礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

極秘文書『諜報宣伝勤務指針』のデジタル化

2012-12-24 07:39:43 | 日記

◎極秘文書『諜報宣伝勤務指針』のデジタル化

 昨日の続きである。参謀本部編『諜報宣伝勤務指針』は、NPO法人インテリジェンス研究所の『諜報宣伝勤務指針』電子書籍制作チームによってデジタル化され、インターネット上に無料公開されているという。
 したがって、このブログで紹介するまでもないのだが、一応、初めの部分だけ紹介しておくことにしよう。引用は、平館勝治(昨日のコラム参照)作成の複製版より。原文はカタカナ文であるが、これをひらがな文に直した。

 諜報宣伝勤務指針
 第一編 諜報勤務
 総則
第一 敵に関する情報は戦争に於ける凡百の観念並行動の基礎にして平時に在りては其獲たる情報に基きて国軍戦争準備の完成を期し戦時に在りては之に依りて戦争及作戦指導の憑拠を得るものなり
第二 敵国、敵軍その他探知せんとする事物に関する情報の蒐集、査覈、判断並之が伝達普及に任する一切の業務を情報勤務と総称し戦争間兵力若は戦闘器材の使用により直接的敵情探知の目的を達せんとするものは之を捜策勤務と称し平戦両時を通じ兵力若は戦闘器材の使用に依ることなく爾他の公明なる手段若は隠密なる方法に依りて実施する情報勤務は之を諜報勤務と称す
第三 諜報勤務中戦場に於て各級戦闘団体に実施するものは直接戦闘を目的とするものなるのみならす之に従事する機関も亦戦闘団体所属情報部を主とするを以て爾他の諜報勤務に比し実施の趣差異少からす故に之に関しては他編に之を収録し本編に於ては専ら戦闘団体以外に属する特別の機関を以てする平戦両時の諜報勤務に就て叙述す

 第二にある「査覈」という字句は、意味も読みも難しい。
 この字句について、平館勝治(昨日のコラム参照)は、次のような思い出を語っている。

 情報宣伝勤務指針に対し、戦時中、このような本があったことは大部分の中野学校関係者は知らなかったのではないかと思います。なぜなら門外不出の軍事極秘書類でしたから。第8課〔参謀本部第二部第八課〕でも私が保管中新任の参謀に貸出した記憶がありません。(ただし、すでに陸大で勉強されていたかもしれません)
 確かに8課で指針を読まれたと思われる人は矢部中佐とその後任の浅田三郎中佐です。矢部中佐は中野学校で我々に謀略について講義されましたが、この指針の内容とよく似ていました。
 特に、今でも記憶に残っていることは講義中「査覈」と黒板に書かれ,誰かこれが読めるかと尋ねられましたが、誰も読める者がおりませんでした。私は第8課に勤務するようになってからこの指針を読み、指針の中にこの文字を発見し、矢部中佐のネタはこれだったのかと気付きました。

「査覈」は、〈サカク〉と読み、「しらべる」という意味である。「覈」は、今ではあまり使われない字だが、この字については、私にも思い出がある。土俗学者の中山太郎の『日本巫女史』を読んでいたとき、「考覈」という言葉が繰り返し使われていたのである。しかも中山は、「考核」という言葉も使っていた。そこで辞書を引いてみて、核は、覈の意味で使われることがあること、「考覈」と「考核」が同じ意味であること、「考覈」の読みが〈コウカク〉であることなどを知ったのであった。

◎門外不出の軍事極秘書類でした

 参謀本部第二部第八課四班にいたことがある平館勝治が、『諜報宣伝勤務指針』について語った言葉。昨日および本日のコラム参照。

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