日本 2023年1月
【人物】「ロシア人の心に共鳴する日本語」日本語の独学用教科書の編纂者へのインタビュー
2023年1月28日, 18:18 (更新: 2023年1月28日, 21:44)
Sputnik日本
複数の国際的な言語学のポータルのデータによれば、世界でもっとも学習者の多い言語は、英語、フランス語、中国語、スペイン語、ドイツ語、日本語、イタリア語、ロシア語、韓国語、アラビア語であるが、ロシアでも、このランキングはほぼ同じである。日本文化をよりよく知るため、日本の同僚や友人たちとコミュニケーションをとるため、日本に旅行するため、そして日本で仕事をするため、多くのロシア人が習得する言語として日本語を選んでいる。
日本語の勉強を始めるきっかけは、アニメ、日本の詩歌、活け花、盆栽、また空手、柔道、合気道などが多い。しかしこんな面白いきっかけもある。シリーズの日本語コースで学んでいるある女性は、なぜ日本語を始めたのかというアンケートに、フィギュアスケート選手の羽生結弦に感銘を受けたことを挙げている。
またもう1人の受講者は、「自分の飼っている芝犬と、芝犬の母国語で話したいと思ったから」と打ち明けている。とはいえ、それがどんなものであろうと、主なきっかけは日本への関心である。「スプートニク」は、日本語のオンラインコースを作成・運営し、独学用の教科書を編纂したアレクサンドル・ヴルドフさんにインタビューを行った。
アレクサンドル・ヴルドフさん
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スィクティフカル出身のアレクサンドルさんは、スィクティフカル大学の物理数学学部を卒業し、学校の教師として働いていた。ロシアで最初に作られたコンピュータを習得し、コンピュータについて指導を行うようになった。
ヴルドフさんは独学で日本語を学ぶようになったのだが、自著の中で、日本語学習の困難さや日本語を勉強するなかで直面した「落とし穴」について読者に紹介している。そんなヴルドフさんは最近、モスクワで漢字についての連続講座を開いた。
「スプートニク」からのインタビューの中で、アレクサンドル・ヴルドフさんは、日本語に対する秘めたる思いについて語ってくれた。
「心のための日本語」あるいは漢字に対する恐怖心を取り除く方法
わたしは、1990年代初頭に、日本語に関する情報を収集し始めました。わたしが手に入れた数少ない教科書は、これまでまったく知らなかった漢字に直面する読者が抱く独特の心理状況を考慮したものではありませんでした。概して、漢字に直面することで、その人は、自分は日本語を理解することなんてできないと思い、勉強するのをやめてしまうのです。
日本語の勉強を始めてから、わたしはそれと並行して、簡単な教科書を書き始めました。簡単に日本語に「浸れる」ような本です。これは短い15課のレッスンで構成される教科書で、自分のサイトで公開したところ、たちまち人気となりました。教科書は本当に大好評で、ぜひ続きを作ってほしいと依頼されました。
しかし、わたしは、日本語と漢字の学習には、もっともよいとされている教科書よりももっと多面的なアプローチが必要だと思いました。わたしは何か自由な形のエッセーのようなものを書くというアイデアを長いこと温めていました。そして最初の「漢字随筆」が出来上がりました。これが読者に大好評でした。日本語を勉強する人たちに足りていなかったのが、まさに日本語と漢字についてのシンプルな本だったのです。
そして、次々とエッセーを出しました。日本語について、また中国や日本の歴史について、自らいろいろ教えてくれるとても多くの人たちがわたしを助けてくれました。エッセーが20作品になったとき、わたしはそれを1冊の本にして、「漢字随筆」と名づけて出版しました。
読者たちは、モスクワの大きな書店でこの本を買ってくれました。なぜなら多くの人にとって、「漢字随筆」は、日本語との出会いのときに直面する困難を克服できるほど、漢字が好きになる本になったのです。気楽にすっと日本語の世界に没頭する。
2冊目の本「心のための日本語」の執筆にとりかかるとき、わたしはこれを読んだ人々が、ページをめくるたびに、まるでスポンジが水を吸うように、日本語を吸収してもらえるようなものにしたいと考えました。そこで、日本語で小説を書き、そこに文法や漢字についてできるだけ詳しい説明を加えるという課題を据えました。
そして、できるだけ、固い内容の教科書ではなく、教育の程度に関係なく、誰もが理解できるものにしたいと思いました。そして独学用テキストを書くというアイデアが生まれました。基礎にしたのは、藤原潤子が翻訳した2つの物語です。本には、特別に編纂した辞書をつけ、文章の書き方も工夫をして、テキストを短い文章に区切り、漢字のテキストとラテン文字のテキストを併記し、それぞれにコメントを添えました。
そして、次々とエッセーを出しました。日本語について、また中国や日本の歴史について、自らいろいろ教えてくれるとても多くの人たちがわたしを助けてくれました。エッセーが20作品になったとき、わたしはそれを1冊の本にして、「漢字随筆」と名づけて出版しました。
読者たちは、モスクワの大きな書店でこの本を買ってくれました。なぜなら多くの人にとって、「漢字随筆」は、日本語との出会いのときに直面する困難を克服できるほど、漢字が好きになる本になったのです。気楽にすっと日本語の世界に没頭する。
2冊目の本「心のための日本語」の執筆にとりかかるとき、わたしはこれを読んだ人々が、ページをめくるたびに、まるでスポンジが水を吸うように、日本語を吸収してもらえるようなものにしたいと考えました。そこで、日本語で小説を書き、そこに文法や漢字についてできるだけ詳しい説明を加えるという課題を据えました。
そして、できるだけ、固い内容の教科書ではなく、教育の程度に関係なく、誰もが理解できるものにしたいと思いました。そして独学用テキストを書くというアイデアが生まれました。基礎にしたのは、藤原潤子が翻訳した2つの物語です。本には、特別に編纂した辞書をつけ、文章の書き方も工夫をして、テキストを短い文章に区切り、漢字のテキストとラテン文字のテキストを併記し、それぞれにコメントを添えました。
漢字は、わたしにとって、楽しめる媒体です。わたしにとって漢字は、おそらく、自分自身が楽しんでいる人生そのものなのです。漢字に対する興味は、無意識のうちに、子どもの頃からありました。漢字はその秘密に満ちた形で、わたしの想像をかき立てました。
その後、漢字と日本語について少し理解し始めたとき、漢字が、日本語と中国語では少し異なる意味合いを持つことを理解しました。中国ではこれは基本的な表記文字ですが、日本語における漢字は文章を精神化し、意味のある完全なイメージにするものなのです。文法的なニュアンスは表音文字、つまりひらがなとカタカナにあります。つまり書体はその機能と原則において、ロシア語や英語の文字とそれほど変わらないのです。
日本語はロシア人の心に響く
外国語学習センターから、講演をしたり、日本語の授業をお願いされることがあるのですが、わたしのアプローチ法は、見知らぬ言語の現実という果てしない海の中でもがくのではなく、言葉そのものを愛で、楽しみながら、なめらかに前進していくというものです。
現在は日本語の学習に関する情報がたくさんあります。誰でもインターネットを持っています。しかし、経験のない新参者を厳しい日本語の文字という崖へと押し流そうとする大波が押し寄せるこの果てしない海に出ていくためには、足を滑らせたり、転ばないようにするための支えが必要です。
日本語を勉強し始めたばかりで、わたしの助言を求めてくるすべての人に、わたしはこう言っています。「お金を稼ぎたいなら中国を勉強した方がいい、少なくとも、努力した分、物質的な見返りがあるでしょう。しかし、もし自分の二次元の世界観を三次元の多様なものに変えたい、人生を多面的なものにし、より色鮮やかなものにしたいなら、日本語を勉強すべきだ」と。
しかも、日本語というのは、常に、何か心に訴えかける、魔法めいた、変わったものを見つけようとするロシア人の心に響くものです。学習の進度にかかわらず、日本語は人生に対する見方を変え、人生をより豊かにより興味深いものにしてくれるものなのです。