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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「愛のこむらがえり」磯山さやか&吉橋航也

2023-06-29 19:31:09 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「愛のこむらがえり」を映画館で観てきました。


映画「愛のこむらがえり」は先日「渇水」で初長編監督作品を発表したばかりの高橋正弥監督の作品だ。監督昇格できず万年助監督に甘んじている男が同棲している彼女と一緒に自ら書いた脚本を売り込んで日の目をみようとする物語だ。磯山さやかと東京乾電池に所属する吉橋航也の主演である。東京乾電池の親分柄本明をはじめとして、吉行和子、浅田美代子といったベテラン勢が脇を固める。

子どもの頃からの夢で公務員になるべくしてなった香織(磯山さやか)が、地元鉾田の映画祭で賞を受賞した映画に感動して映画の仕事をしようと上京する。賞を受賞した浩平(吉橋航也)と映画の仕事で一緒になり、同棲を始めて8年になる。しかし、浩平は18年も助監督という名の雑用係で、今では自分より若い監督の下につく始末だ。

自ら限界を感じながら、浩平が起死回生で書いた脚本「愛のこむらがえり」を読んだ香織が感動して映画製作者に売り込む。でも、なかなかうまくいかない。香織が映画プロデューサーの友人橋本(菜葉菜)に脚本を見せて、いくつかアドバイスを受け脚本はブラッシュアップした。ただ、いいキャストがでなけりゃ映画製作のカネは出せないということで名優西園寺宏(柄本明)に出演交渉しようと香織がストーカーまがいに近づいていく。でも、門前払いをくらってしまう。


主演2人に好感が持てるコミカルテイストをもった作品だ。
もう40近いけど、磯山さやかは、かわいい。映画に感動して周囲を気にせずずっと拍手し続けたり、同棲相手が書いたシナリオを読んで涙を流しながら感動している姿がいい感じだ。そこまでやられると相方もやる気にもなるだろう。しかも、各映画会社などに率先してtel打ちして売り込み、名優にも出演してくれと強引な出演交渉をする。映画の中の存在だけど、熱心さにしびれる


万年助監督の浩平を演じる吉橋航也は、今回初めて知った存在だ。才能はあるけど、うだつの上がらないボーッとしたキャラクターの役づくりだ。プロフィールを見ると、東大法科出身だという。昭和の時代には、山村聰や渡辺文雄の東大出身俳優がいて、現役には香川照之もいるけど、いずれも法科卒ではない。ただ、3人とも政財界の大物のような役ができる。今回観た限りでは、吉橋航也はちょっと出来なさそうなキャラだ。むしろ東大理系研究者の匂いがする。自分の経験では頭のいいやつってこんなボーッとしたやつが多い。


高橋正弥監督には長らく助監督をしてきた経歴があるので、自分で自分のことを題材にして書いたのかと思ったら違う。脚本は「ツユクサ」安倍照雄、三嶋龍郎との共同脚本だがメインは加藤正人である。東北芸術工科大学の教授で、比較的最近では白石和彌監督で香取慎吾主演の「凪待ち」の脚本を書いている。2019年の公開作品では自分なりには評価が高い。競輪狂いの主人公を描いているのに白石和彌がギャンブルをやらないと聞き変だな?と思った記憶がある。どうやらピンク映画上がりの加藤正人裏筋の人生にもくわしいのだろう。

助監督が長いという経歴の高橋正弥を意識して加藤正人が書いたのかもしれない。履歴を見ると、加藤正人も高橋正弥も秋田出身なので同郷のよしみもあるのだろう。助監督がロケ地で交通整理をしたり、なかなか監督作をもらえないと助監督仲間とキズを舐め合うシーンは映画製作内部にいないとわからない。


柄本明も出演作に事欠かない。「最後まで行く」はやくざ役だったけど今回は名優役だ。日経新聞で「私の履歴書」を既に書いた吉行和子も80代半ばを過ぎてスクリプター白鳥あかね役で出演しているし、往年の名映画監督役で品川徹が出ているのも味があるセリフが出せて良い。往年のファンとしては浅田美代子の出演もうれしい。


いくつかの映画で出会っている菜葉菜が、映画プロデューサー役で出ている。これがうまい。現代映画のプロデュース事情を語ってくれたのでわかりやすくて良かった。それによれば、最近の映画は「原作至上主義」で名の通った原作がないとスポンサーがつかない。オリジナル脚本なら著名キャストを連れてこないとダメだと語る。なるほどと思った。
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映画「君は放課後インソムニア」 森七菜&奥平大兼

2023-06-25 05:14:55 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「君は放課後インソムニア」を映画館で観てきました。


映画「放課後のインソムニア」オジロマコトの漫画原作を池田千尋監督がメガホンをとり、若手の人気女優森七菜が主演の青春モノである。共演は「マザー」長澤まさみ演じる出来のわるい母親に振り回される息子を好演した奥平大兼だ。でんでん、田畑智子、MEGUMI、萩原聖人といったベテランが脇を固める。

たまに青春モノが見たくなる時がある。とは言うものの、予告編でこれは違うなと思うことが多い。今回、日経新聞の映画評古賀重樹編集委員が星5個(満点)をつけていた。いい批評しても評価は3点が多い古賀重樹には珍しいことなので、ついつい目が止まる。しかも、「ラストレター」で観た森七菜の瑞々しさとクルド人移民の悲哀を描いた「マイスモールランド」でも好演した奥平大兼が気になり映画館に向かう。

石川県の高校生中見丸太(奥平大兼)は夜眠れない不眠症に悩まされていた。ある時用事があって学校の天文台に入った丸太は、そこで寝ているクラスメイトの女子高生曲伊咲(森七菜)に気づく。伊咲も同じように眠れない悩みをもって時々来ていることがわかり、2人でこっそり訪れるようになる。ところが、養護教員に2人が天文台にいることがバレてしまう。事情を聞いた教員は2人に思いきって学校公認の天文部を作ったらどうかと勧める。そして、以前部員だった先輩にも頼り天文台を活用した活動を始める。


さわやかな青春物語で好感が持てる。
石川県七尾市が舞台で、おそらくは地元も全面的に協力したのであろう。まさに天文台がある七尾高校を使ってロケをしたみたいだ。人口5万の海辺に面した地方の町の息づかいが手にとるようにわかる。7つの橋を誰にも見られずに渡るといいことあるなんてエピソードもいい感じだ。能登町の真脇遺跡にいる2人を捉えるカメラワークが良かった。しかも、このところの日本映画に多い下層社会の暗い面を妙に盛りだくさんにしすぎる雰囲気がないのも良い。


森七菜と奥平大兼の主演2人がさわやかだ。もともと恋心がお互いにあったわけではない。天文部の活動で、天文台という密室で共通の時間を過ごすことで恋が深まっていく。若い2人の空気感がじわりじわり伝わってきて応援してあげたくなる。これまでの作品を観て好感をもった2人が頑張った。若い2人の同級生たちや先輩やお姉さんの使い方もうまい。読んではいないが、オジロマコトの漫画の原作もいいムードを持っているのであろう。

伊咲に心臓疾患の持病があることや、丸太の母親が飛び出して行ったなんて話題もある。それぞれの悩みを乗り越えながらこの純愛をキープしようとしている。「努力も運も写真に写らない」と伊咲がカメラ好きの丸太にいうセリフが妙に腑に落ちた


自分も目線を高校時代に落とした時、森七菜みたいな女の子とこんな共通の時間が過ごせたらどんなに楽しかったんだろうかとうらやましい気分になる。主題歌「夜明けの君へ」もいい曲で席を立つ人がいなかった。そう、ラストのエンディングロール終わったあとにオマケがあるので注意。少し涙腺を刺激するシーンはあったけど、スッキリと映画館をあとにできた。
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映画「波紋」筒井真理子&光石研

2023-05-27 17:21:01 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「波紋」を映画館で観てきました。


映画「波紋」は「川っペリムコリッタ」荻上直子監督のオリジナル脚本で筒井真理子が主演のシリアスドラマである。予告編で何度も観て、内容はうっすら想像できた。夫が失踪してしばらくして妻が新興宗教にハマった時に夫が突如戻って来るというストーリーは予想通りのままだった。「よこがお」など筒井真理子主演のドラマはいずれも好きで、期待して映画館に向かう。直近にいい公開作がないせいか、上映館は比較的多いようだ。

東日本大震災の直後に放射能の影響が報道されている頃、親子3人と要介護の父親で暮らしている須藤家の主人修(光石研)が突如妻の依子(筒井真理子)の前から姿を消す。それからしばらく経って、義父も亡くなり息子(磯村)も九州の大学に行って就職して一人暮らしの依子は新興宗教「緑命会」にハマっていた。そこに突然夫が戻ってきた。線香をあげたいという夫を家に向かい入れると、夫はガンになってしまったという。そのまま夫が家に住み着くようになる話だ。


映画自体は興味深く観れたけど、期待したほどではなかった。
でも、筒井真理子、光石研は相変わらずの安定した演技である。特に筒井真理子はほぼ出ずっぱりで普通の主婦が新興宗教にハマっている姿を描いている。それ以外のプールやサウナのシーンやお隣さんとのやりとりのシーン、息子がフィアンセを連れてきた時の動揺を巧みに演じた。光石研は今回のようなダメ男の方が味がある。新興宗教の教祖?役を演じるキムラ緑子やスーパーの同僚の木野花の存在も映画の幅を広げる。いずれもうまい。


予告編で予想した通りの出だしで、ストーリーも普通に展開しただけでその後の起伏が少なかった意外性はなく、残念ながらパンチがない「川っペリムコリッタ」も中身がない映画だと思ったが、震災や介護や障がい者問題など世相の話題をいくつも継ぎはぎにしているだけで新興宗教の扱い以外は中途半端だ。荻上直子監督の作風はこんなあっさりした感じなのかもしれない。

ただ、筒井真理子演じる妻は夫が戻ってきた時に泣いたりわめいたりしなかった。普通だったら家の中に入れないだろうと思うけど、あえてその展開にしたのであろう。それ自体は悪くはない。別に寛容性があるというわけではない。いやで仕方ないけど、つらく当たると自分にしっぺ返しをくらうと考えてそうしているだけだ。それなのに、息子がフィアンセを連れてきたときの態度は考えられないほどの嫌悪感だ。これって女流監督だから演出できる男にはわからない女性心理を描いているのか?


こういった新興宗教の信者たちって、みんないつもニッコリして健全な感じだ。駅の前でよく見る宗教の勧誘や共産党のビラを配るおばさんたちと同じだ。江口のり子がそのうちの1人というのはいつもと違う。宗教の集会でキムラ緑子の教祖と一緒に信者たちが歌ったり、踊ったりする歌は当然オリジナルだろう。作詞作曲や振り付けも荻上直子監督が自ら考えたのであろう。これだけは事前取材の成果が出てすごいなと感じた。筒井真理子赤いカサを持ったフラメンコも好意的に見れた。
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映画「放課後アングラーライフ」十味

2023-05-06 20:44:24 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「放課後アングラーライフ」を映画館で観てきました。


映画「放課後のアングラーライフ」は頻繁に新作を量産する城定秀夫監督の新作である。井上かおるのライトノベルの映画化で関西の海辺の街が舞台である。「アングラー」とは釣り人のこと。城定秀夫監督作品は毎回観ているが、今回は東京近郊で公開の映画館が1つだけだ。無名の俳優だけでは客が呼べないのであろう。たしかに、脇役の宇野祥平や中山忍、西村知美など以外は知らない俳優しかいない。それでも一抹の期待をこめて映画館に向かう。

父親の転勤で関西の海辺の町に突然引っ越してきた女子高生めざし(十味)は、転校前は同級生にいじめられていた。友達はもうつくらないと誓って、転入してきた。すると、同級生となった椎羅(まるぴ)と凪(森ふた葉)から釣りの同好会であるアングラ女子会に入会を勧められ、一緒に海に向かう。勝気な明里とともに釣りに繰り出すが、めざしには以前のイジメのトラウマがあった。


さわやかな女子高生の友情物語であった。
海辺の田舎町に女子校ってあるのかな?というのが不思議だったけど、海辺の町独特の空気感がいい。若い女の子と組み合わせると清涼感を感じる。ただ、「ちひろさん」「とべない風船」などの直近でいくつか観ている地方の海辺の物語と同じで、話のネタが少ない。田舎町では大きな事件は起きない。釣りの同好会に入会して、どう話が展開するのかと思ったけど、高校生どうしの他愛のない話しかなかった。むかしの「中学生日記」のようなものだ。城定秀夫監督あり合わせの料理をさくっと作ったって感じがした。


それでも、若い女子高生が海辺で釣りに没頭する姿は絵になる。釣りをするシーンに加えて、魚をさばいて料理をつくって食べるシーンもある。のどかだ。主人公のめざしこと十味は、内気な女の子だ。あまりいじめられるようにも見えないタイプだと思うんだけど。都会的な顔立ちで最近よくいる若手女子社員とも見えるし、場末のキャバクラでなく少し値段が高めの銀座クラブにも清純派若手でいるタイプだ。ずいぶんと遠慮がちの演技に疲れたんじゃなかろうか?


釣り同好会会長椎羅の家は釣具店でそのお母さん役が西村知美だ。久々に顔をみた。日本TVのマラソンも完走したし、一時期はTVでその姿を見ない日はなかった。気さくな感じの釣具店のお母さん役で、自分にはよく見えた。これから同じような役で起用されるのでは?宇野祥平は今の日本映画の脇役では欠かせない存在だ。善悪どちらでもokで何でもこなす。未亡人の西村知美のことを慕う農家のオヤジで、まんざらでもなさそうだ。いつもよりやりやすかったんじゃないかな。


舞台が関西で釣る魚を「がしら」というので、てっきり和歌山かな?と思った。平成の初めに転勤で和歌山に住んで、当時「がしら」をよく食べた。関東ではカサゴと呼ぶけど、焼き魚にするとうまい魚だと思った。この映像ってどこかな?と思っていたけど、エンディングロールによるとロケ地は三浦半島のようだ。たぶん低予算だと思うので、それは仕方ないか。
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映画「少女は卒業しない」河合優実&小野莉奈

2023-02-26 17:38:05 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「少女は卒業しない」を映画館で観てきました。


映画「少女は卒業しない」は朝井リョウの原作を映画化した作品。頻繁に映画に出演している河合優実を含めた4人の女子高校生が卒業式まであと2日になった日々を描く偶像劇である。往年の山口百恵を思わせる趣きをもつ河合優実には、同世代と違う大人びた色気を感じる。「アルプススタンドのはしの方」野球オンチの女子高生を演じた小野莉奈もここで登場する。いずれも2000年生まれだ。若き日に思いっきり目線を下げる決意で映画館に向かう。

校舎の解体が決まっている山梨にある高校で、4人の女子高校生が卒業式を迎える。それぞれに悩みを持っている。4人は卒業式を迎えることでは一緒でも、クロスしていない独立した関係である。

山城まなみ(河合優実)は料理部に所属して、卒業後は地元の栄養の専門学校に行くことが決まっている。付き合っている彼氏に弁当をつくってあげていた。卒業式で答辞を読むことが決まって、本文の推敲を重ねて臨む。いざ本番になるときにある出来事を思い出し、胸に込み上げてくるものがある。


後藤由貴(小野莉奈)はバスケットボール部に所属している。卒業後は東京で心理学を勉強しようと進学を決めた。男子バスケ部に付き合っている彼氏がいるが、地元進学予定と進路が別々となり、数ヶ月疎遠になっていた。これではマズイと卒業式に一緒に登校しようと誘いかけるのであるが。。。


作田詩織(中井友望)は引っ込み思案で、クラスでみんなの会話に入れないまま図書館にいることが多かった。図書室担当の教員にクラスメイトと馴染めない話をすると、卒業式前に話しかけてみたらと言われる。思い切って実行してみると、感触が今イチであり、先生にグチってしまうのであるが。。。


神田杏子(小宮山莉奈)は軽音楽部の部長である。卒業式の記念ライブに出る部内の3つのバンドの人気投票をすると、森崎率いるパンクバンドが圧倒的人気だった。結局、杏子は投票通り森崎バンドにトリを任せることにしたが、投票結果はヤラセだと反感する部員が出てきた。そして、当日を迎えようとしたとき突然バンドの楽器やメイク道具が行方不明になるのであるが。。。


これらの4つの話が並行して時系列通りに進んでいく。「え!どうなっちゃうんだろう?」と思わせるのはバンドの話くらいで、あとはごく普通に話が進む。田舎町の普通の高校にビックリするような話は起きない。卒業式を題材にしたこの映画を観ながら、すっかり忘れていた自分の学生時代のエピソードが次々とよみがえる。そんなこともあったなと振り返るには良いきっかけになる映画だった。

⒈山梨の県立高校
いかにも山梨らしい盆地にある高校だ。見渡す風景は田舎町の風景である。全員が大学に進むわけではない。進学校ではない。地元の大学に進学する者もいれば、東京に進学することでウキウキしている者もいる。専門学校に進む生徒も就職する者もいる。ある意味バラバラだ。でも卒業式まであと何日と黒板に書いてあるけど、その時期って高校には行っていなかった気がする。

ただ、こんなふうに進路がバラバラな方が、物語をつくりやすい気がする。オムニバス映画に近い構造である。

⒉卒業式の同伴登校
小野莉奈演じる由貴が東京の大学に進学するけど、相手が地元進学で進む進路が違うことで仲違いして疎遠になっている。でも、このまま高校生活をおえるのはマズイと彼を電話で誘いだして、明朝一緒に登校しようと誘いだしたのだ。このシーンを観て、自分が高校を卒業する時に同伴登校する2人がものすごい話題になった事件を思い出した。

男はラグビーの名プレイヤーで、自分の学校では一大行事だった運動会の団長であった。女は陸上走り幅跳びの選手で、各スポーツクラブの人気者から羨望のまなざしで見られた女子高校生。このスクールカースト上位の2人が卒業式に同伴登校しただけで、卒業式はその話題で持ちきりとなり、それから1年以上現役進学、浪人と進む進路が分かれた面々がそれぞれこのカップルの話題を持ち出した。


夜のクラブの女の子と同伴出勤するのとは異なり、高校時代は一緒に登校すること自体が付き合っているのと同値になっていたからだ。こんな話をずっと忘れていた。映画ってすごいよね。押し入れの奥底にしまっているような想い出を引き出してしまうんだから。ちなみに、その2人は結局結婚して2人の子供を作ったが、離婚した。そこにもドラマがあったが、ここではやめておこう。

⒊自分の想い出
幼稚園の卒園式だけはどうしても思い出せないが、小中高、そして大学それぞれの卒業式に想い出がある。高校の卒業式は3月18日講堂でクラスの代表が卒業証書を受け取る場面が脳裏をよぎる。東大をはじめとした国立の発表は3月20日だった。その結果がわからない状態でも私立は合否がわかって、浪人覚悟も大勢いた。

今時だったらコンプライアンスでエライ大騒ぎになる話だが、当時目蒲線だったある駅にある飲み屋で卒業式打ち上げをやった。自分が部活のOB会の飲み会で使ったことのある飲み屋をアテンドした。いつもOBに飲まされていた。2日後に東大や京大に合格する男もその場にいたし、女性陣もいた。結局、酔っ払いすぎて、前後不覚になって御嶽山にある友人宅に担ぎ込まれた。まあ、ひどい話だけど、楽しかったなあ。本当、今の高校生はかわいそう。


⒋卒業したくない
今回の主人公たちは「卒業したくない」とそれぞれ言う場面がある。今のままでずっといたいと。先日大学の同期5人で飲んだ。その会話の中で、「戻るんだったら、いつの時代に戻りたい?」という話題になった。紅一点の女性は高校時代と言っていた。


小学校から一気通貫の彼女は、名前を言えば誰でも知っている人の子孫にあたる上級国民出身で教育ママ羨望のルートを歩んでいた。若い頃は大学で3本の指に入るすごい美人であった。「なぜ高校なの?」と言うと、小中が共学で、高校で女子高になって、それがムチャクチャ楽しかったそうだ。自分にはわからない世界だ。

でも、その彼女がずっと幸せだったわけではない。夫の不貞で財産問題と離婚訴訟が起こり、ハチャメチャになる。一時はあの美貌がかなり衰えた。美形で何もかも恵まれた人が必ずしもずっと幸せになるわけではない「ずっと卒業したくない」と言っている時がいちばん幸せなのかもしれない。
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Netflix映画「ちひろさん」 有村架純

2023-02-25 10:12:21 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
「ちひろさん」はNetflix映画


Netflix映画「ちひろさん」は原作漫画を有村架純主演今泉力哉監督が映画化したものだ。映画館の予告編で観ていたが、すぐさま発信されたので覗いてみる。有村架純が風俗嬢を演じるという設定が気になる。予告編で観た時に、印象に残るセリフがいくつかあった。

海辺の小さな町の弁当屋で、ちひろ(有村架純)が店員をしている。ちひろは元風俗嬢で、そのプロフィールは隠さず務めていて、来店する男性客にも人気だ。ちひろのパフォーマンスを追う地元女子高校生や小学生もいる。そんな時、友人とお祭りに行くと、そこで元店長(リリーフランキー)に偶然出くわした。以前お世話になっていた。


こんな調子で進む。どこのロケかな?と思ったら、変わった名前の釣具屋がある。この看板は本物だろうとネットで検索すると静岡の焼津だった。ごく普通の漁港で、素朴な出演者たちを描く。


Netflixで予算はもらえたのか、有村架純をはじめ出演者はまともだ。リリーフランキーや風吹ジュン、平田満などに加えて今泉力哉作品常連の若葉竜也もでてくる。いつもの今泉力哉監督作品ほど長回しはない。くどくはない。田舎町での小さなエピソードを集めているけど、大きな紆余曲折はない。そんなに大きな出来事が起きるところでもないだろう。昨年から今年にかけて海辺の町を舞台にした「ツユクサ」「とべない風船」もそうだった。静かに始まり、さらっと終わる。


有村架純演じるちひろさんは、人生に疲れてもうダメだと思った時にリリーフランキー店長の風俗店に救われる。そういう履歴を経た29歳の女の子だ。ホームレスのおじさんに弁当をあげたり、不登校気味の高校生と仲良くなったり、夜の商売で働くシングルマザーの1人息子に食べさせたりする。そういった海辺の町の住人との交情がずっと描かれる。それぞれに心の闇を抱えている人たちに癒しを与える存在だ。この映画の予告編はこの映画の重要な会話を簡潔にまとめている。傑作というわけでもなくあっさりした映画だけど、悪くはない。
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映画「茶飲友達」岡本玲&外山文治

2023-02-15 18:50:29 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「茶飲友達」を映画館で観てきました。


映画「茶飲友達」は老人向けの風俗に焦点をあてた作品。自分も60を超えたので、ある意味気になる題材で映画館に向かう。この映画も東京ではユーロスペースでしか上演していない。そのせいか、地味な映画なのに「コンパートメントNo.6」同様超満員で驚く。外山文治監督の前作「ソワレ」村上虹郎主演の若者の物語だったけど、がら空きだった。

老人パワーはすごい。客席には男女を問わず老人が多い。身近に感じられるのであろう。岡本玲や名脇役渡辺哲など一部の俳優を除いては、一般人の老人がかなり出演している。


非常によくできた映画である。
傑作と言っても良い。素人も混じっているのにリアル感が半端じゃない。ドラマ仕立てで、ドキュメンタリータッチというわけでもないのに真に迫るものがある。それぞれのセリフに不自然さがない。一定の年齢に達した人がこれを観ると、誰もが思うことがあるだろう。

妻に先立たれた1人住まいの老人が新聞を読んでいると、「茶飲友達」募集という三行広告に気づく。電話すると若い女性が「ティーフレンドです」と応答した。会ってみると、お相手とスタッフの2人の女性と面会する。メニューは普通のコースと玉露コースに分かれていて、玉露コースではハードなお付き合いもできるのだ。運営者の代表は元風俗嬢のマナ(岡本玲)で、若者たちで運営している。送迎やトラブル対応をしていて、大勢の老女コールガールを抱えている。


⒈勧誘
店のオーナーであるマナがスーパーで買い物をしていると、万引きをしようとする初老の女性に気づく。おにぎりをバッグに入れたところを店員に見られ摘発されそうになっている。その場をマナが見つけて、お母さんレジに行きましょうと助けの手を伸ばす。まったく関係ないので初老の女性は啞然とする。そして、マナは自分たちのアジトに連れて行って勧誘する。当然、最初はそんな気はないと抵抗するが、未亡人の初老の女性マキは気がつくと「ファミリー」に入っているのだ。


あとはパチンコ屋にいるいかにもカネを突っ込んで金欠の女性などにも目をつける。みんな金がない。前借りもしょっちゅうだ。浪費家がその道に入っていく。ある意味、貧困ビジネスの要素もある。何かのきっかけで、「ティーフレンド」に来た女性をスタッフが手取り足取り初歩から教えていくのだ。

⒉男性たち
ネットというよりも全国紙の三行広告の方が効果がある。「茶飲友達募集」ということで連絡すると、待ち合わせ場所には初老の女性と若いティーフレンドのスタッフが待っている。そして、雑談を少しした後でバイアグラを差し出す。気がつくと一気にディープなコースに進んでしまうのだ。リピート率も高い。深い仲になったあと、男性側は普通の付き合いも求めるがそれには応じない。タイマーが終了したら、さっさと出ていく。


ここで「ティーフレンド」は別の需要に気づき一歩先に進んでしまう。老人ホームの個室で対応するのだ。お見舞いのふりをして、若いスタッフと初老の老女が部屋に入っていき、あとは老女にお任せだ。偉そうなことを言っても男は女性にキスされるともうダメ。かなりの重症で自分で何もできないような要介護老人にも対応する。白髪まじりの老女が入っていったら、施設の人も心配しない。


しかし、ずっとうまくいくことはない。ある時点で転換期を迎える。ここからはネタバレなので言えないが、万一の時にどうするか?ということもマニュアル化しておけばうまく逃げ切れたのかもしれない。当然、こんな映画の存在で実際に商売のネタにする人たちがいることも考えられる。その際には、いい事例になるだろう。

スタッフの人間模様にも着目する。
ただ、ここまでやらなくてもいい気もした。そうすると、120分以内で簡潔にまとめられるかもしれない。
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映画「恋のいばら」松本穂香&玉城ティナ&城定秀夫

2023-01-12 05:02:46 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「恋のいばら」を映画館で観てきました。


映画「恋のいばら」は驚異的な量産で新作を撮り続ける城定秀夫監督の作品である。「愛がなんだ」澤井香織と城定秀夫の共同脚本で、松本穂香と玉城ティナのW主演である。先入観なしに映画館に向かう。対照的な2人がある写真家の彼女と元彼女を演じて、ちょっとしたキッカケで共謀する話だ。別れた恋人が恨んで、撮ったエロいきわどい写真をSNSなどに流出させるというリベンジポルノが題材である。

写真家の健太郎と付き合っている莉子(玉城ティナ)がバスの中で元カノの桃(松本穂香)に話しかけられる。桃が頼みがあると、莉子と話すと「リベンジポルノ」の話題を持ち出す。


健太郎が撮った2人だけの秘密の写真が流出すると困るので、パソコンにある写真を消してくれというのである。一瞬相手にしなかったが、莉子にも健太郎に何枚もきわどい写真を撮られた覚えがあり、協力に応じるという話である。


これはなかなかおもしろい。
一種のコメディだ。もともと、健太郎の自宅の合いカギを桃は持っていたが、もう取り替えられている。何とかして、カギをゲットしようと策略を組んだり、ヒッチコック映画や「パラサイト」のようなハラハラドキドキの場面も出てくる。フランス映画「悪魔のような女」は妻と愛人が結託して、夫を殺そうとする男からするとおそろしい話だった。テイストは違うが、似たようなものだ。


松本穂香は真面目っぽい図書館員で、玉城ティナはダンサーだ。風貌自体は対照的だが、2人とも好感が持てる。いくつもの小話を積み上げて笑いを誘うおもしろい作品に仕上げる。気がつくと2人には友情のようなものが生まれる。途中では、最終の結末が想像しにくい。凝ったストーリーを展開する。ラストに向けてはアレ?と感じさせるシーンもある。ただ、せっかくのピンク映画出身の城定秀夫作品なんだから、他の作品のようにもう少し露出があってもいいような気もした。


健太郎が住む家には祖母が同居している。ガラクタ集めが趣味のようなおもしろいばあさんは少し観て日活ポルノの白川和子だとわかる。この間「ある男」に山口美也子が出ていた。元日活の女優陣が老人役で次々と出ているのに自分も歳とったなあと感じる。
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映画「マイ・ブロークン・マリコ」 永野芽郁&タナダユキ

2023-01-10 05:22:43 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「マイ・ブロークン・マリコ」を映画館で観てきました。


映画「マイブロークンマリコ」はタナダユキ監督の2022年の作品。タナダユキ監督の作品はこれまで続けて観ているのに、日経新聞の映画評の評価が低く後回しにしているうちに見損なった。年明けにamazon primeで無料で見れるようになり、何気なくプチっとすると、目が離せなくなり一気に見てしまう。映画評ではイマイチの永野芽郁抜群にいい。これはうっかりしてしまった。やはり好きな監督の作品はすぐさま映画館に行くべきだったと反省する。

ブラック企業で飛び込み営業をしているシイノ(永野芽郁)が定食屋でTVニュースを見ていると、小学生から高校にかけての親友マリコ(奈緒)が自殺したというニュースが報道されていた。マリコは小学生の頃から父親に虐待されていて、シイノは相談を受けていた。飛び込みセールスのふりをして、マリコの親がいるアパートを訪問して、マリコの遺骨を見つけると思わず持ち出そうとする。マリコの父親と押し問答となるが、用意していた刃物を突き出し、アパートの窓から脱出する。

タナダユキ監督作品らしい人間味あるハートフルな作品であった。
原作漫画があるという。もちろん未読。原作漫画との比較コメントもいくつかupされているようだ。どうでもいいことだ。名脚本家向井康介のシナリオも悪くない。それよりも永野芽郁がここまで役柄に没頭していることに感動する。

共演の奈緒も、小さい頃から親の虐待に遭い、高校生の頃は性的虐待まで受けている女性を実にらしく演じる。結局、付き合った男性にも暴力を振るわれる悲しい人生だ。マリコのハートは壊れているのだ。それでも、永野芽郁演じるシイノは懸命にマリコをかばっていた。回想シーンを交えながら、マリコとシイノの友情を語っていく。


マリコの父親と対峙して、遺骨を持ち出すシーンがこの映画で1番の見どころだ。お前がいけないんだとばかりに父親に暴言をはいて、包丁も差し出しアパートの2階から飛び降りる。そして、目の前の川を渡り懸命に逃げる。まだ若い永野芽郁にここまでの迫力があるとは思えなかった。


結局、シイノは自室を飛び出して、マリコと行こうと話をしていた青森県のまりがおか岬に向かう。そして、いくつかの出会いがある。この海辺の田舎風景は味わいがある。ブラック企業の営業で、上司をクソ上司と言いながら男勝りに立ち回る


そんな永野芽郁演じるシイノはタバコも吸うし、大酒も喰らう。気がつくと、青森では海辺の小舟で一夜を過ごす。永野芽郁の意外な一面を垣間見れてうれしい。今後に期待する。
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映画「そばかす」三浦透子&前田敦子

2022-12-29 19:47:29 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「そばかす」を映画館で観てきました。


映画「そばかす」ドライブマイカーのドライバー三浦透子主演の新作である。30歳独身で結婚に関心のない女を演じるらしい。自分にも結婚しないと言い切る20代後半の娘がいて、ちょっと気になる。ドライブマイカーでは喫煙者の女性ドライバーを巧みに演じて好感が持てた。ここでも一定以上の水準は期待できそうだ。

好きなタイプの映画である。
小さなエピソードがたくさんあって、少しづつ積み上げる。最初から最後までネタ不足にならず退屈しない脚本家アサダアツシのボキャブラリーの豊富さを感じる。三浦透子にも卑屈な独身のイメージがない好感が持てて、落ち着いて観ていられる。傑作とまでは思わないが、居心地良い映画だった。

主人公かすみ(三浦透子)は30歳、チェリストを目指し音大に入学したが、静岡に帰郷してコールセンターに勤めている。両親と祖母(田島令子)と一緒に住む。妹は先に嫁いでもうすぐ子供が産まれる。母親(坂井真紀)は娘の将来を心配して、お見合いに強引に連れていく。それでも、結婚にも恋愛にも関心がないと言い切る。


そんなかすみを取り巻いて、いくつかエピソードが生まれる。
コールセンターの同僚に誘われていった合コン、無理やり連れて行かれたお見合いのお相手がたまたま行ったことのあるラーメン屋の店主で仲良くなる話、中学の同級生が勤める保育園に転職する話など。かすみの両親や祖母がいいキャラをしていて、エピソードと三浦透子が巧みにからまる。話の展開の仕方はいい。


数々のアップダウンがあった後で、真帆(前田敦子)が登場する。中学の同期だった真帆と偶然再会するのだ。自由人っぽい真帆とキャンプに一緒に行ったりして関係を深める。一緒に住もうかという話にまでなる。実は真帆は5年間AV女優をやっていて、今回戻ってきたのだ。


保育園に勤めるかすみが子ども相手にデジタル紙芝居をやってくれと依頼される。「シンデレラ」の題材を選び、その声優をやってくれと真帆に頼むのだ。ただ、「シンデレラ」の設定が、王子様中心のいかにも男性目線だと真帆が言い、台本を書き換えるのだ。これも見せ場の一つである。男性目線から女性優位の台本に書き換えられ周囲が戸惑う展開だけど、自分が観て普通の人がクレームをつけるような違和感は感じなかった。


いくつものエピソードの中にコミカルなシーンも織り交ぜるので思わず吹き出してしまうシーンも多い。実年齢よりも上の年齢の女性を演じた三浦透子は、結婚に固執しないあっけらかんとした女の子を巧みに演じていて良かった。なぜか?トムクルーズの「宇宙戦争」が好きで、その映画の中でのトムクルーズの走り方を気に入っていると言う。アレ!この映画だけ違っていた?覚えていない。

設定が違っても、三浦透子はドライブマイカーと同じような雰囲気をもつ。歌もうまい。次の作品にも期待する.。
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映画「ケイコ 目を澄まして」. 岸井ゆきの&三浦友和

2022-12-21 07:44:52 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ケイコ 目を澄まして」を映画館で観てきました。


映画「ケイコ 目を澄ませて」は最近活躍が目立つ岸井ゆきの聴覚に障がいのあるボクサーを演じる三宅唱監督の作品である。実際に耳の聴こえない女性ボクサーだった小笠原恵子の「負けないで」という本が基調になっている。ボクシング映画独特の高揚感を期待して映画館に向かう。今や名脇役役者となった三浦友和ボクシングジムの会長を演じて脇を固める。

荒川拳闘会は会長(三浦友和)が親の代から引き継いでいる歴史あるボクシングジムだ。所属する女子ボクサー小河ケイコ(岸井ゆきの)は生まれつき耳が聴こえない。ゴングの音もセコンドの指示も聞こえない。それにもかかわらず、練習に励みプロデビューする。しかし、持病を抱えた会長はジムを閉鎖するタイミングを見計らっていた。


女性ボクサーを主人公にした映画には名作が多い。ヒラリースワンクの「ミリオンダラーベイビー」安藤サクラの「百年の恋」は自分にとって双璧だ。それと比べるとかわいそうかもしれない。時間的にも簡潔にストーリーをまとめている印象を持つが、2つの映画にあった一時的な高揚感が今ひとつなかったクリントイーストウッドのトレイナーについてヒラリースワンクが勝ち上がっていくシーンや、安藤サクラが怠惰な生活でダブついていた体型をびっくりするほどシェイプアップしたシーンには思わずドッキリしたものだ。


岸井ゆきのが放つパンチがあまりに貧弱で、正直これでボクシングの試合をしのげるのかと思ってしまう。勝ったという試合も試合の全貌は示さない。リアル感に乏しい。ただ、ボクシングを別にすると、岸井ゆきのは役柄に没頭していて良かった。ちょっとひねくれている性格を巧みに演じている。会長はケイコにはやさしく接して、お互いに信頼関係がある。ケイコはくじけそうになって、会長にもうやめたいと手紙を書いたけど渡せない。いじらしい。岸井ゆきのはいつもよりきれいに見えた。シェイプアップしたからであろうか。


三浦友和がいい。悪人を演じる機会もある。北野武監督「アウトレイジ」で演じたヤクザ役のキャラクターはちょっと違うかな?という印象を持った。親から引き継いだボクシングジムを経営しても、うまくいかない。堕ちていく存在だ。そんな役柄が似合う。病室でメガネを外した時の顔立ちに青春時代の面影を感じ、懐かしくなる。
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映画「あちらにいる鬼」寺島しのぶ&豊川悦司

2022-11-14 21:17:25 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「あちらにいる鬼」を映画館で観てきました。


映画「あちらにいる鬼」は直木賞作家井上荒野が自身の父井上光晴と瀬戸内寂聴(晴美)との不倫関係を中心に描いた小説の映画化である。寺島しのぶが潔く髪を剃った予告編に目を奪われ、寺島と腐れ縁のような豊川悦司が共演で、荒井晴彦が脚本を書くというだけで楽しみにしていた。すぐさま映画館に向かう。

1966年、長内みはる(寺島しのぶ)が故郷徳島文化の講演会で作家の白木篤郎(豊川悦司)と一緒になる。白木には妻(広末涼子)と娘がいて、みはるも同居している腐れ縁の若い男(高良健吾)が同居していた。それなのに、お互いに魅かれる2人が急接近して、みはるが九州の講演に行った時に、白木がホテルに訪れ2人の関係が始まる。


それからはつかず離れずの関係が続いていく。
みはるは若い男と縁を切り、白木の浮気癖はまったく直らないけど、関係はずっと続く。

淡々と2人の関係を描く。
映画のリズムはおだやかである。ピンク出身の廣木隆一が監督で荒井晴彦の脚本だけにねちっこい絡みが予測されたが、最初に激しく結ばれる時を除いてはさほどでもない。長回しの演出が目立つ廣木だが、割と普通だ。広末涼子演じる白木の妻が嫉妬深くないので、激情する場面も多くはない。それだけに居心地は悪くない映像が続く。

作者井上荒野は関係が進んでいる時はまだ子どもだ。こんなリアルな関係を知るはずもないだろう。おそらくは、瀬戸内寂聴がこんな感じだったというのを井上荒野に語ったに違いない。まあ、すごい関係である。瀬戸内寂聴が出家しなかったらどうなるのであろう。

⒈豊川悦司と井上光晴
それにしても豊川悦司演じる井上光晴(白木)のダメ男ぶりには驚く。公表している素性は出身地から何から全部デタラメだ。ウソをつかないと生きていけない。そんな最低な奴だ。ウソで固められた人生って詐欺師によくいる。たまたま、少し本が売れたからいいものだけど。どうなのかしら?

最初に出会った時に、当時40歳の白木が44歳のみはるのトランプ占いをしてあげる。エースのカードが出て、あなたは書くものが変わっていくと予言する。改めて白木の本を読んだみはるが白木が住む団地に行き近づいていく。恋のはじめの盛り上がりからスタートする。


女グセは最高に悪い。
飲み屋の姉妹の両方に手を出すは、みはると付き合ってからも別の女に手を出す。家まで乗り込んでくる女もいる。

マメなのかなあ。この男。でも、映画では白木の妻(広末涼子)が文章を清書するだけでなく、ゴーストライターになっていると匂わせるセリフもある。ひでえ野郎だ。


⒉寺島しのぶと瀬戸内寂聴
寺島しのぶはこの作品を代表作にしようと思ったのかもしれない。トコトン瀬戸内寂聴になり切ろうとした。髪を剃ったその心意気を買う。しかも、40を過ぎてバストをあらわにして体当たりの演技をする。寺島には「赤目四十八瀧心中未遂」という傑作がある。尼崎で底辺の暮らしをする朝鮮人の娼婦を演じた。それを上回ろうと考えたのであろう。


家に文学全集があって、その中に瀬戸内晴美の本があった。子どものころから名前を知っていたけど、読んだことがなかった。世間をアッと言わせた出家の時に初めて存在を意識したのかもしれない。日本経済新聞で瀬戸内寂聴の私の履歴書を読んだ時、その男性遍歴に驚いた。普通に結婚した後、夫の教え子とくっつく。その男が腐れ縁でこの映画でも少し触れられる。

「夏の終リ」はもう少し若いころだ。子宮作家と言われた時期もある。ここでは井上光晴(白木)とつかず離れずの関係が描かれる。。「どうしようもない男だけど、愛おしい。」そんな寺島しのぶのセリフがある。その辺りのセリフの選択のうまさはいかにも荒井晴彦だ。

今回は、広末涼子もいい感じだった。一皮むけた感じがする。それがうれしい。ただ、長期に渡る3人の関係を描いていて焦点が絞りきれていない。瀬戸内寂聴の出家にも焦点をあてているので時間が間延びする感じもする。もともと左翼思想の井上光晴を描くとなると、荒井晴彦だけに少し左巻きの要素もある。それでも、主演2人と広末涼子の熱演には拍手を送りたい。


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映画「千夜、一夜」田中裕子&尾野真千子

2022-10-12 18:41:08 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「千夜、一夜」を映画館で観てきました。


映画「千夜一夜」田中裕子主演の失踪した夫を30年間待つ妻の物語である。若き独身の日から田中裕子の作品には注目していて、今回も早々に映画館に向かう。同じように失踪した夫を待つ看護師の妻尾野真千子、田中裕子に昔から想いを寄せる男にダンカン、その母親を名優白石加代子が演じる。ドキュメンタリー映画出身の久保田直がメガホンをもつ。

心地よく心に響くいい映画である。
話を急がずゆっくりテンポは進む。でも緩慢という訳でない。佐渡の古びた海辺の町と海を映すアングルがよく、塩の匂いが感じられる映像がもつ独特のムードがいい。


平坦に進むと思いきや、途中で軽い起伏を与えて、どうなっていくんだろうと思わせる。佐渡は拉致被害者曽我ひとみさんが連れ去られた場所、2人の失踪にも拉致が絡まると推定される話の展開だ。田中裕子は好演、脇にまわった尾野真千子もいい。怪演でいつもハラハラさせる白石加代子はさすがの貫禄だ。

舞台は佐渡から海を見渡す町、若松登美子(田中裕子)は30年前に失踪した夫が戻ってくるのを待っていた。その登美子に想いを寄せる漁師の春男(ダンカン)が求愛して、周囲からも一緒になることを勧められるが、まだ夫を待っているからと応じない。そんな登美子の前に、2年前に夫が失踪した奈美(尾野真千子)が話を聞きに訪れる。登美子は奈美の夫が行方不明になった痕跡を追いかけるため聞き込みをして協力する。奈美は登美子の執着心をみて自分にはできないと、同僚の求愛を受けようと思っていた。そんな時にハプニングが起きる。


⒈田中裕子(若松登美子)
海辺の海産物工場でイカを捌く仕事をしている。遠洋漁業の船乗りだった夫が27歳の時、帰港したのちに行方不明になる。町で行方不明者のビラを配ったりして30年間懸命に探してきた。地元の同年代の漁師から何度も求愛されても、「まだ結婚している」と拒絶する。周囲がお節介をやいて、本人だけでなく同僚や漁師の母親、町の有力者などから何度も説得されても首をふらない。夫とのやりとりの音が流れる古いカセットテープを繰り返し聴いている。


不審船が漂着して、中に朝鮮人が乗っていた。すると、捕まった男のいる病院にまで、夫を探すチラシを持って無理やり押し入っていく。この男を知らないかと写真を見せる。この辺りの血相を変えた演技の迫力がすごい。


⒉尾野真千子(奈美)
在日3世で今は帰化して病院の看護師だ。理科の教員だった夫が2年前に失踪した。いつも相談している人の紹介で登美子に会いにいく。登美子の執着心に自分にはできないと圧倒される。勤務先の病院に不審船に乗船していた朝鮮人が入院していて、自分の夫が身近なところにいたかと聞く登美子に圧倒されて自分が夫をじっと待つのは無理と思ってしまう。

そんな時にハプニングが起きる。

⒊ハプニングと次の展開の予想
登美子(田中裕子)は奈美から事情を聞くだけでなく、むかし夫と一緒だった同僚にどんな仕事ぶりだったかなどをヒアリングして報告書にまとめた。奈美はそれを見ながら、別の人と暮らす道を選ぼうとした。登美子が用事で本土に向かった時に、街で偶然夫の姿を見かける。報告書にまとめるため、何度も写真を見ていたから初見でもわかったのだ。

ここからどうなるか?思わず身を乗り出す。
登美子は奈美に会わせようと佐渡へ引っ張っていく。謎めいているわけでないが、ストーリーの先行きが気になる。行方不明の人が突然出てきてという設定はたまに観る。でも、今回のような場面の既視感はなかった。そこから先、もう一歩意外な展開に向かう。不思議な情感を感じた。


⒋田中裕子の映画
自分が大学生の頃、田中裕子の人気がピークを迎える。TVドラマ「想い出づくり」で、結婚適齢期の女性3人の彷徨いを自分と同世代の森昌子と古手川祐子と演じていてずっと見ていた。この辺りから田中裕子を追うようになる。「おしん」は時間的に見れないので、記憶にうすい。昭和から平成にかけて数多くの主演作品を演じた。


映画では、松本清張原作「天城越え」高倉健との共演「夜叉」田中裕子が素敵だ。ここでの妖艶な姿には、ジュリーが妻子を置いて家を飛び出しただけの魅力がある。ただ、ジュリーと結婚した後の田中裕子の記憶は薄くなっていく。

ところが、2005年の「いつか読書する日」を観て呆然とし感動した。あの妖艶で魅力的な田中裕子表情のない無機質な女を演じる。この顔つきに驚く。また、長崎が舞台のこの映画では極めて動的にふるまう傑作である。自分的には数多く観た日本映画で10本に入るすごい映画だとおもっている。自分にとっての田中裕子の存在感が変わった。


その後も「共喰い」「ひとよ」で存在感を示して、高倉健の遺作「あなたへ」で夫婦役を演じた。年老いた田中裕子には若き日の妖艶な魅力はない。どこにでもいるような女性だ。でも、妙に追いかけたくなる存在だ。ラストの海岸でのシーンを観ながらこの映画でも不思議なな感慨を覚えた。
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映画「さかなのこ」 のん

2022-10-11 20:44:47 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「さかなのこ」を映画館で観てきました。


映画「さかなのこ」はのん主演で人気者魚博士のさかなクンの人生を振り返っていく作品である。予告編から気になっていたが、ついつい後回しになってしまった。子ども連れが多く、公開1ヶ月経ったにもかかわらず思いのほか満席に近いので驚く。

のんの天真爛漫なキャラクターが何よりすばらしい。
娯楽として十分楽しめる作品となっている。前半戦で、魚好きの8歳のミー坊が自由奔放に動きまわった後、高校生になったミー坊が不良グループと混じり合いながら成長していく。でも、魚と関係ある就職先に勤めたあとは転々と職になじめない話が続く。


前半戦の軽快さに比べると、後半戦の逸話は多いけどチグハグでそれぞれのシーンが尻切れトンボな印象を受ける。幼なじみとの同居生活や不自然な会食シーンなどの一部には不要なシーンもあるのでは?と感じる。もう少し縮めることはできるかもしれない。

⒈のん
高校に学ランを着て通う。いかにも田舎のツッパリって感じの不良グループが出てきて、天真爛漫で空気がまったく読めないミー坊は何が起ころうと気にしない。釣った魚をしめるシーンは練習したのであろう。ほかの不良グループとのケンカ話はまさにギャグ。コメディ要素が強くて楽しい。学ランが似合うのんがすばらしい。


のん「あまちゃん」で全国区の人気者になった後、芸能プロダクションから個人事務所を作って独立しようとして相当な反発を受けたようだ。自分で動いた訳ではないだろう。この辺りの事情はむずかしいねえ。


⒉さかなくんの登場と幼少時のミー坊
8歳のミー坊を演じた子役の西村瑞季がいい。最近観た「こちらあみ子」あみ子にかなり共通する周囲が見えないで自分勝手な女の子だけど、無邪気でかわいいのは2作とも共通する。学校からも呆れられるが、ミー坊をかばうのが井川遙演じるお母さんである。かなりいい感じだ。ただ、海辺の田舎町が舞台だけど、井川遙が帽子をかぶって出てくるとセレブの香りがする。


帰り道でハコフグの帽子をかぶった変なおじさんに遭遇する。いつも逃げていたが、好奇心でついて行く。これがさかなクン自ら演じるギョギョおじさんだ。家に行ったら、たくさんのお魚が泳いでいる水槽やさかなグッズがある。お母さんから日が暮れるまでに帰ってきてねと言われたのに気がつくと夜の9時でお父さんが警察を連れてくるなんてオチだ。原作にないらしいが、さかなクンは出演してよかった。

子どものころのミー坊が学校の上下校にいつも「魚介の図鑑」を持参している。これを観て、思わずジーンときた。自分も小学校低学年の頃、小学館の「魚介の図鑑」を読み込んだ時期があった。いちばん好きなのはサメのページだ。映画のさかなクンの水槽にもネコサメがいた。当時江の島に別宅があり、江の島水族館によく行った。そこでサメを見たあと図鑑と睨めっこしたものだ。当然学校の勉強は何もしていないので成績は良くない。それでも時刻表や歴史の図鑑ともども毎日見るのが楽しかったいい時代だ。


⒊子ども向き?
沖田修一監督作品では「モヒカン故郷に帰る」が好きだ。この映画も海辺の町を舞台にしているので共通する。子どもや高校生の使い方が上手く、目線を落としてギャグの要素も加えるところがいい。


最初家族4人で住んでいた家から、高校生の時には母娘一緒に住む賃貸住宅と思しき場所に移る。その時点で、アレ?別居したのかな?と思うけど、特に言及しない。最後に向けて、家族に関するセリフが出てくるが、井川遙がはぐらかす。これって子供を意識して離婚などの類のセリフをあえて言わせないのかな?

後半戦に向けては、説明が足りない印象を持つ。もっと子どもの視線も気にするべきでは?意識的に大人の理解度に合わせているとしたら、カッコつけすぎかもしれない。
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映画「ロマンポルノナウ2 愛してる!」

2022-10-04 19:19:02 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ロマンポルノナウ2 愛してる!」を映画館で観てきました。


映画「愛してる!」はニューロマンポルノ第二弾である。第一弾は現代若者の恋愛事情を描いた青春モノという感じだった。今度はSM系のようだ。出演者は高嶋政宏を除き誰も知らない。何で高嶋政宏がいるの?って感じもするが、変態本も書いているらしい。それはしらなかった。


プロレスラー上がりの地下アイドルの主人公ミサ(川瀬知佐子)が、顧客にプロレス技をかけてクビになる。その後素質を見込まれてSMクラブの女王様に拾われる。女王様で攻めるにはやられる側の気持ちがわからないとできないと言われて、クラブの女王カノン(鳥之海凪紗)からいじられると予想外の快感に溺れる話の展開だ。これを1人の女性カメラマンが追い、ドキュメンタリータッチで映し出す。


今まで観たことのない類の映画だ。
まず、地下アイドルなんて世界は自分が知らない世界だ。自分が知っている過去の日活系SM映画とは肌合いがちがう。往年の谷ナオミ主演映画では、上流のご婦人がはめられてSM界の悪い男の餌食になるというパターンがよく見られた。当然男性陣に縛られていたぶられる。それが逆で、いたぶられるのを快感とするのが男性だ。その男が女王に飛びつくことはない。ここでは男女の絡みがない。


女性同士で叩きあい、大人のオモチャを駆使して、快感をもたらそうとする。そこに女性特有の嫉妬を交えながらねちっこく描いている。あえて似ている作品を探すと、芳賀優里亜主演赤×ピンクが非合法格闘技にエロティックサスペンスを絡めていてテイストは同じ感じだ。「愛してる」というのは、SMプレイで痛みつけられた時に、もうこれ以上は勘弁してくれとギブアップする時に発する言葉である。


主人公川瀬知佐子は割と健康的なイメージである。元気のいいごく身近にいてもおかしくない雰囲気だ。映画自体は男女の絡みがないのに第一弾より激しさを感じる。ここでも女性陣のボディはそれほど肉感的ではない。小ぶりなバストをときおり見せる。その普通な感じは悪くないかもしれない。
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