教室へ向かう道を歩いていると、雪は同学科の女子達に声を掛けられた。
おはようございますと朝の挨拶をする。
レポートの進み具合から始まる会話。
そんな中直美さんが、気になっていたことを雪に尋ねた。
「ねぇ雪ちゃん、何かあったの?」「え?」
直美は、雪が泣いているのを青田先輩が慰めていたという噂を聞いたと言った。
雪は驚きのあまり動揺したが、「別に大したことじゃないんです」と頭を掻く。
直美は少し居心地悪そうに、こう言った。
「心配だから、青田先輩だけじゃなくあたし達にも相談してくれればいいのに」
雪はその真意を探りながら、あの時のことをざっくりと話し出す。
就活相談でボロクソに言われ、そのショックでボーッと突っ立っていただけだと。
別に泣いていたわけじゃないんですと、苦笑してみせる。
その話題を皮切りに、女子達は就活相談の半端ない厳しさについて盛り上がった。
ある子は「泣きたくなった」と言い、ある子は「鬱になるかと思った」と言う。
先ほどの雰囲気が幾らか和やかになったところで、彼女たちは胸を撫で下ろすかのように言った。
「なんだぁ。青田先輩と何かあったんだと思ったのにー」
「ホントホント。スキャンダル炸裂かと思ったよねー。残念~」
それが彼女たちの本音だった。
雪が噂の情報源は誰かと詰め寄ると、直美さんは向こうに居る女子学生を指差す。
「フン!」
キノコ頭の子は、雪を見るなり不満気に踵を返した。
雪は困ったように溜息を吐く。
自分は何もしてないつもりでも、時折向けられる敵対心や猜疑心。
去年は平井和美がそうだった。
雪は自覚出来ない分、その対処の方法が分からなかった。
それは今年も変わらない‥。
別の日、授業が終わって教科書を鞄に仕舞っていると、
聡美が今日のランチについて話しかけてきた。
すると。
「雪ねぇ!」
ドアの所に小西恵が立っており、雪に向かって手を振っていた。
雪は聡美に向き直ると、今日は恵とランチ行くねと言って行ってしまった。
残った太一と聡美。
太一は「学食行きマスか」と聡美に声を掛けるも、聡美は白目になり思わず愚痴を零した。
「なんか‥雪を取られた気分‥!」
雪はあたしの親友なのに‥と爪を噛む聡美に、
太一は小学生じゃあるまいし、と若干引き気味である。
しかし聡美の言い分はこうだ。
「あんたは女心が分かってないね~!口に出さないだけでこういう葛藤はよくあるもんなのよ!」
聡美はそう苦言を呈した。あんたはお姉さんが三人も居るくせにそんなことも分かんないのか、と。
このままじゃ味趣連の存続に危機が‥と言いかけた聡美だったが、次の瞬間空き教室から興味深い話が聞こえてきた。
「やっぱ経営学科の中では平井和美がダントツだろ!」
聡美の耳がピクッと反応する。
そのまま二人は息を潜めると、会話の続きを盗み聞いた。
「学科全体で見たらそうじゃね?」「でも背が高すぎんだよなー」
「お前が小さいだけだっつーの」「性格も悪いじゃん」
「じゃあ平井の代わりになる奴は誰がいんだよ」
男たちは、好き勝手に喋り続けた。沢山の女子の名前が挙がっては消えて行く。
途中聡美の名前も挙がったが、彼女の評価は上々だった。
イエイ!
しかし次に挙がった名前を前に、二人は固まった。
「それじゃあ赤山雪は?」「赤山〜〜??」
男達は雪が最近青田先輩のお気にらしいとの噂を口にし、その内の一人は雪に確認までしたと言う。
かなりの形相で否定していたらしいが‥。
彼らの雪への評価は、あまり良くない。
顔は割かし可愛らしいという評価だが、愛嬌が無くガリ勉なところが問題だと。
ファッションセンスも評判が悪く、ある学生は、「父親の服を着ているようだ」と嗤った。
太一の横で、聡美の怒りボルテージが沸々と上がっていく。
遂に沸点に達した聡美は、大声と共にドアを蹴飛ばした。
「このろくでなしどもがぁぁぁぁ!!」
聡美は暴れた。
雪があんた達に愛嬌振りまく必要なんて無いんだよと怒り、
何を着ようがガリ勉だろうが関係無いだろと叫ぶ。
蜘蛛の子を散らすように男子学生達は逃げて行った。
外で聡美を待っていた太一は、まだ追いかけようとする彼女の襟首を掴んで止める。
興奮冷めやらぬ聡美は、思いのままに叫んだ。
「こうなったら合コンだ!!」
なんでそーなるの‥とツッコむ太一にも反応せず、
聡美は「雪に超イケメンの彼氏を作ってあいつら黙らせてやる」と意気込んだ。
「え?それじゃあ青田先輩はどうなるんスか?」
太一の質問に、聡美は「何の進展も見えないから待ちきれない」と結論を急いだ。
頭に血が昇っているのもあって、すぐさま携帯を取ると通話ボタンを押す。
「あたしの友達に超いい子が居るんだけど、合コンセッティングして貰えない?
かなりのハイレベルで頼むわ」
聡美の要求したスペックはこちら。
*イケメン *金持ち *礼儀正しい *スポーツ万能 *留学経験有り =つまり神レベル
ってかこれ青田先輩でよくね?
聡美は言うだけ言って一方的に電話を切った。
しかし太一はその内容よりも、電話相手の方が気になっている。
「‥男っスか?」
聡美は、前に友達の紹介で知り合った男性だと言った。
付き合っているわけでは無いが、たまにデートする仲なんだと。
太一はその関係に引っかかりを感じた。
「付き合ってもないのに、どうしてデートなんかするんスか?」 「え?」
そんな太一に、聡美はいきなりタックルをかました。
男と女が会うのに恋愛が全てではない、あんたとあたしみたいなもんだと言って。
しかし聡美は太一の肩を掴むと、あんたとは比べ物にならないレベルの”友達”だけどね、と言って笑顔を浮かべた。
「そうだ!雪にメールしとこ!」
聡美の後ろ姿を見ながら、太一は煮え切らない思いを抱え黙り込む。
自分以外の”友達”とデートする聡美のことも、
その”友達”と同じジャンルでくくられる自分のことも、到底納得出来なかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<不穏な成り行き>でした。
色々なメンツと男女間の友情が成り立つ聡美は素敵ですね。太一はヤキモキするだろうけどねーー!
しかし聡美が合コン相手に指定したあのスペック‥。まんま青田先輩ですね‥。
次回は<事態は進行中>です。
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レポートの進み具合から始まる会話。
そんな中直美さんが、気になっていたことを雪に尋ねた。
「ねぇ雪ちゃん、何かあったの?」「え?」
直美は、雪が泣いているのを青田先輩が慰めていたという噂を聞いたと言った。
雪は驚きのあまり動揺したが、「別に大したことじゃないんです」と頭を掻く。
直美は少し居心地悪そうに、こう言った。
「心配だから、青田先輩だけじゃなくあたし達にも相談してくれればいいのに」
雪はその真意を探りながら、あの時のことをざっくりと話し出す。
就活相談でボロクソに言われ、そのショックでボーッと突っ立っていただけだと。
別に泣いていたわけじゃないんですと、苦笑してみせる。
その話題を皮切りに、女子達は就活相談の半端ない厳しさについて盛り上がった。
ある子は「泣きたくなった」と言い、ある子は「鬱になるかと思った」と言う。
先ほどの雰囲気が幾らか和やかになったところで、彼女たちは胸を撫で下ろすかのように言った。
「なんだぁ。青田先輩と何かあったんだと思ったのにー」
「ホントホント。スキャンダル炸裂かと思ったよねー。残念~」
それが彼女たちの本音だった。
雪が噂の情報源は誰かと詰め寄ると、直美さんは向こうに居る女子学生を指差す。
「フン!」
キノコ頭の子は、雪を見るなり不満気に踵を返した。
雪は困ったように溜息を吐く。
自分は何もしてないつもりでも、時折向けられる敵対心や猜疑心。
去年は平井和美がそうだった。
雪は自覚出来ない分、その対処の方法が分からなかった。
それは今年も変わらない‥。
別の日、授業が終わって教科書を鞄に仕舞っていると、
聡美が今日のランチについて話しかけてきた。
すると。
「雪ねぇ!」
ドアの所に小西恵が立っており、雪に向かって手を振っていた。
雪は聡美に向き直ると、今日は恵とランチ行くねと言って行ってしまった。
残った太一と聡美。
太一は「学食行きマスか」と聡美に声を掛けるも、聡美は白目になり思わず愚痴を零した。
「なんか‥雪を取られた気分‥!」
雪はあたしの親友なのに‥と爪を噛む聡美に、
太一は小学生じゃあるまいし、と若干引き気味である。
しかし聡美の言い分はこうだ。
「あんたは女心が分かってないね~!口に出さないだけでこういう葛藤はよくあるもんなのよ!」
聡美はそう苦言を呈した。あんたはお姉さんが三人も居るくせにそんなことも分かんないのか、と。
このままじゃ味趣連の存続に危機が‥と言いかけた聡美だったが、次の瞬間空き教室から興味深い話が聞こえてきた。
「やっぱ経営学科の中では平井和美がダントツだろ!」
聡美の耳がピクッと反応する。
そのまま二人は息を潜めると、会話の続きを盗み聞いた。
「学科全体で見たらそうじゃね?」「でも背が高すぎんだよなー」
「お前が小さいだけだっつーの」「性格も悪いじゃん」
「じゃあ平井の代わりになる奴は誰がいんだよ」
男たちは、好き勝手に喋り続けた。沢山の女子の名前が挙がっては消えて行く。
途中聡美の名前も挙がったが、彼女の評価は上々だった。
イエイ!
しかし次に挙がった名前を前に、二人は固まった。
「それじゃあ赤山雪は?」「赤山〜〜??」
男達は雪が最近青田先輩のお気にらしいとの噂を口にし、その内の一人は雪に確認までしたと言う。
かなりの形相で否定していたらしいが‥。
彼らの雪への評価は、あまり良くない。
顔は割かし可愛らしいという評価だが、愛嬌が無くガリ勉なところが問題だと。
ファッションセンスも評判が悪く、ある学生は、「父親の服を着ているようだ」と嗤った。
太一の横で、聡美の怒りボルテージが沸々と上がっていく。
遂に沸点に達した聡美は、大声と共にドアを蹴飛ばした。
「このろくでなしどもがぁぁぁぁ!!」
聡美は暴れた。
雪があんた達に愛嬌振りまく必要なんて無いんだよと怒り、
何を着ようがガリ勉だろうが関係無いだろと叫ぶ。
蜘蛛の子を散らすように男子学生達は逃げて行った。
外で聡美を待っていた太一は、まだ追いかけようとする彼女の襟首を掴んで止める。
興奮冷めやらぬ聡美は、思いのままに叫んだ。
「こうなったら合コンだ!!」
なんでそーなるの‥とツッコむ太一にも反応せず、
聡美は「雪に超イケメンの彼氏を作ってあいつら黙らせてやる」と意気込んだ。
「え?それじゃあ青田先輩はどうなるんスか?」
太一の質問に、聡美は「何の進展も見えないから待ちきれない」と結論を急いだ。
頭に血が昇っているのもあって、すぐさま携帯を取ると通話ボタンを押す。
「あたしの友達に超いい子が居るんだけど、合コンセッティングして貰えない?
かなりのハイレベルで頼むわ」
聡美の要求したスペックはこちら。
*イケメン *金持ち *礼儀正しい *スポーツ万能 *留学経験有り =つまり神レベル
聡美は言うだけ言って一方的に電話を切った。
しかし太一はその内容よりも、電話相手の方が気になっている。
「‥男っスか?」
聡美は、前に友達の紹介で知り合った男性だと言った。
付き合っているわけでは無いが、たまにデートする仲なんだと。
太一はその関係に引っかかりを感じた。
「付き合ってもないのに、どうしてデートなんかするんスか?」 「え?」
そんな太一に、聡美はいきなりタックルをかました。
男と女が会うのに恋愛が全てではない、あんたとあたしみたいなもんだと言って。
しかし聡美は太一の肩を掴むと、あんたとは比べ物にならないレベルの”友達”だけどね、と言って笑顔を浮かべた。
「そうだ!雪にメールしとこ!」
聡美の後ろ姿を見ながら、太一は煮え切らない思いを抱え黙り込む。
自分以外の”友達”とデートする聡美のことも、
その”友達”と同じジャンルでくくられる自分のことも、到底納得出来なかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<不穏な成り行き>でした。
色々なメンツと男女間の友情が成り立つ聡美は素敵ですね。太一はヤキモキするだろうけどねーー!
しかし聡美が合コン相手に指定したあのスペック‥。まんま青田先輩ですね‥。
次回は<事態は進行中>です。
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もうすぐ、現れる予感…☆
聡美が男子達の会話を聞くことがなければ、
きっと合コンもセッティングされず、
またとないホットガイに出会うこともなかったですよね…!
もうすぐ、彼現れますか~?^ ^
濃すぎるので、多少画像を透過させたほうがよろしいのでは。
「写メと違うよーな」と言う雪ちゃんのセリフの脇っちょ辺りに見える小さな男の画像は、彼の画像なんでしょうか。
あ、それをココで語るのは違うか。ぱっと見先輩に見えたモンでね。
太一!!女性読者は応援しているぞー!例え聡美ちゃんに深刻に「泣かないで」と言った瞬間変顔になっちゃっても、君が男らしく優しいヤツだって私達は分かってるからな~!
実は1番願ってるのはこの2人が結ばれるコトだったりする。笑
この表情の先輩どっかで見ましたよね…!
どつかでみたような…探してみよう^ ^
ちょびこさん、
ホットガイ…!のその前に
残念な青田淳…!笑
聡美ちゃんが指定した理想の相手はほんと青田先輩ですね。。
それなら、青田先輩を煽ってみたら良いのに‥と、思うものの、聡美ちゃん達からは気軽に声かけできる存在ではないのでしょうね。
それと、ちょびこさんに言われるまで気づかないでいたけど、写真が青田先輩ですね(^◇^;)読んだ時は完全にスルーしてました。。。
本物は改めて見ると高島礼子の旦那で高知なんとか‥って俳優にも見えます。
あのギラギラ感。あっ!またふりだしにしちゃた??
太一君、お姉さんが三人もいたら女の子達に自然と同化できる術は身につけてるものの、男と見られずかわいそうに(>人<;)
妹より姉がいる男の子の方が幼い頃に姉と遊ぶ為に姉の真似をして育つから、大人になって女の子に合わせれたり慣れてたりと聞いたことがあります。
妹の場合は自分が主導権を握りながら妹の面倒を見るカタチだから、また違うみたい。
何にせよ、太一君頑張ってほしいです。
しかもここ二三日は所用でコメ返があまり出来なそうです、すみません!
みなさま管理人不在でも気にせず遊びにいらしてくださいね!(^o^)
それではとりいそぎ失礼しますー
私どんだけホットガイに振り回されているのか‥笑