スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

「ライブ! スウェーデンの中学校」(本の紹介)

2005-03-08 07:50:48 | コラム
先週金曜日はウプサラから夜行便でヨンショーピンに戻り、ほとんどその勢いで地元ヨンショーピン市立のサンダ高校 (Sanda-gymnasiet) の生徒会執行部の総会を見学。なんでまた、高校の生徒会活動かというと、昨年の秋にNHK放送大学の取材班の方々が「スウェーデンにおける学校民主主義の教育と実践」というテーマで千葉大学の先生と取材をしたときにスウェーデン語の通訳としてお手伝いをしたのが、きっかけだった。

ここの国の大学生と話をすると、ちゃんと考えているんだな、とか、分からなくても限られた知識を用いてちゃんと自分の言葉で話しているな、考えが正しい・間違っていると恐れることなく自信を持っているな、と感じることがこれまでよくあった。新聞を読んでいても、テレビやラジオを見聞きしていても、事実の伝達だけではなく、それに対する分析だとか、議論が盛んに行われていることに気づく。メディアでの活発な議論や分析が、人々の日常に何らかの貢献をしているのは間違いない。(もちろん一般的に、という話であって、こういう典型例に当てはまならない人もいる。僕がいいたいのは、一般的にそういう傾向が強いということ、自分のこれまでの経験からそう感じることが頻繁にあるということ)。

話をここであえて大きく飛躍させれば、こういった、自分の意見の表明が自信を持ってできる、分析的で批判的な議論をすることができる、という能力が、この国の民主主義の成熟に大きく貢献しているのではないかと思うのだ。

大学生の例を挙げたが、大学生になったとたんにこういう能力が身に付くというわけでは、もちろんなく、義務教育や高校教育の段階で長い時間をかけて自然に訓練を受けてきた結果なのではないかと思う。すると、次の疑問は、さて小・中・高校で彼らはどのような教育を受けているのか? 当然ながら、この質問は漠然としている。それにスウェーデン人にとってはそのやり方がごく当たり前になっていれば「スウェーデンではどうやっているんですか?」と聞いたところで、質問された側も何を答えたらよいのか分からないだろうから、意味のある答えを導き出すのは、難しいだろう。

ともかく、そんな疑問をずっと持ち続けて、昨秋の通訳を機にその高校の教頭先生と親しくなって、たまに高校を見学させてもらうことがある。しかし、僕の側にこの大問題を解明する能力と、割ける時間もないことがあって、まとまったことが書ける程には進んでいない。

ともあれ、生徒会執行部の総会は執行部員と数人の学級役員の内輪的な会ではあったが、自信を持ってモノを喋る彼らには感心させられた。

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ウプサラに30年以上住む日本人の方と、ウプサラ日本人会を通じて2年前にお会いした。口を開くと、今でもすぐに関西弁が飛び出す、根っからの関西人だ。阪神タイガースが優勝をしたときには、ウプサラでも「六甲おろし」を歌ったほどだ。

その方は、スウェーデンで教員免許を取り1981年からスウェーデンの一般の基礎教育後期(中学相当)で教壇に立っている。その方が最近、1年ほど休職をして本を執筆された。スウェーデンでの教員生活の体験談をまとめたのだそうだ。そして、今回その御本を著者割引で本人から買うことができた。


ライブ! スウェーデンの中学校
-日本人教師ならではの現場リポート -


世界最大の職場である学校という特殊な社会の中で、毎日、何が起こっているのかを知ることは容易なことではありません。しかも、それが外国の中学校となればなおさらです。この本は20年以上にわたってスウェーデンの公立中学校の教壇に立ち、生徒達や同僚達との交流、学校行事などにおけるエピソードを、ちょっとユニークな経験をもっている日本人の私が写真などを散りばめながら彼らのありのままの姿を綴ったものです。
いまや多国籍・多文化国であるスウェーデンでは、海外での出来事も国内ニュースのような早さで生徒や家族に影響を及ぼしています。思春期に入り、精神的に不安定な青少年達の悩みやトラブルに対して、また大人の世界への興味からタバコ、アルコール、麻薬をする生徒達が出てくるこの時期に、この国の学校や社会は一体どうしているのか、また現在の学習指導要領では何が重要視され、そのために何を行っているのかを本書で探っていただければ幸いです。」(帯より)

出版社は北欧関係の本をよく出版する「新評論」。本人曰く、最初は私本的な書き方で自費出版でも、というつもりだったのだそうだが、出版社がつき、大々的な刊行となったのだそうだ。帯の言葉、“海外での出来事も国内ニュースのような早さで伝わってくる”というのは、僕もまさに実感するところ。

さぁ、これから読んで報告を書きますね。


P.S. 今日、高校時代の友人から教員試験合格の知らせを耳にしました。おめでとう。努力の結果だね。