スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

"スウェーデン人"がイラクで誘拐

2005-02-19 09:14:35 | コラム

「スウェーデン人がイラクで誘拐」

こんなニュースがここヨンショーピンをちょっと騒がせている。この男性、もともとはイラク人であり、政治難民としてスウェーデンに逃れてきて、その後にスウェーデン国籍を取得した方。スウェーデンではヨンショーピンの近郊に長く住み、親族もこちらにいる模様。今回のイラク総選挙の際には、イラクに戻って「キリスト教民主党」を組織し、その党首として政治活動を行い、イラク国内に少数ながらいるキリスト教徒の声を代表していたようだ。イラクで政治活動を行っているということは、おそらくイラク国籍とスウェーデン国籍の両方を所持しているのだろう。

3日ほど前に犯人側からビデオがメディアに流れ、そこには彼が命乞いをする姿が映されていた。犯人側の要求は主に身代金で、どうやら政治的な目的のテログループというよりも、お金目当ての犯罪グループのようだ。

もちろん、二重国籍であろうと、スウェーデン国籍を取得した以上、彼は「スウェーデン人」でもあるので、海外で誘拐事件が起きた場合は、スウェーデン政府に自国民救出の責任がある。そのため、スウェーデン外務省は現在さまざまな経路で犯人側との接触を行っているという。“生来の”スウェーデン人では無いからといって、見捨てることはしない。

様々な移民や難民を受け入れて、彼らの多くに国籍まで与えてきた国、スウェーデン。そんな外国出身の彼らを含めた“自国民”が国外でトラブルに巻き込まれるケースは、そうではない国に比べたら、必然的に多くなる。例えば、以前の例では、英米軍がアフガニスタンでテロ容疑をかけ拘束し、キューバのグアンタナモ基地に収容した人々の中に3人のスウェーデン国籍保持者がいた。しかし、彼らはみな本来は中東出身者(レバノンかどこか)でアラブ系のスウェーデン人だった。しかし、それでもスウェーデン外務省は、米軍に対し、人道的な待遇と身柄の引き渡しを再三にわたって求めていた。

国籍保持者だから、その国の外務省が保護するというのは、考えてみれば当たり前のことなのだが、もともと外国人だった人間に対しても、しっかりその義務を果たそうとするスウェーデンのやり方は、日本人の目には興味深く映るのではないかと思って、紹介してみた。

「“外国人”のためになぜスウェーデン政府が動かなければならないのか?」というような不満や悪口を、世論からも政府の側からもこれまで耳にしたことはない。

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