礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『岡田式静坐法』の著者は岡田虎三郎にあらず

2013-12-18 05:55:26 | 日記

◎『岡田式静坐法』の著者は岡田虎三郎にあらず

 インターネットで、「伊藤尚賢」を検索したところ、佐々木浩雄氏の論文「1910年代における呼吸健康法の流行と体育界の反応―「呼吸運動」に関する記述の分析より―」(『龍谷紀要』第三四巻第二号、二〇一三年三月)にヒットした。
 非常に興味深い論文である。インターネット上に公開されていることでもあるし、一読をおすすめしたい。
 その論文の一八一ページに、「「岡田式静坐法」関連書籍(1910年~40年)」いう表が載っており、計四〇冊の文献が挙げられている。本日は、これを紹介してみよう。

表1 「岡田式静坐法」関連書籍(1910年~40年)
(書名や目次における「章」「節」レベルで「岡田式」を扱っているもの)
書名  著者・編者   発行所   刊行年
1 実験健康法 東洋医学会編 豊文館 1911
2 岡田式静座法 実業之日本社編 実業之日本社 1912
3 岡田式呼吸静坐法と実験 伊藤銀月著 文栄閣 1912
4 岡田式呼吸静坐法 服部静夫著 弘学館 1912
5 岡田式呼吸静坐法―実験と其効果 藤山稔編 鼎立社出版部 1912
6 禅の応用治病修養法 山田玄翁編 精神書院 1912
7 現今大家呼吸静座法 高梨初治郎編 春畝堂 1912
8 心身鍛錬静坐内観秘法 足立栗園〈リツエン〉(麻渓道人)著 東亜堂 1912
9 通俗禅理療法  柴田得雲著 一喝社 1913
10 比較研究七大健康法 松尾栄編述 万巻堂書店 1914
11 岡田式静坐と老荘 甲藤大器著 甲藤大器 1914
12 心身修養療法―比較研究実験批判 桧山鋭〈ヒヤマ・エイ〉著 研精会 1914
13 青年の修養 友田宜剛〈ヨシカタ〉著 至誠堂書店 1914
14 修養実訓―賜天覧台覧 友田宜剛著 大日本雄弁会 1915
15 御存知でせうか 家庭問題研究会編 平凡社 1915
16 大正三年 少年受刑者の処遇及統計彙報 横浜監獄小田原分監編 横浜監獄小田原分監 1915
17 体力増進簡易強健術 宮地猛男著 応来社書房 1915
18 長身法と肥満法 大日本体育奨励会編 健文社 1916
19 岡田式静坐三年 岸本能武太〈ノブタ〉著 大日本図書 1916
20 最新健康法全書 西川光次郎〈コウジロウ〉著 丙午出版社 1916
21 仏式唯心術治療秘書 安藤瓊巌〈ケイガン〉著 仏式唯心学会本部 1916
22 岡田式静座法と其の実験健康法 足立栗園著 岡村盛花堂 1917
23 心身健康法の実験―秘訣伝授 森田栄太郎著 心身健康法会 1917
24 通俗精神治療法講話 高橋卯三郎著 霊潮社 1917
25 実験岡田式静座法―実験健康法叢書(第一) 荒井倉三郎著 日本書院 1917
26 簡易嶄新〈ザンシン〉実用的強健法 伊藤銀月著 実業之日本社 1917
27 岡田式静坐の力 橋本五作著 松邑三松堂 1917
28 各種実験研究心身健康法自在 日本体育研究会編 岡村書店 1918
29 廿大強健法―比較研究 加藤美倫〈ヨシミチ〉著 誠文堂 1918
30 現代強健法の真髄 大津復活〈フッカツ〉著 大同館書店 1918
31 精神療法講義(第一輯) 古屋景晴〈ケイセイ〉著 精神研究会 1918
32 無学者の哲理観 近藤常治〈ツネジ〉著 近藤常治 1919
33 岡田氏静坐の新研究 岸本能武太著 大日本文華 1921
34 一人一人の体力精力能力増進法 伊藤尚賢〈ナオタカ〉・森繁吉〈シゲキチ〉著 一誠社 1921
35 活きんとするものゝ為に 伊藤尚賢・森繁吉著 一誠社 1922
36 岡田式静坐の力(続) 橋本五作著 松邑三松堂 1922
37 自然療法―無医無病保健の妙締 高田義一郎〈ギイチロウ〉著 富士書房 1929
38 無医無病健康法 高田義一郎著 日東書院 1934
39 現代十大健康法―起死回生 現代健康法研究会編 大洋社出版部 1938
40 体位向上実際的肥満法 保健社研究部編 保健社 1938

 岡田式静坐法に関する書籍だけで、これだけあるのだから、ほかの健康法に関する書籍を挙げていったら、この数倍、あるいはそれ以上になることは間違いないだろう。
 岡田式静坐法というのは、岡田虎三郎(一八七二~一九二〇)が始めた静坐法・呼吸法で、一時期、非常に多くの信奉者を集めた。岡田虎三郎自身は著書を持っておらず、ベストセラー、ロングセラーとなった『岡田式静坐法』(実業之日本社、一九一二、上記の表の2)は、実業之日本社の「一記者」の編著書である。
 同書の「凡例」によると、一九一一年(明治四四)九月以降、雑誌『実業の日本』が、「岡田式呼吸静坐法」を紹介したという。岡田式静坐法が普及したキッカケは、この雑誌記事にあったようである。
 なお、上記の表にある計四〇冊の文献は、すべて国立国会図書館に架蔵されている(そのほとんどが、近代デジタルライブラリーで閲覧可)。佐々木浩雄氏はおそらく、国立国会図書館にあるものから、リストアップしたのであろう。ということで、国立国会図書館にない、衛生新報社編纂(たぶん伊藤尚賢の執筆)『物理的健康増進法』(新橋堂書店、一九一七)は、このリストに挙げられていないが、『物理的健康増進法』もまた、その第五章を「岡田式呼吸静坐法」に割いていることを付記しておく。

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