スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

イラク系スウェーデン人の誘拐・その後

2005-03-12 08:27:46 | コラム
今晩のテレビは2つの見もの。



まず一つは「メロディー・フェスティバレン(Melodifestivalen)」の決勝戦がストックホルムで行われた。これまでに予選が4回あり、それぞれの予選から2組が、そして敗者復活で選ばれた2組が、計10組が優勝を勝ち取るべく歌を披露した。(大会については、以前のブログをどうぞ →クリック

今晩の開会前から勝ち馬とされた女性歌手と、それほど注目を集めていなかった男性歌手の大接戦となったが、スウェーデンNo.1を勝ち取ったのは、男性歌手のほう。ちょっとした大穴だった。わずか3ポイント差の接戦。私はもう一方のほうを応援していたので、ちょっと残念。男性歌手の曲は典型的ポップ。もちろん新曲だが、絶対にどこかで聞いたことのあるような曲。聞いてもすぐに忘れてしまいそう。それに対し、女性歌手のほうは、力強い曲で、これぞスウェーデンというような曲。

投票方法は、視聴者による電話投票だが、今日の決勝では150万票が集まったという。この電話投票が半分と、残りの半分をテレビ局が各地方ごとに任命する「陪審員」の投票によって、結果が決まる。接戦となったわけは、視聴者側が女性歌手を一番に選び、陪審員側が男性歌手を一番に投票するというように、好みが食い違ってしまったためだった。この「メロディー・フェスティバレン」についてはまた明日改めて書きますね。



今晩のもう一つの見ものは、映画「ノーマンズ・ランド」だ。旧ユーゴ・ボスニアの内戦を風刺的に描いたボスニア製(2001年)の映画だ。前線の真っ直中の塹壕で出くわしてしまう敵同士の兵士。お互いを一人の人間として見始め、殺し合うこともできなくなってしまう。そしてドラマが始まる。戦争の愚かさを描くと同時に、泥沼化する戦争を前に何も積極的なことをせずに、しかも、やる気もないのに世界平和のためと言って、大きなことをしているかのフリをしていた国際社会、特に国連を風刺しているのが面白い。

至る所に風刺やジョークが散りばめられている。ある一場面、ドイツの国連兵士が地雷を除去しようとする場面。フランスの国連兵士が陰で眺めながら、フランス語でつぶやく。「地雷除去部隊なんて、なんてひどい職業だ! 一度でも失敗すればそれでおしまいだ。」それに対して、もう一人のフランス兵士がこう答える。「いや、一度でなくて二度だ。最初の失敗は、彼が地雷除去の仕事を選んだことだ・・・。」

この映画のさらに興味深いところは、セルビア系ボスニア人の人気俳優が、イスラム系ボスニア兵士を演じているところだ。内戦中はこの二つの勢力が主に争っていたのだが・・・。

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以前にイラクで誘拐されたイラク系スウェーデン人のことを書いたが、今日は午前11時にヨンショーピン市の市庁舎前で小規模の集会があった。誘拐されたのはフセイン政権崩壊後にイラクに戻って、イラク・キリスト教民主党を立ち上げて、総選挙に際して政治活動を行っていた、イラク系スウェーデン人の男性だ。(以前のブログ →クリック

ヨンショーピンに住む5人の子供含む家族や親類が今日の集会を主催し、スウェーデンのキリスト民主党党首も駆けつけて、誘拐された男性への支援を表明した。それと同時に、スウェーデンの外務省や警察の活動に対する苛立ちもあらわにした。

息子が伝えるところによると、現在イラクのキリスト教民主党と誘拐グループが身代金の額を巡って交渉している模様。犯人は、身代金目的の誘拐グループのようで、身代金の値下げを示唆しているらしい。

スウェーデン警察庁も現地に捜査員を派遣していると伝えられるが、こちらの側からの捜査活動の進捗状況は一向に明らかにならない。今日は、さらにスウェーデン在住のイスラム教徒の全国組織が、報道機関アルジャジーラを通じて、犯人側に解放を求めるメッセージを送った。

イスラム教団体がキリスト教徒を支援している。本国イラクでもこれを見習って欲しいところだ。