礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

戦後、「宗教」としての姿に戻った神道祭式

2013-03-12 05:41:10 | 日記

◎戦後、「宗教」としての姿に戻った神道祭式

 一昨日のコラムで、本居弥生編『神社祭式同行事作法』(神社本庁、一九四八)について、紹介した。本日は、その続きである。
 この本は、「一 神社祭式」、「二 神社祭式行事作法」、「三 祝詞例文」が、説明に多くのページを割いている項目で、「四 祭祀に関する庁規」から、最後の「十六 神社祭式行事作法用語訓読一覧」までは、比較的小さな項目となっている。以下に紹介するのは、そのうちの「八 神社祭式の構成」の最初の部分である。

八 神社祭式の構成
 今回新たに制定した神社祭式は、昭和二十年十二月の神道指令及び日本国憲法によつて、明らかにされた国家と宗教との分離の方針の下に、従前の国家制度的の面を一新し、神社神道本来の立前に立脚した祭式として立案したものである。もとより神社神道は忽然として昭和二十年を契機として誕生したものでなく、日本民族と共に発生展開して来た宗教であるから、その正しい伝統はあくまでも之を尊重しなければならない。神社神道の形態は神に対する祭祀となつて現はれてゐるため、祭式は結局神社本来の祭祀儀礼に基準を求めなければならない。又宗教は神と人との関係であるから、その祭儀は信奉者たる氏子崇敬者の敬神の念を昂めると共に、その仲執持〈ナカトリモチ〉としての神職の行事作法がその主要な要素とならねばならぬ。
 明治以降の国家制度下の神社の祭儀は、国家の面が濃厚で、氏子崇敬者のこれに関与する面は軽視されて来た。ここに於て今回の祭式に於ては、国家との関係事項は全部これを削除し、神職が仲執持として、氏子崇敬者の信仰を昂める〈タカメル〉方面に重点を置いて立案した。又従前の国家祭儀には、宗教面の尠かつた〈スクナカッタ〉弊害をこの際改め、氏子崇敬者の宗教的情操を満足せしめるに足る祭式たり得るやう、特に意を注いだのである。
 尚ほ〈ナオ〉祭式についての従来の弊害の一つは、国家が一つに統制する方針を探つため、全国画一的の無味乾燥の祭式とされてゐたことである。もとより神社の祭には、共通の儀礼面が多いのであるから、その点の統一をはかることは、神社宗教の信仰心を統一し、強固にするため欠くばからざることである。然しその一面各神社には、その由緒及び地方事情によつて、それぞれの特殊性を持つてゐるのであるから、正しいものはこれを充分伸張せしむべきである。そのため今回制定の神社祭式は、全神社に共通する方面だけを基本的のものとして本文に掲げ、それぞれの特殊性は雑則に於て充分伸し得る道を開いた。各神社に於てはこの点を諒解せられ、自主的に生かされんことを臨むものである。(雑則一参照)
 次に内容上の問題に入るに先立つて、従前の祭式と異なる形式方面の変化を述べると、従前の神社祭式は官国幣社祭式、府県社以下神社祭式、及び特殊神社の祭式(氷川、熱田、出雲、橿原、明治神宮の例祭式及び護国神社例祭、鎮座、合祀祭式)との三本立てになつてゐたが、神社制度の変革により三者の区別は全然無くなつたのであるから、今回は全部を一本とし、ただ神社祭式としてこれを総称することとした。

 国家神道時代は、神社祭式が三本立てだったものが、国家制度のワク組みから脱したことによって、神社祭式が一本立てとなったという話は意外であり、かつ興味深い話だと思った。
 いずれにしてもこれは、明治維新以来、国家とともに歩み、国家によって形成されてきた神道が、戦後になって初めて、「宗教」として自立した(自立させられた)ことを象徴する話であろう。

今日のクイズ 2013・3・12

◎神社本庁について、正しいのはどれでしょう。

1 総理府の外局にあたる公的機関
2 全国の神社を包括する宗教法人
3 全国の神社を統括する社団法人

【昨日のクイズの正解】 3 1945年8月19日、国務大臣として東久邇内閣に入閣。■小畑敏四郎は、陸軍中将で、皇道派の中心人物のひとり。

今日の名言 2013・3・12

◎いつか自分も歌を作ってみよう

 今月9日に亡くなった作詞家・石坂まさをさんの言葉。石坂さんは、失意のどん底にあった高校生時代、たまたま聞いた「街のサンドイッチマン」のメロディと歌声に励まされた。「生きる勇気がわいてきて、いつか自分も歌を作ってみようと決意したんです」。本日の東京新聞「評伝」(安田信博執筆)より。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東久邇首相、ラジオで暗号放... | トップ | 引用しやすい文献・引用しに... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事