◎「三千世界の烏を殺し主と朝寝がしてみたい」の英訳
昨日、紹介した「英語辞書のはなし」というエッセイの中で、中野好夫はこう言っていた。
ついでながら斎藤〔秀三郎〕は、昭和三年(一九二八)に『和英大辞典』も出しているが、これがまた愉快である。いかに大辞典とはいえ、辞書の中に漢詩・和歌はおろか都々逸〈ドドイツ〉の試訳まで披露しているのはこの辞書だけであろう。たとえば「三千世界」というのを開けると、「三千世界の烏を殺し、主〈ヌシ〉と朝寝がしてみたい」という志士高杉晋作つくる都々逸、同じく「通う」の項なら、「惚れて通えば千里も一里、逢わずにかえればまた千里」、ぺージもないから試訳は引かぬが、……
「ぺージもないから試訳は引かぬが」と言われて、その「試訳」が知りたくなった方もおられるであろう。
そこで、本日は、『縮刷版斎藤和英大辞典』(日英社、一九三〇)から、当該の項目を引用しておこう。
まず、七七五ページ、Sanzen-sekai(三千世界)の項から。
●三千世界の Throughout the world I’d kill
烏を殺し The cawing morning crow,
主と朝寝が And sleep at morn my fill
してみたい With you as bed-fellow.
続いて、四〇四ページ、Kayou(通ふ)の項から。
●惚れて通えば Love laughs at distance,Love-
千里も一里 A thousand miles is one to love;
逢はずに帰れば But when I can not see my love,
又千里 A thousand is a thousand,Love.
ついでに、二一七ページ、Hatsugatsuo(初鰹)の項から。
●褌を質に置いても初鰹
The Edokko will go any length for the first bonito of the season.
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