映画とライフデザイン

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映画「ツユクサ」 小林聡美&松重豊&平山秀幸

2022-04-30 20:56:08 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「ツユクサ」を映画館で観てきました。


映画「ツユクサ」は小林聡美「孤独のグルメ」松重豊の中年の恋という映画設定であるのは予告編で知っていた。江口のりこや泉谷しげるといった個性派俳優が脇を固めている上に、久々の平山秀幸監督作品であり、雰囲気が良さそうなので、映画館に向かう。

海辺の繊維工場で働いている芙美(小林聡美)はある夜運転していて、突然強い光を受けて車を横転させる事故に遭う。その時ダッシュボードに小さな穴を開けた石は隕石だと工場の同僚の息子航平に言われた。その後、独身の芙美の身辺に動きが出て、芙美がジョギング中に見かけていたガードマンの吾郎(松重豊)と行きつけのバーで出会い、お互いにひかれるようになるという話である。


心地良く快適に観られる映画である。
71歳になった平山秀幸監督が自分に肌合いの良い作品をつくるべく、個性的なキャラクターをもつ登場人物を田舎の海辺の街に放つ。大人の恋といっても、80歳から90歳の恋となると、さすがに自分も引いてしまう。老人映画はちょっと疲れる。ほどよい年齢の恋である。

海岸線にある西伊豆町をロケ地に選んだのは正解である。最後に電車は出てきたが、実際には西伊豆には電車は通っていない。同じ伊豆でも辺鄙なエリアだ。町を俯瞰する小高い山からの海の景色もいいし、さびれた工場がある田舎の匂いや泉谷しげるが店主のバーの場末感も、いかにも住みやすくのんびりとした田舎町だと思わせる。そんな設定で、登場人物が気負わない演技をしている。安定感を感じながら、最後まで映画を観れる。


50代から少し上くらいの人に受けるんじゃないかしら?おすすめだ。若い頃より枯れたやさしい作品をつくるようになった晩年の今村昌平監督平山秀幸監督の作風も似てきたのかもしれない。

⒈松重豊
映画の主旨と関係ないが、ご存知「孤独のグルメ」の五郎である。日曜日の6時すぎになると、ついついTVで再放送を見てしまう。わざとらしい寸劇の後、こんなに食えるの?と思わせるくらいの量を松重豊がおいしそうに食べる。周囲の若者にも大ファンが多い。このワンパターンを楽しみ、紹介される店は人気店になってしまう。実際行ってみると、ハズレもあるが、90%は納得の味である。

この映画での役柄の名前が吾郎で思わず吹き出した。シャイでやさしい人柄は両方に通じる。東京から流れてこの町に来た設定で、草笛を吹くガードマンだ。(前職は何だったかはネタバレで言わない)小林聡美は自分は所帯者と一瞬ウソをつくが、次第に接近していく。松重豊は不器用な感じを醸し出し好感がもてる。


⒉泉谷しげる
田舎町にポツリとあるバー「羅針盤」で捕鯨船の船乗りだったという店主役を演じる。行ってみたいと思わせるその店の常連が小林聡美だ。自分が中学の時、フォークが大流行して吉田拓郎や井上陽水とともに人気だった。ただ、攻撃的なムードが強い絶叫型だった。そんな独特なムードに合う役柄を数多く演じて、名作ドラマと名高い吉展ちゃん事件の犯人役など、俳優としての存在感が強い。全盛時に比べて頭もハゲ上がったし、老けた。でも、いい味を出している。



⒊江口のりこと名脇役たち
小林聡美と同僚の繊維工場で働くコミカルな工員だ。気がつくと寺の坊主と付き合っている。「女は男で世界が変わる」と坊主の影響を受けている。バートレイノルズ「女と車の運転は似ている。いずれ衝突する。」なんて言葉を持ち出す。

笑いを誘う展開に江口のりこの存在が欠かせない。何と言っても今泉力哉監督「愛がなんだ」のキャラクターが自分の頭にこびりついている。成田凌があこがれる美術学校で働いていて、タバコぷかぷかのちょっと飛んだ女の人役がうまかった。


他にも妻に逃げられたベンガル演じる太極拳好きの工場長がラジオ体操をする姿に思わず声を出して笑ってしまうし、濱口竜介監督「偶然と想像で珍しく大学教授役を演じた渋川清彦が、平山秀幸監督の前作閉鎖病棟では悪役だったのに一転気のいい釣り好きのオヤジを演じる。映画に出てくる登場人物のキャラクターには感情移入できる。


⒋あなたの心に
松重豊が草笛を吹く時に流れるのが「あなたの心に」である。思わず、背筋がゾクッとした。本当になつかしい中山千夏の名曲である。この曲が大ヒットした1969年には、毎日のように中山千夏がTVでドラマやいろんな番組に映っていた。ジャズピアニストの佐藤允彦と結婚している頃はまだ良かった。でも、その後参議院議員にもなり、矢崎という変な男とくっついて左翼思想に毒されてからは最悪だった。好きだった人もみんな嫌いになったんじゃないかな。

エンディングで「あなたの心に」が流れて、これって誰か別の人が歌っているのかなと思ったら中山千夏だった。古き良き時代を思わず懐かしんだ。

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