礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

二・二六事件と小坂慶助憲兵曹長による首相救出

2012-08-09 06:02:11 | 日記

◎二・二六事件と小坂慶助憲兵曹長による首相救出

 先日、古書展で小坂慶助著『特高』(啓友社、一九五三)という本を買い求めた。背表紙がはがれた毀れ本で三〇〇円は高いと思ったが、読んでみて、これが貴重で興味深い文献であることに気づいた。買ったときは、小坂慶助という名前に記憶がなかったが、後になって、この人が『のたうつ憲兵』(東京ライフ社、一九五七)の著者であったことに気づいた。『のたうつ憲兵』は、以前、わざわざ国会図書館まで行って一読したことがあった。
 さて、本のタイトルとなっている「特高」だが、これは、警視庁や県警の特高課のことではなく、憲兵隊におかれた特高課のことである。小坂慶助は、一九三六年(昭和一一)の二・二六事件当時、東京憲兵隊麹町分隊で陸軍憲兵曹長特高主任の職にあった。
 二・二六事件の際、反乱軍に射殺されたと思っていた岡田啓介首相が、実は生存していて、反乱軍の占拠する首相官邸から密かに救出された話は有名だが、このとき、部下二名とともに首相官邸に出向いて岡田首相の生存を確認し、その救出計画を立案、実行したのが小坂慶助憲兵曹長であった。寡聞にして、今回『特高』を読むまでは、この事実を知らなかった。
 この本の中で小坂慶助は、岡田首相救出の経過を、こと細かく書いているが、この本が興味深いのは、その点だけではない。
 二・二六事件関係の本があまた存在する中で、この本が紹介・引用されることは、多くないという印象がある。実際にその通りだとすれば、これは残念なことである。この本については、あれこれと紹介したいことがあるが、それは少しずつ断続的におこなうことにして、とりあえず今日は、口絵として掲げられている「表彰状」を紹介してみることにしたい(原文はカタカナ文だが、ひらがな文に直した)。

 表彰状
 東京憲兵隊麹町分隊
 陸軍憲兵曹長勲七等 小坂 慶助
 右は昭和十一年二月二十六日夕麹町分隊長より青柳憲兵軍曹及小倉憲兵伍長を指揮し岡田総理大臣救出の命を受くるや重軽機関銃十数銃を有する約三百の叛軍を以て包囲せられたる首相官邸に侵入し豪胆機敏の行動に依り遂に翌二十七日午後一時二十分完全に岡田総理大臣を叛軍の包囲より脱出せしめ以て任務を完ふ〈マットウ〉せり
 右の行為は憲兵としての本分を完ふし其〈ソノ〉勇敢機敏の行動は軍人の亀鑑たるものと認む
 依て〈ヨッテ〉茲〈ココ〉に之〈コレ〉を表彰す
 昭和十一年三月十日
 憲兵司令官陸軍中将従四位勲二等功五級 岩佐禄郎
 
 若干の注記をおこなっておく。「麹町分隊長より……岡田総理大臣救出の命を受くるや」というのは、小坂の語っているところを信じるなら正確ではない。麹町分隊長・森健太郎少佐が、首相救出に対し煮え切らない態度を取っているのを見て、小坂憲兵曹長が独断で首相救出に乗り出したのだという。
 表彰状の日付「三月十日」というのは陸軍記念日である(一九〇五年のこの日、日露戦争奉天会戦で勝利)。

今日の名言 2012・8・9

◎法案が成立した暁には、近いうちに国民に信を問う

 野田佳彦首相の言葉。昨八日夜、首相は、自民党総裁、公明党代表と会談し、このように表明して合意を得たという。この合意によって、「消費税増税を含む社会保障と税の一体改革関連法案」が成立する見通しがついた。本日の東京新聞より。なお、この記事は同紙の1面に載っているが、1面トップではない。

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