ランチの後、一度別れた雪と萌菜であったが、夜になってもう一度顔を合わせた。
二人はコーヒー片手に、屋外のベンチでお喋りに興じる。
「それじゃあ週末も彼氏に会いに外出てたってこと?」「うん」
雪が自身の近況について話をすると、それを聞いた萌菜はあからさまに眉を寄せた。
彼女は溜息を吐きながら、ヤレヤレと言った具合に首を捻る。
「あんたって子は‥授業も週五日あるのにどうしてそこまでするんだか‥。
休日が全然無いじゃない。だから倒れんのよ」
「けどそうでもしなきゃ会えないんだもん。それが倒れた理由ってわけじゃないよ」
相変わらずの雪の不器用さを目の当たりにして、萌菜はこう提案した。
「平日の夕方とかに会えば良いじゃない?」
「先輩の仕事終わりに会ってもあんまり一緒に居られないし‥。先輩も疲れるだろうしね」
「ったくアンタってば、The恋愛初心者じゃんかー」
「付き合ってるっていうのに、そこまで気ぃ遣って顔色伺うかね。
会いたきゃ会いに行けばいいじゃん」
「いや私も平日はキツイのよ。こっちがシニソウ‥」
ヨレヨレになってそう答える雪。疲労の色は濃く、見ているこちらまで心配になってしまう程だ。
萌菜は息を吐くと、親友に一つアドバイスをした。
「ま、アンタもちゃんと分かってんだろうけど‥。
とにかく私も恋愛して別れてのゴタゴタを経験して分かったけど、
どんな時でも自分を労ることが最優先だよ」
萌菜は過去をなぞるような視線で前を向いている。雪はそんな彼女の横顔を見つめている。
「恋愛するにも自分に余裕がないと。だから最近私フリーなのかも」
萌菜はそう言って目を閉じた。彼女はストイックにこう続ける。
「忙しいし、当分仕事に集中しなきゃだし」
その横顔を見ながら雪は、太一に興味があるのか聞こうとしたけど‥
と太一の顔を思い浮かべていたが、やはり今は止めておこうと決めて口を噤んだ。
秋の夜風が頬を撫でて行く。
雪はウウンと身体を伸ばし、いつになくリラックスしている自分を楽しんだ。
「あ、あと同窓会するから出なよ?」
「え?またあるの?」
雪からの質問に萌菜は頷き、ニヤリと笑ってこう付け加えた。
「ま、彼氏も時間あったら呼べばいいんじゃん?」
萌菜の瞳が妖しく光る。
「ゆりっぺって覚えてる?最近あの子の彼氏自慢がすごくてね、ちょっと鼻っ柱折ってやりたくてさ。
あの子、アンタが彼氏出来たって嘘ついてるとか言いふらしてるじゃん?」「ひぇぇ‥」
「デートも兼ねてさ」 「んー‥」
雪は、昔の友人達の中に自分と先輩が居るイメージを想像してみた。
どこか不安な気持ちがする‥。
うーむ‥先輩を‥。都合つくかな‥
恋愛、友情、勉強、仕事‥。
人生の中でステージが変わる度、人は色々な世界に取り囲まれる。
常にその流れに翻弄される雪にとって、萌菜は安心出来る存在だ。
雪は萌菜を見つめながら、その敬意を言葉にする。
「とにかく‥萌菜はカッコイーよ」
「言ってたこと、一つ一つ成し遂げて行ってるじゃん。
私なんてまだ学生なのに、萌菜は本当に社会人って感じだし‥」
「なーによおだてちゃって」
フッと笑いながら、萌菜は首を横に振る。
「私だって先輩達とお金出し合ってなんとかやってるのよ。
仕事だって完全に安定してるとは言い難いし。アンタも卒業まで頑張ればいいじゃん?」
「だね」
ステージは違っても、自分達は同士だ。
何か目指すものがあり、それに向かって努力する。そして心の中には、いつも互いの姿が在る。
「もう少しがんばろ。私も、あんたも」
萌菜のその言葉に、雪は微笑んで頷いた。
その存在を感じる度に頑張ろうと思える、それはとても稀有なことだと思える。
そして二人は夜が更けるまでずっと、色々な話をした。
この夜が終わればまた、互いのステージで奮闘する日々が待っている。
今日はそこへ向かうための、力を溜めるほんのひと時‥。
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<同士>でした。
雪と萌菜、いいですね
雪と聡美は「友達」という感じですが、雪と萌菜は「同士」という印象です。
そしてドライに見える萌菜さん、結構付き合って別れてを経験なさってるんですね‥(なぜか敬語)
これから彼女がどう物語に絡んで来るのか、楽しみにしたいと思います。
次回は<不吉な予感>です。
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彼氏もまだしてないプロポーズを同姓親友が(笑
おお‥!ぽいですね!
でも萌菜と雪みたいな関係の夫婦はうまくいくんじゃないですかね!互いを尊敬している、というのはとても大切なことですもんね^^