馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

バッタを倒しにアフリカへ

2019-12-01 | 図書室

この本は面白い!

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)
前野 ウルド 浩太郎
光文社

著者の行動が面白い。

サバクトビバッタの研究のためにアフリカ西部モーリタニアへ。

そして語り口が軽妙。

ふざけてもいるのだが、内容の奇抜さと著者の純粋さと真剣さで話はどんどん進んでいく。

博物学的な興味でサバクトビバッタを研究テーマに選んでいるのではなく、

サバクトビバッタは大量発生して大群を造り、すべての作物を食い尽くし、アフリカの飢饉の原因になる。

かつては北海道十勝地方などでもバッタの大量発生が開拓農民にダメージを与えたことがある。

著者以外の登場人物が面白い。

ババ所長には泣かされる。

人々に貢献するために生涯を送ると誓い、異国から来た若い研究者に思いやりを持って接している。

助手のティジャニとの交流も楽しい。

ところ変れば、善悪も、価値観も、法律も規則も変る。

モーリタニアは一夫多妻制。

しかし、人同士は片言の外国語でもコミュニケーションできるし、お互いを尊重しあえば理解もしあえる。

             ー

研究室内で行う研究ではなく、フィールドワークこそ重要だ。という著者の研究者としての考えと行動もたのもしい。

われわれ馬医者が研究報告するのも、症例報告であり、野外調査成績である。

そして、実験研究の結果がそのまま臨床には使えないことを身にしみて知っている。

さらに、研究を論文にしなければならない。

論文を書かなければ収入も研究のポジションも得られない、という厳しさの中で生きていこうという意欲は、

われわれ馬医者も見習うべき点がある。

この本はいくつも賞をもらい、「中高生に読ませたい本」にも選ばれているらしい。

若い獣医さんにも読んでもらいたい。

フランス語ができないのにフランス語圏やフランスそのものへ研究に行くとか、

無給になってもアフリカに残って研究を続けようと決意するとか、

若さゆえの無謀さの素敵さ、夢と使命感の素晴らしさを見せてもらえる。

あっ、それからハリネズミを飼ってる人も読んでみるといい;笑

野生のハリネズミとそのペット化のようすを読める。

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今日は4歳競走馬の中手骨外顆骨折のscrew固定。

その前に、繁殖雌馬の疝痛の依頼が来ていた。

骨折手術が終わってすぐ開腹。

小腸閉塞だった。

5m切除して吻合。

知は、現場にこそなければいけないのさ。