スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

「Min granne TOTORO」

2007-03-31 19:54:33 | コラム
「となりのトトロ」が昨日、金曜日にスウェーデンで封切となった。トトロといえば1988年作。宮崎駿の映画がスウェーデンへ入ってきたのは、オスカー賞受賞で世界的に有名になった「千と千尋の神隠し」が2003年に上映されたのが初めてで、その後「ハウルの動く城」が続く。これらのアニメ映画がスウェーデンでもヒットしたために、スウェーデンの配給会社は宮崎駿の過去の作品も徐々に(年一本ペースで)公開していく予定らしい。

スウェーデンでは新聞や雑誌が、新しい映画の公開に先駆けて映画批評を書き、だいたい1~5で採点するが「トトロ」は平均4.6も獲得している(だいたい4以上を獲得する映画は上出来)。スウェーデン語のタイトルは「Min granne Totoro」。私の隣人トトロ、もしくは、近くに住んでいるトトロ、といったところか。

宮崎駿のアニメがどうしてそこまでウケるのかというと、同じアニメとは言ってもディズニー映画とは全く違うタッチなので、新鮮に受け止められるのらしい。良い者と悪者がハッキリしていて勧善懲悪的なテーマを扱うディズニーに対して、宮崎駿の映画の場合は、より複雑で、良い者・悪者の区別がはっきりせず、敵にもそれなりの論理といいところがある、というアンビバレントさが特徴だという。

それから、もう一つは独特のファンタジー世界。ある批評家はこう端的に書いている。

“Något stimmar till och skingras blixtsnabbt när man öppnar en dörr som länge varit stängd. Inte damm, utan ett levande, förtätat mörker. Sådant kan …Hayao Miyazaki …. ge ansikte och namn.”

「長いあいだ閉じられていた扉を開けたとき、何か物音がして、すばやく消え去る。埃ではなく、何か命を持った、凝縮した暗闇。宮崎駿はそのようなものに顔かたちと名前を与えてくれる。」

即物的なものと相対する形而上的なもの。ありふれた日常に隠れた、ふとした神秘的なもの。幼い時に抱いた夢の世界に対するノスタルジー(それとも、メランコリー?)。彼の映画の中に、水で覆われた世界が描かれていたり、その中を一本の鉄道が走っているようなシーンがあったと思うけれど、あのような心象世界は誰でも描けるものではないのかもしれない。

さらには、彼が大きなテーマとしてアニメの中で扱っている「技術・自然・人間」の関係についても大きな関心が寄せられている。

当事者合意でもなぜかストライキ!?(賃金格差の是正)

2007-03-30 07:38:11 | スウェーデン・その他の経済
イースター休暇を来週に控えているスウェーデンだが、小売・流通業界の従業員からなる労働組合Handelsが、ストライキを発動しようとしている。現在続いている賃上げ交渉に絡むイザコザが背景にあるのだが、どうも様子がおかしい。交渉相手である、使用者(雇用者)側の業界団体Svensk Handelとは今後3年を規定する集団交渉についてきちんとした合意ができているのだ。では何が問題なのか?
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現在続いている、今後3年間を規定する集団賃金交渉は、各業界ごとに行われている。先日は製造業界の労使間で合意が達し、今後3年間で計10.2%の賃上げがされることになった。さて、そのあとに続いたのは小売・流通業界で、交渉の末に労使間で結ばれた賃上げ率は、今後3年間で12.6%となった。

なぜ、小売・流通業界で製造業を大きく上回る賃上げが可能になったか、というと、女性の賃金水準向上が、今回の賃上げ交渉の大きなテーマであったからだ。

スウェーデンでも男女間での賃金格差が残る、といわれるが、これは日本のように同業界・同職務内容なのに、様々な形(パート・正規間の差別、一般職などの肩書きの違い、etc)で男女間に賃金差が残っているのとは違い、スウェーデンでは格差のほとんどが、男性従業員の多い業界と女性従業員の多い業界・業種で、賃金水準が違うからだ、といわれる(あとは、同業内でも管理職や上級職に男性が多いためにも、男女間で平均賃金の格差が生まれる)。特に指摘されるのは、女性の多い医療・福祉分野(ほとんどが地方公務員)の賃金が平均水準よりも大きく下回ること。そのため、これらの職員が多く加入する労組Kommunalは2004年に大規模なストを長期に渡って決行した。(だが、収穫は少なかった・・・)

さて、医療・福祉部門だけでなく、小売・流通業界でも女性の占める割合は他の業界に比べ高く、一方で、賃金は低いと指摘されてきた。そのため、この業界での賃金引上げが“平均賃金”における男女間格差改善のための課題の一つとされてきたのだった。しかも、近年スウェーデン経済は好調で、小売・流通も大きく潤っているから、要求を突きつけるいいチャンス! というわけだ。

通常、経済全体における賃金構造の是正には苦労が付きまとう。ある業界が他の業界に比べて賃金水準が低いからといって、賃上げに成功しても、別の業界が「あの業界で何%の賃上げが決まったのだから、うちの業界も少なくともそれだけは引き上げたい」となり、各業界で次々と引き上げた結果、あとで気付いてみたら、各業界の賃金水準が一様に持ち上げられただけで、経済全体で見た業種間の賃金構造は、ほとんど変わらなかった、おまけに、それと等しい割合で物価上昇も起こって、実質賃金は変化なし、なんてことになるのがオチだ。

ただ今回は状況が異なる。ブルーカラーの各種業界の労組をまとめる「傘」の労組であるLOも、女性の賃金水準向上の必要性を訴え、男性職員の多い業界での賃上げは、ほどほどに抑えるべき、という方針を提示していたからだ。

こうして小売・流通業界では、交渉の末、使用者(雇用者)側である業界団体Svensk Handel労組Handels側が3年で12.6%の賃上げに合意して、みんな満足したかに見えた。

しかし、ここで口を挟んできたのは、業界側の「傘」団体であるSvenskt Näringsliv(The Confederation of Swedish Enterprise、前身はSAF)だ。小売・流通の業界団体Svensk Handelはこの「傘」団体に加盟しているため、この業界の交渉に「傘」団体が拒否権を持っているのだ。これに怒ったのは、もちろん労組側。当事者同士でせっかく達した合意を第三者に破棄され、ストを決行する、と訴えている。使用者(雇用者)側の業界団体は、むしろ労組側に同情的のようだ。

何だか、対立の構図がおかしい。
合意が破棄されたために労組がストをしようとしている相手は、むしろ労組側に同情的。かといって、問題の元である「傘」団体にストをする手段はない。国には、交渉決裂の際に備えて、労使間の間に入る調停機関があるが、これは交渉当事者同士の仲介をするのが役目。でも、件の当事者同士はそもそも合意に至っていた・・・。調停のしようがない!

とまあ、この調子で実際にストが決行されると、イースター休暇のド真ん中で買い物客やレストランの客が多い時期を直撃する。IKEAや大手スーパーの職員の一部もストをするらしい。それに加え、同情的スト、というのもあり、他の業界の労働者がストに加わるケースがある。

そもそも、なぜ業界側の「傘」団体がNej!といったのかはよく分からないが、とにかく、男女の格差の改善には、スウェーデンでもこの様な苦労がつきものだ。

スウェーデン国王の訪日

2007-03-27 04:39:54 | スウェーデン・その他の社会
スウェーデンの国王カール16世グスタフと王妃シルビアが日本を公式訪問中とのこと。
スウェーデン大使館の日本語ホームページ

“スウェーデン国政府からは、カール・ビルト外務大臣とヨーラン・ヘグルンド社会保健大臣が政府代表として訪日する。また、産業機関の代表派遣団並びにヘルスケアに焦点を当てた代表団も同時に訪日する。”

“公式訪問は、2国間における親善が目的である。訪日中、両国にとって重要な課題、すなわち環境・エネルギー問題、介護におけるIT技術、認知症問題、バイオ・メディカルテクノロジー、交通安全や子供の権利などについて、様々なシンポジウム並びにプレゼンテーションが開催される予定である。プログラムは、スウェーデン人植物学者カール・フォン・リンネに関する展示、また日本の文化機関への訪問など文化的内容が含まれる。”


なるほど、Carl Bildtもやって来ているのか!
介護におけるIT技術とあるが、実際、スウェーデンでは高齢者介護における日本の技術が話題によくなっている。でも、どちらかというと、日本=技術先進国、というステレオタイプによって誇張された報道も多くて、例えば「日本ではロボットが高齢者介護に大活躍している」といったニュースを聞いたことある。実際にはどこまで実用化されているのだろうか・・・? この手の報道はどこの国も同じかな・・・?
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それはともかく、国王カール16世グスタフのズッコケ映像を見つけた。10年ほど前に50歳の誕生日を祝ったときのこと。公式な祝賀会で当時首相になって間もないヨーラン・パーションが式を進行する中で、ついうっかり「国王の15歳の誕生日を祝って」と言ってしまったのだ。(スウェーデン語で15femton50femtio

思わずニヤけながら、茶目けのあるポーズをとって、パーションにエールを送る。隣にいる王妃も国王の肩を叩いて慰める。

こんな間違いも笑って済まされるのが、この国のいいところ。
(パーションの隣にいる女性は、当時の国会議長)

春の到来

2007-03-24 08:20:33 | Yoshiの生活 (mitt liv)
この時期になると毎年書いていると思うけれど、春が来ると別世界のような感じがする。暗くて長くかった冬があけると突然、青空が開け、世の中が明るくなった気がする。クリスマスの頃は15時前に沈んでいた太陽が今では18時を過ぎても沈まない。スウェーデンも1年中こんなだったら、と思うけれど、おそらく飽きてしまうだろうな。暗い秋冬があるからこそ、それとは正反対の春夏のありがたみが実感できるのに違いない。

ちなみに今週の日曜日の早朝2時に早くも夏時間に切り替わる。(2時が3時になるので1時間損)

研究室の前には今はなき城郭を囲っていた堀川が流れており、その向こうに「Feskekorka(魚教会)」がある。教会というのは建物がそのような形をしているからで、実際は魚屋とレストランがある。今日はそのFeskekorkaの前の水辺で、大学の同僚と昼食を食べた。かつてあった駐車場が撤去され、随分雰囲気が良くなった。

と、のんびりとランチを食べていると、小型ボートが警官二人と警察犬を載せてのんびりと堀川をゆっくりと流れてくる。何か、捜索中のようだ・・・。そう、先週末からこの付近で20代の若者が行方不明だと騒がれているのだ。その捜索だ。

食事をしている我々の前で、何も水揚げされませんように・・・、と願いながら、いや、それよりもやはり小春日和を楽しみながら束の間の休憩を過ごした。

子育てと大学の両立

2007-03-23 05:09:05 | スウェーデン・その他の社会
スウェーデンでは高校卒業後、一度社会に出てから、大学で勉強しようとする人が多い。最近では、高校からストレートに大学進学する割合も増えているので、大学生の平均年齢も下がりつつある。

それでもなお、大学生の4人に一人は子持ちだという、統計が出ている。家庭を持ちながら大学で勉強している、ということだ。(大学生のほとんどは、仕事と掛け持ちではなく、フルタイムで大学に通っている)

大学生といえば、生活リズムもまちまちで、テスト前に猛勉強したかと思えば、普通の平日はのんびり、というのが一般的だ。それでも、スウェーデンの学生はカリキュラムも比較的ハードなので、課題提出やグループワーク、試験などに常に追い立てられている、という感じだ(基本的に、一ヶ月一科目の集中講義形式)。普通の学生なら追い込みなってから徹夜で切り抜けることができても、子持ち・家族持ちの大学生にはそう簡単にいかない。

その他、授業の直前になって時間変更が発表されることも多く、それほどフレキシブルではないこれらの大学生には打撃となる。このように、大学生としての生活・学習条件が普通の学生とこれらの学生との間で、大きく異なるのだ。

いくつかの大学、例えばウプサラ大学などでは、子持ちの学生も勉強しやすいように、ポリシーを設けているという。例えば、

・週末や夕方から夜間にかけて、授業や試験を行うのを避ける。
・週末や夜間にまで勉強をする必要がないカリキュラムを心がける。

「勉強」と言った場合、大学で講義を受けることだけでなく、予習として家で文献を読んだり、課題の作成やグループワークの時間なども含む。それらを含む「勉強時間」が普通のオフィスアワーと同じで済む程度に留めよ、ということだ。そのおかげもあってか、2005年と比べて2006年には、週末のテストが4分の1に減ったとか。

そのほか、子持ちの学生には、国から通常支給される大学生補助金・低利ローンに加えて、上乗せのローンができる。上乗せ額は子供一人なら月最大480クローナ(約8500円)、二人なら月最大784クローナ(約14000円)となっている。

グローバル時代の倫理的トリレンマ

2007-03-20 09:35:29 | スウェーデン・その他の環境政策
フィンランドのÅbo Akademi Universityから招いたJan Otto Anderssonの取り上げたテーマは「the Global Ethical Trilemma」、日本語に訳せば「グローバル時代の倫理的トリレンマ」にでもなるだろうか。
前回の続き

トリレンマ(trilemma)とは、ある3つの目標を同時に達成したいのだけれど、それが難しい状況を言う。ジレンマ(dilemma)は、2つの目標があり、一方が成り立てば、他方が成り立たない、という二者択一の窮地のことだが、トリレンマになると、3つの目標のせめぎ合いになるのだ。

現代のグローバル社会の中で達成したい3つの目標とは「経済的繁栄 (Economic prosperity)」「世界レベルでの公正 (Global justice)」「エコロジー的持続可能性 (Ecological sustainability)」だという。このうち、二つは同時に達成できる、もしくは達成できそうな見通しを立てることはできても、この三つの同時達成となると事はそう簡単ではない。

3つの大義のうち2つだけは達成したい、という理論的試みはこれまでもあった。Jan Otto Anderssonの上げた例としては、

“世界銀行の新しい開発戦略”
このサブタイトルは「Equity and Development(平等と発展)」であり、貧困を撲滅する手段としての経済発展の重要性を強調し、国家間の不平等の是正を行っていく、というものらしい。この考え方は、3つの大義のうちの「経済的繁栄」「世界レベルでの公正」は視野にあっても、最後の「エコロジー的持続可能性」への優先順位はずいぶん低い。

“ILO(世界労働機関)の報告書:「公正なグローバリゼーション-すべての人々
に機会の提供」”
ここでは、社会的公正・雇用・経済成長が強調されるものの、世銀の戦略同様、「エコロジー的持続可能性」への配慮は薄い。Jan Otto Anderssonは「グローバル社会民主主義」だと呼ぶ。(社会民主主義の伝統的な目標が、経済成長・完全雇用・不平等是正であったことから)

“環境経済学 (environmental economics)”
この考え方は、環境の価値と環境が与えてくれるサービスにきちんと価格が設定されて、さらに、自然資源に対する所有権と使用権がきちんと設定されることが必要、と説く。それを保障する公共政策(規制・課税・所有権の設定と保護)があれば、今までどおりの消費も投資もより効率的に行っていける。Jan Otto Anderssonは「エコロジー効率的資本主義」の考え、と呼ぶが、ここには、次世代への配慮はあっても、現世代間に存在する不平等・不公正に配慮には欠ける、と指摘する。

これに関連した別の例として私が思いつくのは、運輸による環境負荷を減らすべく、地元で生産したものを地元で消費する、という運動に似た論拠が、EU域内の市場統合と域外関税を強める一つの動きになっているが、EU内で農産物の物流を閉じてしまうと、農業を主要産業とするアフリカ諸国からの輸出が困難となり、これらの国々に打撃を与える結果になってしまう。これも「グローバルな公正」をないがしろにした考え、と言えようか。

“エコロジー経済学(ecological economics)”
オーソドックスな経済学や環境経済学とは、一線を画するこの学派は、「エコロジー的持続可能性」を分析の中心に置き、分配における公正を、世界レベルでも現世代と次世代間でも達成しようと試みる。結果として「経済的発展」に対する意欲は自然と後回しにされる。彼は「Socio-ecological planetarism(社会・エコ的プラネタリズム)」もしくは「red-green planetarism(赤と緑のプラネタリズム)」と呼ぶ(社民主義[赤]とエコロジー主義[緑]の折衷、ということ)。

以上に紹介された「トリレンマ」の定式化が私にはおもしろかった。で、Jan Otto Anderssonの主張は、最後に挙げた“エコロジー経済学”を基本にしながら、インドのガンジーを引用して「豊かな社会では既にたくさんのものが消費され過ぎているため、世界レベルでの公正とエコロジー的持続可能性を達成するためには、豊かな社会の消費レベルをある程度下げていくしかない」というものだった。世界レベルで物事を考える際の言葉としては、グローバリズムよりもプラネタリズム(planetarism)という言葉を彼は提唱している。ヒューマニズム思想を新しい段階へと発展させて行く必要性を訴えたフィンランド人の思想家Ele Aleniusを倣ってらしい。

講演のその後の中身は、A full world、Unequal exchange、Ecological footprintといった概念に対する彼の解釈、と続く。
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聞きながら思ったのは、彼の考えに立って「世界レベルでの公正」と「エコロジー的持続可能性」の同時追求を目指したいと私も思うけれど、やはりそれと同時に、我々の豊かな社会にも何らかの形での経済発展・経済成長はやはり必要だ、ということだ。大量消費に支えられる日々の生活を見直す必要はあるとしても、バブル崩壊以降に日本が経験したマイナス成長のような事態になってしまうと、失業者は増加し、実質所得は下がり始め、大きな社会問題が発生するようになる。我々も日々の生活に困り始めると、環境への配慮や、他人や異なる社会に住む人々への共感を抱いている余裕はなくなってしまい、当初の二つの大義も成り立たなくなってしまうのではないだろうか。だから、経済的繁栄は必要。しかし、それはこれまでのような生産と消費を繰り返すものではなく、環境的負荷を最大限に抑えた生産活動と消費行動が求められてくる、ということになるだろう。

だから、やはり目指すべきなのは、最初に掲げた三つの目標の同時達成をめざすべく、Jan Otto Anderssonの呼ぶ「グローバル社会民主主義」「エコロジー効率的資本主義」「赤と緑のプラネタリズム」をバランスよく折衷して行くことではないか、と思う。しかし、それがそもそも難しいからこそ「トリレンマ」と呼ばれるわけだし・・・。

ともかく、日曜日のヨーテボリ新聞(GöteborgsPosten)に講演会の記事が載った。観衆の中に新聞記者が混じっていたのだ! やはりこうして、記事になると、開催した側としては嬉しくなる。

Mona Sahlin 正式に党首へ

2007-03-18 09:22:41 | スウェーデン・その他の政治
この週末、社会民主党の臨時党大会が開かれている。初日である土曜日の昼過ぎ、議決が採られ、Mona Sahlin(モナ・サリーン)が新しい党首に選出された。118年にわたるスウェーデン社会民主党の歴史上、初めてとなる女性党首の誕生だ。史上7代目の社民党党首だ。

”Jag känner en stolthet att som första kvinna få gå över den här tröskeln”

((党首という)このハードルを越える最初の女性となったことを誇りに感じている)

と彼女は壇上で述べた。

”Jag känner mig oerhört liten, men ni gör mig stark!”

(私自身は非常に小さな存在に過ぎないが、あなたたちのおかげで強くもなれる!)

と続けた。実際のところ、彼女を党首に選ぶことに党内でも反発の声が上がってきた。特に、90年代に彼女が労働市場大臣だったときに、労働組合との関係をこじらせてしまったために、今でも労組との関係は悪い。党内での一番人気はやはりEU委員会の副議長を務めるMargot Vallströmだ。彼女は党首のポストは辞退したものの、Mona Sahlinの親友として、しっかりとサポートして行くことを約束している。

そして、彼女の選出をもって、これまで11年続いたヨーラン・パーションの時代は終わりを告げた。一つのエポックの終焉だ。Mona Sahlinも前任者であるGöran Perssonの労をねぎらって、

”Du har blivit den statsman som de senaste åren moderniserat Sverige. Rättvisa, jämställdhet, miljön har blivit prioriterade frågor.”
(国のリーダーとして、スウェーデンを近代化してこれた。公正・平等・環境といったテーマを優先事項にすることができた。)

と彼の功績を讃えた。

しかし、実際のところ、彼が党首を務めた11年の間に、彼を中心とした「ワンマン体制」が確立したことも事実である。巧みなレトリックで世論を動かし、党内では反対派を無言のうちに封じ込める風潮が見られるようになった。党内民主主義の“退廃”は、やがて2006年総選挙の“大敗”へと繋がっていく

そのため、3年半後に控えた2010年総選挙を早くも見据えて、党内の大改革を行っていくことが期待されている。

1996年の時点で党首となり、首相になっていてもおかしくなかったMona Sahlin。スキャンダルのどん底から11年を費やして、いま晴れて党首となった。果たして2010年に彼女は首相のポストに就くことができるだろうか・・・?

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フィンランドから大学教授の招待

2007-03-16 07:54:51 | Yoshiの生活 (mitt liv)
ヨーテボリ大学の経済学部には興味深い人物がいる。Johanという退職した大学講師だが、現役時代は大学教官のかたわら、ヨーテボリ市会議員をしたり、国会議員を3期12年程務めたりしているのだ。しかも、その間、某党に属し副党首を務めたほどの強者(つわもの)。退職したあとも大学で講義を持ったり、執筆活動や講演活動をしながら評論家として活躍している。また彼の奥さんは、ヨーテボリ市の郷土史に詳しく、ヨーテボリ市立博物館の専門官を長年務めていた、というこれまた面白い人。(最近、Hagaの一角に労働産業史を紹介する小さな博物館を趣味で始めた。)

そんなJohanを中心に、学部学生や博士課程の有志が集まって「We are the World」というセミナー・シリーズを企画してきた。近代経済学が支配的な経済学部の中で、より多角的な視点から経済学を議論することを目的としている。メイン・ストリームに乗らないものの様々な分野で発言をしている経済思想や経済関連の大学研究者をこれまで月一回のペースで招いて、講演会を企画してきた。先月はenvironmental economicsと一線を画すecological economicsを提唱しているMartinez-Alierを講演者として招いたところ、大学の内外から多くの人が聞きに駆けつけ、さらに地元の新聞も大きく取り上げて、大盛況となった。

で、同じセミナー・シリーズの一環として、今日は私が担当者となり、フィンランドのÅbo AkademiからJan-Otto Anderssonという教授を招き、講演会を開催した。「Global Trilemma(国際化社会の中の三つのジレンマ)」がテーマだ。なぜ私が彼の講演のアレンジを引き受けたかというと、環境政策や福祉政策、労働政策など様々な分野で興味深い著作があることや、フィンランドの中でもスウェーデン語を母国語とする人が多く住むÅboという街の出身で関心を持ったこと、さらには、隣国なので、招待をアレンジするのも比較的簡単だと思ったからだ。案の上、例の退職講師Johanと面識があったこともあり、講演の話はすぐに承諾してくれ、その後、彼をヨーテボリ大学での講演に招く話はとんとん拍子手で進んで行った。

昨年の秋からメールで連絡を取ってきたが、実際に会うときはどんな人かと緊張するもの。しかも、彼の接待も私が担当。講演会は午後に予定していたので、午前中はヨーテボリ市内の郷土史の名所を案内することになった。といっても、退職教官Johanの奥さんが手際よく市内を案内してくれたので、私もそれに便乗。かなりマニアックな郷土史探索ツアーとなったが、19世紀後半からのスウェーデンの産業化の過程でヨーテボリ市がどのような変遷を遂げたかを垣間見ることができた。中央政府の所在地であるため、公共政策が比較的よく施されたストックホルムとは違い、ヨーテボリでは産業家や資本家、商人が産業活動だけでなく、労働者の福利厚生までをも進んでおこなっていったことが、大きな特徴なのだそうだ。ヨーテボリの最初の労働組合が実は資本家の手によって組織された歴史も面白かった

その後、講演者であるJan Otto AnderssonとJohan夫妻と私の4人で昼食。その席でも面白い話題が登場した。フィンランドの女性参政権は1906(7?)年に導入されたのだそうだが、当時のフィンランドはロシアの属領であり限られた自治権しか与えられていなかった。それでも、フィンランドがそのような大きな政治改革を行うことができたのは、1904~05年の日露戦争のために政情不安定になった帝政ロシアから大きく譲歩を引き出せたからなのだそうだ。ちなみに、当時ポーランドも帝政ロシアの支配下にあり、ここでは抑圧と搾取がさらに激しかったという。(日露戦争時のロシア兵にはポーランド人も多かった。)その抑圧に耐えかねてポーランドで暴動が起こったときも、帝政ロシアは妥協策として、同じく属州であるフィンランドにも大きな自治権を供与したことがあったという。そのため、フィンランドは日本やポーランドのおかげで漁夫の利を得たという。(もちろん、フィンランドでも反ロシア運動は盛んだったが。)

さらに第二次世界大戦の後に、バルト海に浮かぶÅland島を巡ってスウェーデンとフィンランドの間で帰属問題が発生したときも、最終的な政治決着に関与したのは、実は日本の外交官だった、という話も飛び出した。

日本とフィンランドの関係は、なかなか奥が深そうだ。普通、フィンランドと日本というと、ムーミンの話が思い浮かぶ。ムーミンの童話を書いたのは、スウェーデン系フィンランド人であるTove Janssonという女性作家だが、それをアニメ化してテレビ版にしたのは、実は日本なのだ。それが日本で大ヒットすると、フィンランドは日本から逆輸入することになる。ムーミンのアニメ版はスウェーデンでも放映されたが、それはフィンランド経由で日本から逆輸入されたものなのだ。

で、肝心である講演の中身は次回に。

スウェーデン・サバイバル・グルメ

2007-03-10 19:27:26 | Yoshiの生活 (mitt liv)
日本を離れて生活していると、やはり日本食が恋しくなるもの。

値が張る日本料理なんて敢えて食べなくても、スウェーデンの食事で何とかやって行ける、と普段は思えるけれど、誘惑に負けて、ふと味噌汁や醤油味の食べ物を口にしようものなら、その瞬間から、トンカツが食べたい! しめ鯖が食べたい! 何とかの醤油煮がたべたい!と欲望にキリがなくなってしまう。私は喫煙者ではないが、おそらくタバコと同じようなものかもしれない。

というわけで、これからはたまに「スウェーデン・サバイバル・グルメ」と題して、スウェーデンで生き残っていくために、私が頑張ってチャレンジしてみた日本料理を紹介していきたいと思う。

ちなみにここでの「サバイバル・グルメ」とは、
_____・あまり時間を掛けずに作りたい
_____・“男の料理”(つまり、分量いい加減、見た目もあまり気にしない、食べられたらそれで満足)
_____・あまりお金も掛けたくはない(とは言いつつ、たまに奮発してみたり)。基本的に、あるもので済ます。
_____・長年のスウェーデン生活のために舌の味覚が麻痺し、何でもおいしいと思ってしまう私が作る料理
というような「私流」料理なので、本格的な日本料理を堪能してみたい、という方は、他のブログをお探しください(笑)。

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「しめ鯖」編

グルメ好きには全く向かない、と言われるスウェーデンだが、嬉しいのは魚介類がそこそこ手に入ること。サバもそのうちの一つ。ヨーテボリ港沖合いなど、西海岸でも釣れるのだが、魚屋さんの店頭に通常並んでいるのは、大西洋で取れたものだ。(以前の書き込み:ヨーテボリでサバつり

サバはよく買って帰り、塩を適当に振ってしばらく待ち、塩サバとして焼いて食べることが多いが、今回は「しめ鯖」にチャレンジ。

レシピはここで入手

このレシピには、サバの鮮度が重要、と書いてあるが、私が買ってきたサバは、大西洋で釣られ、冷凍状態でスウェーデンへ輸入され、解凍したものだろうから、鮮度?って何のこと?という状態。しかも、自宅でさばくのが面倒なので、既に3枚におろしたものを買ったから、この点でも、さらに鮮度は落ちているに違いない。

しかも、レシピによると、天然塩を使え、と書いてあるが、自宅には普通の食塩しかないので、それで我慢。「サバイバル・グルメ」はこうでなくっちゃ!

幸い、自宅には輸入された「ミツカン酢」があったから、正真正銘の米酢。「サバイバル・グルメ」派としては、スウェーデンで酢といえば一般的な「リンゴ酢」とか「白ワイン・ビネガー」などを使うべきであろうが、私にも少しは贅沢をさせて!

で、寝かせること、一晩。

昼ごはんまで待ちきれず、朝ごはんとして白米とともに「しめ鯖」を食べる。

うん、上出来! あまりにおいしくて涙が出た。

サバを漬けていた酢は、捨てるともったいないので、キュウリの酢の物でも作ろうか。

EUの温暖化ガス削減

2007-03-09 09:27:54 | スウェーデン・その他の環境政策
EUの議長国は半年ごとの持ち回りであり、2007年前半はドイツが担当している。EUの首脳会議が今日から開かれているが、大きなテーマはもちろん「温暖化防止対策」だ。

1997年の京都議定書を受けて、EUは2008~2012年までにEU15カ国(東欧拡大以前の加盟国)全体で温暖化ガスを1990年比で8%減らすことを掲げている。この目標はあくまでもEU全体の話であって、その達成のために、EUは各加盟国にそれぞれ異なる削減目標を課している。この削減目標は、それぞれの国がそれ以前に取ってきた省エネへの取り組みや、経済状況を考慮して設定されているため、国によっては排出量を90年比よりも増やすこともできる。

上のグラフで分かるように、スペイン・ギリシャ・ポルトガルなどはEU15の中でも経済が立ち遅れているために、無理な削減目標を課して、経済の足をさらに引っ張ってもしょうがないということで、大幅な増大が許されているし、スウェーデンはそれまでの省エネの努力が考慮されてか、僅かながらの増大が許されているようだ。グラフの棒の長さは、実際にどれだけの温暖化ガスが増減するか、を示したものだ。つまり、ルクセンブルグのような小さな国がいくら努力して大幅に削減したところで、実際の排出量はさほど変わらないが、ドイツのような巨大産業国が減らせば、実際の効果は数倍大きい、ということを物語っている。

さて、この目標は実際に到達可能なのだろうか? 2004年の時点で、EU全体の排出量は実際は0.9%しか減少していない! しかし、既に各国で導入されてきた対策が今後、効果を見せ始め、また、さらなる取り組みをすることで、2010年までには8%削減が可能、という期待をEUは持っているようだ。

国別に見てみると、面白い。下のグラフは現在の調子で行けば2010年の段階で、各国がそれぞれに割り当てられた排出目標をどの程度、達成しているか?を示したものだ。

これによると、スウェーデンは排出を4%増に留めればよい、という目標に対し、それを8.4%も下回る(つまり、4.4%減)ことが可能、と見られている。同様に、イギリスやドイツも、自らに課せられた目標を大きく上回るだろう、と予測される。一方、現状のまま行けば、半分以上の国が目標を達成できないため、これらの国々ではさらなる努力が必要とのことだ。もともと15%増、というかなり“甘い”目標を課せられたスペインに至っては、それを達成できないどころか、それを31.2%もオーバーしてしまう、という始末だ。

(スウェーデンばかりを褒めてもしょうがないが、さらに言えば、GDP比で見た温暖化ガス排出量も、スウェーデンがEU内で一番少ないのだ。つまり、同じ額の経済生産を行うのに、他のEU諸国に比べてスウェーデンは一番少ない排出量でそれができる、ということなのだ。)

さて、この様な厳しい現状にもかかわらず、先ほども書いたようにEUは2010年前後までに8%減という目標を達成し、さらに、2020年までにさらに12%を削減することが可能だ(計20%減)、としている。それは、これまでの取り組みに加えて、再生可能なエネルギーをさらに活用したり、EU新加盟国やEU圏外の国々の排出削減に協力したり、CO2を地中・海中に閉じ込める、などといった新技術の活用に頼ることで、可能になるとしている。(なかなか非現実的な話に聞こえるかもしれないが、これは単なるパフォーマンスではなく、EUの環境政策をつかさどる首脳部は、これは実際に可能な目標、と捉えてEU内で具体的な議論を進めているとのことだ)

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さて、この様な状況を踏まえた上で、EU首脳会議の話に戻ろう。現在、EUの一部の国々は2020年までの削減目標を20%減から30%減へと大きく拡大しよう、と主張しているのだ。しかも、提唱しているのはスウェーデンとドイツなどこれまでの削減努力における優等国だ。そして、この厳しい目標達成のために、加盟国各国に拘束力を持つ達成目標を課そうとしているのだ。これに対し、他の加盟国からは、反発が起きている。そのため、今日から始まったEU首脳会議で、果たしてどのような結論が出るのか? それが注目されている。

(注)
上のグラフはEU環境庁(EEA)の報告書「Greenhouse gas emission trends and projections in Europe 2006」から引用しました。

飲みすぎで思いもよらぬ間違い…

2007-03-08 08:03:44 | Yoshiの生活 (mitt liv)
何だか、気が付いてみれば、先週は毎晩飲んでいた。

通訳のあとにKyotonC先生と一杯、夕食を外でしてその時に一杯、映画を見たあとに一杯、友だちと一杯、自宅で晩酌で一杯、etc。度を越さない限りは次の日がいくら平日でも大丈夫。しかし、限度を越えるときもよくあるもので・・・。

今日は妙なことに気が付いた。ヨーテボリ市ではハーフマラソン大会が5月半ばにあるが、その大会に去年の秋の段階で既に申し込んでいた。というより、申し込んだつもりでいた。参加費も払っていた。しかし、今日、メールをよくよく見てみると、僕が申し込んでいたのは本大会であるハーフマラソン(21km)ではなく、それに付随して行われる、ストックつき散歩大会(stavgång)全長7kmだった。

Stavgångというのは、上の写真のように、スキーのストックのような杖を付きながら歩く運動で、単に歩くだけではなく、腕も動かすので、上半身の運動にもなるというもの。中高年以上に人気の運動形態らしい。

間違いに気づいてあわてて、登録をしなおし、幸い本大会であるハーフマラソンにエントリーすることができた。思い起こしてみるに、昨秋、自宅のパソコンに向かって、インタネット上で登録をした時もかなり酔っていたような気がする。今回はちゃんと気づいたからよかったけれど、酔ったおかげで他にももっと馬鹿な間違いをしているのかもしれない、と思うと背筋がゾッとした。

女性議員比率 47.3%!

2007-03-05 09:05:05 | スウェーデン・その他の政治
昨年、2006年9月のスウェーデン総選挙では、ある記録がさらに更新された。当選した国会議員のうち、女性議員の占める割合スウェーデンの政治史上、過去最高の47.3%になったのだ。スウェーデンは70年代半ば以降、二院制を廃止し一院制にしているが、この349議席のうち、164議席が女性の手に渡ったのだ。2002年の総選挙でも、45.3%と世界的に見ても高い割合だったのだが、それがさらに上昇したわけだ。

各党を見てみると、やはり違いがあることが分かる。
_____左党 : 63.6% (全獲得議席数 22)
_____環境党 : 52.6%(同 19)
_____社会民主党 : 50%(同 130)
_____中央党 : 37.9%(同 29)
_____自由党 : 50%(同 28)
_____キリスト教民主党 : 37.5%(同 24)
_____保守党 : 43.3%(同 97)

やはり、左派の政党(左党・環境党・社民党)リベラルを掲げる政党(自由党)などでその割合が高く、保守色が強くなるにつれ低くなっているのは面白い。キリスト教民主党は、子育ての男女分担は各家庭が自分たちで決めるべきこと、と男女平等政策には一番消極的な政党だといわれているし、中央党は農村部を支持母体にしているだけあって、やはり支持層に保守性が強いこともあってか、割合が低い(といっても、40%近くだが)。

さて、なぜこの様に高い女性議員比率が達成されるのか? 日本じゃ、たとえ女性が立候補したところで、同じ選挙区に立候補している男性議員を打ち負かすことなんて、よほど知名度がない限り、むずかしいではないか! 日本の政界で活躍する女性政治家といえば、主に国会外から起用された女性閣僚か二世議員くらいしか、頭に浮かばないではないか? ということは、スウェーデンの有権者の男女平等に対する意識がそこまで高いからか?

答えとしては、もちろん有権者の意識の違い、ということも挙げられるだろうが、むしろ、決定的なのは選挙制度の違いだと私は思う。スウェーデンの総選挙は、すべての議席が比例代表制で配分される。つまり、有権者は立候補者個人の名前を投票用紙に記入するのではなく、支持する政党名を記入するだけなのだ。各政党は選挙に先駆けて候補者名簿リストを発表している。選挙における得票率に応じて、各政党に議席が配分される。各政党は、候補者名簿リストの上から順番に誰が議席に付くかを決めて行くのだ。(選挙区制としては全国を29の選挙区に分割する、中選挙区制度を採用。また、有権者は支持政党の候補者リストの中の誰を実際に当選させたいか、を指名できる補助制度もあるが、利用する有権者はあまり多くない。)

つまり、女性の当選者が多い原因は、有権者それぞれが女性候補者に挙(こぞ)って票を投じるためではなく、各政党が女性候補を候補者リストの上位のほうにも男性とバランスよく配置しているためなのだ。もちろん、各政党がなぜ女性をリストの上位にも配置しているかといえば、男女平等への取り組みを有権者にアピールするためであり、また、有権者も各政党にそれを常日頃から要求しているためなのであろう。

スウェーデンでは、税制面や育児政策などを始めとする様々な政策分野で、男女平等・男女同権に向けた政治運動やそれに応える政治改革が戦後(特に70年代以降?)盛んに行われてきた。そうした動きの中にあわせて党内の改革を行っていけない政党は、票の獲得すら困難になってきている(継続的なキリスト教民主党の低迷の一因もここにありそう)。しかし、男女の議席配分に関しては、最初から順調に進んできたのではなく、むしろ90年代に盛んになった女性議員を中心とした大きな政治運動の結果である、といったほうがいい。その運動に関しては、また近いうちに・・・。

便利なFinnair

2007-03-02 18:45:40 | Yoshiの生活 (mitt liv)
近いうちに日本へ帰省することになった。いつもは、スカンディナヴィア航空(SAS)ルフトハンザなど、Star Alliance系列を使うのだけれど、今回は別の航空会社を使ってみたいと思っていた。

どこかというと、フィンランド航空(Finnair)

別に私はムーミン共和国からのまわし者ではないけれど、何がいいかというと
・スウェーデンと日本を最短距離で結ぶ
・成田だけでなく、関空や名古屋にも乗り入れている。
・それでいて、値段が比較的安い(あくまでヨーロッパ発着の場合)

ということなのだ。

首都ヘルシンキの空港がハブになっている。日本からスウェーデンへ飛ぶときはシベリア上空を越え、モスクワ上空をかすめて、そのままフィンランドに舞い込む。そして、ヘルシンキ乗換えで、バルト海を飛び越えればもうそこはスウェーデン。

それに比べ、ヨーロッパの他の航空会社を使うと、コペンハーゲン(SASの場合)、フランクフルト(Lufthansa)、パリ(AirFrance)、ロンドン(British Airways)、アムステルダム(KLM)などがハブになっている。だから、日本からやって来るとスウェーデン上空を悠々と飛び越えて、上に挙げたような空港で乗り換えた後、来た道をまた戻るような形でスウェーデンへ飛ばなければならない。なので、二度手間なのだ。(どうせスウェーデンを飛び越えるなら、そのときにパラシュートで降ろしてくれたらいいのだけれど)

どれだけ違うかというと、今回私が買ったフィンランド航空のチケットだと
________成田-ヘルシンキ:10時間20分
________乗り換え:40分(おいおい、大丈夫か?)
________ヘルシンキ-ヨーテボリ:1時間25分
と、所要合計12時間25分

これに比べ、例えばAirFranceを使おうものなら
________成田-パリ:13時間20分
________乗り換え:2時間30分
________パリ-ヨーテボリ:2時間20分
所要合計18時間10分

搭乗時間だけで比較した場合でも、4時間近くも差がある。ロンドン・アムステルダム・フランクフルトなどで乗り換えた場合も、これと同じように余分に時間がかかるだろう。

フィンランド航空は、この地理的条件を生かして、ヨーロッパ・アジア間の路線に大きく力を入れているとか。ヨーロッパの航空会社各社が激しい競争の中で苦戦しているが、フィンランド航空だけは多少余裕に構えている、という記事を半年前に読んだ記憶がある。

それから、多くのヨーロッパ系航空会社が、成田のみ、もしくは、関空と成田に乗り入れているのに対し、フィンランド航空はここ1年ほどの間に名古屋にも乗り入れるようになった。(あまり名古屋に用事はないので、私には関係ないのだけれど)とにかく、関空にも成田にも乗り入れているので、今回の帰省では、関空から入国して、成田から出国する、という離れわざを使うことにした。

あと、最後に付け加えれば、フィンランドの公用語にはフィンランド語だけでなく、スウェーデン語も含まれているから、機内にはス語の新聞も置いてあるし、もしも何かあったときにス語でやり取りができる、というのは個人的には嬉しい。

(ちなみに、チケットの予約は代理店を通さず、フィンランド航空で直接やったが、スウェーデン国内の番号に電話をかけても、自動的にフィンランドのサービス窓口につながるらしく、いつもフィンランド訛りのスウェーデン語で応対される)

と、まあこれくらいフィンランド航空をベタ褒めしておけば、次に乗ったときにビジネス・クラスにアップグレードしてもらえるかな?


<後記>
ヘルシンキでの乗り換え時間40分に関して、Uppsala Invånareさんから、体験談を戴きました。この下のコメントをクリックしてご覧ください。

それから、日本でフィンランド航空の安いチケットを買った知り合いは、逆にヘルシンキで6時間半も待つ羽目になったこともあったので、いつもすんなり乗り換えができるわけではなさそうです。