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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「手 ロマンポルノナウ」 福永朱梨&金子大地

2022-09-22 20:21:19 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
日活ロマンポルノ50周年記念、ロマンポルノナウ「手」を映画館で観てきました。


映画「手」はニューロマンポルノシリーズの第一弾作品で、ちょっと思い出しただけ松居大悟監督がメガホンをとる。主演の福永朱梨、金子大地は名前を見てもピンとこないけど、どこかで観ているのかもしれない。18禁なのに中学から高校にかけて日活ポルノはよく観ていたし、松居監督の前作も気に入っていたので映画館に向かう。その昔日活ポルノの映画館では観客に女性の姿を見ることはめったになかった。時代も変わったのか?約20〜30%程度の若い女性がいる。

オジサン好きの25才の女の子(福永朱梨)が、転職が決まっている同僚の男(金子大地)と気がつくとひたすら交わる関係を続けるという話である。青春ポルノ路線というべきだろうか。

まあ普通って感じ。話の内容はどうってことないし、男女の絡みは激しくない。今年の前半戦で、今泉力哉監督と城定秀夫監督が組んで愛なのに」「猫は逃げたの2作をつくった。個人的には好きだし、2作ともよくできている映画だった。その路線に近いかな?


ピンク映画出身の城定監督がいるので、エロティックな場面も目立った。その2作に比べると、せっかくの18禁なのに弱いなあ。ストーリーがあの2作ほど練られていないし、だからといって絡みで見せるわけでない。松居大悟監督の「ちょっと思い出しただけは良かったけど、ピンク映画で手慣れている城定監督と比べると修行が足りないってところだ。

⒈福永朱梨
好感のもてる女の子だった。性格も良さそう。張り切ってポルノ映画に出るだけ大したものだ。前貼りしていないように見えたけど、どうかな。往年の肉感的な日活の女優陣に比べると、ボディは迫力不足だけど、普通に演技している場面は悪くない。オジサン好きで付き合ったオジサンの実態の写真をファイルにまとめるシーンがおもしろい。親しみがもてる。

ついこの間観た「LOVE LIFE」にも出ていたというけど、え!出てたの?という感じだ。むかしの初恋の人とかとカラオケボックスでやっちゃう。今ってそんな奴らいるんだ。妹役の女の子が初体験の最中にお姉さんに実況中継で電話してくる場面には笑えた。


⒉金子大地
すらっとした優男で、女にはモテそう。残業で2人っきりになるのをきっかけに誘い出すなんて手はむかし自分も使った。結婚間近なのについついほかの女に手を出すなんて最低だと思うけど、不思議なことにそういうときに限ってチャンスが生まれるんだよなあ。若いときを思い出す。


大河ドラマにも出ているし、調べるとサマーフィルムにのせてに出ていて、あの文化祭用の映画の武士役だった奴なんだとわかる。あの映画大好きでおもしろかったな。映画を観てもまったく同一人物だとわからなかった。

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映画「LOVE LIFE」 木村文乃&深田晃司

2022-09-14 18:18:12 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「LOVE LIFE」を映画館で観てきました。


映画「LOVE LIFE 」深田晃司監督の新作である。よこがお」「淵に立つでは先を読ませないストーリーづくりのうまさに魅了された。日経新聞で宮台真司が強く推薦していることも後押しとなる。宮台真司の映画評もストーリー展開は若干ぼかし気味で予備知識なく観に行く。

ある団地に住む大沢二郎(永山絢斗)と妙子(木村文乃)には、妙子の連れ子の啓太がいる。団地の別棟には二郎の両親が住んでいるが、息子夫婦が籍を入れたにもかかわらず父(田口モトロヲ)はまだ結婚に反対していた。二郎の同僚の協力も得て父の誕生日祝いを二郎の部屋で行っている時に悲劇的な事件が起きる。その事件をきっかけに、失踪していた妙子の元夫(砂田アトム)が突如現れ事態は予想外の方向に進むという話の展開だ。

ひねりが効いたストーリー展開だ。
ついこの間観た「百花」は別に実話に基づいたわけではないのに、物語づくりがあまりに単純すぎた。深田晃司監督のよこがお淵に立つがもつサスペンスタッチはここではない。それでも、二度三度と思わぬ展開にもっていく旨さをこの映画に感じた。決してセリフが多い映画ではないが、所々でストーリー立てがはっきりわかるように登場人物がセリフを発していて明快さも備えている。

ただ、前半戦で夫の両親が発する言葉は、結婚への反対をわざと強調するために言っていることかと思う。でも、こんな言い方する人っているかな?と感じてしまう。


⒈役所勤め
夫の二郎は役所勤めで福祉関係の仕事をしていて、妻の妙子はホームレスの面倒を見たりする生活支援センターで働いている。元夫は生活保護を受けねばならない状態に陥っている。主人公が役所勤めだから、映画のストーリーが成立するわけでうまく設定したなあと感心する。不自然さはない。

二郎の父親が結婚を承諾していないことを知りつつ、二郎の役所の同僚が集まってする二郎の父親の誕生日を祝うパフォーマンスもこういう人たちなら、こんなことするかもしれないと感じる。普通の会社だったらあまりないよなあ。


⒉後半戦の展開とダメンズウォーカー
あくまで団地に住む役所勤めの普通の人って感じなのが、突如グローバルに世界が広がり驚く。元夫は失踪していた。しばらく、妙子が探していた。そのうちにあきらめて働くうちに今の夫と知り合う。もともと、元夫は話せない。手話でしか意思を伝えることができない。それだからダメ男と決めつけるのもどうだが、目の前に現れても、全くの無力だ。

途中の展開から妙子のダメンズウォーカー的な要素が強くなる。自分たちの目の前から姿を消したわけだよ。どうしてそうなるの?そう妙子に言ってやりたくなる。しかし、この辺りから思わぬ展開に深田晃司がもっていく。最終場面に近づくにつれて濱口竜介監督寝ても覚めてもにアナロジーを感じた。話の内容は全く違うけど、似た展開だと感じていたが、深田晃司はここでもうひとひねりを加える。思わず吹き出してしまった。


木村文乃は好演、手話がもともとできるわけではないだろうから割と準備が必要だったろうなあ。他にも語学も若干やる必要もあったから大変だったんじゃないかな。
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映画「百花」 原田美枝子&菅田将暉

2022-09-11 19:59:25 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「百花」を映画館で観てきました。


百花は映画プロデューサー川村元気の原作をもとに菅田将暉と原田美枝子が親子役を演じる新作である。川村元気は自らメガホンを持つ。原田美枝子は自分と同世代,新作で認知症の母親役を演じるのを予告編で見ていたので、すぐさま映画館に向かう。認知症がテーマなのだからか、ちょっとこの人たち映画をみて大丈夫なの?と思わせるような杖をついた老人がやけに目立つ。

葛西泉(菅田将暉)はレコード会社勤務で、同僚の香織(長澤まさみ)と結婚していた。ピアノ教師だった母親百合子(原田美枝子)は徐々に認知症の症状がひどくなり時折行方不明になって泉を心配させていた。ヘルパー雇っても状況は変わらず、いよいよ施設に入所せざるをえない段階となる。荷物整理をしていた泉が小学校の時母親が突然家を出て行った秘密を知るという展開だ。


詳細は知らされないが、産まれた時から母子で暮らしている。にもかかわらず、母親は家を飛び出し男のいる神戸に行ってしまう。とても良い母親とは言えない。90年代半ばと現代と時間を交互にしながら、映像は進む。長回しが多い。ワンシーンワンショットで極めてむずかしい条件である。菅田将暉,原田美枝子いずれも好演である。美しい映像を見せてくれる。

しかしながら,映像の内容はともかくとして,内容は薄い。ストーリーはあまりに単純すぎて深みがない。想像していたよりも感涙にむせぶ状況にはならなかった。「半分の花火が見たい。」と言う母親百合子の希望を叶えてやろうとする息子の気持ちというのが映画のキーセンテンスである。その伏線は最終段階になって回収される。


ただいくつか出てきている場面の伏線が回収されてないじゃないかと思わざるを得ない中途半端なストーリー立てになっている。できてしまった男永瀬正敏の存在もいつの間にか尻切れトンボだ。映画を104分でまとめるというのは良い。ただ、ワンショットワンシーンにこだわりすぎて,肝心なことを忘れてしまっている気がした。

原田美枝子は自分と同じ時代に青春を過ごした。でもずっと大人で大地の子守唄(記事)」で若き日に気前よく脱いで我々をびっくりさせた。その原田美枝子が認知症の役柄を演じている。スーパーで誰かの幻影を見て,そのまま外に飛び出して万引きに間違えられたり,大人になった息子を探しに真っ暗な小学校の中に飛び込んで行ったり、いずれはこんなふうになってしまうのかとふと心配してしまう。


映像の時代設定を現在とすると,神戸にいるときに震災に遭遇するとすると、95年での原田美枝子の年齢設定は30代半ばすぎである。その年代の役柄もそのまま今回演じている。まさか娘の石橋静河という訳にはならないよね。色々と工夫して映したと思うが,よくがんばったなと同世代のよしみでエールを送りたい。
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映画「今夜、世界からこの恋が消えても」福本莉子&道枝駿佑&古川真琴

2022-08-07 20:32:40 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「今夜、世界からこの恋が消えても」を映画館で観てきました。


映画「今夜、世界からこの愛が消えても」は最近多作の三木孝浩監督による青春ドラマである。ちょっとどぎつい映画を観て疲れた後で、新作映画のラインナップに観たい作品がない。ドツボの生活を描いたものや老人映画は生気が抜かれるので青春モノに注目する。一条岬の原作は当然未読、主要出演者も古川琴音以外はあまり知らない。消去法で選んだ作品だけど、若い子の恋愛ものはやっぱりいい

交通事故で眠ると前の記憶がすっかり抜ける奇病にかかった女子高校生真織(福本莉子)に、別のクラスの男子透(道枝駿佑)が付き合ってくれと告白する。事情があっての告白で本気ではなかったが、2人で申し合わせて、本気にならないことを前提に付き合うようになる。しかし、記憶をなくす病状は変わらず、親友の泉(古川琴音)が媒介していき、気持ちが徐々に本気になってくる。そこに思わぬ出来ごとが起きるという話である。

快適な時間が過ごせた。
損得を抜きにした恋愛物語はすっと入れる。必ずしもハッピーな展開ではない。でも、観終わって気持ちがすっとする。映画が始まりバックに江の島が映り、鵠沼に向かっての湘南エリアが舞台だというのもわかる。海浜公園や女の子2人が住む家も素敵でビジュアル的にもいい感じだ。三木孝浩監督作品では松本潤、上野樹里主演の陽だまりの彼女が大好きで、同じように江の島ロケが効果的に使われていたのを思い出した。


⒈福本莉子(真織)
朝気づくと前夜の記憶がない。今日起きたことを忘れないように日記に書く。そして、その日記を毎朝見るように部屋の中に貼ってある。うとうと昼寝をしてしまっても、記憶がなくなる。そんな真織にさわやかな男子が付き合ってくれという。本気ではないことがわかるけど、拒まずに付き合うのだ。

いくつもの主演作があるのにこんなかわいい子存在すら知らなかったフレッドペリーのポロシャツが似合う。会社の部下に福本莉子に似ている子がいた。かわいくて性格もいいので30代から40代の男性社員が鼻の下を伸ばしているのを見て、女子社員が悪口を告げ口してきたりした。たまたま一緒に食事に行った時は、いい歳して天に昇る気分になったものだ。現在は産休中でさみしい。その子も名前が◯織で藤沢の高校に行っていたなあと映画を観ながら不在をかなしむ。


⒉道枝駿佑(透)
クラスメイトにいかにもいじめられっ子といった男子生徒がいて、そのイジメを止めるのと引き換えにいじめっ子グループに言われた通り真織に付き合ってくれと告白する。気がつくとそれが実現してしまうのだ。透は小説家で身を立てる夢が捨てられない父親(萩原聖人)と2人暮らしだ。食事を作ったり家事も透がやっている。母親は若くして亡くなっていて、姉が面倒見ていたが今は一緒に暮らしていない。


その姉(松本穂香)が後半戦活躍しはじめる。いい感じだ。松本穂香と古川琴音が実際には同じ歳なのに、かたや高校生でかたや同級生の姉を演じているのにも注目する。

⒊古川琴音(泉)
真織の友人だ。病気のことをわかっているので、真織と透が付き合うと聞き、慌てて透のところに乗り込んでいく。おせっかいというわけではない。記憶をなくしてしまうので、トラブルが起きないようにしているだけだ。でもいい媒介役になると同時に、問題が起きてから行動力を発揮する。

「街の上」に出ていて、濱口竜介監督偶然と想像の第一話で存在感のある役柄を演じた。イヤな女の役柄だ。松本穂香と違い、古川琴音の近年の出演作はみんな観ている。美人ではない。ただ、こういうキャラクターなので起用されることが多い若手で重要な存在だ。毎回演技の腕を上げている印象を持つ。


この3人を中心に構成力よく、ビジュアルよく無難にまとめた。さわやかな恋に醸造するいくつかのエピソードが見どころだ。自分のような年齢層でも観て違和感を感じないよくできた青春モノだと思う。
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映画「こちらあみ子」大沢一菜&井浦新&尾野真千子

2022-07-13 17:05:58 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「こちらあみ子」を映画館で観てきました。


「こちらあみ子」は芥川賞作家今村夏子の原作を映画化した作品である。今村夏子作品だということは知らず、映画ポスターに写るあみ子のあどけない表情が気になっていた。小学校当時のわが娘と雰囲気も似ている。主演はオーディションで選ばれた2011年生まれの女の子大沢一菜で、井浦新、尾野真千子という主演級が両親を演じて脇を固める。

広島の海岸沿いの田舎町で暮らすあみ子(大沢一菜)は、やさしい父親(井浦新)と書道教室をしている継母(尾野真千子)とお兄ちゃんとともに暮らしている。周囲と折り合わず奇想天外な行動をとるあみ子には好きな男の子がいるが、なかなか心が通じない。いくつもの逸話を重ねながら、中学になった頃までのあみ子の日常を描く。

不思議な肌合いを持つ映画だ。
映画に映る海岸沿いの町並みと昭和40年代までの頃を思わせるあみ子の自宅の雰囲気がのどかで気分がいい。家でも学校でも宇宙人のように振る舞うあみ子は、周囲の雰囲気がどうあろうと一切無関係に毎日を過ごす。都会の雑踏とは無縁の場所であみ子の暴走と戸惑う家族の日常を観ていると心がなじむ。


⒈世間常識とかみ合わない女の子
あみ子は親に買ってもらったおもちゃのトランシーバーに向かってブツブツ話す。継母のお腹には赤ちゃんがいて、あみ子も楽しみにしていた。ところが、流産してしまう。気を利かせたつもりのあみ子が弟の墓を庭につくるが、それを見て継母は大泣き。この辺りはよくわからないなあ。女性目線だとそうなるんだろうか?気を利かせてくれてありがとうという母親がいてもおかしくない。そんな感じでかみ合わないことだらけだ。


兄貴はグレて、気がつくと暴走族の仲間に入る。中学になって、奇想天外な行動をとっている体の小さいあみ子は不良グループにいじめられる。でも、グレて有名になった兄貴の妹と知り、慌ててイジメを止める。気がつくと子どもを手なずけることもできず、母親も寝たきりになっていく。唯一の理解者である父親も、一日中ずっとあみ子をかまってはいられない。さて、どうする?あみ子。


⒉今村夏子
芦田愛菜主演の映画「星の子」も原作は今村夏子だった。途中の展開を踏まえると、え!これで終わっちゃうの?というエンディングに違和感を感じて感想をアップしていない。安倍元総理の事件でここ数日話題になっている新興宗教に心を奪われる家族の物語だ。奇妙な余韻を残す。


今村夏子は風変わりなあみ子をストーリーに放つ。あどけない素直な子だが、周囲が見えない。でも、自分的にはあみ子に親しみを覚える。それにしても感想がむずかしい映画である。
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映画「ハケンアニメ!」 吉岡美帆&尾野真千子

2022-05-29 19:19:37 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ハケンアニメ!」を映画館で観てきました。


映画「ハケンアニメ!」は朝が来る辻村深月原作の映画化である。「ハケン」という言葉がカタカナで派遣社員を想像し、日本映画で最近得意の格差社会を描いた映画かと勘違いしていた。ある人の映画評を読んで、それが誤解とわかり気になったので映画館に向かう。アニメの覇権をとるという「ハケン」である。

国立大学をでて県庁に勤めていた主人公斎藤瞳(吉岡里帆)は、アニメ界で活躍している人気監督王子千晴(中村倫也)を凌駕する作品を作ってやろうと、業界で働きはじめて7年、ようやく新作の監督の座をつかむ。土曜日の5時というアニメのゴールデンタイムにはライバルのスタジオえっじも王子監督の新作で臨み視聴率対決するという話だ。

よくできた快作である!
予想以上に映画の出来は良かった。おもしろかった!この映画には「好きをつらぬけ」という副題がある。この映画にでてくるアニメ制作関係者はともかくよく働き、まさに好きを貫いて働いている。すばらしい!逆にアニメの世界ってこんなに大勢のスタッフがいて、会社の利益収支がうまくいっているの?と思ってしまうくらいだ。外注が多いのかな?


日本では生産性向上が誤って解釈されている。残業を少なくすれば良いということで、労基署の臨検も厳しく、「働き方改革」という名のもとに日本人が働かなくなった。総務系部署が残業時間の表を出して説明してくると複雑な気持ちになる。

確かに、ひと時代前のオフィスには帰りたくないおじさんたちがいて、みんなつられて帰れないでムダに無償残業させていたことは間違いない。でも、今は働きたい人も働かせてくれないのだ。日本も社会主義国のようになってしまった。分配ばかり気にして、競争を避けようとする日本社会ばかり描いても良いことがない。

こういった真摯に働く人たちを描く映画を観ていると気持ちがいい!


⒈吉岡里帆演じる斎藤瞳監督
県庁から中途入社でアニメ制作会社に入社して、演出や助監督をやってきた。7年でようやく掴んだ監督の座だ。TVのゴールデンタイムに同時間に放送するライバルは目標としていた王子監督の作品だ。

それぞれにクセのある美術や作画や撮影のスタッフの意見調整だけでも大変だ。理詰めで数字を重んじる人もいれば、感覚的な人もいる。声優もアイドル系で押し付けられた女の子で、思い通りに吹き替えができない。それなのに柄本佑演じるプロデューサーは次から次へとスケジュールを入れて、斎藤瞳監督をマスコミの話題にしようとしたてる。

主演の役柄設定に関するエピソードは十分すぎるほどあって、吉岡里帆演じる斎藤新監督のプロフィールが浮かび上がる。吉岡は期待に応えていると思う。仲野大賀と共演した「泣く子はいねえが」では、別れた前妻役で性格的にもイヤな役だったが、今回は心から応援したくなる。


⒉柄本佑演じるプロデューサー
アニメプロダクションの背広組で、冷静沈着なプロデューサーだ。マスコミ、TV局などからのあらゆる情報収集に長けていて、斎藤瞳監督を売り込もうとして、最終的に視聴率での優位を目指す。

柄本佑がここまで冷静沈着な役柄ってあったかなあ。どちらかと言うと、うまくいかずに表情変えて叫んでしまうシーンの方が多い気がする。似たような漫画が題材の「先生、隣に座って。。。」なんて映画はずっとオドオドしたままだったな。真骨頂をみたと感じる。


⒊尾野真千子演じるプロデューサーと王子監督
強烈なライバルがいないとストーリーは引き締まらない。同じ時間に放映される番組の監督は主人公斉藤瞳がこの世界に入る前から目標としていた王子監督だ。でも、王子監督は製作発表の直前になっても姿を消していた。行方もわからない。TV局からこんな男を起用して大丈夫かと責められる。プロデューサーの有科(尾野真千子)は大慌てだ。でも、直前に現れる。怒ってぶっ飛ばす。

そんな感じで、わがままな王子監督の姿を何度にわたってクローズアップすると同時に、有能なプロデューサーぶりを尾野真千子が演じる。昨年、女優賞を総なめしたが、口でいかせる風俗嬢やキャバクラ嬢も演じて、むしろレベルが低い役柄も多かった。今回のキャリアのあるバリバリ仕事する女もなかなかいける。いろんな役柄を演じて、今回は主役でないが、尾野真千子は大女優への道を歩んでいる感がある。


⒋最後のオチと職人魂
良いアニメをつくってもヒットしないこともあるし、大したことなくても流行ることもある柄本佑演じるプロデューサーが言う。確かにそうだ。ただ、この映画にでてくるアニメの製作関係者はほとんど職人気質である。斎藤瞳監督も王子監督も納得できずに手直しを要求する場面がでてくる。結局はいいものを世に出すことがいちばん重要だと考えて、場面が進む。それはそれでいい。


TVの連続シリーズのオチをどうするのかも最後までそれぞれ混乱する。ここでも職人魂が生きていく。こんな感じは悪くない。エンディングまで目が離せない。ちなみにエンディングロールまで観ても帰らないように。オマケがある。
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映画「流浪の月」広瀬すず&松坂桃李

2022-05-14 20:03:12 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「流浪の月」を映画館で観てきました。


映画「流浪の月」は凪良ゆうのベストセラー小説を、「怒り」の李相日監督広瀬すずと松坂桃李の主演で映画化した作品である。最近いい公開作がなく困っているところの新作である。

まず、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文(松坂桃李)が傘をさしかけるシーンからスタートする。15年経って更紗(広瀬すず)は恋人中瀬亮(横浜流星)と同棲して、昼間はファミレスでバイトをしながら結婚を控えている。

ある日、友人と入った喫茶店で更紗は文と再会する。2人は会話を交わさないが、衝撃を受けた更紗が喫茶店に通うようになる。同棲相手の亮が挙動がおかしくなった更紗を追いかけ喫茶店に乗り込むようになると同時に、昔の監禁事件に絡んでいた文だとわかり問い詰めていくという話である。


話自体は興味深く見れる作品だが、後半戦でかなりダレる。
広瀬すず、松坂桃李の2人は悪くない。少女を脱皮した広瀬すずは美しく瑞々しい「空白」「狐狼の血LEVEL2とちょっと合わないと感じる役が続いた松坂桃李も今回は本来のキャラにピッタリのプロフィールである。地方都市を舞台にしたストーリーで、アップを多用すると同時にワイドスクリーンを思いっきり使ったカメラワークもいい。大画面にはえる。

ただ、後半戦に入ってから、話の辻褄が合わない断片的なシーンが増える。週刊誌ネタになるのもちょっと不自然だ。意味がないカットが目立つようになるのは残念、150分にまで長くしない方が良かった。

⒈広瀬すず
きれいになったなあと唸るショットが多い。少女を脱皮したことを示すようにベッドシーンもある。当然、まだ脱がない。しばらくお預けだろう。少女時代の監禁事件に絡んで、被害者なんだけど、別に悪いことをされたわけでないし、むしろやさしくしてくれた文を慕う。ストックホルム症候群と言われる監禁した人間に同情するという心理と若干違うが、近いものがある。短期間一緒に暮らした文への恋心に近い気持ちが伝わる好演である。10歳のころの更紗を演じた子役もいい感じだ。

ヤキモチを妬いた同棲相手からのDVを受けるシーンもある。でも、酷い仕打ちを受けたのにも関わらず、その相手から逃げきれず、「亮くん」なんてセリフを使うのには観ていてしっくりこなかった。これって絶対おかしい。


⒉松坂桃李
ロリコン男だ。別に少女にいたずらするわけではない。一人でたたずむ少女に声をかけて、自宅で一緒に暮らす。それだけである。今はコーヒーしか置いていない喫茶店を営む。余計なしゃべりはない。地味に生きている。そんな役柄が松坂桃李にあっている。小さい時の母親との葛藤がきっかけでおかしくなったというストーリーの流れだが、これがよくわからない。


横浜流星は自ら志願しただけあって、DV男に変貌する役柄をうまく演じる。観ていて、こいつムカつくと観客に思わせるものをもっている。
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映画「マイスモールランド」と60年目のキューポラのある街

2022-05-08 18:11:03 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「マイスモールランド」を映画館で観てきました。


映画「マイスモールランド」は埼玉川口を舞台に在日クルド人の高校生の悲哀を描いた作品で、是枝裕和監督の映画制作集団に属する川和田恵真の監督第1作目である。1962年の吉永小百合が川口を舞台に演じたキューポラのある街」で、高校に行けたくてもいけない悲しい中学生を描いていたのとアナロジーを感じる。あえて「60年目のキューポラのある街」と言わせてもらう。


在日クルド人のサーリャ(嵐莉菜)は家族とともに小学校のときに来日して、現在は17歳の高校生となって小学校の教員免許がとれる大学を目指している。父親は建物解体業に従事して、妹と弟と4人で暮らしている。


父親は難民申請を出しているが、却下されて当局から家族全員の在留カードを無効にされた。父親は仕事をするなと命じられ、家族全員県をまたいで移動はするなと言われている。サーリャは荒川を越えて東京のコンビニでバイトしていた。そこで知り合った聡太(奥平大兼)と軽い恋に陥るが、県境を越えて働けなくなるのであるが。。。


リアル感が半端じゃない映画である。
脇役として出演する名優たちの顔を見なければ、ドキュメンタリーのように錯覚をもってしまう。優れた映画という感じはない。中途半端と思えるシーンも多い。ただ、主演と家族のパフォーマンスが実話のようで、在日クルド人の悲哀が伝わってきた。予想よりも心に残る映画になった。

⒈川口とキューポラのある街との類似
1962年のキューポラのある街では、川口の鋳物職人の娘である中学3年生の吉永小百合が、勉強はできるのに修学旅行にも行けないくらい貧乏で行きたい名門校への進学をあきらめる。貧しかった当時の日本を象徴する悲しい物語である。「マイスモールランド」でも、サーリャは友人に教えるくらい勉強ができて担任の先生から大学進学の太鼓判をおされているのに、在留カードもなくビザなしでは大学への推薦は難しいことになるのだ。

キューポラのある街で水戸黄門役で有名な東野英治郎が演じる父親が娘の吉永小百合の友人から紹介されて勤めた鋳物工場を辞めて失業してしまう。ここでも同様に主人公の父親が解体工事の職を失う。格差社会と言われて久しいが、1962年の日本の格差は今と比べものにならないほど酷い。しかし、難民として、正式な日本への移住ができていない人たちにとっては現在も格差を超越した世界に直面する。


キューポラのある街吉永小百合が通っていた荒川沿いの中学校が、建て替えられた姿で映し出される。東京と川口を結ぶ京浜東北線の鉄橋の下で吉永小百合が初潮を迎えるシーンに対して、国道122号が通る鉄橋を何度も自転車でサーリャが渡ったり、鉄橋の下で恋人の聡太と語り合う。

60年前の川口には朝鮮人が数多く住んでいた。左翼思想が浸透していた時期のキューポラのある街では北朝鮮への帰還に前向きな語り方をしていた。今の状況は想像もつかなかっただろう。このクルド人問題はそれよりもややこしい感じがする。

⒉クルド人
埼玉南部の蕨、川口を中心に中東系の顔立ちをしている人たちを見かけることが多くなった。それがクルド人とわかるようになったのは最近だ。公園にもいるし、楽しそうに家族でサイゼリヤで食事している。同じエリアには中国人の方が多い。川口の芝園団地では4500人の団地に2300人中国人が居住している。中国人の場合、一瞬の見かけではわからないが、中東系はすぐわかるのでもっといるように見える。


クルド人はもともとトルコやシリア地域に昔から住んでいた民族で、もともとの領土が分割してあぶれてしまったというセリフがある。歴史的に見ても、国境線が常に変わってきたわけだ。難民申請が通らないのは、日本政府と親しい関係にあるトルコとの関係を尊重して、本国の情勢が厳しい時に難民として引き取るという難民ルールに矛盾するという理由のようだ。この映画を観ると、日本在留に超越した対応をして欲しいという気持ちになる。

⒊美貌の主人公
主人公のサーリャを演じた嵐莉菜超越した美貌の持ち主だ。誰しもがそう思うであろう。父親は中東系だが、ドイツも含めた5カ国の混血だという。

キューポラのある街で、吉永小百合が友人に誘われて、夜の街を彷徨い不良に睡眠薬を飲まされて危ういシーンがある。この映画で似たようなシーンがある。友人に誘われ「パパ活」でカラオケに行って小遣いをもらったのに味をしめたサーリャが、賃料滞納で家主から催促を受けたので、一人でパパ活をやって賃料の足しにしようとするシーンがある。これも一瞬危ない

友人に「サーリャくらいかわいかったら、パパ活でもっと稼げるよ」と言われてやったわけだ。確かにそのとおり可愛い。それにしても、脚本は60年前の作品をうまく現代風にアレンジしたものと想像する。嵐莉奈もきっと数十年後に大物女優になるかもしれない。

今回の父親、妹、弟がなんと実の家族だという。妙に息が合っているのはそういうことなのか。ちょっと古いがTV「チャコちゃん」四方晴美の実の両親新派の名優安井昌二小田切みきがコンビを組んだ時を思い出す。


⒋川和田監督と名優ぞろいの脇役たち
エンディングロールのクレジットに是枝裕和や西川美和という現代邦画を引っ張る映画人の名前がある。日英の混血だという川和田恵真監督は著名映画人の下働きで腕を磨いてきたようだ。

大物映画人が関わっていることからか、脇役に名優が揃う。
難民の支援者である先生役に、数多くお父さん役を演じた平泉成、サーリャの家族が住む賃貸住宅の大家役に、昭和のTVドラマで気の弱い若者役を演じた小倉一郎、おせっかいなコンビニ店長役が藤井隆、コンビニ店で知り合った恋人聡太の母親に池脇千鶴が加わる。おそらくこの題材に関心を持ったのであろう。

驚いたのは池脇千鶴だ。稲垣吾郎主演の「半世界」で見てからちょっと太ったのかな?クスリを飲んでいるかのように顔が病的にむくんでいて一瞬わからなかった。異様に感じた。
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映画「ツユクサ」 小林聡美&松重豊&平山秀幸

2022-04-30 20:56:08 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ツユクサ」を映画館で観てきました。


映画「ツユクサ」は小林聡美「孤独のグルメ」松重豊の中年の恋という映画設定であるのは予告編で知っていた。江口のりこや泉谷しげるといった個性派俳優が脇を固めている上に、久々の平山秀幸監督作品であり、雰囲気が良さそうなので、映画館に向かう。

海辺の繊維工場で働いている芙美(小林聡美)はある夜運転していて、突然強い光を受けて車を横転させる事故に遭う。その時ダッシュボードに小さな穴を開けた石は隕石だと工場の同僚の息子航平に言われた。その後、独身の芙美の身辺に動きが出て、芙美がジョギング中に見かけていたガードマンの吾郎(松重豊)と行きつけのバーで出会い、お互いにひかれるようになるという話である。


心地良く快適に観られる映画である。
71歳になった平山秀幸監督が自分に肌合いの良い作品をつくるべく、個性的なキャラクターをもつ登場人物を田舎の海辺の街に放つ。大人の恋といっても、80歳から90歳の恋となると、さすがに自分も引いてしまう。老人映画はちょっと疲れる。ほどよい年齢の恋である。

海岸線にある西伊豆町をロケ地に選んだのは正解である。最後に電車は出てきたが、実際には西伊豆には電車は通っていない。同じ伊豆でも辺鄙なエリアだ。町を俯瞰する小高い山からの海の景色もいいし、さびれた工場がある田舎の匂いや泉谷しげるが店主のバーの場末感も、いかにも住みやすくのんびりとした田舎町だと思わせる。そんな設定で、登場人物が気負わない演技をしている。安定感を感じながら、最後まで映画を観れる。


50代から少し上くらいの人に受けるんじゃないかしら?おすすめだ。若い頃より枯れたやさしい作品をつくるようになった晩年の今村昌平監督平山秀幸監督の作風も似てきたのかもしれない。

⒈松重豊
映画の主旨と関係ないが、ご存知「孤独のグルメ」の五郎である。日曜日の6時すぎになると、ついついTVで再放送を見てしまう。わざとらしい寸劇の後、こんなに食えるの?と思わせるくらいの量を松重豊がおいしそうに食べる。周囲の若者にも大ファンが多い。このワンパターンを楽しみ、紹介される店は人気店になってしまう。実際行ってみると、ハズレもあるが、90%は納得の味である。

この映画での役柄の名前が吾郎で思わず吹き出した。シャイでやさしい人柄は両方に通じる。東京から流れてこの町に来た設定で、草笛を吹くガードマンだ。(前職は何だったかはネタバレで言わない)小林聡美は自分は所帯者と一瞬ウソをつくが、次第に接近していく。松重豊は不器用な感じを醸し出し好感がもてる。


⒉泉谷しげる
田舎町にポツリとあるバー「羅針盤」で捕鯨船の船乗りだったという店主役を演じる。行ってみたいと思わせるその店の常連が小林聡美だ。自分が中学の時、フォークが大流行して吉田拓郎や井上陽水とともに人気だった。ただ、攻撃的なムードが強い絶叫型だった。そんな独特なムードに合う役柄を数多く演じて、名作ドラマと名高い吉展ちゃん事件の犯人役など、俳優としての存在感が強い。全盛時に比べて頭もハゲ上がったし、老けた。でも、いい味を出している。



⒊江口のりこと名脇役たち
小林聡美と同僚の繊維工場で働くコミカルな工員だ。気がつくと寺の坊主と付き合っている。「女は男で世界が変わる」と坊主の影響を受けている。バートレイノルズ「女と車の運転は似ている。いずれ衝突する。」なんて言葉を持ち出す。

笑いを誘う展開に江口のりこの存在が欠かせない。何と言っても今泉力哉監督「愛がなんだ」のキャラクターが自分の頭にこびりついている。成田凌があこがれる美術学校で働いていて、タバコぷかぷかのちょっと飛んだ女の人役がうまかった。


他にも妻に逃げられたベンガル演じる太極拳好きの工場長がラジオ体操をする姿に思わず声を出して笑ってしまうし、濱口竜介監督「偶然と想像で珍しく大学教授役を演じた渋川清彦が、平山秀幸監督の前作閉鎖病棟では悪役だったのに一転気のいい釣り好きのオヤジを演じる。映画に出てくる登場人物のキャラクターには感情移入できる。


⒋あなたの心に
松重豊が草笛を吹く時に流れるのが「あなたの心に」である。思わず、背筋がゾクッとした。本当になつかしい中山千夏の名曲である。この曲が大ヒットした1969年には、毎日のように中山千夏がTVでドラマやいろんな番組に映っていた。ジャズピアニストの佐藤允彦と結婚している頃はまだ良かった。でも、その後参議院議員にもなり、矢崎という変な男とくっついて左翼思想に毒されてからは最悪だった。好きだった人もみんな嫌いになったんじゃないかな。

エンディングで「あなたの心に」が流れて、これって誰か別の人が歌っているのかなと思ったら中山千夏だった。古き良き時代を思わず懐かしんだ。
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映画「やがて海へと届く」岸井ゆきの&浜辺美波

2022-04-11 18:20:14 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「やがて海へと届く」を映画館で観てきました。


映画「やがて海へと届く」は彩瀬まるの小説の映画化である。彩瀬まるという作家自体初めて知った。岸井ゆきのと浜辺美波の女性2人がくっついている映画ポスターにレズビアン系の匂いを感じる。メジャー俳優は出演していないが、岸井ゆきの「空に住む」やいくつかの作品で観ている。美人じゃないけど、親しみやすい雰囲気でここのところ起用が目立つ女優である。

ホテルのバーに勤める真奈(岸井ゆきの)は、旅に出たきり行方不明になった親友のすみれ(浜辺美波)がいなくなった喪失感が心に残っている。すみれの元カレが訪ねてきて、片見分けをするという言葉に嫌悪感をもって接しながら、大学の入学式で初めてすみれと出会ってからの想い出をたどる話>である。

映画自体は普通だった。期待したほどではなかった。
エピソードの数は少ないし、内容が薄い。明らかにネタ不足なのに140分は長すぎる。不自然な長回しも多く、簡潔さがない。映画の途中で、登場人物の1人が死んでしまう。普通だったら、そこで話が広がっていくけれど、何もない。

題名にもある海のショットは多い。ドローンを使いながら、海岸を俯瞰する。ダイナミックに感じても、観光案内ではないから、風景だけが印象的でも困る。いかにも映画の中身のなさを露わにしないようにしているだけだ。東北の震災の体験談が途中で入る。それも監督の自己満足にしか見えない。ただ、監督のレベルは低くても、主演の2人は好演、映画に内容があればもっと活躍できる余地があった。

⒈岸井ゆきの
もう30にもなるのに、大学入学式の真奈から社会人になった現在の姿までを演じる。相手役の浜辺美波とは年齢差がかなりある。「空に住む」では、いかがわしい妊婦を演じてうまかった。「前田建設」でもファンタジー事業部に所属するトリッキーな女子社員だ。会社でちょっと左右を見回すと、いそうな女の子だ。その普通さがいい。

今回初めて知った原作者の彩瀬まるの顔を写真で見たら、岸井ゆきのによく似ている。彩瀬まるのプロフィールを見ていると、東北旅行の途中で震災に遭遇したようだ。なるほど、そういう経験をしたことがあるから、こういう作品が書けたのね。危機一髪の脱出だったかもしれない。


⒉新入生の勧誘
真奈が回想する大学に入学した時にサークルの勧誘を受けるシーンがある。これってコロナ前に撮ったのかな?強烈なワイガヤの中で、あるサークルに真奈が誘われる。1人で歩いていて、男性陣に強引に勧誘されている。おいおい大丈夫かい。その時にさっと横に来る女の子がいた。すみれだ。記名をして、新入生歓迎コンパに参加するのだ。周囲に男しかいなかった自分のことを思い出す。


美形のすみれは男にちやほやされる。真奈はそうでもない。そんな真奈に突如すみれがキスをする。女が女にキスするのだ。この時の浜辺美波に謎めいた巧さを感じる。印象的な回想シーンで始まり、その先を期待させるが、そんなにすごいシーンはなかった。ネタ不足なんだなあ。レズビアンを想像させる映画ポスターは誇大広告という印象を持つ。
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映画「親密な他人」黒沢あすか

2022-03-06 20:48:07 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「親密な他人」を映画館で観てきました。


映画「親密な他人」は冷たい熱帯魚や数々の脇役で存在感を持つ黒沢あすか主演で中村真夕監督がメガホンを持つサスペンス仕立ての作品。黒沢あすかは「冷たい熱帯魚」では殺人鬼のでんでんの妻役で、使い古した感じの裸体も露わにしたエロい熱演が今でも目に焼き付く。下着姿で裸の男と一緒に映るスチール写真もいやらしく、若い男を匿う女という設定が謎めいて気になり観にいく。

ネットで自分の息子心平の捜索願を出している1人暮らしの中年女性恵(黒沢あすか)の元へ、ネットカフェで会ったという若い青年雄二(神尾楓珠)が名乗りでる。雄二はオレオレ詐欺の受け役だったが、身寄りがなくネットカフェ暮らしと聞き、恵は一緒に暮らそうと勧めるが元の詐欺グループに追われるという話である。

期待して観に行ったが、さほどでもなかった。
謎解きのような要素もある。行方不明の心平は一体どこにいるのか?雄二はどこまで知っているのか?ストーリーの先行きがどうなるのか見ていて気になった。確かに、黒沢あすかは好演である。ただ、終わってみると、ストーリーにインパクトがなく、中途半端に思えた。物足りないと思ってしまう。。

⒈オレオレ詐欺
いきなり、オレオレ詐欺の場面が出てくる。最初は孫のふりをして、雄二が祖母に電話する。緊急入院することになり、金の持ち合わせがないので20万用意してくれと伝えておいて、老人の元へ行き金を受領する。オレオレ詐欺は暴力団の下部組織の資金源という話はよく聞くが、この映画のようにそれに至らない不良グループでやっているのかもしれない。

この雄二が恵のもとへ連絡する。恵は息子が行方不明になったので、捜索の懸賞金付きの記事をネットで載せている。ネットカフェで知り合ったという雄二と会うと、なぜか本人の身分証明書を持っているのだ。恵は5000円しか渡さない。もっといい情報が有ればもっと渡すという。そうしてあっているうちに、雄二が父母もおらず身寄りがなく、その日暮らしとわかり家で気の毒で引き取るのだ。


その後でオレオレ詐欺グループの親玉たちが動く。雄二が恵の家から一歩も出ないので、何かおかしいと動く。この映画は詐欺グループ対匿う恵との対立場面が続く展開で動いていく。

⒉不自然な場面
恵はベビー洋品店で働いている。妙にベビー服に執着を示す。そんなベビー洋品店の外で、乳母車に乗っている赤ちゃんが泣いている。恵が気になり、赤ちゃんをあやしてあげるのだ。そうした時に、赤ちゃんの親が戻ってきて自分が放っておいたのに何でそんなことをするの?と怒り、店は店長含めて平謝りだ。「え!なんで」平謝りするの?あやしているだけなのに?しかも、店員としての進退問題にまで進んでしまう。普通だったら感謝されるもんだよ。
これっておかしくない。意味不明?



恵が雄二を匿っていることがわかり、オレオレ詐欺のグループは何回も雄二にメール連絡するが、返事がこない。そこで、刑事のふりをして、恵の家を訪問したりする。恵は雄二を引きこもり状態にする。その後で、詐欺グループの親玉が強行突破をする。こみ捨て場に来た恵みを襲うのだ。映画を観ていて、一瞬ヤバイと思う場面だ。しかし、恵は持っていたナイフで親玉の顔を切りつける。

そこまではいい。でもこの後、親玉は何もしないで終わるのだ。これもおかしくない。ごく普通の悪玉ということなら、すぐさま反撃するんじゃない。しかも、ナイフ持っているとはいえ相手は女だよ。ゴミ置き場のそばなんだから、凶器になるものはいくらでもある。変だなあ?


こんな感じで、ツッコミどころも多い映画である。中村監督は外国が長いようで向こうの名門大学出身のようだが、ちょっと常識がなさそうで脚本がおかしい。基本的な部分でなんか世間づれと感じる場面が多く、すこし冷めてしまう
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映画「三度目の正直」野原位&川村りら

2022-01-26 18:23:48 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「三度目の正直」を映画館で観てきました。


三度目の正直は今が旬の濱口竜介監督の「ハッピーアワー」や「スパイの女」で共同脚本を書いた野原位監督作品である。そういうことなら一定のレベルは期待できると映画館に向かう。俳優陣はほとんど無名、「ハッピーアワー」にも出ていた川村りらが主演と同時に脚本も書いている。

事実婚で同居していた男性の連れ子が留学して主人公(川村りら)が意気消沈してしまう。しかも、気がつくと相手にも好きな人ができたと告白され、家を飛び出してしまう。そんな時公園で記憶喪失の若者が倒れているのを見つけ、子どもがおらず、育児願望の強い主人公が無理やり一緒に暮らそうとする話である。そこに主人公の弟夫妻が絡んでいき、展開は途中で意外な方向にも進む。

この作品にはのれなかった。今一歩という印象を持つ。
映画のリズムが悪く、テンポが中途半端だ。ここまで長回ししなくてもという場面も多く、下手くそなラップを延々聞かされるのには閉口した。誰一人として共感をもてる人物に会えないのものれない要因の一つだ。一見普通に見える人にも違った一面があるというのを見せたかったのであろう。意外性や軽い謎を投げかけ気をひかせるが、自分には嫌な感じにしか見えなかった。

⒈強い母性をもつ女性と川村りら
主人公は流産の経験があり、その後子どもには恵まれていない。一度離婚して、連れ子のいる医師と事実婚状態であるが、入籍していない。連れ子がアメリカに留学することになり、役所に頼んで孤児になってしまった子を引き取ろうと動き出したら、別の好きな人がいると言われ家を飛び出す。

子どもがいないことに強烈なコンプレックスを持っているのであろう。新たにまったく他人の子どもを引き取ろうとするくらいで、母性も強い。こういうのは男性には理解しづらい世界かもしれない。そんな時現れた記憶喪失の青年を自分の力で育てようとするのだ。周囲は大反対、青年にもその気がないけど、強引で誰のいうことも聞かない。

こういうキャラクターは女性でないと思いつかないかもしれない。行動が支離滅裂と何度も感じたが、女性の視点ではこうなるのか、その辺りは男の自分にはわからない世界がある。


主演と脚本を兼ねる川村りらは少し前まで神戸に住む普通の母親だったらしい。子育てにも手がかからなくなるという時期に映画界に足を突っ込んだら、素人から一気に映画製作の世界に進む。それも川村りらが魅力ある美人だからそうなるのであろう。年齢相応の美しさに知性を備えている。この映画のキャラクターとは絶対に付き合いたくないが、デートしてみたくなる女性だ。

⒉神戸と海
神戸というセリフはない。地名は露骨に出てこないが、海を見下ろす坂が多く、海がふんだんに現れるので神戸だとわかる。先日見たさがすでは土着の大阪がふんだんに出てきたが、ここでは若干ムードが違う。お店が出てきても洗練されているムードだ。


この映画のバックで流れる音楽はピアノ中心のシンプルで映像にしっくりあっているものだ。これはすごく良かった。ただ、クソみたいなラップは自分にはよく感じない。耳障りだった。
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映画「偶然と想像」 濱口竜介

2021-12-26 20:14:33 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「偶然と想像」を映画館で観てきました。


映画「偶然と想像」は、外国映画祭で受賞の常連となり、今や一流監督の道を歩んでいる濱口竜介監督の新作短編集である。オムニバス映画とも言えるが、それぞれの話がどこかでつながっているわけではない。前作ドライブマイカーでは村上春樹の短編3作を巧みにアレンジして、途中演劇の部分がちょっと長すぎたが良かった。

今回も期待感をもって映画館に向かう。しかし、都内でなんとBunkamuraしかやっていない。もっとも期待されている映画作家なのにそれはないでしょうとも思ってしまう。観に行くと、男性が大部分なのに驚く。観客の笑いを誘いだす喜劇的場面もいくつかあり、どこかなごやかな館内の雰囲気であった。

いずれも、濱田竜介監督の作品「寝ても覚めても」や「ドライブマイカー」のように観客を驚かす部分を備えた脚本なので、作品情報を引用する。

(第一話)
 撮影帰りのタクシーの中、モデルの芽衣子(古川琴音)は、仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)から、彼女が最近会った気になる男性(中島歩)との惚気話を聞かされる。つぐみが先に下車したあと、ひとり車内に残った芽衣子が運転手に告げた行き先は──。(作品情報より)



結局、芽衣子は夜会社で残業している元彼氏のところに乗り込んでいくのである。それにしても、この女主人公のセリフの数々にはひたすらムカつく。なんだこの女と思って腹が立つけど、男もなんかぐずぐずしている。元カレが別の彼女といい感じで結婚とかに進もうとしているときに、邪魔したり強引にもう一度よりを戻そうとする話って割とあるような気がする。これもそのパターンかも?最後の展開が見ものだ。

(第二話)
 作家で教授の瀬川(渋川清彦)は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木(甲斐翔真)の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しに。逆恨みをした彼は、同級生の奈緒(森郁月)に色仕掛けの共謀をもちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。



単位をくれなかったおかげで恨むということだけど、恋人にハニートラップをさせぐちゃぐちゃにしてしまおうというのも普通そこまでは考えない。しかも、この同級生の女性すでに結婚していて子供までいるのだ。それなのに不倫している。しかし、教授を誘惑しようとして乗り込んだ研究室は、さすがの教授も扉を開けたままにしている。用心深い。それでも、教授が書いた小説のエロい部分を読み上げたりしてあえて扉を閉めて誘惑する。さてどうなるか?


これはなかなか面白い。教授は用心深くガードが硬いのであるが、思わぬ罠があった。タダではすまない。一部笑いの部分も作りながら現代風に展開する。オレだったら、こんないい女が目の前に現れたら引っかかるんだろうなあと思いながら観ていた。

(第三話)
 高校の同窓会に参加するため仙台へやってきた夏子(占部房子)は、仙台駅のエスカレーターであや(河井青葉)とすれ違う。お互いを見返し、あわてて駆け寄る夏子とあや。20年ぶりの再会に興奮を隠しきれず話し込むふたりの関係性に、やがて想像し得なかった変化が訪れる。(作品情報より)



仙台にある女子高の同窓会に参加した夏子は目当ての友人がいなくてつまらないと思ったまま東京に帰ろうとしていた。その時、仙台駅のエスカレーターですれ違うお目当ての旧友にばったり出会う。お互いに再会を喜び、旧友の自宅に歩いて向かう。地元なのに夏子には同窓会の通知が来ていなかったのだ。

(注意:ここからネタバレあり)
自宅で会話していた夏子が高校時代かなりきわどい関係だった旧友が緊迫な会話に誘導しないのにイライラしていたときに、ようやくわかる。なんと、お互いがそれぞれ思っていた旧友とはまったくの他人だったのだ。館内は一気に笑いの渦となった。でも、ここでは終わらなかった。ここからも2人の好演に支えられていい感じで進んでいった。

オリジナル脚本のようだ。予想外の展開で観客が驚くのを濱口竜介が楽しんでいるような面白さはある。俳優は主演級ではない。ただ、いずれもどこかで観たことのある俳優である。演技の優劣はあるなあ。みんなうまいわけではない。ドッシリとしたフルボディのワインを飲むような感覚があるわけではないが、B級グルメの小品を楽しめた感触を残した。
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映画「由宇子の天秤」 瀧内公美

2021-09-23 18:22:21 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「由宇子の天秤」を映画館で観てきました。
これはよかった。いくつかのマイナス面はあるが,本年屈指の傑作と評価されるであろう。


「由宇子の天秤」「火口のふたり」での大胆な演技で一躍有名になった瀧内公美が主演、前作「裏アカ」「アンダードッグ」でも美しい裸体を見せていたが、今回はそういうシーンはない。高校の校内で教師と女子高生の不純な噂が広まり、それを苦にして自殺した事件を追う女性TVディレクター(瀧内公美)が、学習塾を経営する自分の父(光石研)が塾に通う女子高校生を妊娠させてしまった事実を知り右往左往する展開だ。


ここでは大きく2つのストーリーがパラレルに流れている。由宇子にとっては、報道の取材における関係者家族やTV局上層部との葛藤と、父親が犯した行為の顛末と両面で常に心が揺れている。ふつうの女の子だったらくじけてしまいそうなことにも耐える。行動力があり精神的に強い女性だ。そんな女性の心の葛藤を描くストーリー立てがうまい。

由宇子の天秤は長回しが多い映画だ。個人的には不必要に長いと感じる場面もある。取材している教員側の家族が苦悩するシーンで、自分の理解度が弱いのか意味がわからないシーンもある。それでも情感がこもったシーンの方がまさり、展開の巧みさで映画の質を高めている。

⒈瀧内公美とその葛藤
キャリアのある女性を演じるのがうまい。「火口のふたり」の時にはまったく感じなかった。事件のせいで周囲から白い目で見られている当事者の家族が感じる辛い思いをTVのドキュメンタリー番組にしようとする由宇子(瀧内公美)を追っていく。ディレクターと言ってもTV局の社員ではない。下請け制作会社で局に売り込むわけだ。

犯罪を犯した当事者の家族が苦しい思いをする映画はこれまでにもいくつかあった。過剰な報道にも責任があるという由宇子の主張がTV局の幹部と相容れない。その論点があるとともに、亡くなった女子高校生と教員のそれぞれの家族との交流を描くのが映画の序盤戦の主体であった。

由宇子は父親の経営する学習塾を手伝っていた。ある時、1人の女子高生が塾の中で嘔吐する。体調が悪いという女の子の様子がおかしい。由宇子は妊娠を疑い検査薬を買うと陽性だ。まして、赤ちゃんの親は由宇子の父親と本人から聞き慌てる。女の子の家は貧しい。塾の学費はただにするというのだ。

行動力のある由宇子は、父親の行為には落胆しても事を荒立てないように処理しようと、医師の友人に相談する。密かに診察してもらうが、専門医でないと手に負えない状態のようだ。安易には処理できないのだ。

⒉読めないストーリー展開
ミステリー映画では謎をつくって、その謎が徐々に解決していくという流れがある。当然、ストーリー展開がどうなるか気になりながら映画を追う。この映画では謎は投げかけられない。でも、打つ手が八方塞がりになっていく過程で決着の持って行き方が気になる。観ている方も映画に集中してしまう。


塾頭である父親は自分の責任だと告白しようとするが、由宇子は取材した重要なTVドキュメンタリーが日の目を見ようとしているからそれを待ってくれという。過ちが起きると、その周囲が苦しい思いをするのを見ているので本当は表沙汰にしたくない。でも、母体には危険が迫っている。

この先どうなってしまうのだろうと映画を観ながら何度も展開を脳裏で想像した。この後も春本雄二郎監督は数多くの伏線を張り巡らせながら、推理を複雑にしていく。

そして、最終場面が近づくにつれ、逆転技を連発する。ここまできたのに、こうくるか!ディートリッヒの「情婦」を連想した。展開的には満点と言えよう。

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映画「浜の朝日の嘘つきどもと」高畑充希&大久保佳代子&タナダユキ

2021-09-12 08:55:56 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「浜の朝日の嘘つきどもと」を映画館で観てきました。


「浜の朝日の噓つきどもと」は福島南相馬を舞台にしたタナダユキ監督の新作である。映画に流れる独特の優しいムードがお気に入りでずっと追いかけている。四十九日のレシピが大好きで前作ロマンスドールも良かったが、今回も予告編で気になったので早々に映画館に向かう。

閉館しようとしていた福島の名画座に突然映画館を立て直すという若い女の子が現れ、オーナーとともに復活を目指そうとする話だ。南相馬が舞台ということで、無理やり震災話を組み合わせようとするのは若干強引かもしれない。

これまでのタナダユキ作品の主人公たちと比較すると、高畑充希演じる立て直そうとする主人公があまり礼儀正しくない女の子で共感も持ちづらい。ここでの「嘘」も意味はわかったがあまり良くは思えない。逆に、主人公の恩師役の大久保佳代子の活躍が目立った気がする。これはキャスティングに成功している。

ここのところ、セリフを最小限にして映像で見せるという外国映画を続けて観たので、ナレーターも含めて説明調のセリフが多いのも久々だ。最近流行の映画文法とは若干違う。それだけに何がなんだかよくわからない映画の展開ではない。逆に観客にはやさしい時間軸をずらしながら揺れを示すストーリーも悪くはないんだけど、傑作だというほどでもないかな?


福島の南相馬で約100年まえに開業した映画館、朝日座の跡継ぎ森田保造(柳家喬太郎)は、時代の波に押されて売却することを決め、祖父がここをはじめるきっかけとなった映画、D・W・グリフィス監督「東への道」のフィルムを映写して終えようとした。


映画館の前で、フィルムを焼却処分していた時に、見知らぬ娘浜野あさひ(高畑充希)が強引に止めようとする。名乗りもせずに、この映画館を立てなおすために来たと宣言する。すでに心を決めていたオーナーは驚く。名前を聞くと、茂木莉子=モギリ子と名乗る。浜野あさひにとって、朝日座再興は大切な恩人との約束だった。

恩人とは、あさひが通っていた郡山の高校の教師田中茉莉子(大久保佳代子)である。震災のあと父親(光石研)の仕事の関係で周囲から総スカンを喰らって1人ぼっちになって高校の屋上で1人ぼっちだったあさひを救ってくれた教師だった。その先生から朝日座をなんとか救ってくれと東京から南相馬に来たのであるが、売却を避けるためにあさひがいくつかアイディアを出すのであるが。。。


⒈高畑充希と柳家喬太郎
いきなり自分の名前も名乗らずに閉めようとしていた映画館の前で、立て直すとオーナーにかます言葉遣いがタメ口の礼儀知らずで、しかも偽名を使う。なんだこの女と違和感を感じる。でも、徐々に印象は変わる。江戸弁の福島南相馬の映画館の主というのも妙だが、噺家だけに柳家喬太郎の語りのテンポは軽妙である。2人の掛け合いは田舎人の会話と思えないスピード感だ。ワイドスクリーンを思いっきり使った2人の見せ方はうまい。


セリフにあるが「もともとは中流家庭出身」という主人公あさひは普通の運送業者の娘だった。父親が震災後の復興事業でカネ儲けしているとうわさされ、田舎なのでそれが高校にまで伝わり友達もなくすという設定だ。ある意味かわいそう。それを救うのが大久保佳代子演じる先生という訳だ。

先日観た明日の食卓では、高畑充希はカネがないのに親の援助を受けずに頑張る典型的なシングルマザーを演じていた。あまりに頻繁にみられる話である。でも、ネイティブ関西弁で演じる演技も悪くはない。土着の関西舞台の映画なんか出演させてみたらいいんじゃないだろうか。今回は回想シーンで、高校生まで演じてしまう。違和感はまったくない。

⒉大久保佳代子
高校の教師である。もともとは映画の配給の仕事をしていて、たまたま教員免許を取っていたので、採用試験を受けたら受かっちゃったという設定だ。映画好きで、マニアックな作品のDVDを家で見ている。男出入りは割と激しく、入れ替わり立ち替わり泊まりに来るが続かない。自分の馴染みの店に放火しようとしていたベトナム実習生を助けて、一緒に暮らすという設定だ。


人はいい。家庭の事情で周囲から白い目を向けられている高校生の主人公あさひを助ける。それでも、ドロップアウトしてしまうあさひに大学くらい出ないときついよと大検の試験を受けるのを勧める。教育者の見本のようなものだ。

タナダユキのキャラクター設定は成功しているし、アンバランスな部分を持つ教師に大久保佳代子を起用するのもうまい。彼女も良く応えている。千葉大学出身で庶民的国立大出である。教員になる人が多い大学だ。それなり以上に学があるけど、美人ではない。もともとお笑いでのスタートだけど、気がつくと性格俳優的使われ方をしている。ますますオーダーが増えるのではないか。


⒊世間知らずなのかな?監督は
朝日座は売却することが決まっていた。でも、450万円ほど借金がある。この借金というのが謎だ。購入希望者と土地建物の正式契約はしていないというセリフがある。ということは手付金ではない。事前に購入主から運転資金として借りていたということなのであろうか?これも妙だ。

しかも、すでに解体業者を手配しているので1000万かかっているので計1450万円返してもらえないとダメだと購入側から言われる。あさひの案ではじめたクラウドファンディングでは到底足りないという設定だ。でも、解体の業者を手配しているだけで、明日工事に入るというわけでないのに多額の損害金が発生するはずがない。準備だけでかかる費用はたいしたことない。逆にこれでそのまま費用請求したらぼったくりだ。映画でのお金のやりとりは超不自然だ。これで1450万円支払ったとすると、あきれるしかない。

毎度のことながらタナダユキ監督のセンスの良さは認めるが、プロデューサーも女性のようだし、もっと商慣行のわかる人に聞いた方がいいと思う。


今回、吉行和子さんが出演していた。日経新聞私の履歴書の連載にこの5月に登場していた。おもしろかった。その際、劇団民藝に入団して、労働歌とか歌わせられながら左翼思想に毒されたことが書いてあった。今でも演劇界には左翼が正義みたいな風土があるが、それは別としても経済取引についてはもう少し勉強してほしいという部分はいつも感じる。
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