モノローグ （自作詩）

私はこの世に生まれなかった
が　この世は　私に生まれた
そこから始まった
悪も　悲劇も　何もかもが

私は厭う　自己しか実在しないという事実を
私は驚く　自己が絶対であることを
私は涙する　現象達のいじらしさを
私は惚ける　すべてが無のために
私は手を見る　手は心より　笑っている

だが　よそう
笑えたかもしれない可能性を殺し
私は　闇になろう

錯綜 （自作詩）

希望
嘘
あの子
見えない
わかってる
つまり
だけど
なんだ
懶惰　懶惰

陽だまりに抱かれ
あの頃のように眠りたい
消えちまった昔のように
そっと　そっと
ねむり　たい

西脇 順三郎先生 （自作詩）

隣の町に詩人がいた
雪降る越後に詩人がいた
同じ空の下　詩人がいた
えふてあった　えふてあった　えふてあった

同じ川で魚取り
すずめ子　追い
雪の音　聞き
おたがいに育った

わたしは知っている
あなたの家の空間を
ぽっかり空いた空間を
わたしは知っている

塀は黒構え
やけに金持ちに見えた
わたしは　うらやんでた

師走 （自作詩）

一夜明け
外は眩き雪化粧
我一人
酒を飲みて閑居す
言葉は口を出る
・・・・綺麗って言葉が

粉雪　さらさら
ぼた雪　しとしと
ざらめ雪　じゃとじゃと
やって来る

隣のミケおどろいて
これは異なもの　奇なもの
くわずんば　しかりと
雪　くうはミケ

ああ　一年過ぎてゆく
ああ　この懈怠よ