韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の男女関係に絡むうわさを紹介した記事を書き、朴氏らの名誉を毀損(きそん)したとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(49)の判決公判で、ソウル中央地裁の李東根(イ・ドングン)裁判長は17日、加藤氏に「朴氏を中傷する目的はなかった」として無罪(求刑懲役1年6月)を言い渡した。韓国メディアによると検察は「判決文の内容を検討し、控訴するかどうか決める」としている。無罪の背景は何か? ジャーナリストの田原総一朗さん(81)が解説した。

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 まず前提として、無罪判決は当然だということ。

 「元側近の男性と会っていた」といううわさを記事にした朝鮮日報はおとがめなしで、その記事を引用した支局長だけが裁かれるなんてありえない。立件、起訴されたこと自体がおかしい。韓国では11月にも従軍慰安婦問題の研究家が在宅起訴されている。言論を弾圧する国家と言わざるをえない。

 もちろん判決には、事前に韓国外務省が裁判所に対して「日韓関係を考慮して善処してほしい」と要請したことが影響していると思う。日本では考えられないことだが、外務省も裁判所も要請の事実を公開している。裏で圧力をかけていたなら、それはそれで問題という気はするが、公開しているからまだマシだ。

 ならば、なぜ韓国外務省はそのような要請をしたのか。これは11月に3年半ぶりの日韓首脳会談が第2次安倍政権で初めて実現したという両国間関係を考えてのことだろう。

 ただ、慰安婦問題は当初は見込まれた年内の妥結には至らなかった。両国間の考えにはまだまだ距離があるということ。日韓関係の改善には時間がかかりそうだ。(談)