馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

第三度会陰裂傷

2019-12-04 | 繁殖学・産科学

この馬も初産だった。

お産のとき、肛門から子馬が出てこようとしたが、とても押し戻せなかったそうだ。

そのまま、生まれてしまうと膣と肛門がつながってしまう。

便が膣の中に落ちて排泄されるので、膣炎も起こす。

このままでは種付けしても受胎しないし、妊娠も維持できない。

このまま新鮮創にして縫合しようとしても癒合しない。

大事なのは上下に切り分けて、直腸は直腸として、膣は膣として縫合してから、左右の壁を張り合わせることだ。

この切り分けがかんじん。

そして、直腸は糞汁が漏れないように縫っていく。

腸管手術なのだ。

膣壁は頑丈に縫っていく。

産道損傷なのだ。

陰部裂傷などというのものではないのだ。

もうひとつ大切なことは、手術前から手術後数日、絶食し、下剤投与し、直腸が便で広げられないようにすることだ。

絶食と下剤投与をきちんとしないとせっかく縫合しても裂けてしまう。

結局、また可哀そうなことになる。

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最近、Veterinary Surgeryに、全身麻酔で行う新たな?方法が報告されているが、画期的な方法だとは思えない。

私は立位で縫えるし、きちんと絶食管理してくれれば治癒しなかったことはない。

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とうちゃん ひどいかぜだな~