結腸亜全摘をして入院している繁殖雌馬が、その朝から調子が悪くなった。
切除できない大結腸基部が壊死し始めているなら、もうできることはない。
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午前中、2歳馬の去勢。
当歳馬の寛跛行。ひどい骨盤骨折だった。
午後、血液検査をしているあいだに、2歳馬の疝痛の連絡。
予定していた関節鏡手術を延期してもらって、緊急開腹手術。
来院してもひどく痛い。
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回腸盲腸重積で、盲腸内に重積した腸管を盲腸の外から触れる。
しかし、回盲部は術創の外へ引っ張り出せない。
重積した小腸の腸間膜が盲腸へ引きずり込まれて短くなっているため、腸間膜根部へ近くなってしまっているのだろう。
これでは回盲部を処置して重積部を切断することもできない。
重積した小腸は引張って抜けてくる気配はまったくない。
しかたがないので、空腸下部を右腹側結腸へ側側吻合する。
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午後4時前には手術は終わったが、その2歳馬はなかなか起立しなかった。
夜、7時を過ぎてやっと入院厩舎へ移動。
しかし、疝痛が始まった。
重積した小腸が絞めつけられる鈍痛ではなく、引き込まれた部分へ引張られる牽引痛なのだろう。
かなり痛い。
フルニキシンを投与してもほとんど鎮痛できない。
夜10時、輸液管がはずれて呼ばれた。
深夜12時、輸液管が壊れたので交換。
結腸切除の繁殖雌馬も苦しがっていてフルニキシン投与する。
早朝、4時前、輸液がなくなって呼ばれた。
朝、6時前、抗生物質投与し、採血して血液検査する。
2頭とも、もうほとんどできることはない。
あとは、可能性に賭けるだけ。
そして、駄目な時には苦しまないようにしてやらなければならない。
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外科医 須磨久善 (講談社文庫) | |
海堂 尊 | |
講談社 |
医師にして人気医療ミステリー作家となった海道尊氏のノンフィクション。
読み物としてはちょっと礼賛がすぎるようにも思うが、実際、須磨久善先生の業績実績はすばらしい。
日本人医師としての標準的エリートコースを歩いて来たわけではないのに、どうしてそれが可能だったのかが興味深い。
信念、情熱、柔らかい考え方、そして海外で学んだこと、人としての強さ、etc.だろうか。
それでいて順調にいっている海外のポジションを捨てて「日本へ帰ろう」と思ったのは、愛犬のため。というのもとても面白かった;笑。
愛深き人なんだろうな。
暑い暑い夏が過ぎた途端に、夕暮れ早く、朝夕はひんやりとした秋になり、読書にもいい季節ですね。とおりかかった店先にこの本あったけど、読みかけの本、いっぱいなので買わなかった。なので、偶然すぎてちょっとびっくり。
文庫版が出て、平積みされているんでしょう。私もたしか空港の本屋でみかけて読んだ本です。内容のわりに手早く読めます。ぜひ。