スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

ビルマ動乱-日本はどう対応?

2007-09-29 17:03:41 | コラム
軍事政権がガソリン価格を急激に引き上げたことに端を発したビルマ(ミャンマー)のデモ騒動が深刻化している。治安部隊が発砲し、僧侶や民衆、そして日本人のジャーナリストが射殺される事態となった。

独裁政権は厳しい情報統制を敷き、事実上の鎖国状態を築いてきたため、ビルマの内情が国外に届くことはそれまで稀だった。しかし、ビルマの各地でデモが散発していることが8月後半から、スウェーデンのメディアでも流れるようになった。しかし、多くが携帯電話の動画で撮影したような、画質の悪いものだった。

だが、デモ活動が大規模になってきた過去2週間は、ほぼ毎日のようにニュースに鮮明な映像が見られるようになった。世界の人々の目は、ビルマの軍事政権が日増しに激しくなるデモに対してどう対抗するのか、に注目した。1988年の大規模な民主化デモの際には、軍が民衆に向けて発砲し、3000人以上が殺害されたのだった。
写真の出典:SRニュース

世界中が注目しているだけに、軍事政権はやりたいようにはできない。しかも、相手は社会地位の高い仏教僧侶だ。20年前のデモの主体は学生や普通の民衆だった。しかし、今回は僧侶が中心だ。ビルマでは来世に再び人間として生まれるために今の世で徳を積まなければならない。その一つが、寺院や僧侶に贈り物をすることらしいが、僧侶たちは政権関係者からの寄贈をも拒み始めたのだ。

尊敬の厚い僧侶たちを守るようにして、賛同する一般民衆が両側を取り囲み、一緒にデモに参加する姿は何とも健気だった。

このデモ活動が成功裡に終わるためには、彼らの努力だけでなく、諸外国からの圧力がカギになる。軍事政権による武力行使を断固として認めない、という態度を諸外国が取る必要があった。

EUアメリカは早い段階で非難の声明を出していた。国連としても安保理で非難決議を出すことが議論されてはいたが、常任理事国の中国とロシアが拒否権を発動する構えを見せていたので、実現しなかった。プーチンが独裁色を強めるロシアにしろ、天安門で民主化デモを武力で封じ込めた中国にしろ、ビルマの民主化など関心がないどころか、むしろ自分たちの国に飛び火してもらっては困るのだ。そのため、中国は「地域安定の維持を望む」と、むしろ軍事政権を擁護しているかのような声明を発表していた。

日本が果たせる役割は限定的なものに過ぎないようだが、武力行使以前の先週土曜日の段階で、ビルマの民主化活動家であり民主化運動をノルウェー・オスロ発信の衛星ラジオ・テレビ放送『ビルマ民主化の声』を通じて行ってきたKhin Maung Win氏は「現在、軍事政権側は世界の反応を見ながら、武力行使に踏み切るべきか否か、綿密に計算している。アメリカやEUだけでなく、日本を始めとするアジア諸国からの圧力が、今の危機的な状況では必要なのだ」と訴えていた。

ビルマに対する中国の影響力は絶大であるため、中国政府の出方が最大のカギを握るが、それが難しい状況では、ワラにもすがる思いで日本政府の厳しい対応に期待したのだろう。

ただし、彼の訴えを伝えたニュースの中では「日本はこれまでビルマの軍事政権体制をそれほど問題にしてこなかった」と厳しい解説が加えられた。(それを裏付ける日本の新聞記事

日本人のジャーナリストが殺害された今、日本政府の態度は当然ながら厳しいものになっているが、果たして武力行使が行われるそれ以前の段階で、日本としてビルマ民衆のためにできることはなかったのだろうか?

下のリンクは元大使の談話ということだが、あまりに受身的だとの印象を受ける。現状静観、もしくはもしも国連安保理が制裁措置を採ればそれに従うだけで、日本として積極的な措置を採る意思はあまり感じられない。民族間の友好関係を持ち出し、経済制裁を否定するのなら、本当にそれがビルマの人々になるのか、それをしっかり判断してから言うべきだろう。上の記事がいう「情緒的外交」とはまさにこのことだ。「日本政府としては、ビルマ政府が声明を受け入れ、経済制裁に至る前の段階で弾圧をやめるのが一番といえるだろう。」とは書くまでもないこと。ビルマ政府がそれに従わないとき、日本政府としてはどうすべきと彼が考えているのか、むしろそれが重要だと思うが。
元大使の談話

ミネラルウォーターって必要?

2007-09-25 23:46:05 | スウェーデン・その他の環境政策
ミネラルウォーターの売り上げは、毎年伸びる一方だ。一人当たりの消費量は年間27リットルと、15年前に比べると3倍近くになるという。スウェーデン製のミネラルウォーターはもちろん、隣国ノルウェー製のものや、フランスやイタリアから遥々運ばれてくるものもある。一方、スウェーデン製のミネラルウェーターは国外にも輸出されている。

スウェーデン製のRamlösa


(ちなみに、売り上げが伸びているとは言っても、ヨーロッパ内では25位とかなり低い。1位はイタリアで200リットル、その後にスペイン、フランス、ベルギーと続く)

一方、スウェーデンの水道水は、一般にとても水質が良いといわれている。ヨーロッパの中でも有数だとか。広大な自然から良質の地下水がとれるし、人口も少なく汚染源が限られているためだろう。上記の通り、スウェーデンのミネラルウォーター消費量は他のヨーロッパ諸国と比べたらかなり低いが、一つの原因は良質の水道水があることだろう。

とはいえ、消費量が伸びている事実は確かである。これは大きな無駄遣いではないか、と指摘する声があるが、もっともだ。まず、ペットボトルの使用によりゴミが増える。それに加え、トラック輸送に莫大な量のガソリンが消費されるので、エネルギーの無駄遣いになる。さらには、水道水に比べたら1000倍以上値段が高い

スウェーデンの水道水がそれだけ良質なのだから、一番いいのは水道水を飲料水にしたり、ペットボトルに入れて持ち歩くこと。ストックホルム大学の地質学のAnders Nordström教授も「スウェーデン人がミネラルウォーターを買わなければならない理由は全くない。スウェーデンの水道水は世界一とも言えるほどだから。」と断言した上で、「むしろ、ミネラルウォーターのほうが塩素やナトリウムの濃度が高いケースが多い。ペットボトルからも微量の化学物質(アンティモン)が流出している。」と指摘してる。

ストックホルム消費者協会の試算によると、去年一年間にミネラルウォーターの輸送のためにトラックから排出されたCO2は3.4万トンと、12500台の自動車の年間排出量に匹敵する、という結果が出ている。

アメリカでも一人当たりの年間消費量は125リットルと多い。その一方で、アメリカの多くの地域の水道水も良質で飲料水に適しているという。サンフランシスコでは、市長の提案で、今年の7月から行政機関でのミネラルウォーターの販売や設置は禁止され、職員は水道水を飲まざるを得なくなったという。ここでの根拠も、莫大な量のペットボトル廃棄物と輸送エネルギーの削減らしい。ただ、地元のミネラルウォーター業界の反発は根強い。ニューヨークでも、ミネラルウォーターをレストランで出すことを止め、水道水をフィルターに通したり、自前で炭酸化してテーブルに並べる動きもあるという。

スウェーデンでは特に目立った動きこそないが、多くのレストランでもミネラルウォーターではなく水道水がテーブルに並んでいることが多い。だから、今後の課題は、家庭や職場、外出中でのミネラルウォーターをいかに駆逐していけるか、ということだろう。温暖化対策や省エネへの関心の高まりと共に、無駄な長距離トラック輸送は極力減らそう! 生鮮食品や牛乳もなるべく地元の物を購入しよう! という動きが広まりつつある。ミネラルウォーターも例外ではない。

環境党(Miljöpartiet)所属で私より少し若いある議員のブログには、「スウェーデンでミネラルウォーターをペットボトルに入れて売るのは、サハラ砂漠で砂をビンに詰めて売るのと同じ」との皮肉が書かれていた。全くその通りだ。

一方、スウェーデンのボトル飲料水製造業者協会のホームページを見てみたら、「消費者はあえてミネラルウォーターを選んでいるのに、水道水を飲めと強いるのは非論理的だ」と不快感をあらわにしている。そう、最終的には消費者が選択権をもっているのだ。でも待てよ・・・、彼らは水道水とミネラルウォーターをちゃんと飲み比べた上で、あえてミネラルウォーターを選んでいるのだろうか・・・!? それより、むしろ広告や習慣につい流されているだけなのではないのだろうか・・・?

(注:スウェーデンの水道水の水質は良い、と書いたものの、水の硬さ・柔らかさが日本人の体質に合うかどうかは分かりません。ちなみに私自身は、困ったことはありませんが。)

笑う子も怯える ボンバルディア機

2007-09-22 05:36:31 | コラム
今年3月に伊丹発 高知行きの 全日空機の前脚の着陸装置が故障し、高知空港に胴体着陸をした。カナダ・ボンバルディア社製のDHC8-Q400型機だった。(別名Dash 8-Q400)
高知新聞社

それ以前にも、主脚や前輪部分などを中心にトラブルが続出していたという。
関連ブログ

そして、また同様のトラブルがSAS(スカンディナビア航空)の同型機で起きている。
写真の出典:SVT
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9月9日、デンマークのコペンハーゲンからオールボー(Ålborg)へ飛行中のSASの国内線機が、着陸直前になってから着陸装置に欠陥があることが判明。前脚を出したものの、固定を確認する表示が点灯しなかったのだ。空港上空を旋回し、燃料を使い切ってから、緊急着陸に踏み切った。

両脚を着地させたものの、右脚がボキッと折れ、エンジン、プロペラ、胴体を地面に接触させてしまった。そのまま、半円を描いて停止した。地面に叩きつけられ舞い上がったプロペラ片は客室内にも到達した。エンジンに引火したものの、消火活動が速やかに行われた。

73人の乗客乗員は無事脱出。大事には至らなかった。

ニュースに使われた動画 ← 鮮明です

その3日後の9月12日、今度はコペンハーゲンからリトアニアのリゾート地Palangaに向かっていた、同じくSASの同型機が飛行途中に着陸装置から異常がみつかり、首都ビリュニスに緊急着陸した。その際に、3日前と同様、脚が折れる事態となった。乗っていた52人全員は無事脱出した。

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デンマーク・スウェーデン・ノルウェーの国内線および国際線を網羅しているSAS(スカンディナビア航空)はこのDHC8-Q400型機を27機所有し、短距離路線に用いているが、この事件のあと、同型機の飛行をすべて取り止めている。

事故後の調査の結果、脚を固定しているボルトが錆(サビ)のために折れたことが分かった。

他の同型機25機の点検も行ったところ、これらのボルトにも同様のサビ侵食が見つかった。

SAS側は「メンテナンスのマニュアルに沿って、きちんと整備を行ってきた。問題となったボルトは15000時間の飛行の後に点検することとなっているが、まだその飛行時間に達していなかった。」と弁明する。世界中では同型機が200機ほど使われており、そのうち5割から8割に同様の問題があるものと見られている。

SASは事故以来、毎日100便近くの欠航を余儀なくされている。一日当たりの損失は1000~1500万クローナ。SASは今年の5月に大規模なストにあい、大きな損害を出したばかり。果たしてこの先、大丈夫か・・・?

そもそも、日本であれだけ同型機のトラブルが相次いだのだが、その際に何か対策は取られていたのだろうか・・・?

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<<<<速報>>>>
上の記事を掲載した直後、新たなニュースが入ってきた。
ドイツの航空会社Augsburg Airwaysが所有するまたもや同型機がミュンヘン空港に緊急着陸。速報のみで、詳しいことは不明。(9月21日23:05)

新政権誕生から1年

2007-09-19 07:08:54 | スウェーデン・その他の政治
ちょうど一年前に総選挙があり、保守党(Moderaterna)を中心とする中道右派の連立政権が誕生した。

総選挙に先駆けること数年前から、保守党は、それまでの新自由主義的政策路線を改め、税制による所得再配分制度を基本とする福祉国家モデルや、労使間の自主管理を基本とする従来のスウェーデン型労働市場モデルを尊重する、という方針に切り替えてきた。そのため、彼らを中心とする新政権の政策も、スウェーデン型福祉国家の抜本的な改革は行わず、部分的な修正にとどめてきた。そのため、今回の政権交代はmaktshift(権力の交代)であって、systemshift(システムの交代)ではない、といわれてきた。

さて、あれから経済も好調で、失業率も下方傾向にあるなど、政権党にとっては嬉しい限りだが、それとは裏腹に支持率は低迷している。実は、総選挙後3ヶ月ほどの世論調査で、すでに野党である左派ブロックの支持率が上回っていたのだ。
以前の書き込み:支持率の崩壊(2007-01-21)

最新の世論調査の結果もほとんど変わらない。
右派ブロック(政権党)41.9%
左派ブロック(野党)53.3%


政党別の支持率
左から:左党、社民党、環境党(以上、左派ブロック);中央党、自由党、キリスト教民主党、保守党(以上、右派ブロック)

出典:SVTニュース(2007-09-15)より


面白いことに、新政権の行った労働所得税の減税によって、実は国民の大部分の人の手取りが増えているのだ。(私の手取りも増えた! 月当たり1,2万円ほど)

平均的な共働きの家庭の場合は、労働所得税減税住宅税減税のために月当たり1900クローナ、可処分所得が増えた。一方、失業保険の保険料の引き上げや、労働組合費の非控除化自動車強制保険の保険料引き上げによって700クローナ出費が増えることになったが、それでも全体では月当たり1200クローナ(21000円)だけ可処分所得が増えているのだ。

イラストは同じくSVTのニュースより


それなのに、支持率はこの有様だ。

国民が政権党を支持するかしないかを決めるときに重要なのは「実際にどう変わったか?」という事実ではなく、「実際にどう変わった、と感じているか?」という主観的な認識のほうだ。SVTの世論調査によると「家計が豊かになったと感じている」のは19%に過ぎず、64%が「以前とほとんど変わらないと感じている」と答えている。一方で、国民の大部分が「新政権の政策によって恩恵を受けているのは主に高所得者だけ」という認識を持っているという。

上に挙げたように、新政権は、多くの国民の可処分所得を増やしたが、一方で出費も増やした。また、それ以外にも失業保険や疾病保険の給付額も減額したし、住宅税や資産税の減税は、大きな家や資産を持つ人々を特に優遇することになった。そのような「マイナス面」が国民には「プラス面」よりもより強い印象を与えているようなのだ。ラインフェルト首相の問題点は、世論とのコミュニケーション。政権側が考えているように、これらの改革がどうしても必要なのならば、それをもっと説得力のある形で、国民に説明する必要がある。しかし、メディアを通した主張はあまり行われていない。

また、ヨーテボリ大学行政学部のSören Holmberg教授は「財布が厚くなったからといって、国民がすぐ政権を支持するほど、単純ではない」と言っているが、まさにその通りだ。

もしくは、去年の総選挙の実質は、実は前首相ヨーラン・パーション(Göran Persson)に対する信任投票だった(つまり、反パーション票が右派ブロックに流れた)のだと見ることもできる。それならば、パーションが姿を消し、モナ・サリーンが社民党の党首になった今、再び社民党に票が戻ってくるのも、不思議ではないかもしれない。

最後になるが、現在の与党は、自らの支持者の間でも人気が低迷している。与党支持者の19%が「今の政権に不満」と答えているが、こちらのほうはむしろ「もっと抜本的な福祉の削減と減税、そして労働市場の規制緩和を期待していたのに、期待はずれだった」という理由が主であろう。つまり、現政権は左からも右からも不人気なのだ。

風刺画の作者殺害に懸賞金

2007-09-17 04:01:10 | スウェーデン・その他の社会
ムハンマドの風刺画論争のことを書いた。騒ぎは沈静化したかに見えたが、ここへ来て新たな展開となった。

土曜日、イラクのアルカイダを名乗る集団が、風刺画の作者であるLars Vilksと風刺画を掲載したオーレブロー市の地方紙Nerikes Allehandaの編集長を名指しし、彼らを殺害した者にそれぞれ10万ドルと5万ドルの懸賞金を与える、とビデオ映像の中で発表したのだ。Lars Vilksの首を切った場合にはさらに5万ドルが与えられるという。

現在、スウェーデン公安警察(Säpo)がその信憑性について分析中だ。しかし、どこまで真面目に受け止めていいのか、判断が難しいという。

また同じビデオの中で、スウェーデンの主要企業Ericsson、Volvo、Ikea、Scania、Electroluxを名指しし、これらもテロの標的にする、と言っている。これらの企業は、中東地域にある会社の施設の警備を強化するとともに、従業員には会社のロゴ付の服で表を歩かない、など、目立たぬ行動を取るよう指示してある、という。かわいそうなことに、これらの会社は自分たちとは全然関係ないことに巻き込まれてしまったのだ。

イスラム教徒といっても、ほとんどはテロなどとは無関係だ。ただ、一部の過激派組織が、ちょっとした機会をも利用して「イスラム教」対「キリスト教」という対立構造を煽ろうとしているようだ。アルカイダを名乗る集団がイラクやアフガニスタンでテロ活動を繰り返しているが、彼らの活動地域で自分たちの名声や人気を高めたり、新たな加入者を勧誘するためには「外の世界に大きな外敵がおり、自分たちの社会が危機に瀕している」ことを煽る必要がある。一種のナショナリズムと同じメカニズムだ。

スウェーデンにある2大イスラム教組織は、この殺害脅迫を強く批判し、脅迫を出している集団にアラビア語で、脅迫を取り消すよう、求めている。

ノルウェー・ジョーク

2007-09-16 06:03:45 | スウェーデン・その他の社会
ノルウェーが近代の歴史の中で始めて独立したのは、1905年。それまではデンマーク領だったりスウェーデン領だったりした。だから、スウェーデンにとってみれば、ちょっとした弟分

だから、その弟分をからかうためのジョークがいくつかある。お互い笑って済ませられる軽いジョークなので、外交問題になってお互いの旗を燃やしあったりすることはありません! 多分、国境の反対側には兄貴分をからかうジョークもあったりするに違いない!

私が人づてに聞いたものをいくつか紹介。基本的にオチは「ノルウェー人って、ちょっと抜けてて、お馬鹿さん」


A:「最近ノルウェーで話題になっている省エネの知恵を知ってる?」
B:「いや、しらないよ」
A:「お湯を沸かして余ってしまったら、捨ててずに、冷蔵庫に入れておくんだって。そうすれば、また使える、って話だよ。」


「私のノルウェー人の友達は、名前を『トーマス・ヒトラー』と言ったんだけれど、あまりに人がからかうものだから、思い切って名前を変えることにした。で、今では『フレデリック・ヒトラー』というんだ。」
(← オチ:皆が何をからかっていたのか、やっぱり分かっていない!)


スウェーデン人の旅行者スヴェンが、ノルウェーで路線バスの運転手に尋ねた。
スヴェン:「降りるのはバスの前から、それともバスの後ろから?」
運転手:「どっちでも構わないさ! だって、両方ともちゃんと停車するから。」


ノルウェー人同士の会話
A:「夕べ、おまえんとこ、カミナリが凄くなかったか?」
B:「さぁ、分からないね。夕べはお隣さんのところに遊びに行ってたから」
(← オチ:単にお馬鹿さん、とも、フィヨルドで阻まれていて、隣の家まで数十キロ離れているから、とも取れる)

あるノルウェー人が、映画スターにサインを求めた。しわくしゃの紙を差し出された映画スターは戸惑って言った。
映画スター:「ホントにこれにサインしてもいいのか?」
ノルウェー人:「大丈夫、家に帰ってから清書するから。」


Q:なぜノルウェー人はチューブ入りのキャビアをあまり食べないのか?
A:だって、彼らは舌がチューブの中に入らないんだもん。
(← オチ:チューブの使い方を知らない!)


ノルウェー人の宇宙飛行士2人が太陽へ旅する計画を立てていた。
A:「とっても熱くなるんだろうな」
B:「問題ないさ、だって俺たち夜飛ぶんだもん。」


Q:ノルウェーの潜水艦を沈めるにはどうしたらいいか?
A:入り口の扉をノックする。すると「何か用か?」と言いながら、中から開けてくる。(で、水が入ってくる)

Q:ノルウェーの潜水艦を再び沈めるにはどうしたらいいか?
A:今度は窓をノックする。すると「その手にはもう乗らないよ!」と言いながら、中から開けてくる。(で、水が入ってくる)

Q:ノルウェーの潜水艦を3度目に沈めるにはどうしたらいいか?
A:後ろの扉を開ける。
(← オチ:彼らの潜水艦には裏口が付いていたんですね! しかも無防備。)

スウェーデンの 9・11

2007-09-14 05:34:56 | コラム
9・11と言えば、もちろん2001年のアメリカ・テロがまず頭に浮かぶが、スウェーデンでは、もう一つ別の悲劇が思い起こされる。

時は2003年9月10日。スウェーデンの欧州統一通貨(ユーロ)への参加の是非を問う国民投票が、14日に控えており、賛成・反対、それぞれを主張する陣営の投票キャンペーンが終盤に差しかかっていた。

そんな時、当時の外務大臣Anna Lindh(アナ・リンド)は、ストックホルム中心街にあるNKデパートにショッピングに出かけた。国民投票の投票日直前にTV4チャンネルが企画していた討論番組に着る服を買うためだったのだ。公安警察の護衛も付けず、友人だけが一緒だった。

アナ・リンド(右) 写真の出典

その買い物の途中、突然、男に襲われ、ナイフで刺された。多量の出血と共に、すぐさま救急車でカロリンスカ大学病院へ搬送された。
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個人的な話をさせてもらえば、このニュースは速報を見たスウェーデン人のある友達が携帯メールで送ってくれので知った。すぐさま同じ寮に住む別の友達にメールを転送し知らせてあげると、その女の子からは「Anna Lindhは自分が一番尊敬する政治家。ぜひ助かって欲しい」と返事が来た。

次の朝はどんよりした曇り空だった。眠い目をこすりながら、大学へと足を運ぶと、冷たい風の中に半旗が翻っていた。見た瞬間、その半旗が何を意味しているのか理解できてしまったのが怖かった。
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彼女が搬送された大学病院では、夜通しの緊急手術が続いた。肝臓からの出血がひどく、大規模な輸血も行われた。しかし、手術の甲斐なく、彼女の肺は徐々に弱って行き、翌日11日の明け方5時29分、帰らぬ人となった。

その後、犯人は逮捕された。旧ユーゴ・セルビア生まれの男性で、幼少の時に親に連れられスウェーデンへ来たのだが、アイデンティティーの確立に失敗し、精神的な疾患を負っていたという。「内なる声」に導かれ、社会で地位を持つ誰かを殺害しようと犯行に及んだという。国民投票の直前だっただけに、政治的な意図があったのではないか、と疑われたが、そのような事実は浮かび上がってこなかった。(無期刑を受けた)

Anna Lindh(アナ・リンド)は、1994年に環境大臣に着任。当時、スウェーデンは不況にあり、環境政策への予算は削減を余儀なくされたが、一方で、アナ・リンド環境大臣は、国内の環境法制の強化やEUレベルでの環境政策の重点化に力を注いだ。また1992年に国連が開催したリオデジャネイロ会議後の実行プログラムである「アジェンダ21」の実施に努めた。

1998年には外務大臣に任命される(当時41歳)。彼女は、世界の紛争調停に意欲的で、そのためには、EUと国連の強化が鍵だと考えていた。2003年3月に米英軍がイラク侵攻を行った際には、こう言っている。
「"ett krig som förs utan stöd i FNs stadga är ett stort misslyckande".
国連憲章に拠り所を持たずに行われる戦争は、大きな失敗だ


今年も、彼女の死が9月11日に悼まれた。上の写真にあるのは、現在の社会民主党党首Mona Sahlin(モナ・サリーン)前外務大臣のJan Eliasson(ヤン・エリアソン)ら社会民主党の幹部。Jan EliassonはAnna Lindhの外務大臣時代に、外務省事務次官駐米大使を務め、またAnna Lindhのよき友であり理解者であった。 写真の出典

ムハンマド論争、今度はスウェーデンで・・・(3)

2007-09-12 06:20:03 | スウェーデン・その他の社会
ムハンマド論争において、政府は芸術家や新聞社を罰することはできないし、政府に責任を求めるのも筋違い、と書いた。では、国内外で起きている抗議活動に、政府は知らぬ顔をしていればよいのか・・・?

デンマークの騒ぎの時には、デンマーク政府はまさに「関与せぬ」の立場を最初の段階で貫いた。風刺画がデンマークの新聞へ掲載されたのは2005年9月末。それが国内のイスラム教徒に衝撃を与えた。その翌月、イスラム諸国11ヶ国の大使が、風刺画についての協議をデンマーク首相に申し入れるが、彼はこれを拒否したのだった。そうすることで、「表現の自由」の擁護を断固として示そうとしたのだった。

しかし、それが結果的に、騒ぎを悪化させることになった。12月には、デンマーク在住のイスラム教の代表団が中東諸国を巡り、風刺画とデンマーク政府の態度について現地の人々に伝えて回ったのだった。その結果、翌年2006年1月にはイスラム教諸国のデンマークからの大使召還や、デンマーク製品のボイコット運動が徐々に始まっていき、2月に入ると、デンマーク大使館の襲撃や暴動が各地で起こることになった。(逆に、デンマークの右翼政党などは、中東諸国を巡って情報提供したイスラム教代表団を槍玉に挙げて“売国奴”と非難した)

だから、いくら正論とはいえ、政府の頑な態度が逆に反感を買い、それが3ヶ月かけて増幅して行き、ついに爆発した、とも考えられる。

スウェーデン政府は同じ轍を踏まないように気を配った。スウェーデン首相、ラインフェルトは最初の段階でこそ目立たぬように努力して、

「スウェーデンはイスラム教徒もキリスト教徒も、神を信じる者も信じない者も、共に隣り合って生きていける社会であると強く主張したい。と同時に、表現の自由は、基本法(憲法)で規定されており、我々はそれを擁護している。そのため、新聞で何が書かれるべきか、について政治サイドは決定権を持たない。」

という政府見解の発表だけに抑えたものの、先週の火曜日はストックホルムにあるモスクを電撃訪問し、在スウェーデンのスウェーデン・ムスリム委員会(Sveriges muslimska råd)と話し合いを持った。

スウェーデン・ムスリム委員会への訪問

そこでは、スウェーデン政府としての立場を明確にする一方で、イスラム教徒の側が風刺画掲載に対してどのように感じているか、首相として理解を示すことに重点が置かれたようだ。ダイアログ(対話)は相互理解の土壌を準備し、問題解決の力強い武器になりうる。スウェーデン・ムスリム委員会はスウェーデン首相のこの訪問を積極的に評価し、「我々は、スウェーデン社会の機能の仕方と『表現の自由』の大切さについて、よく理解したつもりだ。この理解を国内および国外のイスラム教の人々に広く伝えていくよう努力したい」「騒動収拾のために我々にできることがあれば、首相を積極的に支援したい」とのコメントを示した。

ストックホルムのモスクにて

また、金曜日には在スウェーデンのイスラム教国20カ国の大使を首相官邸に招き、会談を持った。その会談に先駆けては、エジプトを始めとするいくつかの国が、その会談ではラインフェルト首相に対し、宗教冒涜を罪とする立法を始めとするいくつかの「要求リスト」を提出する、と噂されていただけに、注目された。しかし、会談では、成功裡に終わったようで、会場を後にする各国大使は「満足のいく会談だった」とコメントした。また、噂された「要求リスト」は提出されるどころか、話題にも上らなかったという。

とまあ、ラインフェルト首相の“チャーミング作戦”による積極攻勢は、今のところ効果を発揮しているようだ。これらの国々では、政府や宗教関係者が一般社会に対して持つステイタスが高い。だから、彼らをうまく味方につければ、民衆の大規模なデモやボイコットなど、今後の事態の深刻化を防げる可能性は高いのではないか、という私は気がする。

とはいえ、デンマークの例では、風刺画の掲載から3ヶ月以上も経った後に、騒動が爆発したことを考えれば、まだ予断は禁物だ。しかし、このまま収拾がつけば、危機に際しての政府の対応のお手本として、そして、対話を通して相互理解の態度を維持することの重要性を示す好例として、長く語り継がれるのかもしれない。

(終わり)

のどかな秋晴れ

2007-09-10 05:45:55 | Yoshiの生活 (mitt liv)
最近、堅い話題が続いてしまいましたので、今日は我が家からののどかな秋晴れをご覧くださいませ。

クリックすれば、写真が大きくなります


天気があまりにも良いので、自転車(ロードレーサー)で遠出してきた。市内から空港連絡バスで20~25分かかるヨーテボリ・ランドベッテル(Landvetter)空港が、チャリだと1時間ちょっとで行けることが分かった。しかも、高速道路ができる前の旧国道が今でも残っており、交通量の比較的少ないその旧道を通って問題なく行けた。(ちょっとメンテナンスが悪くて、路肩がボコボコになっている部分があるので注意)

で、今日は空港からさらに東進して、空港の裏をぐるっと回って帰ってきた。やっぱりいいな、スウェーデンは。郊外を自転車で走りやすいから。

ムハンマド論争、今度はスウェーデンで・・・(2)

2007-09-09 04:45:41 | スウェーデン・その他の社会
ムハンマド論争についての続きだが、問題の風刺画を掲載したのは前回挙げたオーレブロー市のNerikes Allehandaだけでなく、ウプサラ市の地方紙Upsala Nya Tidning他、いくつかの新聞もなども同時期に掲載していた。これまでは、なぜかNerikes Allehandaだけが抗議の対象になっていたが、今週金曜日にはウプサラでも新聞社の前で抗議活動が繰り広げられた。

ウプサラ UNTの前にて


前回書いたように、この問題は2点に集約される、と思う。(前回参照)

まず①についてだが、イスラム教国や宗教関係者は、新聞社に抗議するだけでなく、スウェーデン政府にも抗議を行い、さらに、宗教の冒涜に対しては、公権力によって適切な措置を下すよう要求している。イスラム教国の協力機構であるイスラム諸国会議機構(Organization of the Islamic Conference)の事務総長は、スウェーデン政府に対し、芸術家Lars Vilksと新聞社Nerikes Allehandaの両者を罰するよう求めまでしている

しかし、スウェーデンは言論・表現の自由を尊重する民主主義国であり、言論・表現を行う責任はその個人が負うことが原則である以上、政府はこのような民主主義の理念を解せぬ要求は断固として拒否すべきである。実際、スウェーデン政府は拒否している。

「民主主義の理念を解せぬ要求」と書いたが、抗議を行っているパキスタンにしろイランにしろ、強権的な国家に統治された社会だ(たとえイランでは選挙を行っているとしても)。従って、そのような社会では、その気になれば政府が公権力によって市民社会に介入するのは容易であり、また場合によってはそうすべき、と考えている人は多いようだ。だから、スウェーデン政府に謝罪と公権力の行使を求めている人々は、スウェーデンもそのようなタイプの社会だと誤解している。(公権力によるメディア介入は、中国がその良い例だ)また、イランやパキスタンなどでは、この事件を政治的に利用し、国民の目を国外に向けることで、内政に対してくすぶっている不満をそらしたい、という意図があることも忘れてはならない。

②の点については、芸術家本人は、芸術を通した表現の自由を主張することを目的としていた、という。しかし、本来の目的がいくらイスラム教自体を冒涜することでないと主張したところで、それが一部の人には「挑戦的(provocative)」であり冒涜である、と受け取られる危険性は十分に承知していただろう。デンマークのケースはもちろん知っていたであろうし、多文化の国であるスウェーデンで生活してきて、それを知らなかった、というのでは、あまりに幼すぎる。だから、そのような危険を冒してまでも、追求したい大義がこの風刺画にあったのか、と問いたい。かなり低俗な嫌がらせでしかない、と私は思うし、イスラムに対する軽蔑、もしくはそこまで行かなくても無理解・無知識がこの芸術家を突き動かしたのではないかと推測する。

興味深いのは、前回の書き込みに頂いたコメントにもあるように、ヨーロッパの一部の国々では、残虐なナチスによる戦時中の犯罪を否定したり、その程度を過少に評価するような発言を行った場合には、法律による罰則が加えられることだ。これは明らかに①の「表現の自由の原則」に反している。

ヨーロッパでは「反ユダヤ」の趣旨の発言には、過敏に反応される。だから、今回の風刺画ももしユダヤ人やユダヤ教を扱ったものであったのなら、もっと大きな社会問題になっていた可能性がある。とすれば、これでは、イスラム教の人々に目にはヨーロッパ人の「ダブル・スタンダード」と映っても無理もない。

このジレンマについては、以前ここで触れたので、それを参照してください。
以前の書き込み:
『言論の自由』にまつわるジレンマ(2006-02-23)

上のリンクで紹介したように、ある新聞の社説は「言論の自由は、やはり民主主義社会の根本の原則である。一方で、人々の人権や自由を侵害するような“危ないウソ”は、事実関係との突合せや、社会における活発な議論の中で、その根拠の脆弱さが暴かれるべきだ。法律による罰則を設けるのは、賢明だとは言えない。」と書いている。まさにその通りで、反ユダヤの趣旨であろうと、反イスラムの趣旨であろうと、それを法律で一方的に封じ込めてしまうのはよくない。

一方で、現代の多文化社会で生きている以上、他の文化や生活習慣、宗教に対する配慮と敬意は忘れてはならない。だから、それを怠った件(くだん)の芸術家は、批判されて然りであろう。また新聞が安易にそのような風刺を掲載しても良いのか、これは、政府が規制するのではなく、業界団体による自主監視や第三者機関による審査などをもっと活用するべきではないかと思う。

(続く・・・)

ムハンマド論争、今度はスウェーデンで・・・(1)

2007-09-07 07:32:35 | スウェーデン・その他の社会
2005年9月末にデンマークの有力紙Jyllands-Postenが、イスラム教の預言者ムハンマドをテロリストに見立てた風刺画を掲載し、その後、イスラム教諸国で大規模な抗議活動が起き、大使召還などの外交問題のほか、デンマーク製品の不買運動に発展したのはちょうど2年前の話だった。風刺画そのものがイスラム教を冒涜したと受け取られただけでなく、イスラム教では預言者を実際の物かたちとして表現することが禁じられていたことが、大きな原因であった。

以前の書き込み:
渦中のデンマーク(1)(2006-02-02)
渦中のデンマーク(2)(2006-02-04)
渦中のデンマーク(3)(2006-02-06)

それと似たような騒動が、今スウェーデンで起きている。

事の発端はこうだ。スウェーデン人の芸術家Lars Vilksが、ムハンマドを犬に喩えた風刺画を作品として作成した。彼は、その作品をいくつかの展覧会に出展しようとしたものの、宗教の冒涜としてイスラム世界から反発を受けることを恐れた主催者側によって、展示を全て拒否された。Lars Vilksのそもそもの意図は、まさに「芸術のよる表現の自由の限界」を試すことであったのだが、それに同調してくれる主催者はいなかった。

問題の風刺画。製作者Lars Vilks本人のホームページより

この手の「宗教の冒涜」vs「表現の自由」の論争は、表現の自由を重んじる西側諸国では常に問題となる。そんな中、ストックホルムから西へ200km近く行ったところにある、オーレブロー(Örebro)市周辺の地方紙Nerikes Allehandaは、表現の自由を擁護するという趣旨の社説を今年8月終わりに掲載したのだが、その際に、問題となっていた風刺画も一緒に添えて掲載したのだった。

この掲載の直後、まずイラン大統領Mahmoud Ahmadinejad(核開発や人権など様々な面で欧米から問題視されている)が新聞社に対して公に抗議を行った。また、パキスタンではデモが起き、スウェーデン国旗とスウェーデン首相を真似た人形が燃やされた。また、新聞社の地元オーレブロー市でも新聞社前で謝罪を求める抗議活動が展開された。さらに、もともとの発端であるLars Vilksのもとには殺人を仄めかす脅迫が届いたため、彼は自宅を離れ、潜伏をする羽目になった。

ラインフェルト首相に見立てた人形、らしい。パキスタンにて

今のところ、デンマークでの前例ほどには騒ぎが深刻化していないが、この問題に関しての争点はデンマークのケースと同様、次の2点に集約されるのではないか? と私は思う。

風刺画の掲載は、新聞社Nerikes Allehandaが行ったことであり、よって責任を負っているのは新聞社であって、スウェーデン政府の関与することではない。よって、スウェーデン政府に抗議するのは筋違い

② 芸術家Lars Vilksは“芸術”という名の下にこの風刺画をあえて描き、一部の人々を不快にさせたわけだが、そこまですることに大きな意義があったのか?

(長くなるので、続きは次回)

国防大臣、突如の辞任

2007-09-06 01:23:59 | スウェーデン・その他の政治
保守党(穏健党)を中心とした現連立政権は支持率が低迷しており、首相ラインフェルトのリーダーシップが問われてきたが、ここに来て、さらなる問題が発生した。国防大臣Mikael Odenberg突如、辞任を表明したのだった。

記者会見で辞任を表明するOdenberg

国防大臣は近年の国防費の削減とそれに伴う国防軍の縮小に大きな危機感を抱いてきており、これ以上の縮小が続くと、スウェーデンが参加している国際平和維持軍の活動に大きな支障が出る、特に、装備の維持や更新が難しくなる、との見方を強くしていた。また、スウェーデンは従来、中立国として自国の武器は基本的に自国で賄う、という立場を採ってきたが、国防費の縮小で、開発活動も今後は難しくなる、と考えていたようだ。

一方、財務大臣Anders Borgのほうは、国防費をさらに削減することで、保守党が公約として掲げてきた減税を可能にしたいと考えてきた。8月の段階でそのような考えをメディアに発表した。首相はその考えに賛意を示したものの、国防大臣とは事前にコンセンサスが取れておらず、この二人の間に大きな亀裂が生じたのだった。

内閣はもうすぐ来年の予算案を国会に提出するため、今は内閣と各省の間で激しい折衝が続いている。国防費は武器調達維持費に関して30~40億クローナの削減を余儀なくされ、それに応じることができなかった財務大臣は、辞任という形で、財務大臣と首相に最後の抵抗をしたのだった。「数字だけが先行するばかりで、どこに削減の余地があるのか、とか、具体的な長期プランなどの土台がないまま予算作りが進んでいる」と顔をしかめる。

Mikael Odenbergというと、1991年から保守党の国会議員として活動してきた重鎮。しかも、ここ数年の保守党の路線・イメージ変更(中道寄り)首相Reinfeldt財務大臣Anders Borg労働市場大臣Sven Otto Littorinと共に支え、保守党を中心とした連立政権の誕生に大きく貢献した立役者。

だから、そんな彼が、国防省の側に立ち、辞任にまで踏み切ったということは、財務大臣との軋轢がそれほど大きかったものだと見られる。一方、ラインフェルト政権にとっては、自党の閣僚を、しかも、予算折衝の真っ只中に失うことで、さらに大きな苦難に立たされることになった。リーダーシップの弱さとメディアを通じた世論とのコミュニケーション不足が、さらに追及されそうだ。

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さて、辞任から3時間後に新しい国防大臣が任命された。現通商担当大臣Sten Tolgfors(ステーン・トリフォシュ)だ。彼は、去年の総選挙直後に同職を辞任したMaria Boreliusに代わって、通商大臣として突如、入閣することになった。
以前の書き込み:
発足当初の内閣
一週間で辞任
そして、今回も思いがけず、国防相という重い職に就くことになった。

苦境に立つソラマメ君と、新しい国防大臣

面白いことに、彼は若い頃に徴兵を拒否し、兵役の代わりに別の社会的活動で補ったという。だから、そんな彼が国防大臣としてどう活躍してくれるか、ある意味、興味深くもある。

『ノルウェー語』に進出!

2007-09-04 05:48:54 | Yoshiの生活 (mitt liv)
あまり人に自慢できることはないけれど、あるとすれば小さい時からの持っている向上心。何か一つのことを成し遂げようと努力する。そしてそれがある程度、達成されると、その場に安住していられず、次の一歩を踏み出そうとする。

で、この秋から、新しいことに少し手をつけることになった。何かというと・・・、
『ノルウェー語』

今まで何度かノルウェーに足を運び、一番最近では、スウェーデンの北部の町キルナから自転車でノルウェー国境を越え、ナルヴィークを経て、ノルウェーの北部に岬のように突き出した諸島群・ロフォーテン諸島を自転車で旅した。

ノルウェーに行くたびに、スウェーデン語を話せば現地の人は大体理解してくれ、現地の人のノルウェー語も半分くらいは聞き取れる。しかし、やはり両者の間には語彙や文法、母音・子音の使い方に関して、システマティックな違いがあり、発音もいくら真似ようと思っても難しい。一方、これまでに世界のいろんな言語を耳にしてきたけれど、私の耳にはノルウェー語スウェーデン語韓国語と並んで美しい言語のように思われる。だから、いつかちゃんとした教育を受けてみたいと考えていた。

ついこの間、スウェーデンの大学教育が定員割れをしている話を書いた。ヨーテボリ大学の北欧学科の北欧諸言語コース(アイスランド語、デンマーク語、ノルウェー語)も同じで、6月の第一次選考で、どうもほとんど埋まらなかったようだ。なので、第二次選考に私が応募したら、受講を許可してもらえたのだった。(スウェーデンの大学では、日本のように“大学に入学して4年間在籍する”という形を取らず、単独のコースを受講することもできる)

コースは夜間部で、毎週月曜日の18~21時。今日から始まった。祖先の一部がノルウェー系のスウェーデン人や、配偶者がノルウェー人であるスウェーデン人の他に、これからノルウェーへ行って、仕事をしたい(医者・看護士・薬剤師etc)というスウェーデン人もいた。(物価が高いノルウェーでは給料も高い。しかも慢性的な労働力不足なのだ。)

教官はノルウェー人で、ノルウェー語で授業を進めるが、我々生徒の側はまだスウェーデン語で話していい。毎回19:00~19:30はケーブルテレビでその日のノルウェーニュースを見る。早速10月終わりにあるという1回目の試験の去年の問題を見せてもらったが、基本的なことばかりで安心した。無理なくやっていけそうな気がする。

スウェーデン・ノルウェー連合時代の国旗

ちなみに、ノルウェーは1814~1905年はスウェーデンと同君連合を形成し、半ばスウェーデンの一領邦だったこそあるものの、それ以前にデンマークの支配下であったために、ノルウェー語はデンマーク語の影響を強く受けている。また、ノルウェー語にはBokmålNynoskというかなり異なる言語が存在する。

思わず吹き出す 路上ジョーク

2007-09-02 03:02:40 | コラム
いつもは路面電車で通過するだけの市内のある場所を歩いてみたら、変なものを発見した。最初は何か?と思ったけれど・・・、

よくみると「歩行者専用道」の路上マークに誰かが付け加えたのだ・・・。


お父さんに連れられる子供。しかし、その子が頭の中で想い描くのは、お母さんも一緒にいる幸せな3人家族

離婚率の高い、スウェーデンを風刺したジョークかなと思い、思わず笑ってしまった。

公共の場の落書きは街を醜くするだけでいつもは許せないけれど、こういうウィットが利いていて、見る人をちょっとだけ幸せな気分にさせてくれるのはいいなと思う。

(注:2つの写真で欠け方が微妙に違うのは、別々の場所で撮影したためです)