるようになっています。

 これらの問題を一刀両断にしてくれたのが昨年(2002年)の12月18日、酒田勤労者福祉センターで行われた「有事法制を考える」酒田地区平和講演会でした。講師の浅井基文氏は1941年生まれ。東大を中退し(外交官試験に合格したからもう大学にいる意味がなかったのだそうだ)、外務省に入省。在オーストラリア、モスクワ、北京の各大使館に勤務。元駐英公使。退職後、東大、日大を歴任。現明治学院大学教授。
招かれた斎藤淳氏がイェール大の先輩であるブッシュに、浅井氏が東大と外務省の後輩である加藤紘一に苦言を呈するというこわ~い講演会。詳細は次号から

※ひんしゅくをかうことを承知で断定。
ナベ○ネの言いなり
→1
橋○派の言いなり
→3
一度死んでいる
→22
チョー反動
→24
ひたすら独善
→39
……数字が何をあらわしているかは察してください。あ、山形の庄内地方に住んでいる人以外には意味不明ですね。これ、テレビのチャンネルです。さあ、どこがどこでしょう。

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WHY IRAQ?

2008-01-26 | 情宣「さかた」裏版

Gulfwar クミアイ情宣シリーズ。アメリカのイラク攻撃へ思いきり皮肉をかましてみました。発行は2003年1月21日。

百年後の歴史の教科書を想像してみよう。
 その頃から観れば、百年前の世界がよくも悪しくもアメリカを中心に回っていることが語られていることだろう。ひょっとしたらパクス・アメリカーナ(アメリカによる平和)の時代、と評価されて、ブッシュ親子はオヤジの方が大ブッシュ、息子の方が小ブッシュ、と呼ばれているかもしれない(まさか)。

 未来の中高生は必死で年号をおぼえる。
「えーとお、湾岸戦争は1991年でぇ、同時多発テロとアフガニスタン空爆が2001年かぁ……あれ?アフガニスタンは前にもソ連とかいう国に侵攻されてなかったっけか。大変だねこりゃ。」
 その教科書には確実に世界貿易センタービルの例のシーンが載ることだろう。湾岸戦争は油まみれの水鳥で決まり。
「おっと2003年にはアメリカを中心にした多国籍軍がイラクに侵攻か。ん?なんでイラクなんだろう。あ、そうか。湾岸戦争は実は続いてて、親父の始めた戦争を息子が引き継いだってことかな。」
違うぞ、少年。それはアメリカの“気分”であって世界の“歴史”じゃない。

 2001年9月。アフガニスタンにおいてユニセフと現地ボランティアの手によってポリオの接種が行われた。そして11月6日から3日間の予定で2回目の接種が行われようとした。これをやらないと1回目の分が無効になってしまう。このプロジェクトを、アメリカは妨害した。空爆の継続を優先させるアメリカは、再三の停戦要求をはねつけたのだ。ワクチン停戦を、という要求を。そのため、現地スタッフたちは戦火の中をみずからの危険も省みず接種を実行せざるをえなかった……

 戦争とは非情なものだ、という理屈で過剰な感傷をせせら笑う人もいるかもしれない。でも、マスメディアが発達し、その残虐性が瞬時に世界に広がってしまう現代においては、戦争にはその完遂のための【大義】がなによりも必要なはず。
 ブッシュに問う。アメリカに問う。いったいなぜイラクなんだ。

 昨年、多くの反対と敵失のために成立させられなかった有事法案を、小泉内閣は今国会でしゃにむに成立させようとしています。
この法案を成立させようとする勢力は、実は何をめざしているのか。
その陰にいるアメリカの腹は。
イラク、北朝鮮への攻撃はどうなるのか。
昨年(2002年)12月に行われた平和センター主催「有事法制を考える酒田地区平和講演会」の浅井基文氏の講演をもとに、次回からちょっとハードに考えてみます。

※虚しくなるけれど、9.11のブッシュの発言をもう一度思い起こしてみよう。
「これは人類と自由全体に対する攻撃だ」
こら。

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ワンダフルライフ('98)是枝裕和監督 ARATA主演

2008-01-26 | 邦画

Wonderful_life 社会科のお勉強をしよう。

Q. 日本における仏教の、それぞれの宗派の開祖は誰でしょうか?(答は最後に)

1.曹洞宗

2.浄土宗

3.浄土真宗

4.日蓮宗

5.日蓮正宗

答まるわかりの問題もあって恐縮。各宗派とも、数千の寺をかかえ、数百万人の信徒を誇っている(ことになっている)。どうしていきなり仏教の話になったかというと……

……3週連続、週末はお泊まり。今回は妻のお父さんの17回忌の法要。16年前の勤労感謝の日にわたしたちは結婚したのだが、それから1ヶ月もしないうちに義父は亡くなってしまったのである。女所帯である妻の実家では、そのために娘婿であるわたしが法事の前面に立たざるをえなかった。

妻の実家は浄土真宗の檀家。わたしは曹洞宗(ナムタラタンノートラヤーヤー)の理屈しか知らなかったので、その違いには16年前の葬儀のときから驚かされっぱなしだった。まず、仏壇にお水をあげないし、線香は折るわ木魚はないわ……。庶民派の宗教を名のるだけに、お布施もリーズナブルだったのはうれしい。聞いてるか禅宗の坊主ども。

さて、その庶民派浄土真宗のお坊さんの接待もわたしの係。これがしかし若いお坊さんなのである。
「あの、ぶっちゃけた話、おいくつなんですか?」接待もへったくれもあったもんじゃない。
「33です。」まるで20代に見えるのだが。
彼は剃髪もしていないし、お酒ももちろん飲む。
「ご結婚は?」坊さんの身上調査をしてどうしようというのだオレは。
「いえ、まだ(笑)」

Wonderfullife 彼の話によれば、坊主で初めて妻帯したのは浄土真宗の開祖である親鸞。おそらくは革命児でもあったのだろう。その後、この宗派を爆発的に普及させたのがこれまたパンクである蓮如なのだという。蓮如関係の著書もある五木寛之人気もあって、浄土真宗が開催する講演会は大盛況だそうだ。
「確か三国連太郎もそちらでしたよね」
「そうですそうです。」

彼が所属する浄土真宗大谷派(東本願寺系ね)には、大谷大学の他に、彼が卒業した坊さん養成所のような全寮制の専門学校もあり、裏話(「刺青のある人も入ってたし、女性もいて、もててました。」)には笑わせてもらった。

 そしてこの宗派の特徴の一つが、読経の後に行われる法話。はるかに年下の人間から説教されるのも照れくさいが、今回のお話はよかった。法事とは、死んだ人間を供養するだけでなく、「死者の、生者にたいする祈りをうけとめる場」なのだと。

Heavencanwait 「ワンダフル・ライフ」は、死者が天国に行く前に、人生の中でいちばん大切な思い出を選択し、その思い出の中で暮らしていくことを手助けする天使たちのお話。選択できなかった人間こそが、職員(天使)として死者の相手をしていく経過が描かれるファンタジー。

一般の人たちが由利徹や内藤武敏といった芸達者にまぎれて思い出を語り、そしてこれがかなりいい。ドキュメンタリー出身の是枝裕和監督の本領発揮。「天国から来たチャンピオン」(ウォーレン・ベィティ)や「天国は待ってくれる」(小熊文彦著 早川書房刊……原題はどちらもHeaven Can Wait)のように、このジャンルには秀作が多い。そちらもぜひ。死者の、祈りがきこえてくるようだ。

Ans.1.道元 2.法然 3.親鸞 4.日蓮 5.同じく(ここに昔創価学会がいたわけ。だから日本最大の宗派だった)

コメント (3)
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ルパン三世/カリオストロの城

2008-01-26 | アニメ・コミック・ゲーム

Lupin01 2003年に、地元のシネコンが何を血迷ったかこの名作を上映してくれたことに感謝……

ルパン三世・カリオストロの城 THE CASTLE OF CAGLIOSTRO / LUPIN THE 3RD
カリオストロ公国。一見ただのヨーロッパの小国であるその国では、ニセ札製造造りの噂が絶えなかった。その昔、謎を暴こうと忍び込み、見事に失敗したルパンだったが、ある日、偶然から公爵の娘クラリスを助けたことから、再びカリオストロの陰謀に巻き込まれて行く……。

1979/宮崎駿監督作品

次元「どっちにつく?」

ルパン「オンナぁ!」

次元「だろうな(笑)」

完璧な娯楽映画があるとすればこれ。二十数年前に劇場で観て以来、繰り返しブラウン管で再見してきたわけだけれど、なんと効率優先の地元のシネコンが特別上映してくれたので、息子と娘といっしょに再体験。

息子はマトリックスに固執していたが、大画面で「カリオストロの城」を観るなんてもう一生できるはずがない。強引に引っ張っていく。まあ、子どもを連れてこの映画を観ることが映画ファンとしての夢だったわけだから、大願成就だ。日曜日なのに観客は意外に少なく、家族連れが数組と、あとはいかにもなオタクたち。クラリス組とでもいうか。写真料は安いだろうから、これでもペイするかもしれないし、こんな取り組みはもっと続けてほしい。えらいぞ三川イオンシネマ

残念ながら大画面だとアラも目立つし、ドルビーなどに慣れた耳にはサウンドはしょぼく聞こえる。しかし、冒頭のカーチェイスや城壁を駆け下りる躍動感はそれを補ってあまりある。まもなく上映は終わってしまう。庄内の読者は今すぐ劇場に走れっ!

※もう三十年近く前の作品なのかと今さらに気が遠くなる。近年、映画の何が進化したかと考えればやはりオーディオか。ドルビーやSDDSに比べれば、やはりカリオストロのサウンドは“モノクロ”(モノラルってことじゃなくて)に感じられる。DVDの方はどうなっているのかな?

酒田港座上映バージョンはこちらです。

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AIKI('02 日活)

2008-01-26 | 邦画

Aiki 芦原太一は、ボクシングに打ち込む21才。努力が報われようとしていたそのとき、オートバイ事故で下半身麻痺となり、つかみかけた夢を失う。一時は自殺まで考えた太一だったが、ギャンブラー兼巫女(&処女)という不思議な女性サマ子との出会いによって、次第に明るさを取り戻していく。そんなとき、彼にとって最大の転機となるAIKI=合気柔術との出会いが、太一の人生に、別の夢を与えることとなる……

この映画にのれるかのれないかの分岐点は、相手の力と存在を受け入れ、ほとんど相手にふれることなく跳ねとばす大東流柔術をどう捉えるかにあるだろう。オカルトではないかと思えるほどの技である。確か由美かおるなんかが在籍していた西野バレエ団の会長がこんな武術を会得していて、それこそアッという間に何人もの対戦相手をバッタバッタと投げるのを見て、あーこりゃイカサマだな、とわたしはすぐに結論づけたし、宗教もちょっと入ってるんじゃねーのー?とか思っていたのだった。

「AIKI」の場合、その胡散臭さはもちろんあるものの(少なくとも入門しようとは思わない)、車椅子の青年が極真系の空手家を投げ飛ばす爽快感がとにかくハンパではないので、ま、映画の中ならこういうのもアリってことでいいっしょ、ぐらいの気持ちにはなれた。展開は恐ろしく古臭いのだが、障害者を演ずる加藤晴彦が「障害者がいい人でいなけりゃならない理由は無い」って感じの“普通さ”を出していてすばらしい。脊髄損傷(「せきそん」と略称されているのがリアル)の人間の、排泄やセックスがどんなものなのか、加藤の軽さもあって、息苦しさや過度の同情なしに観ることができた。バラエティでは徹底的にお馬鹿な加藤だけれど、ひょっとしたら大化けするのかも。黒沢清の映画でもいい味出してたし。

Aikip  そして、石橋凌演ずる合気柔術の師匠がサラリーマンという設定がなにより効いている。小市民的な武道家、とはいかにも現代だ。日本映画界の曲者俳優総出演だし、かなりの拾いモノ。井上雄彦の「リアル」とともに必見。こんないい映画を、95円レンタルで観ちゃダメだよなオレも。

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呪怨2

2008-01-25 | 邦画

Juon201 今までに観たホラー映画で「あーこりゃこえぇっ!」と声を出しそうになったのはわずか2本。

 1本目は“怖くないホラー”で有名な、大林宣彦のデビュー作でもある「HOUSE」(’77 東宝……意外な人のヌードが拝めますよ)。池上希実子や大場久美子、そして今思えば松原愛なんかが出ていた少女趣味映画である。で、このなかに何の必然性もなく画面の奥の方でガイコツがカタカタと歩いていくシーンがあり、わけもなくゾワッときたのだった。

 もう1本はかのダリオ・アルジェンドの「サスペリアPART2」。実はPART1よりも先に作られていて「決してひとりでは観ないでください」は本国イタリアではこの作品のためのコピーだったらしい。問題はこの映画のラスト。鏡と絵画を使った一瞬の引っかけがあり、気づいた瞬間にどひーとのけぞった。

 共通点を考えると、画面の中央ではなく、片隅に一瞬チラッと映る何かにわたしは反応するらしい。

この「呪怨2」、実はそんな手口が満載であり、満載でありすぎるところが問題だった。怖がらせることにかけて監督の清水崇が手練れであることに疑いはないが、それにしたってもう少しうまくドラマを構築できなかったのか。ホラー映画の特徴は、

1.カメラが主観(登場人物の目)と客観(神の目)の間を自由に行き来することで、観客を登場人物に同化させやすいこと。
2.映画を観ること自体が暗闇での体験だから、恐怖との親和性が初手から高いこと。

Da01 ……こんなアドバンテージがあるわけだから、多少予算が少なくても一応の出来にはなりやすいわけ。他のジャンルより安くあがる傾向があるために、ホラーの製作はやむことはない。だから、だ。なおさらお願いしたいのは、せめて絶叫が似合う、絶世の美女ぐらいは用意してもらわなければ。酒井法子と新山千春という、華のなさここにきわまれりという女優陣で、いったい何を描こうというのだ。最後の“あれ”の出産シーンにしても、のりピーに感情移入できないものだから「おー。あんなのが出てきたってことはのりピーのあそこって」と徹底的にオヤジなことを考えて一人笑っていました。「やだー」とか「こわーい」とかつぶやいていた周りの女子高生の純粋さを少しは見習わなくちゃ。反省反省。

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要塞~宇治小学校事件

2008-01-25 | 受験・学校

Ujisho02 池田小事件につづき、宇治小学校の暴漢侵入事件をとりあげよう。事件発生は2003年12月18日のことだった……

宇治小 安全管理が不備

 京都府宇治市立宇治小で18日、1年の男子児童二人が包丁で切られ、負傷した事件で、傷害の現行犯で逮捕された同小近くに住む無職の男(45)は宇治署の調べに「東側の門から入った。包丁は自宅から持ってきた」と供述していることが20日、分かった。宇治署は同日、殺人未遂と建造物侵入、銃刀法違反容疑で男を送検した。宇治小には正門と東西に通用門があり、事件当時、三つの門はすべて開いていた。また東門だけ防犯カメラが設置されていない。同小は警報装置も作動させていなかったことから、安全管理の不備を指摘されている。
 調べでは、男は18日午後0時半ごろ、東門から宇治小に侵入。校舎2階の1年1組の教室で、西池潤一郎君(7)と中塚珠月君(7)に切り付け、頭に10日間のケガを負わせた疑い。
 東門には金網の扉があるが、男は調べに「ちょっと開いていた」と話している。凶器は刃渡り16センチの菜切り包丁(刃が広くて薄い先のとがっていない包丁)という。宇治署は児童の頭に切り付けている上、男が「殺すつもりでやった」と供述していることから、殺意はあったとみて容疑を切り替えた。
2003年12月21日付スポーツニッポン

マスコミの非難はかくのごとく、宇治小学校が警報装置を稼働させていなかったり、東門が“少し”開いていたことに集中している。スポニチはまだ穏やかな方だ。

この問題については読者からこんな意見も。

Mail01b 報道の論調や行政の姿勢が、学校内部の安全管理に終始しているのは的外れとしか思えない。学社連携とか地域と一体に云々、子育てのことを論議しているのに、門の開放やカメラのチェックだけがなぜ声高に指摘されるのか。記者会見で「工事中で」「授業参観が」などと言い訳しているのか。情けない。情報や交流がないから自信を持って「安全だと思ってました」と言えないのではないか。素直に「出来ませんでした」「喉元すぎて忘れてました」と言ってしまった方がすっきりする。乱暴ですが。

Mail01j 職場でも話題になっていました。なんだかおかしいですよね、池田小学校などの教訓が生かされていないなんて言われて……。学校職員の意識が薄いとも言っていたような。最近、不審者が入った時にどう対応するか、などとシミュレーションまでやりました。学校ではそれなりに努力はしていますよね。学校だけの問題ではないのに、学校だけが悪いような報道は納得できません。誰か抗議してくれないかな、などと思っていました。

わたしもそう思う。小さなミス(あえて、そう言い切る)をあげつらうより先に、まずマスコミの考える「学校のあるべき姿」とはいったいどんなものなのだ。登校時刻がすぎれば門扉はすべて閉じられ、監視カメラでまわりに常に気を払い(誰が監視する?)、“侵入者”があればいきなり警報装置が鳴りだし、職員は総がかりで囲い込み、あるいは児童生徒を避難させる……冷静に考えれば、およそ現実的ではないことがすぐにわかろうというものだ。コスト面の問題以前に「開かれた学校」というお題目はどこへ消えたのだろう。わかっている識者はそのことをキチンと指摘し、どこで折り合いをつけるかの難しさに言及してくれているようだが。

Ujisho01 それなのに、大方は“誰かを悪者に仕立て上げ、血祭りにあげなければならない”ワイドショー的報道に終始し、学校を指弾することで視聴者の心の安定を図ろうとしている。このマスコミの姿勢は、20年間に20数回精神科に入退院をくり返した容疑者を、どう処遇していいかわからないフラストレーションのはけ口が、単に学校に向かっているだけだろう。わたしも乱暴だが。

池田小を特集したときにもふれたけれど「本気で児童を殺そうとする人間が現れたとき、学校には子どもを完全に守る術など、どれだけ学校を要塞化したところでありはしない。あるわけがない」この根本は、学校という狭隘な世界以外にいる通称“世間”にも理解してもらわなければ。われわれも努力はする。しかし宇治小に好意的すぎるようだが、彼らの“怠慢”をそしることだけでは、何も解決などするものか。

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「シティ・オブ・ゴッド」City of God

2008-01-24 | 洋画

Cityofgod01製作年 : 2002年製作国 : ブラジル
監督 : フェルナンド・メイレレス

1960年代、ブラジルの都市リオ・デ・ジャネイロ。「シティ・オブ・ゴッド(神の街)」と」呼ばれる貧民街に、3人組のギャングがいた。ギャング団のひとりを兄に持つブスカペは、写真家を夢見る少年。ギャング団に憧れる同い年のリトル・ダイスは、リーダーのカベレイラとともにモーテルを襲撃し、初めて人を殺した。70年代、リトル・ダイスは街のギャング・リーダーとなる。町にはドラッグが蔓延し、ギャング団は麻薬ビジネスの組織を立ち上げて大金を稼いでいた。そして80年代、ひとつの事件から、神の街は熾烈な闘争へと突入していく。

この映画を観た人の多くが思い浮かべるキーワードはおそらく「ペキンパー」「暴力」「深作欣二」「無邪気」「タランティーノ」「バトル・ロワイヤル」などだろう。

Cityofgod02  貧困のなかで若者たちが衝突し、殺し合い、そしてその殺し合いが連鎖し、次の世代へ受け継がれていく……こりゃーどう考えても「仁義なき戦い」。原作が実話をもとにしていることまでいっしょ。焼け跡の闇の奥からはじけ出てくる広島やくざと、神の街のチンピラたちの姿は、どうしたってオーバーラップする。堕ちていく男にどうしようもなく尽くしてしまう女の強さと弱さ、権威としての“大人”の不在など、国家が疲弊している時代のアンダーグラウンドは、やはり似てしまうものらしい。

 それにしても構成はタランティーノばりにしゃれている。時制を前後させ、チンピラひとり一人をえぐるように描くテクニックはまるで「木更津キャッツアイ」(笑)。失礼な言い方になるけれど、まるでブラジル映画とは思えないほどだ。今さらだが、もう製作国でその映画を判断することなど出来はしない地点に世界の映画界は到達したと再確認。2003年のわたしのベストワン。ぜひ。

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