ゴエモンのつぶやき

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《みんなちがっていい・下》 書けなくても高校・大学へ

2016年03月26日 03時20分09秒 | 障害者の自立

 4月に施行される障害者差別解消法では、入試や授業についても、障害者への「合理的配慮」が求められる。法施行に先駆けた「配慮」で、光が見えた子もいる。

 ■中1で不登校

 東京都練馬区の本名(ほんな)貴喜(たかき)さん(19)は、字がうまく書けない書字障害がある。コミュニケーションが苦手な自閉症スペクトラムでもあるが、入試で配慮を受け、来月、東京理科大理学部第二部の物理学科に入学する。

 「小学校では落ちこぼれでした」。ノートもとれず、テストでも書けない。中学では障害を教師に理解してもらえず、中1で不登校に。ただ、勉強も読書も大好き。中2からは生徒が悩み相談をできる相談室に登校し、独学した。

 そんな様子を見てきた母の正子さん(48)も悩んだ。思い切って転校を決め、家族で埼玉県から都内に引っ越したのは、本名さんが中3の時だ。転校先の学校の対応は全く違った。宿題などでパソコンの使用が許され、通知表の評価も真ん中以上になった。

 問題は入試だった。手書きでは名前も読み取ってもらえない。筆記試験のない広域通信制の高校に入ったが、そこでの学習内容は本名さんにとっては簡単で、「このままじゃやばい」。奮起して1人で勉強し、高1の夏に高等学校卒業程度認定試験に合格。別の通信制高校に入り直した。

 高3になると、あちこちの大学に入試について相談した。「字を練習してはどうか」など、反応は芳しくなかった。マークシート式で受験した大学では入試当日、名前だけは手書きするよう求められ、もめて退室し、不合格に。結局、浪人した。

 ログイン前の続き東京理科大は現役では受験していない。ところが相談すると、「大学入試センター試験に準ずる配慮はします」。センター試験では障害者への配慮が進んでいる。大学側と話し合った結果、小論文でのパソコン利用が認められた。公募推薦枠で受験し、昨年11月、合格した。

 入学後も壁はあるだろうと思っている。「でも、僕はパイオニア。うまくいけば後に続く人も出る。卒業後は大学院へ進みたい」。やっと夢が持てた。

 ■教師チームが支援

 昨春、高校入試でのパソコン利用などを認められ、神奈川県立弥栄(やえい)高校理数科に通うのは、1年生の金坂律(りつ)さん(16)=相模原市=だ。書字障害がある。自閉症スペクトラムで、五感の感覚過敏もあり、大きな音がある場所や臭いのする場所などが苦手だ。睡眠障害もある。

 高校側は、合格直後から教師がチームを組み、配慮方法を探ってくれた。金坂さんの相談窓口を担う教師は、あえて担任ではない教師にして、相談しやすい環境を整えた。窓口担当の藤元貴嗣先生(49)は、金坂さんの母、光さん(50)と毎日のようにメールを交わす。金坂さんの障害は全生徒に周知し、偏見を持たれないようにした。

 ノートの代わりはタブレット端末。英語の宿題はプリントをメールで受け取り、答えを入力して返信する。数学では「数式が書けない」と言うと、パソコンに数式を入力する方法を教えてくれた。定期テストは別室で。パソコンを使うほか、解答を口で言って教師に書き取ってもらうこともある。「細かいことまで先生の間で周知されていて、本当にありがたい」と光さん。

 金坂さんは幼いころ、子ども向けテレビ番組で朗読されていた金子みすゞさんの詩「みんなちがって、みんないい」が好きだった。多くの人に、「違い」への理解を深めてほしいと、自分の障害についてブログで発信している。

 藤元先生は「金坂君はきちんと意思表明してくれるから対応できる。でも、自分の障害について自ら言えない子もいる。誰もが抵抗なく、障害への配慮を求められる環境作りが大切です」と話す。

 入試や授業での「合理的配慮」を学校側に求めてきた全国高等教育障害学生支援協議会の近藤武夫理事は言う。「法施行により、大学や小中高校が障害者の話を聞く環境は整う。今後は、生徒側も自分の特性を理解されるように説明する努力が大切になる」

写真・図版 

東京理科大の合格通知書を手にする本名貴喜さん=東京都練馬区

2016年3月25日   朝日新聞


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