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ザ・名も無きランナー

50才から始めたマラソン。こころと身体が一つになって燃焼している感じが好きです。楽しんで走っていきたいと思っています。

DOMSってなんだ?

2009年01月04日 | 参考資料
 冬たけなわ。この時期の外ランはスノーターサー(or スノーランナー)で走っている。正直言って私は寒いのが(暑すぎるのはもっと)苦手だから冬の外ランはとても辛い。しかしそれ以上に室内でのトレッドミル走が性に合わず、なんとか頑張って外ランに挑戦し続けている。そうやって外を走っていると、カーブでの方向転換時や、路面の凹凸で足をとられた時などに、ふだん使っていない筋肉を使うらしく、夏と同じコースを走っているにもかかわらず、走後に筋肉痛を感じるようになる。このような運動直後でなく、2,3日してから生じてくる筋肉痛をDOMS(delayed onset muscle soreness=遅発筋肉痛)という。

 以前述べたように、かつてこれは筋肉に溜まった乳酸が原因と考えられていたが、現在では運動の結果引き起こされた筋損傷により、筋のタンパク質が漏出して炎症反応が生じ、周囲の痛覚受容体が刺激されて痛みが起きると考えられている(1)。この現象はほとんどの人々が運動した後に経験していると思うが、特にダウンヒルランニングなどの奇異性(伸張性)筋収縮を伴う運動やふだんし慣れない運動の後に出現し、痛みのピークは運動後24時間から72時間の間に起こり、その間筋力の低下、可動域の制限、神経筋機能の低下が持続する(1)。

 DOMSへの対策としては現在のところ以下のことが検証されているようだ(1)(2)。
 ① 抗炎症鎮痛剤、ビタミンC(3)などの抗酸化サプリメントの効果を支持する研究はない。
 ② 運動後のマッサージ(3)、ストレッチ(4)、冷却(5)の有効性に関しては研究者間で意見の一致が見られていない。
 ③ ウォームアップは有効。短縮性筋収縮運動は伸張性筋収縮運動によって生じるストレスに対して身体の準備性を高める効果がある。短縮性筋収縮運動を事前に行うことで筋の温度が上昇すれば、筋や結合組織の粘性が減少し、筋組織の断裂に対する抵抗性が高まり、筋の弾性が上昇する。
 ④ 筋伸張性筋収縮運動を1~6週以内に反復実施することで、筋損傷からの回復が早まり、その後に生じるDOMSの軽減が期待される。
  
 実際にDOMSを軽減させる方法としては、Szymanskiが以下のガイドラインを提唱しているという(1)(2)。
 ① サイクリングや軽いジョグなどの全身のウォームアップを5分間。
 ② 実際にその後に行う運動で使う筋肉のウォームアップを15~20分。例えば、スクイーズ、キック、ランジ、スクワット、ストレッチなど(6)。
 ③ 運動プログラムの開始時には、ダウンヒルやプライオメトリック(7)などの強力な伸張性筋収縮運動による負荷は加えない。
 ④ 運動プログラムの実施では、運動の強度と持続時間を徐々に上げていく。
 ⑤ DOMSの引き金となった運動を1~6週以内にもう一度実施して最後までやり遂げること。

 運動後にDOMSの生じる時期はトシをとるにつれて遅れて生じるようになると言われているが、これにも定説はないようだ(8)。例えば、トシをとると炎症反応の出現が遅れるから痛みも遅れて生じるという説と、トシをとるとそもそも若い頃のような激しい運動をしなくなるからという説がある。

 私の場合、トシをとってもいつも同じような負担の少ない慣れた運動をしている限り、あまりDOMSは生じてこない。たまに違った運動や違った動きをするからDOMSが生じてくるのだろう。そういう意味では冬に外ランをすることは、カーブや路面の凹凸でのいつもと違う微妙な動きによって筋肉への負担を大きくしている可能性が高い。私のような年配者は、無理せずそろそろ室内ランに避難した方が安全なのかもしれない。いよいよ今日から常夏コースが使えることだから。

<参考資料>
(1)Delayed onset muscle soreness exercises
 → http://www.sportsinjurybulletin.com/archive/1077-muscle-soreness.htm

(2)DOMS - Delayed Onset Muscle Soreness
 → http://blog.goo.ne.jp/admin.php?fid=editentry&eid=7273f89d19974c3c7cb56eb6cd82f15b

(3)Delayed Onset Muscle Soreness (DOMS)
 → http://www.sport-fitness-advisor.com/delayed-onset-muscle-soreness.html

(4)Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise
 → http://www.mrw.interscience.wiley.com/cochrane/clsysrev/articles/CD004577/frame.html

(5)Ice-water immersion and delayed-onset muscle soreness: a randomised controlled trial.
 → http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17261562

(6)How to Perform a Lunge with Glute Squeeze Leg Exercise
 → http://www.ehow.com/video_2365383_perform-lunge-glute-squeeze-leg.html

(7)『Plyometric』関連Movie
 → http://www.anapnet.com/ent/video/Plyometric

(8)歳をとると筋肉痛が遅れて起こるのはなぜ?
 → http://www.ugets.com/jitugetu-dat/21.html

こんなマラソン大会もあるそうだ

2008年12月01日 | 参考資料
 先日ノエルのパパさんのブログを拝見し、貴重な情報が得られたので紹介します。それはワイオミングマラソンについての記事からです。

 アメリカは中西部のワイオミング州、子どもの頃のテレビ番組で「ララミー牧場」というのがあったのですが、ご記憶の方もいることでしょう、そのワイオミング州ララミーの近くで毎年5月に行われているマラソン大会、それがこのワイオミングマラソン

 場所は州都シャイアンとララミーのほぼ中間地帯にある国有林Medicine Bow National Forest内。自然豊かな丘陵高地のダートコースで、距離は5km、ハーフ、フル、ダブルの4種目が行われる。2650mのスタート地点から2400mの地点まで下って折り返す。この間気候は変化に富み、気温も4℃から16℃まで変動する。スタート時刻は午前6時(5kmは午前8時)で、暗くなり次第コースは閉鎖されるという。

 ノエルのパパさんが指摘しているように、この大会の注目すべき点は二つ、経費削減と環境保護にある。途中約5km毎にエイドステーションが設置されており、ゲータレード、水、軽食が提供されるが、コップ類は用意されておらず、必要な人は自分でカップや水筒を持参し、自分で汲んで飲まねばならない。また途中でゴミを散らかした場合はその時点で失格となるのだという。そして、レース場ないし会場に残された衣類や個人の所有物は、引き取りにくるよう連絡することなく、すべて慈善団体に寄付されるとのこと。経費削減と環境保護という観点で非常に徹底された大会運営は、今後のeRCとかちのハンドメイドな大会運営に十分に参考になるものではないかと思われる。

 参加費用は5kmで25ドル、ハーフで35ドル、フルで45ドル、ダブルで55ドル。払い戻し不可で、収益は地元の少年少女の倶楽部に寄付されるのだという。レース終了後は、完走者全員が勝者という観点から、順位の表彰はなく、フルとハーフの完走者には特製メダルが、ウルトラ(ダブル)の完走者には特製のベルトバックルが贈られる。またゴール地点では軽食が提供されるとのこと。

 このコンセプト、良いんじゃない?

乳酸・覚え書き(Ⅲ)

2008年11月03日 | 参考資料
<乳酸閾値の意義>
 ここでもTime-to-runの記述(7)を中心に話を進める。
 血液中の乳酸濃度を測定することでトレーニングをモニターできるという考えがある。その理論的根拠は以下のとおりである。ランニングのスピードが上がっていくと筋が必要とする酸素量が十分に供給できないポイントに達し、酸素を必要としないエネルギー源が不足分のエネルギーを補うために必要となる。これが血液中の乳酸濃度の不釣り合いな増加を引き起こし、これが無酸素閾値として認められているポイントになる。これはまた乳酸閾値または乳酸変換点とも呼ばれる(以下ヘルストレーナーである中田氏の図が参考となる(10))。
 しかしこの考えには2つの問題点が潜んでいる。ひとつは、筋が決して無酸素な状態にはならないと言うこと。つまり血液中の乳酸濃度で測定される不釣り合いと思われる増加には他の理由がありそうだということ。もうひとつは、変換点をなしているいわゆる不釣り合いと思われる増加が実際には滑らかで緩やかなものであり、これが正しくないと言うこと。したがってランニングパフォーマンスをモニターするためには、血液中の乳酸濃度を用いない別な方法が必要とされるであろう。
 もし血液中の乳酸濃度が徐々に上昇する異なったランニングスピードで測定されるとしたら、速度が上昇するにつれ乳酸濃度も増加するカーブを描くことになる。この描かれたカーブの位置は体力レベルによって異なるであろう。ランナーの体力が向上すればするほど、カーブはより右側にシフトするであろう。このことはいずれの乳酸濃度でもそれに対応したランニングスピードは以前よりもアップしていることを意味する。しばしば4mmol/lという乳酸濃度でのランニングスピードが基準値として用いられ、トレーニングでのスピードの目安とされている(11)。つまりランナーが乳酸濃度4mmol/lに相当するスピードで毎週何度か走り、場合によってはこれ以上の時もあり、もちろん回復ランの時にはこれ以下となる、というようなことである。もちろん体力が変化してカーブが移動すれば、これらのスピードも変化するので、新たなカーブを決めなければならなくなる。
 確かにこれは目安としては素晴らしいが、果たしてどれだけのランニングが4mmol/lの乳酸濃度に相当するのか、一般のランナーがどうやって知るのかが疑問である。よく考えてみれば、4mmol/lというのも全く任意に選択した値である。乳酸濃度のカーブを決定することの現実的な価値は、トレーニングによってそれがどれだけ移動するのかをモニターすることにある。ある乳酸濃度で以前よりもより速く走れるようになっていることが望ましい結果なのである。こうしたテストはトレッドミルやスピードを注意深くコントロールしたトラックにおいて可能となるが、実際には主に研究目的で行われているのが本当のところである。

 以上、最近の乳酸に関する知見を垣間見てみたが、和田氏ら(12)が指摘しているとおり、近年は乳酸と運動の関係についての考え方が転換期に差し掛かってきているようで、今後その推移を注意して見ていく必要がありそうだ。

<参考資料>
(7)Lactic acid and running: myths, legends and reality:
http://www.time-to-run.com/theabc/lactic.htm
(10)乳酸とトレーニング:
http://www1.ocn.ne.jp/~gigi9191/newpage1nyusantotraining.html
(11)OBLA:
http://vivi.dyndns.org/W/38
(12)筋収縮における乳酸の役割:
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/51/3/229/_pdf/-char/ja/


乳酸・覚え書き(Ⅱ)

2008年11月03日 | 参考資料
<マラソン後の筋肉痛との関係>
 Time-to-runの記述(9)によれば、強度の運動後に生じる筋のこわばりや筋肉痛が乳酸の増加によって引き起こされる、というのは誤った考えであるようだ(以下はTime-to-runの記述に従う)。疲労によって生じる筋肉痛の原因についてはまだ十分に分かっているとは言い難いが、ラン後の筋肉痛の程度がランの強度と持続時間によることを多くのランナーは知っている。特に平地や登り坂よりも下り坂を走った後の方が筋肉痛がよりひどいと感じられるが、実は血液中の乳酸濃度は下り坂の場合が一番低い。つまりレース後の筋肉痛は乳酸濃度の一番低い場合で強く感じられるわけで、このことからも筋肉痛の原因が乳酸の増加によるという考えは排除できる。
 ウルトラマラソンの翌日にとった血液サンプルを調べてみると、損傷を受けた筋から遊出してくる酵素CKが非常に高くなっていることが判明する。これは筋繊維の微小な断裂や破壊が生じていることを反映しており、筋のダメージの指標となる。これらの筋を顕微鏡下で観察するとこうした損傷を視覚的に確認することができる。また血液中のヒドロキシプロリン値を測定することで、筋の内部や周囲にある結合組織の破壊の程度も知ることができる。これらのことからレース後の筋肉痛は筋の損傷と結合組織の破壊から生じていると考えられる。
 速く走るまたは下り坂を走ることは、平地を走ることよりも筋繊維と結合組織により大きなダメージを与える。その理由は奇異筋収縮による。ランニングサイクルで足が地面につく時に大腿の筋肉は身体を支えるために収縮している。しかし次に引き続くランニング動作の結果として、筋肉は収縮しているにもかかわらず同時に強制的に引き延ばされることになる。引き延ばされる一方で同時に収縮するということがまさに奇異筋収縮ということであり、筋繊維にとっては最大のダメージとなる。
 筋がダメージから回復していない時のランニングは回復を遅らせる可能性があり、筋のこわばりが残っている間はトレーニングを控える方が良いかもしれない。乳酸を流し出すという目的で行われるレース後の疲労抜きランに回復を早めるという根拠はないようだ。十分に回復した場合には筋は以前よりも同様の運動に対する抵抗力が高まっており、それが6週間持続すると考えられている。したがってウルトラマラソンレースの4~6週前に短い下り坂のレースやトレーニングを行うことは効果的と言える。
 かつては疲労物質であると考えられていた乳酸であるが、実は筋から放出された乳酸は肝でブドウ糖に合成されエネルギー源として使用される。したがって乳酸は疲労の原因であるというよりは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)の低下を遅らせる役割を果たしていると言う方がより適切なのである(7)。

<参考資料>
(7)Lactic acid and running: myths, legends and reality:
http://www.time-to-run.com/theabc/lactic.htm
(9)Post run stiffness:
http://www.time-to-run.com/theabc/postrun.htm

乳酸・覚え書き(Ⅰ)

2008年11月03日 | 参考資料
 別海パイロットマラソンの終盤に吐き気が続いたことがしばらく気になっていた。そんな時にカナダさんがブログ(1)で、水泳の後にも吐き気が生じることを書いていたので興味を持って調べていたら、過剰な運動によって血液中に乳酸が蓄積される(2)と高乳酸血症となり、腹痛、嘔気、嘔吐が出現し、それが高度になると致死的な乳酸アシドーシス(3)に発展する危険性があるとの記載を見つけた。実際に私の場合にそれが当てはまるのかどうかは分からないのだが、せっかくだからこの機会に乳酸のことを多少しつこく調べてみた。

 Wikipedia(4)(5)によれば、乳酸(Lactic acid,またはlactate)は、化学式はCH3CH(OH)COOHで、IUPAC名は2-ハイドロキシプロパン酸という。動物では、正常の代謝過程や運動時の無酸素過程でピルビン酸から酵素LDHを介して絶えず作られており、産生が除去よりも上回った時に血中濃度が上昇する。マラソンと乳酸との関係については、次の3点について押さえておくことが重要に思われたので、以下にまとめてみる。
 ① 乳酸アシドーシスとの関係
 ② マラソン後の筋肉痛との関係
 ③ 乳酸閾値の意義

<乳酸アシドーシスとの関係>
 メリーランド大学医療センターのHP(2)によれば、乳酸は身体の酸素レベルが低下した時に産生され、これが血液中から除去される速度を上回った時に乳酸アシドーシスが発症するという。原因としては、強度の運動である場合が多く、またある種の疾患、例えば敗血症、呼吸不全、AIDS、癌、腎不全でも生じることがあり、さらに糖尿病治療薬であるメトフォルミンが原因となる場合もある。血液が酸性化することにより、嘔気、脱力といった症状が出現するので、このような場合には血液の電解質をチェックすることが必要である。治療は背景にある医学的問題を是正することであるとのこと。
 ところで身体の酸素レベルの低下には、呼吸不全などのように組織への酸素供給が低下する場合と、強度の運動のように組織での酸素需要の増加が考えられる。マラソンのような強度の運動時には筋でのエネルギー需要が高まり酸素の供給量も増えるが、乳酸の権威である八田氏(7)によれば、ブドウ糖の分解によって生じるピルビン酸の産生量も増えるため、これをより素早く分解する経路として乳酸産生が高まるのだという。すなわち強度の運動時に乳酸が増えるのは、酸素不足というよりはエネルギー産生が増えたことによる必然的な結果であるようだ。人間の場合、安静時の血中濃度は1-2mmol/lであるが、激しい運動の最中には20mmol/l以上に増加するという(5)。
 従来はこのように血液中の乳酸が増加してくることが血液を酸性化させ、その結果乳酸アシドーシスが発展してくると考えられていたが、Wikipedeiaの説明(5)によれば、ここには別な反応が関与しているようだ。というのは、乳酸にはH+を放出する能力がなく、人間の身体組織の正常環境下では酸として存在することができない(7)らしいからである。Robergsらの研究(8)によれば、アシドーシスの発展に寄与しているのは、ブドウ糖の分解によってエネルギー源として大量のATPが産生されるが、この大量のATPが加水分解によってエネルギーに変換される時に必然的に大量のH+が放出され、これがpHの低下を引き起こしその累積的結果としてアシドーシスの状態がもたらされる(5)のだと言う。

<参考資料>
(1)サロマ・アゲイン:http://ameblo.jp/knd/theme-10003144968.html
(2)University of Maryland Medical Center:
http://www.umm.edu/ency/article/000391.htm
(3)NRTIによるミトコンドリア障害:
http://www.bms.co.jp/medical/sizai/nrti-ishimuke.pdf
(4)乳酸:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%B3%E9%85%B8
(5)Lactic acid:http://en.wikipedia.org/wiki/Lactic_acid
(6)新たな乳酸の見方:
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/pdf/200610/0610_4750.pdf
(7)Lactic acid and running: myths, legends and reality:
http://www.time-to-run.com/theabc/lactic.htm
(8)Biochemistry of exercise-induced metabolic acidosis:
http://ajpregu.physiology.org/cgi/content/abstract/287/3/R502