スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

中央アジア・キルギスタン

2005-03-25 06:40:07 | コラム
スウェーデンは一足早くイースター休暇の真っ直中。大きなニュースが無い中、伝えられるのはキルギスタンの政変。民衆が大統領府を襲撃し、現役の大統領に退陣を迫ったのだそうだ。勢いに乗って、民衆が暴徒と化し、無法状態が続いているという。

2000年代に入ってから、旧共産圏のいくつかの国で政変が起こった。セルビアではユーゴ内戦で暗躍したミロシェビッチ大統領が民衆によって退陣に追い込まれ、その後、オランダ・ハーグの国際司法裁判所に移送された。その後、グルジアでも不正選挙によって旧体制を維持する大統領に国民の堪忍袋の緒が切れ、政変が起こった。そして、去年の暮れのウクライナでは、これまた不正な選挙で勝利した新大統領に、改革派の支持者が抗議活動を繰り返した結果、ウクライナ最高裁は選挙のやり直しを命令。そして、改革派が勝利した。

この一連の出来事では「民主化運動のフランチャイズ化」という言葉が聞かれた。セルビアの民主化で勝利した民衆の指導者が、グルジア政変に際してグルジアに赴き、自らの経験を分かち合い、戦術を伝授し、ソフトの面でで積極な支援したとのことだ。そして、ウクライナの際には、セルビア人もグルジア人もが知恵を出し合って、政変を成功へと導いていったという。まるでドミノ倒しのようだ。腐敗政治が横行する旧共産圏の民主化は時間のかかるプロセスだが、国境を越えた協力によって、民主化のうねりを造り出そうとしているのは、とっても面白い。

今回のキルギスタンの政変はまだまだ渦中のようだ。キルギスタンは中央アジアにある小国で、テレビ局の特派員もいない。ここで今、ニュースの脇役として、刻々と変わる現地の情報をスウェーデンへ伝えているのは、なんとスウェーデンからの留学生。電話を通じたリポートで、公共放送にも民放にもラジオのニュースにも登場して、一躍、時の人になっている。ずいぶん若い男の子だが、キルギスタンにいる数少ないスウェーデン人として、貴重な存在のようだ。彼にとっても、またとない歴史的な瞬間を目の当たりできる絶好の機会なのだろう。小国に留学中の皆さん、こんな事態もあるかもしれないので、しっかりリポートできるようにしておきましょう!

ここヨンショーピン大学は、タジキスタンとは交換留学提携を結んでいるが、キルギスタンとはまだないはずだ。(?)

それにしても、キルギスタンなんて地図を見るまで場所が分からないような所だ。ニュースで映る映像を見ていると、アジア系でモンゴルの人によく似た顔立ちの人が、ロシア文字を使ってロシア語みたいな(それとも、ロシア語そのもの?)言葉をしゃべっているのは面白い。世界はまだまだ広い。見知らぬ国がたくさんある。