雪は一人家路へと急いでいた。
大学から約2時間かかるこの街は、住みやすいけどやっぱり不便だ。雪はあくびを噛み殺して帰路を急いだ。
すると、突然後ろから声を掛けられた。
「お!赤山じゃん?!」
振り返ると、横山が手を振っていた。
横山は友人がこの近くに住んでいて、遊びに来たのだと言った。
もう夜も遅いのに、大学から離れたこの街に横山が居ることに雪は若干の疑問を抱いたが、
不思議な偶然もあるもんだなと横山は笑っていた。
もう遅いので、友人の所に行く前に家まで送って行ってやるよと、
横山は雪の隣を歩いた。
「こんな夜道を女一人で歩かすわけにはいかないだろ」
という言葉に、雪もまんざらでもなく、そのまま送って行ってもらうことにした。
道中、飯を食って行こうとか、あの店見に行ってみようとか、事あるごとに横山は雪を誘ったが、
雪は失礼にならない程度にそれを断った。
スクーターが雪の真横を通ると、横山は雪の手を引っ張って守ってやったが、
その力加減が強すぎて、却って雪は転んでしまったりした‥。
オロオロと謝る横山に、
雪は憎めなさを感じ、優しくなったじゃんと微笑ましくさえ思った。
やがて家に着き、二人は別れを告げる。
夜遅くのマンションは静まり返っていて、足音がよく響く。
エレベーターの階数表示を見ると、15階で止まっていた。
雪の家は4階だ。歩いて行ったほうが早いなと、そのまま踵を返して階段に向かった。
パッと、階数に着く度に天井のライトが点く。
雪はそれを眩しく感じながらも、階段を登った。
ふと窓の下を見ると、
横山が立っているのが見えた。
彼は友人に会いに行くと言っていた。
なぜまだ、ここに立っているのだろう?
3階。
雪は嫌な予感がした。
窓の外をこっそりと覗く。
雪は整理できない頭を抱えながら、尚も階段を登った。
家に着いた。
しかし考えるより先に体はすでに玄関を背にして、
勝手に次の階へと足を運んでいた。
焦らずに、さっきと同じ速さでゆっくり、確実に登った。
5階に着いても、6階に着いても、窓の外の景色は変わらなかった。
もう一階歩を進めようかと思ったが、
7階までエレベーターに乗らないのも不自然だと思い、
6階で留まることにした。
そっと外を窺い見る。
すると横山が、ある動きをしていることに気がついた。
指を折り、何かを数えている。
下から見上げた雪のマンションは、6階まで灯りが点いていた。
ふうん、と彼は呟くと、意味ありげな笑みを浮かべた。
雪は6階の踊り場でじっと息を潜めていた。
あの仕草が何を意味するところかを考え、
そしておそらくそれは当たっていることに寒気を覚えながら、
ただその場でうずくまっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪>その代償(3)へ続きます。
大学から約2時間かかるこの街は、住みやすいけどやっぱり不便だ。雪はあくびを噛み殺して帰路を急いだ。
すると、突然後ろから声を掛けられた。
「お!赤山じゃん?!」
振り返ると、横山が手を振っていた。
横山は友人がこの近くに住んでいて、遊びに来たのだと言った。
もう夜も遅いのに、大学から離れたこの街に横山が居ることに雪は若干の疑問を抱いたが、
不思議な偶然もあるもんだなと横山は笑っていた。
もう遅いので、友人の所に行く前に家まで送って行ってやるよと、
横山は雪の隣を歩いた。
「こんな夜道を女一人で歩かすわけにはいかないだろ」
という言葉に、雪もまんざらでもなく、そのまま送って行ってもらうことにした。
道中、飯を食って行こうとか、あの店見に行ってみようとか、事あるごとに横山は雪を誘ったが、
雪は失礼にならない程度にそれを断った。
スクーターが雪の真横を通ると、横山は雪の手を引っ張って守ってやったが、
その力加減が強すぎて、却って雪は転んでしまったりした‥。
オロオロと謝る横山に、
雪は憎めなさを感じ、優しくなったじゃんと微笑ましくさえ思った。
やがて家に着き、二人は別れを告げる。
夜遅くのマンションは静まり返っていて、足音がよく響く。
エレベーターの階数表示を見ると、15階で止まっていた。
雪の家は4階だ。歩いて行ったほうが早いなと、そのまま踵を返して階段に向かった。
パッと、階数に着く度に天井のライトが点く。
雪はそれを眩しく感じながらも、階段を登った。
ふと窓の下を見ると、
横山が立っているのが見えた。
彼は友人に会いに行くと言っていた。
なぜまだ、ここに立っているのだろう?
3階。
雪は嫌な予感がした。
窓の外をこっそりと覗く。
雪は整理できない頭を抱えながら、尚も階段を登った。
家に着いた。
しかし考えるより先に体はすでに玄関を背にして、
勝手に次の階へと足を運んでいた。
焦らずに、さっきと同じ速さでゆっくり、確実に登った。
5階に着いても、6階に着いても、窓の外の景色は変わらなかった。
もう一階歩を進めようかと思ったが、
7階までエレベーターに乗らないのも不自然だと思い、
6階で留まることにした。
そっと外を窺い見る。
すると横山が、ある動きをしていることに気がついた。
指を折り、何かを数えている。
下から見上げた雪のマンションは、6階まで灯りが点いていた。
ふうん、と彼は呟くと、意味ありげな笑みを浮かべた。
雪は6階の踊り場でじっと息を潜めていた。
あの仕草が何を意味するところかを考え、
そしておそらくそれは当たっていることに寒気を覚えながら、
ただその場でうずくまっていた。
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<雪>その代償(3)へ続きます。
コメントありがとうございます^^!