風(その2終わり)
冬の風も厳しい。吹雪となればなおさらの事、眼も開けていられないようになる。
列車の音を聞き落とさないよう、耳を覆う事は禁止事項。
耳は凍えて痛くなり、いくら防寒着を着ても寒さを防ぐのは無理である。しかも厚着で作業をしたなら反対に汗をかいてたまらない。
昔話ではない。夏の猛烈な暑さ。冬の厳しい寒さの中で働き、
線路を地味に守っているのが保線であり、その中で培われるのが今も変わらない保線魂なのだと思う。
先年、不幸にしてJR羽越線で強風のために特急列車が転覆し、
死傷者が出るという不幸な事故があった。
JR東日本に在職中、新潟支社の総合指令室にも勤務した。
そこでは管内の主要橋梁に設置された風速計の計測データが送られるシステムになっていた。
決められた数値以上の計測値になると、赤い警告灯の点灯とともに、大きな警報音が鳴り響く。
列車の司令員たちは直ちに、列車の停止や徐行運転の手続きに入り強風による事故を未然に防ぐシステムになっているのです。
あの不幸な脱線事故を起こした風は局地的な予測不可能な強風だったとも聞く。その後はきっと橋梁以外にも風速計は設置されたものだと思う。
(終わり)