「蛇にピアス」 2008年 日本

監督 蜷川幸雄
出演 吉高由里子 高良健吾 ARATA
あびる優 ソニン 今井祐子 綾部守人 市瀬秀和
妹尾正文 市川亀治郎 井手らっきょ 小栗旬
唐沢寿明 藤原竜也
ストーリー
生きている実感もなく、あてもなく渋谷をふらつく19歳のルイ。
ある日訪れたクラブで赤毛のモヒカン、眉と唇にピアス、背中に龍の刺青、蛇のようなスプリット・タンを持つ「アマ」と出会い人生が一変する。
アマの刺青とスプリット・タンに興味を持ったルイは、シバと呼ばれる男が施術を行なっている怪しげな店を訪ね、舌にピアスを開けた。
その時感じた痛み、ピアスを拡張していく過程に恍惚を感じるルイは次第に人体改造へとのめり込んでいくことになる。
「女の方が痛みに強い」「粘膜に穴を開けると失神する奴がいる」という店長のシバも全身に刺青、顔中にピアスという特異な風貌の彫り師で、自らを他人が苦しむ顔に興奮するサディストだと語った。
舌にピアスを開けて数日後、ルイとルイの友人は夜道で暴力団風の男に絡まれる。
それに激昂したアマは相手の男に激しく暴力を振るい、男から2本の歯を奪い取って「愛の証」だと言ってルイに手渡す。
アマやシバと出会う中でルイは自身にも刺青を刻みたいという思いが強くなり、シバに依頼して背中一面に龍と麒麟の絡み合うデザインの刺青を彫ることを決めた。
画竜点睛の諺に従って、「キリンと龍が飛んでいかないように」という願いを込め、ルイはシバに2匹の瞳を入れないでおいて欲しいと頼む。
刺青の代償としてシバはルイに体を求め、2人は刺青を入れていくたびに体を重ねるようになる。
一方でルイは、アマが暴力を振るった暴力団員が死んだというニュースを目にした。
アマが捕まってしまうことを危惧したルイは、アマの髪をアッシュに染め、刺青が見えないように長袖を着るよういいつける。
その事実を全く知らないアマは何の疑いもなくルイに従った。
刺青の完成と同時にルイは自らの生きる意味を見失い、アルコールに依存するようになった。
自分が生きていることを実感できるのが痛みを感じている間だけだと気づいたルイは、アマとシバ、どちらが自分を殺すのだろうかと想像を巡らせるようになる。
そんな中、警察からシバの店に「龍の刺青をした、赤毛の客を教えて欲しい」という連絡が入った。
ルイはしらを切り通すが、不安に襲われながら日々を過ごすことになる。
ある夜、アマは突然行方不明になり、ルイは呆然とする。
警察に捜索願を届けようとするも、ルイはアマの本名すら知らなかったのだ。
数日後、行方不明となっていたアマの無残な死体が発見されたと警察から告げられたルイ。
アマの遺体には無数のタバコを押し当てた痕があり、陰部にはエクスタシーというお香が差し込まれていた。
警察官から「アマはバイセクシャルだったか」と尋ねられ、アマが何者かによってレイプされていたことを察するルイ。
アマの死後、生きる気力を完全に失っていたルイのことを受け入れたのはシバだった。
シバの家に暮らすようになり日々を送る中で、ルイはアマの陰部に差し込まれているお香がシバの家に置いてあること、そしてアマの体に押し当てられたタバコが、シバが吸っている銘柄と同じであることに気がつく。
ルイはアマにもらった2本の歯を砕いて飲み込むことによって、アマの愛の証を体に吸収したことを実感する。
そしてシバに麒麟と龍の瞳を彫り込んでもらうように頼み、シバはそれに従った。
ルイは舌のピアスを拡張するのをやめる。
スプリットタンは完成せず、ただ舌には大きな穴が残り、ルイは一人、ピアスと刺青が自分にとってどのようなものだったのか、その答えを知るのだった。
寸評
原作は綿矢りさの「蹴りたい背中」とともに第130回芥川龍之介賞を受賞した金原ひとみの小説である。
受賞時の二人は19歳と20歳で、その若さが話題となった。
文芸春秋誌に2作品の全文が載った号を買って読んだのだが、歳のせいか僕は金原ひとみさんの「蛇にピアス」は理解できなかったし好きになれなかった。
蜷川幸雄のよって映画化されたのが本作なのだが、やはり僕は好きになれなかったし内容にも共感できなかったように記憶している。
ただ吉高由里子がヌードシーンを演じていたことだけが印象深い。
僕は人体改造に興味がないし、原作を読んでいても気持ちが悪くなったと思うので、そもそも本作を受け入れられないものがあったと思う。
暴力団員を素手で殴り殺してしまうアマなのに、ルイにはやけに素直なところが面白かったし、アマとシバの本当の関係はどうだったのか気になった。
小説の内容はすっかり忘れてしまっている。
どうも僕は蜷川親子とは肌が合わないらしい。