軍事政権がガソリン価格を急激に引き上げたことに端を発したビルマ(ミャンマー)のデモ騒動が深刻化している。治安部隊が発砲し、僧侶や民衆、そして日本人のジャーナリストが射殺される事態となった。
独裁政権は厳しい情報統制を敷き、事実上の鎖国状態を築いてきたため、ビルマの内情が国外に届くことはそれまで稀だった。しかし、ビルマの各地でデモが散発していることが8月後半から、スウェーデンのメディアでも流れるようになった。しかし、多くが携帯電話の動画で撮影したような、画質の悪いものだった。
だが、デモ活動が大規模になってきた過去2週間は、ほぼ毎日のようにニュースに鮮明な映像が見られるようになった。世界の人々の目は、ビルマの軍事政権が日増しに激しくなるデモに対してどう対抗するのか、に注目した。1988年の大規模な民主化デモの際には、軍が民衆に向けて発砲し、3000人以上が殺害されたのだった。
写真の出典:SRニュース
世界中が注目しているだけに、軍事政権はやりたいようにはできない。しかも、相手は社会地位の高い仏教僧侶だ。20年前のデモの主体は学生や普通の民衆だった。しかし、今回は僧侶が中心だ。ビルマでは来世に再び人間として生まれるために今の世で徳を積まなければならない。その一つが、寺院や僧侶に贈り物をすることらしいが、僧侶たちは政権関係者からの寄贈をも拒み始めたのだ。
尊敬の厚い僧侶たちを守るようにして、賛同する一般民衆が両側を取り囲み、一緒にデモに参加する姿は何とも健気だった。
このデモ活動が成功裡に終わるためには、彼らの努力だけでなく、諸外国からの圧力がカギになる。軍事政権による武力行使を断固として認めない、という態度を諸外国が取る必要があった。
EUやアメリカは早い段階で非難の声明を出していた。国連としても安保理で非難決議を出すことが議論されてはいたが、常任理事国の中国とロシアが拒否権を発動する構えを見せていたので、実現しなかった。プーチンが独裁色を強めるロシアにしろ、天安門で民主化デモを武力で封じ込めた中国にしろ、ビルマの民主化など関心がないどころか、むしろ自分たちの国に飛び火してもらっては困るのだ。そのため、中国は「地域安定の維持を望む」と、むしろ軍事政権を擁護しているかのような声明を発表していた。
日本が果たせる役割は限定的なものに過ぎないようだが、武力行使以前の先週土曜日の段階で、ビルマの民主化活動家であり民主化運動をノルウェー・オスロ発信の衛星ラジオ・テレビ放送『ビルマ民主化の声』を通じて行ってきたKhin Maung Win氏は「現在、軍事政権側は世界の反応を見ながら、武力行使に踏み切るべきか否か、綿密に計算している。アメリカやEUだけでなく、日本を始めとするアジア諸国からの圧力が、今の危機的な状況では必要なのだ」と訴えていた。
ビルマに対する中国の影響力は絶大であるため、中国政府の出方が最大のカギを握るが、それが難しい状況では、ワラにもすがる思いで日本政府の厳しい対応に期待したのだろう。
ただし、彼の訴えを伝えたニュースの中では「日本はこれまでビルマの軍事政権体制をそれほど問題にしてこなかった」と厳しい解説が加えられた。(それを裏付ける日本の新聞記事)
日本人のジャーナリストが殺害された今、日本政府の態度は当然ながら厳しいものになっているが、果たして武力行使が行われるそれ以前の段階で、日本としてビルマ民衆のためにできることはなかったのだろうか?
下のリンクは元大使の談話ということだが、あまりに受身的だとの印象を受ける。現状静観、もしくはもしも国連安保理が制裁措置を採ればそれに従うだけで、日本として積極的な措置を採る意思はあまり感じられない。民族間の友好関係を持ち出し、経済制裁を否定するのなら、本当にそれがビルマの人々になるのか、それをしっかり判断してから言うべきだろう。上の記事がいう「情緒的外交」とはまさにこのことだ。「日本政府としては、ビルマ政府が声明を受け入れ、経済制裁に至る前の段階で弾圧をやめるのが一番といえるだろう。」とは書くまでもないこと。ビルマ政府がそれに従わないとき、日本政府としてはどうすべきと彼が考えているのか、むしろそれが重要だと思うが。
元大使の談話
独裁政権は厳しい情報統制を敷き、事実上の鎖国状態を築いてきたため、ビルマの内情が国外に届くことはそれまで稀だった。しかし、ビルマの各地でデモが散発していることが8月後半から、スウェーデンのメディアでも流れるようになった。しかし、多くが携帯電話の動画で撮影したような、画質の悪いものだった。
だが、デモ活動が大規模になってきた過去2週間は、ほぼ毎日のようにニュースに鮮明な映像が見られるようになった。世界の人々の目は、ビルマの軍事政権が日増しに激しくなるデモに対してどう対抗するのか、に注目した。1988年の大規模な民主化デモの際には、軍が民衆に向けて発砲し、3000人以上が殺害されたのだった。
世界中が注目しているだけに、軍事政権はやりたいようにはできない。しかも、相手は社会地位の高い仏教僧侶だ。20年前のデモの主体は学生や普通の民衆だった。しかし、今回は僧侶が中心だ。ビルマでは来世に再び人間として生まれるために今の世で徳を積まなければならない。その一つが、寺院や僧侶に贈り物をすることらしいが、僧侶たちは政権関係者からの寄贈をも拒み始めたのだ。
尊敬の厚い僧侶たちを守るようにして、賛同する一般民衆が両側を取り囲み、一緒にデモに参加する姿は何とも健気だった。
このデモ活動が成功裡に終わるためには、彼らの努力だけでなく、諸外国からの圧力がカギになる。軍事政権による武力行使を断固として認めない、という態度を諸外国が取る必要があった。
EUやアメリカは早い段階で非難の声明を出していた。国連としても安保理で非難決議を出すことが議論されてはいたが、常任理事国の中国とロシアが拒否権を発動する構えを見せていたので、実現しなかった。プーチンが独裁色を強めるロシアにしろ、天安門で民主化デモを武力で封じ込めた中国にしろ、ビルマの民主化など関心がないどころか、むしろ自分たちの国に飛び火してもらっては困るのだ。そのため、中国は「地域安定の維持を望む」と、むしろ軍事政権を擁護しているかのような声明を発表していた。
日本が果たせる役割は限定的なものに過ぎないようだが、武力行使以前の先週土曜日の段階で、ビルマの民主化活動家であり民主化運動をノルウェー・オスロ発信の衛星ラジオ・テレビ放送『ビルマ民主化の声』を通じて行ってきたKhin Maung Win氏は「現在、軍事政権側は世界の反応を見ながら、武力行使に踏み切るべきか否か、綿密に計算している。アメリカやEUだけでなく、日本を始めとするアジア諸国からの圧力が、今の危機的な状況では必要なのだ」と訴えていた。
ビルマに対する中国の影響力は絶大であるため、中国政府の出方が最大のカギを握るが、それが難しい状況では、ワラにもすがる思いで日本政府の厳しい対応に期待したのだろう。
ただし、彼の訴えを伝えたニュースの中では「日本はこれまでビルマの軍事政権体制をそれほど問題にしてこなかった」と厳しい解説が加えられた。(それを裏付ける日本の新聞記事)
日本人のジャーナリストが殺害された今、日本政府の態度は当然ながら厳しいものになっているが、果たして武力行使が行われるそれ以前の段階で、日本としてビルマ民衆のためにできることはなかったのだろうか?
下のリンクは元大使の談話ということだが、あまりに受身的だとの印象を受ける。現状静観、もしくはもしも国連安保理が制裁措置を採ればそれに従うだけで、日本として積極的な措置を採る意思はあまり感じられない。民族間の友好関係を持ち出し、経済制裁を否定するのなら、本当にそれがビルマの人々になるのか、それをしっかり判断してから言うべきだろう。上の記事がいう「情緒的外交」とはまさにこのことだ。「日本政府としては、ビルマ政府が声明を受け入れ、経済制裁に至る前の段階で弾圧をやめるのが一番といえるだろう。」とは書くまでもないこと。ビルマ政府がそれに従わないとき、日本政府としてはどうすべきと彼が考えているのか、むしろそれが重要だと思うが。
元大使の談話