礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

明世堂版『古代国語の音韻に就いて』の初版は4750部

2022-11-09 00:10:19 | コラムと名言

◎明世堂版『古代国語の音韻に就いて』の初版は4750部

 昨日の話に、いくつか補足をおこなう。
 古田東朔の言によれば、古田は、最初、神祇院版の『古代国語の音韻に就いて』を読んだという。ところが、国立国会図書館には、この神祇院版が架蔵されていない。したがって、これが「昭和十六年三月」に発行されたことが確認できない。
 国立国会図書館には、「昭和十七年六月二十日」に発行された明世堂版の初版、および「昭和二十一年十月十日」に発行された明世堂版の三版が架蔵されており、ともにインターネット公開されている。ただし、「昭和十八年一月発行」の再版は架蔵されていない。
 ちなみに、古田東朔が最初に読んだ『古代国語の音韻に就いて』が、明世堂版の初版だったというたことはありえない。なぜなら、「昭和十七年三月十三日」には、まだ、明世堂版の初版は発行されていないからである。
 ところで、いま机上に、明世堂版の「四版」がある。奥付に「昭和十八年八月三十日四版発行」とあるので、これが「四版」であることは間違いない。ところが、国立国会図書館に架蔵されている「三版」は、「四版」よりもあとの「昭和二十一年十月十日」に発行されている。これはいったい、どういうわけか。明世堂による単純なミスか、それとも何らかの事情があったのか。
 参考までに、明世堂版「四版」の奥付を、最初のところだけ、紹介しておくことにしよう。

 昭和十七年六月十日初版印刷
 昭和十七年六月二十日初版発行(四、七五〇部)
 昭和十八年一月十日 再版発行(三、二五〇部)
 昭和十八年五月十日 三版発行(三、〇〇〇部)
 昭和十八年八月三十日四版発行(三、〇〇〇部)
 
 古代国語の音韻に就いて
 停   壱 円 六 拾 銭
 特別行為税相当額六銭  合計売価壱円六拾六銭

 明世堂版の『古代国語の音韻に就いて』の冒頭には、橋本進吉による断り書きがある。そこでは、この版が、神祇院の許可を受けて、新たに刊行されたものであること、元の版は、昭和十六年三月に、神祇院によって頒布されたこと、などが記されている。【この話、もう少し続く】

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