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ありがとう小田急ロマンスカー7000形、37年の長寿の秘密

2018年01月21日 02時32分13秒 | 障害者の自立

小田急電鉄ロマンスカー7000形「LSE(Luxury Super Express)」の引退が決まった。最新型ロマンスカー70000形「GSE(Graceful Super Express)」と交替で、2018年度第1四半期の早いうちに消えるという。新型車両の登場は嬉しいけれど、慣れ親しんだ車両の引退は寂しい。少年時代に憧れた電車なら、なおのことつらい。

 7000形LSEは1980年に第1編成が誕生し、1983年までに4編成が製造された。ふりかえれば、初代ロマンスカー3000形、愛称「SE(Super Express)」は流線型と斬新な塗装で登場した。2代目ロマンスカー3100形、愛称「NSE(New Super Express)」は、運転席を2階に上げ、1階最前列も客席とした「展望席」で、やや先んじて登場した名鉄パノラマカーとともに、世間を驚かせた。

 それに比べると、7000形LSEの登場時は、3000形や3100形ほどの驚きはなかった。しかし、2代目に比べると先頭部の傾斜角が60度から48度と小さくなり、ヘッドライトなどの突起物が車体に収まってスッキリした。愛称板もスマートな行き先表示幕となり、流線型の車体に合わせて斜めになった。7000形は3100形をさらに都会的に洗練させたデザインで、ロマンスカーファンを喜ばせた。運行期間も長く、多くの人々にとって思い出の車両となったことだろう。

 しかし、この引退は仕方ない。なにしろ7000形LSEは製造から37年も経過している。高速で走るから同じ世代の通勤電車より走行距離も長い。有料特急の第一線で30年以上も走り続けたことは奇蹟的だ。それだけに幅広い世代に親しまれ、現在、もっとも親しみのあるロマンスカーではないかと思われる。それにしても、なぜ7000形LSEは、37年間も走り続けたか。実は後輩の10000形の方が先に引退している。

 7000形の次代のロマンスカーとしては、10000形HiSE(High Super Express)があった。10000形は1987年の登場だ。7000形よりも鋭角的なデザインの先頭車、中間車をハイデッカー構造とし、すべての座席からの眺望に配慮した名車だった。しかし、10000形は7000形より早く、2012年に全車引退してしまう。運命の逆転劇である。

 その理由は、2006年に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」だ。バリアフリー新法とも呼ばれている。この法律の下で、交通事業者は、施設の新設または大規模改良を実施する場合は国土交通大臣に届けなくてはいけない。このとき、国土交通省令第111号の「公共交通移動等円滑化基準」を満たす必要がある。車両も施設にあたり、新規製造や大規模改造の場合は適用される。

 車両を製造から長期にわたって使用し続ける場合、内装をリニューアルして延命させる。これが「施設の大規模改造」にあたる。10000形の場合は、リニューアル改造をしても、最大の特徴となるハイデッカー構造が車いす利用者に配慮できず「公共交通移動等円滑化基準」を満たせなかった。

 2005年に展望室付きロマンスカーの新車として50000形「VSE(Vault Super Express)」が登場する。ここで本来は老朽化した7000形と置き換えるはずだった。しかし、10000形をリフォームして車いすに対応するには大がかりな改造が必要だ。そこで、10000形HiSEを先に廃車し、7000形LSEを延命させたほうが安上がりという判断となったようだ。こうして7000形LSEは歴代ロマンスカー車両のうちでもっとも長寿な車両となった。

 2016年10月に70000形GSEの構想が発表されると、7000形の去就が噂されるようになった。順当に考えれば70000形GSEと交替で廃車だ。他方で、2018年に小田急電鉄の代々木上原~登戸間の完全複々線化によって通勤退勤時間帯のロマンスカーが増発されるため、しばらくは延命されるという予測もあった。

 小田急電鉄は当初、7000形LSEの引退時期は明確にしていなかった。しかし、2017年12月5日の70000形GSE報道公開で、小田急電鉄の星野晃司社長から「70000形GSEは2編成製造し、第1編成は3月17日のダイヤ改正から使用開始。第2編成は2018年度第1四半期の早いうちに導入する。それまでは70000形GSEと7000形LSEを同時に観られる」とのコメントがあった。つまり、第2編成投入以後は7000形LSEを観られない、という意味となる。

 星野社長は「GSEの2本目の導入時期は、工数の都合もあるとはいえ、わざとずらした」と語った。「LSE、EXE、VSE、MSE、GSE、5種類のロマンスカーの競演を、短い間とはいえ、鉄道ファンの皆さんに楽しんでいただきたい」とも。

 そういえばVSEの第1編成、第2編成は、落成時期は異なっていたけれど、運行開始日は同じだった。GSEの第1編成と第2編成の運行開始日を離した理由は、ロマンスカーファンへの粋な計らいと言えそうだ。

 ちなみに、先に引退した10000形HiSEの一部は長野電鉄に譲渡された。4両編成に短縮し、展望車両の一部を車いす対応スペースに改造して走らせている。7000形について小田急電鉄は「保存については検討中、他社への譲渡の予定は今のところない」という。多くの人々に親しまれた7000形の「余生」が気になる。

ありがとう小田急ロマンスカー7000形、37年の長寿の秘密 

 2018年01月20日     文春オンライン



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