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ザ・名も無きランナー

50才から始めたマラソン。こころと身体が一つになって燃焼している感じが好きです。楽しんで走っていきたいと思っています。

カーボローディング

2008年10月18日 | 参考資料
1 伝統的なカーボローディングの方法(3)

 カーボローディングは運動能力を増強させる戦略方法のひとつで、競技を行う前の週に2段階に分けて実施されるのがふつうである。ただしその運動競技が1時間以上の高い強度の持続を必要とするようなものでなければ妥当しない。

<第1段階>
 レースの1週間前から炭水化物の摂取を総摂取カロリーの40~50%に抑え、代わりにタンパク質と脂質の摂取を増やす。トレーニングはふつうのレベルで実施する。これにより体内の炭水化物の貯蔵量が減少し、カーボローディングのための空きスペースが確保される。
<第2段階>
 レースの3,4日前からは、炭水化物の摂取を毎日の総摂取カロリーの60~70%に増やす。脂質を多く含む食物を切り詰めて、炭水化物を多く含む食物を摂るようにする。トレーニングを縮小し。グリコーゲンの貯蔵量の減少を避ける。レース前の1,2日は完全休養とする。

2 カーボローディングの理論的仮説

 擬人化した表現で言えば、前半の3日間に炭水化物の少ない食事をとることで、身体は自らのグリコーゲン貯蔵量に不足が生じていて、通常よりもグリコーゲンを多く貯蔵しなければならないと考えるようになる。後半の3日間は、炭水化物を多く摂取することにより、身体はグリコーゲン貯蔵を回復させ、その際いくらか余分に補充しようとする、ということである。(1)
 カーボローディングは1967年にスウェーデンのSaltinとHermansonによって発表された研究に由来する概念である。彼らは、持久系運動の数時間ないし数日前に炭水化物の摂取量を増加させることによって、筋肉のグリコーゲンを有意に増加させることができることを、筋生検による調査によって明らかにした。また筋肉のグリコーゲンの貯蔵量を減少させるような長時間の激しい運動の直後に炭水化物を多く摂った場合に、筋肉のグリコーゲンレベルが最適になることを示した。しかしながら、1939年同じくスウェーデンのChristensenとHansenは、激しい運動の直前に炭水化物を多く摂るとパフォーマンスが低下することを報告している。これは炭水化物の負荷により低血糖反応が引き起こされるためと推測される。(2)

3 カーボローディングの副作用(1)(2)(3)

 カーボローディングに効果があるとされるのは1時間以上の高度な持久系運動に限られる。実施の際にはいくつかの注意点と副作用についても理解しておく必要がある。

� 注意点
・前半の3日間においても、毎日の身体の主要な機能を維持するためには、1日約60gの炭水化物が必要であり、全く摂取しないというわけにはいかないこと。
・後半の3日間の高炭水化物食の時に食べすぎは禁物であることと、同時に適量のタンパク質、ミネラル、ビタミン、水分の摂取が欠かせないこと。またこの際ふだんよりも水分の摂取量が増える傾向にあること。
・あらかじめカーボローディングを行っていたとしても、レースの間中、血糖値を一定に維持し続けるためには、途中で果実を摂取したりスポーツドリンクを補給したりするなどが必要であること。

� 体重増加
・グリコーゲン1gにつき3gの水が一緒に貯蔵される。したがって最大限にカーボローディングをした場合にはレース開始前に2~3kgの水を体内に抱え込んでしまうことになる。1,2kgであっても体重増加がパフォーマンスを妨げる可能性があるならば、カーボローディングはやめた方が良い。

� 消化不良
・レース前の1,2日は繊維質を含む食物は制限した方がよい。豆類、シリアル、ブロッコリーを摂取すると腹痛が生じたり,お腹が張ったり、軟便になったりする。

� 血糖値の変化
・カーボローディングは血糖値に影響を与え、血糖値が上がると反応性にインシュリンの分泌量も増える。それによって脂肪の貯蔵が増加し、脂肪の分解過程が干渉を受けると、ランでのエネルギー産生機構にも影響が及ぶ。またその他のホルモンバランスにも妨害が生じ、血圧は上昇し、血中のコレステロールと中性脂肪のレベルも上昇する。
・血糖値の上昇に反応してインシュリンの分泌量も増えるので、これにより低血糖が生じてしまう場合があり、糖尿病の人は開始前には必ず医師に相談するべきである。
・カーボローディングによる低血糖反応は、判断能力の低下、集中力の低下を引き起こし、パフォーマンスを測定する能力に影響を与えるとともに、無気力になったり、気持ちが滅入るような場合も見られる。

4 カーボローディングに対する誤った考え方

�筋肉のグリコーゲンだけがランのエネルギー源なのか?(2)(3)
 筋肉のグリコーゲン貯蔵量は少量であり、5~10kmのランには十分量であっても、90~120分を越える強度の運動では、筋肉のグリコーゲンは使い果たされてしまう、と言われることがある。しかしこれは正しくないだろう。先にグリコーゲンを消費し尽くしてから次に脂肪酸の分解にエネルギー産生の主役が交代するわけではなく、実際には両方のエネルギー産生機構は、運動の強度や持続に応じて滑らかに連動して同時に作動しているものと考えられる。多くの持久系運動、例えばトライアスロンやフルマラソンの場合では、65~75%が有酸素運動で行われており、実際に半分以上は脂肪の分解で得たエネルギーが利用されているという。脂肪はふつう体内に十分量貯蔵されており、それを上手く燃焼させていけばエネルギー源として不足することはないはずである。重要なことは高品質のスポーツドリンクなどで、ランの間中、血糖値を一定に維持していくことである。

�カーボローディングによって良好なパフォーマンスが得られるのか?(2)
 カーボローディングの理論的仮説によれば、低炭水化物食を3日間続けた後、高炭水化物食を3日間続けた場合に、筋肉のグリコーゲンが増加すると考えられていたが、炭水化物50%食の後に、炭水化物70%食を3日間続けても同様のグリコーゲン増加が認められ、また単に炭水化物50%食を1週間続けただけでも、ある程度のグリコーゲン増加が認められたという。またその際のパフォーマンスに有意な差は認められなかったという。さらに、貯蔵されたグリコーゲンレベルが持久系運動のスピードの差に影響を与えるというエビデンスは、残念ながら今のところ無いようである。

5 より現実的なカーボローディングの方法(4)

 レースの前週にバランスの良い食物を摂取しておけば、それだけですでに筋肉には十分なグリコーゲンが貯蔵される、というのが最近の考え方である。
 マラソンの前週にはトレーニング量を徐々に減少させ、炭水化物を60~70%含むバランスの良い食事を摂るようにし、過剰な減食はしないのが良い。もし体重制限食を行っているならば、基礎代謝量まで摂取カロリーを上げたほうが良いようだ。
 もしパスタパーティ(レース前夜にパスタをたっぷり食べること)をしたいのなら、レース2日前の夜にした方がよい。しかし決して大食いはしないこと。この時カフェインとアルコールは極力ひかえ、飲むなら水にする。食物繊維を大量に摂ることは勧められない。中庸に徹することが肝要だ。
 1日前には、豆類、ブロッコリー、シリアルといったお腹が張る原因となる食物や高繊維質の食物は摂らない。乳糖不耐症の人は牛乳も飲まない方が良い。香辛料の利いた食物は腸管の動きを亢進させるので避けた方が良い。低残渣食がお勧めであり、基礎代謝を満たす程度の食事とする。アルコールは避け、カフェインは最小限にとどめる。
 多くのランナーはスタート前には何も口にしない。当日の朝食には、薄味で炭水化物に富んだ消化の良い物を摂取すべきである。コーヒーが欲しければできるだけ少量とする。
 スタートの1,2時間前には水を多めに摂っておき、その後スタートまでは水分を摂らない。それによって水分が十分に補充され、余分な水分を排泄する時間も確保される。

<参考資料>

(1) Brian Mac: Carbohydrate Loading:
http://www.brianmac.co.uk/carbload.htm

(2) L.Lee Coyne. Carbohydrate Loading. Con in the “carbo-loading argument”: Centralhome.com.
http://www.centralhome.com/ballroomcountry/carbohydrate-loading.htm

(3) Mayo Clinic.com. Carbohydrate loading: Can your deit boost your athletic performance?:
http://www.mayoclinic.com/health/carbo-loading/HQ00385

(4) Wendy Bumgardner. Shold I carbo load before the marathon?: About.com.
http://walking.about.com/od/marathontraining/f/carboloading.htm


マラソンの呼吸法

2008年05月19日 | 参考資料
 先日のフル記録会で、先輩ランナーたちの話から、ランナーは走っている時に鼻で呼吸しているということを知り、私は正直ビックリした。私の場合は鼻腔が狭いからなのか、鼻での呼吸では息が苦しくてとても走ってなんかいられない。だから自然と口を開けて口呼吸で必死に走っている。口呼吸だと喉は渇く。しかし、どう考えても2つの鼻の穴より、口を開けた方が、身体の外界への開口部は遙かに広いと思うから、私としてはこっちのほうが呼吸の理にかなっていると確信していた。でも、先輩ランナーたちは鼻からの方が肺に沢山の空気を直接に取り入れることができるとおっしゃるのだ…。で、調べてみた。

 まず、家にある数少ないランニング関係の本を順にひもとくこととする。
 小出監督曰く、「意識しちゃいけない。何も考えなくても体が勝手にやってくれるから」(1)。ああ~やっぱりという感じ。何らかの負荷がかかった時、体は自然に一番楽なやり方で対処しようとする傾向があるだろうから、確かにそういうことなんだろうと思うが、私の疑問には十分には答えてくれていない。
 次、テレビでおなじみの金哲彦氏。金さんは腹式呼吸の活用を勧めているが、そのくだりの文章に呼吸法に関する記述を見つけた。「腹式呼吸は口から時間をかけて肺の中の空気をすべて吐き出し、さらに鼻からゆっくり空気を吸い込む。このときお腹を膨らませることで横隔膜が動く」(2)。ほ~、なるほど。鼻から吸って口から出すのか。

 そこでやってみた。しかし私の場合、ラン中に鼻で息を吸うことに全く自信がなかったので、ブリーズライトという鼻孔拡張テープを貼って挑戦してみた。まあ確かにやってできないことはなかった。が、鼻で息を吸うことへ常に意識を集中させておかないと、つい楽な口呼吸に戻ってしまう。ついでに鼻から吸って鼻から出してみた。これだといくら拡張テープを貼っていてもやはり長く続けているうちにだんだんと息が苦しくなってくる。それに鼻から出すと鼻水が結構溜まってくることに気がついた。まあ鼻から吸って口から出す方法は、頑張ってやればできないこともないが、私にとって自然なやり方とは言い難いし、この呼吸法には鼻孔拡張テープの存在が絶対に必要である。だが、先日の先輩ランナーの「走っていると汗でテープが剥がれてくる」、「走った後に日焼けのあとがくっきり残ってしまう」というコメントが思い出されて、気になった。

 今度はネット検索。残念ながら、日本語の検索では役に立ちそうなものは全くなかったが、英語の検索では結構引っかかってきた。
 私の感覚と一致したのはこの記事だ。「口からの呼吸がもっとも効果的だ。第一に鼻腔からよりも口からの方が大量の空気を吸入し排出できる。第二に鼻呼吸だと顎を締めて表情筋を緊張させておかなければならないが、口呼吸だと表情筋を弛めておくことができる。ちょうど死んだ魚(dead fish)のように少し口を開けたままにしておくのがよい」(3)。
 さらに、アーサー・リディアード氏の言葉として「呼吸は口からしなさい、鼻からもしなさい、できるんだったら耳からも空気を吸いなさい。」(4)というのが紹介されていた。これは、要するに口でも鼻でも良いからできるだけ多くの空気を吸い込め、ということなのだろう。この記事では「ほとんどのランナーは自然に口と鼻の両方で呼吸している。」(4)と述べていた。

 そこでやってみた。今度は拡張テープは要らない。自然に口を少し開き、顔に力を入れず、鼻と口から息を吸うようにした。別に口と鼻どっちから多くということもなく、自然任せ。これが一番自分に合っている気がした。

 呼吸法を調べるともう二点、重要なことが指摘されていることが分かった。それは呼吸リズムと腹式呼吸の利用についてである。

 呼吸のリズム、つまり何回吐いて何回吸うかというリズムのことだ。これについては小出監督も金さんも触れている。「運動して体がたくさんの酸素を必要とすれば、自然と呼吸は速くなるし、安静にしていれば呼吸はゆっくりになる。ランニング中も呼吸のリズムついては何も考えなくていい。自然に任せ、もっとも楽に感じられる呼吸をしていればいいのだ」(1)。「呼吸の回数は走るリズムとスピードによって違うので何回吐いて何回吸うと決めつけないほうがいい」(2)。これは私もそう思う。1km6分程度のスピードだと、ランのリズムに合わせて「はーはー、あーあー」と2回吸って2回吐くリズムになりやすい。実際に試してみると、利き足から「右ー左ー右ー左」と走っていると、これに合わせて「吐くー弱く吐くー吸うー弱く吸う」というリズムになっていることが多い。しかし1km5分程度にスピードを上げると、「右ー左ー右ー左」のランに「吐く(右ー左)ー吸う(右ー左)」と利き足が地面を踏みしめるリズムに呼吸のリズムが重なっているのに気づく。これは全く意識しなくても自然に体がやってくれることなのだろう。

 我々は生活の中でふつうは自然に胸式呼吸をしている。つまり息を吸う時に呼吸筋を収縮させて肋骨を持ち上げて胸郭を広げ、胸腔スペースを広げることで肺に酸素を取り込み、息を吐く時は呼吸筋を弛緩させて肋骨が下がって胸腔が収縮するのと同時に肺から酸素を外に排出している。ランの時にもふつうはこの胸式呼吸をしているわけだが、横隔膜を収縮させて胸腔の下壁を下方に引き下げて胸腔を拡張させる腹式呼吸の方が、上に示した胸式呼吸よりも次の2点で有利なのだという。
 ひとつは、腹式呼吸の方が胸式呼吸よりもより多くの空気を肺で換気できるということ(3)。つまりスピードが速くなって呼吸数が増え呼吸が浅くなった時に、腹式呼吸だと深い呼吸ができるので、できるだけ多くの酸素を取り入れ、できるだけ多くの二酸化炭素を排出することができるという観点から、非常に有利なのだという(5)。
 もうひとつは、胸式呼吸には「つい肩が上がってしまい、肩が上がると身体の重心に狂いが生じ、そうなると上半身と下半身のバランスが悪くなり、まっすぐ前進するためのエネルギーをロスしてしまう」(2)という欠点があるので、それが少ない腹式呼吸の方がランには適しているのだという。
 ラン中に腹式呼吸が自然に出てくれば良いのだが、これにはやはり訓練が必要なようだ。実際にやってみた感覚としては、息を吸う時に腹を突き出すようにすれば良いように思う。まあこれも意識していないとつい胸式呼吸に戻ってしまうので、かなりの注意集中の持続が必要だ。私の場合はせいぜい時々気がついた時に腹を突き出して、呼吸の際に横隔膜を利用し、呼吸筋の労作の節約を目指すということになろうか。


(1) 小出義雄:「知識ゼロからのジョギング&マラソン入門」p38、幻冬舎、2002年。
(2) 金哲彦:「3時間台で完走するマラソン」p84~85、光文社、2006年。
(3) Mindy Solkin:”Every Breath You Take”;http://www.marathonguide.com/training/coachmindy/everybreath.cfm
(4) Hal Higdon:”Learn To Breathe Properly On A Run”;http://www.runnersworld.com/article/0,7120,s6-380-381-386-245-0,00.html
(5) 金哲彦:金コーチが指導する確実に速くなる走り方p36~38、ランナーズ、2003年。

マラソン・血尿・酸化ストレス

2007年11月21日 | 参考資料

 マラソンを走った後に血尿を見る人は少なくないらしい。ネットで「マラソン、血尿」で検索してみたところ、相当な数の該当サイトが見つかった。自分のことでもあり気になったので調べてみた。

 資料(1)によれば、マラソンでの血尿の頻度は50~70%と報告されており、原因としては、ランニングによる腎臓の激しい上下動、赤血球の糸球体透過の亢進、膀胱への反復する衝撃、下肢の血管内での溶血(=ヘモグロビン尿)、下肢の横紋筋挫滅(=ミオグロビン尿)などと考えられている。多くは自然に48時間以内に消失する良性の血尿で、通称スポーツ血尿と言われ、なかにはストイックな走りの象徴と考える向きもあるらしい。しかし時には重篤な横紋筋融解症の兆候であったり、潜在する尿路系疾患の初期症状であったりする場合もあり、注意が必要だ。

 私はこれまでマラソンに限らず運動の前にはしっかりと排尿し膀胱の尿をすべて出し切ろうと考えてきたが、資料(2)によれば、膀胱への衝撃による膀胱内部での出血を防ぐためには、走る前に膀胱を空にしない方が良いのだという。もちろん脱水予防のためにも十分な飲水が必要なことは言うまでもない。

 さらに先日、私が趣味で走っていることを知っている内科の先生の医院に、インフルエンザの予防注射を受けに行った際、上記のマラソン後の血尿について話したところ、貴重な資料(3)を渡されあまり無理しないようやんわり注意された。簡単に説明すると次のようになる。

 私たちは生きている限り、肺から酸素を取り入れ、心臓のポンプ作用により血液を介して酸素を全身の組織に送り込み、各組織はその酸素を利用してエネルギーを産生し生命活動に使用している。このとき酸素の数%は活性酸素になっている。活性酸素とは空気中の酸素とは異なり非常に反応性に富む酸素であり、過剰になると組織損傷を引き起こし、それが疾患、老化、発癌の原因となる。運動時には呼吸による酸素摂取は通常の10~15倍に増え、筋組織への酸素流量は安静時の100倍にも達するので、組織での活性酸素発生も増量していると考えられることから、組織損傷の危険性も高まっていると想定される。しかし生体には活性酸素を消去・不活化してしまう機構が備わっているから、急激に大きな組織損傷が生じることはないものの、このバランスが崩れた時には組織への損傷が生じてくると考えられる。そうした状況に傾いた状態のことを酸化ストレスと呼ぶ。しかしそのバランスの崩れがどのような状況で生じてくるのかはまだ完全には分かっていない。

 ただ少なくとも運動時には全身が酸素過剰の状態にあり酸化ストレスに晒されている危険性があるわけだから、「抗酸化物質を摂取しておくこと、あるいは自分の能力を超えた運動はしないようにするのが望ましい」というのが先生の私に対するご意見と思われた。ちなみに抗酸化物質とはビタミンE、ビタミンC、そしてユビキノンなどである。また調べたところによると、動物実験ではあるが酸化ストレスによる腎障害を示唆する恐ろし気な研究報告(4)もあった。最後に資料(5)には極めつけの言葉が書いてあった。「人間の身体はノンストップでフルマラソンを走れるようにはできていない」のだと…そうかしらん?。


(1)スポーツ血尿に潜在する横紋筋融解症の遺伝要因とそのマススクリーニングhttp://www.adm.fukuoka-u.ac.jp/fu844/home2/Ronso/Igakubu/v34-3/v34-3-06.pdf#search='marathon%20hematuria'

(2)Exercise induced macroscopic haematuria:run for a diagnosis? http://ndt.oxfordjournals.org/cgi/content/full/14/8/2030

(3)運動と酸化ストレスと健康 http://www.taiiku.tsukuba.ac.jp/inst-hss/bulletin_pdf/25/1-11.pdf

(4)アルドステロンによって生じる腎糸球体病変と酸化ストレスを介したmitogen-activated proteinキナーゼの活性化 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jacp3/13kai/13kai-program/Li_Yao_doc.pdf#search='%E9%85%B8%E5%8C%96%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%20%E8%85%8E%E9%9A%9C%E5%AE%B3'

(5)Marathons http://lammd.com/opinion/marathon.cfm

 



 


コンコーニ・テスト

2007年11月10日 | 参考資料

 たしろさんのブログ「燃え尽きるまで」の記事(噴出する妄想あれこれ)で紹介されたコンコーニ・テストについて、下記のホームページを参考に簡易な解説を試みる。


<1> Conconi Test:http://www.brianmac.co.uk/coni.htm
<2> THE CONCONI TEST:GENERAL INTRODUCTION:
http://web.inter.nl.net/hcc/j.vd.bosch/congeneral.html


1.基礎となる理論仮説について
 筋肉はふつう炭水化物(グリコーゲン)と脂肪(脂肪酸)を燃焼(酸化)し水と二酸化炭素にまで分解する過程で得られたエネルギーを運動エネルギーとして利用している(=酸素性運動)。運動負荷が高くないこの酸素性運動の範囲内では、運動強度と心拍数との間には直線的な関係がある。
 しかし運動強度が大きくなると酸素を必要としないエネルギー産生(=無酸素性運動)、つまりATPの分解やブドウ糖から乳酸への代謝が高まり、運動強度と心拍数との関係に変化が生じ、直線的関係からのズレが生じてくる。
 そこで一定の距離ごとに少しずつ速度をあげて走り、その時の平均心拍数をグラフ上にプロットすると、酸素性運動から無酸素性運動に変換するあたりで直線が屈曲し平坦化してくる。このポイントを無酸素性運動閾値とする、というのがコンコーニ(フランチェスコ・コンコーニ、イタリアの生化学者)の考えである。
 
2.無酸素性運動閾値の意義
 今日、無酸素性運動閾値のおおよその指標として次のものが知られている。
 ① 210-年齢(ただし十分にトレーニングを積んだ人の場合)
 ② 15km走での平均心拍数
 ③ PIAT-TEST
 ④ 乳酸濃度の測定
 ⑤ コンコーニ・テスト
 無酸素性運動閾値は持久系競技のアスリートにとってトレーニングでの運動強度の限界を決める指標となるだけでなく、心拍数を利用したトレーニングの有用な目安ともなりうる。一般的には「無酸素性運動閾値-20」が酸素性運動閾値の良い指標とされている。

3.実際のテスト方法
 A.トラックでの場合
 ① 5~10分のウォーミングアップ
 ② ハートレートモニター(HRM)を5秒ごとに記録するようにセット
 ③ HRMの計時を開始
 ④ 200m毎にタイムと心拍数を記録する
 ⑤ 200m毎にスピードを上げる
 ⑥ それ以上そのスピードで走れなくなったら終了
 ⑦ HRMを止める
 ⑧ 10分間のクーリングダウン

 B.トレッドミルの場合
 ① 5~10分のウォーミングアップ
 ② HRMを5秒ごとに記録するようにセット
 ③ 適当なスピードでトレッドミルをスタートさせる
 ④ HRMの計時を開始
 ⑤ 200m毎にタイムと心拍数を記録する
 ⑥ 200m毎に0.5km/hずつスピードアップさせる
 ⑦ 最大心拍数に達したか、それ以上走り続けられなくなったら終了
 ⑧ HRMを止める
 ⑨ 10分間のクーリングダウン

4.データの分析
 縦軸に心拍数、横軸にスピードを目盛り、200m毎のデータをプロットする。グラフ上で直線が平坦になって移行しているあたりが閾値である。

=参考HP<2>の図より=

ichanさんのコンコーニテストのデータを拝借>


5.コンコーニ・テストの問題点
 ① 言うは易く行うは難し!
  200mごとにスピードアップさせるのは可能としても、一律に0.5km/hずつアップさせ、なおかつそれを次の200mの間一定に維持し、それを次々と繰り返していくというのは、一人で実施するにはあまりにも難しい。そうしたペース配分の設定可能なトレッドミルがあれば理想的だが、そのようなものが果たしてあるのかどうかは私は知らない。一定時間毎に頻度が上昇していく音源をウォークマンなどに録音して取り込み、その音信号に合わせてピッチを刻んで走る、という方法も考案されているようだ。

 ② 背景となる理論仮説は本当に正しいのか?
 筋肉のエネルギー代謝については以前のブログ(修正:運動時のエネルギー代謝について(11))でも紹介したが、運動負荷が高まるにつれて最初は酸素性運動であるものが、ある一定レベルを超えると急に無酸素性運動に切り替わる、というような単純なものではないらしい。そうだとすると、かつてのエネルギー代謝仮説に基づいたコンコーニ・テストの妥当性が疑わしくなる。このテストで示される変換点がいったい何を意味しているのか、再考の余地があるのではないかと思う。


給水対策

2007年10月28日 | 参考資料

 フルマラソンを1回走ると水分が2~3L失われるという。また水分が体重の2%失われるとパフォーマンスは20%低下するのだという。言うまでもなくラン中には水分の補給が大事である。マラソン中の適切な水分補給量はゴール後にふつうに排尿がある程度だという記載を読んだことがある。確かにそれはリーズナブルだが、そうだとするとフルマラソンでは少なくとも2~3Lの水分補給が必要だということになる。5kmごとにコップ1杯(200ml)の水分補給をしたとしても計8回で1.6Lだから、それでもまだ1Lは不足している勘定になる。コップ2杯はお腹がチャポンチャポンしてとても飲めない。

 以前のボストンマラソンでの調査から、フルマラソンに出場する市民ランナーでは脱水よりもむしろ水の摂り過ぎによる水中毒の方が問題だという記事を読んだことがある。しかし市民ランナーには立ち止まってゆっくりと水をたらふく飲んでいる余裕などないわけで、どう考えても市民ランナーでは圧倒的に脱水の方が大きな問題になる筈だと思われる。もし水中毒が問題になるとすれば、自分の経験から言えば、レース後の一気飲みの方が大きな要因だろうと推測される。

 ハーフなら水分補給なしで帰ってこれる、という先輩ランナーのブログ記事を見て以来、私はランナーの給水量とはその程度のものかと軽く考えるようになっていた。しかし昨年の北海道ロードレース(ハーフ)での経験は、私のその身のほど知らずな考えを見事に打ち砕いた。その日私はFR301の不調に気をとられて十分に給水ができないままに完走し、レース後にようやく喉の渇きを潤すことができたのだが、その後行ったトイレでなんとビックリ…血尿?…少量の濃縮褐色尿がドロッと出たのだ。私は一瞬ギクリ、横紋筋融解症かと焦ってしまった。その時の体調の問題なさから判断してどう見ても脱水による濃縮尿以外には考えられず、なんとか自分にそう言い聞かせて納得したものだった。しかし私が給水に注意を払うようになったのはその怖い体験の後からである。

 

 そこで今回は、給水量を十分に確保できる方法を工夫してみることにした。バックパックは3年ほど前にランテスの通販で衝動買いしたもの。その後使い方がよく分からずしばらくお蔵入りしていた代物である。そこに先日秀岳荘で購入したプラスティック水筒(platypus)を収納することにした。チューブの先にはバイトバルブがついていて、噛んで吸うと水が出てくる仕掛けになっている。色々試してみたが、1L用の水筒にポカリスエットと水を半分ずつ混ぜてやってみたのが、まあまあ良かった。給水エリアで計1.6L、この便利水筒で1L、併せて2.6Lの水分補給となる。グッズは揃った。あとは実力が追いついてくるのを待つだけだな…。