礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『須多因氏講義筆記』(1889)における注意すべきルビ

2013-04-18 17:23:26 | 日記

◎『須多因氏講義筆記』(1889)における注意すべきルビ

 昨日の続きである。
『須多因氏講義筆記』(牧野善兵衛、第三版一八八九年一二月)の四九七ページに注意すべきルビがある。それは、「意氣自ラ」の「自」の右上に(「氣」の右下に)、一字のみ〈オ〉と振られているルビである。おそらくこれは、「自ラ」を〈オノズカラ〉と読め(〈ミズカラ〉ではなく)という符号であろう。これを、「ルビ」と呼びうるか否かは、議論のあるところだろうが、漢字の横に振って読みを指定しているという意味においては、ルビと言えるだろう。
 ところで、同書の四九八ページには、「上ミ天皇ノ威光ヲ全クシナカラ、下モ万民ノ情實ヲ計リ」という箇所がある。「上ミ」の〈ミ〉はルビではないが、小さい活字になっていて、明らかに、「上」の読みが〈カミ〉であることを(〈ウエ〉でなく)示す符号になっている。これは、漢字の横に振られているわけではないが、読みを指定しているという意味においては、一種のルビと言えるだろう。
 では、「下モ」の〈モ〉はどうかというと、これが、普通の大きさである。ただし、「下」と「モ」の間で改行があり、そのために、あえて小さい活字にはしなかったのではないだろうか。
 とにかく珍しい用例であり、研究に値すると思う(賛同が得られるとは思わないが)。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『須多因氏講義筆記』奥付の... | トップ | シュタインの「日本人ハ東洋... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事