後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

山道を独り歩み宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を想う

2014年10月04日 | 日記・エッセイ・コラム
先週の9月28日から3日間ほど水上高原に遊びました。

宝川温泉に降りて行く急な山道を、私は独りでゆっくり歩いていました。健脚の家内は駆けおりて行き、姿が見えません。
まわりには人が居なくて自分独りだけが自然の中に溶け込んでしまったようです。
下の写真のような谷川の音が耳を聾せんばかりに響いています。

そして谷底に広がる大きな露天風呂への小道には下のような野菊が咲いています。

その時、何の脈略も無く、宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」を思い出したのです。

谷の向こうの尾根の樹林の上を銀河鉄道の列車が走っている錯覚にとらわれたのです。とにかくつまらない錯覚です。
遠い、遠い昔の幼少の頃に闇につつまれた向こうの山の中腹に狐火の行列を見たことを思い出しました。それは松島の奥の宮戸島にある寺に泊まった夜ことでした。現在、考えてみると、それも錯覚だったと思います。
しかし錯覚は人間の気持ちを豊かにします。人生を味わい深いものにします。

そう言えば宮沢賢治のことについては何度もブログに書いてきました。
そこで帰宅後、その幾つかを読み返しました。http://yamanasi-satoyama.blog.ocn.ne.jp の2013年12月に数編の記事があります。
一つだけご紹介します。 「今年のこのブログの掲載記事を振り返って(4)宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」」をご覧いただけると幸せです。その抜粋をほんの少しだけ下に再掲載いたします。
・・・・宮沢賢治は悲しい、美しい物語を沢山書きました。

その物語の基調低音は「他人の幸福のための自己犠牲」というものでした。
彼は法華経の精神をそのように理解し、実行しようとして苦しんだのです。
38歳で亡くなるまでの短い人生を苦しんだのです。
随分と昔に亡くなった人ですが、彼の作品は時代を越えて現在の日本人の心に澄んだ美しい鐘の音を打ち鳴らし続けています。
・・・・以下略。そして「銀河鉄道の夜」のあらすじを以下にお送りします。・・・・
夏の夜空にかがやく天の川には銀河が流れていて、そこに鉄道があり列車が走っているという話です。人間は死んで天に登り、星になる。

ですから銀河鉄道の汽車に乗っている人は死んだ人です。主人公のジョバンニ少年が、星祭りの夜に水死した親友のカンパネルラを探しに行きます。カンパネルラは、水に落ちて溺れそうになっている友人のザネリを助けるために飛び込んで、水死したのです。一方ザネリは助かるのです。

カンパネルラを探そうと暗い丘に登って行きます。そしてジョバンニは、いつの間にか銀河鉄道の汽車に乗っているのです。そして其処でカンパネルラを見つけ、一緒に汽車の旅をします。
その列車にはいろいろな人が乗ってきます。ただ一つだけご紹介すれば、大きな氷山にぶつかった豪華客船の沈没の時、無理にボートに乗らずに死んでしまった少女と弟がぬれ鼠で乗って来るのです。大学生の家庭教師も一緒です。3人は皆、沈没の衝撃で靴を失い、裸足です。それがいつの間にか温かい柔らかい靴を履いています。それがこの汽車の不思議なところです。童話ですから「タイタニック號」という名前は書いてありませんが、私はそのように想像しています。
最後に、一緒に乗っていたカンパネルラもみんなも銀河鉄道の列車から消えて行きます。ジョバンニは降りて現世に帰る時が来ます。親友のカンパネルラと永遠の別れです。ジョバンニは現世に戻り、病気の母親を助け、真の幸福を求めて元気よく生きて行きます。
もう一度読んでみてこの作品のキーは死んでしまった愛する人と再会するという奇蹟です。再会出来るために重要なのは、ジョバンニとカンパネルラの心温まる強い絆です。カンパネルラは川に落ちたザネリを救って、自分が死んでしまうのです。友のために死んだ者は天国へ行くのです。行方不明になったカンパネルラの捜索を見ながら、彼の父が自分の腕時計を凝視して、キッパリ言うのです。「もう駄目です。落ちてから45分たちましたから。」 この一言に父の悲しみが溢れています。ですからこそジョバンニは死せるカンパネルラともう一度会わねばなりません。・・・・・以下省略します。
淋しい谷川へ降りて行く道を独り歩きながら想ったことを書いてみました。
下に銀河鉄道の列車のイラストと窓の外に見えた不思議な白い鳥のイラストを示します。

上の写真の出典は、http://blogs.yahoo.co.jp/rocky1010akio/folder/1148396.html?m=lc&p=5 です。

上の写真の出典は、http://www.tokyo-np.co.jp/tochigi/watarase/1998/11/ です。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人 )


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