映画とライフデザイン

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映画「サマーフィルムにのって」伊藤万理華

2021-08-10 07:06:18 | 映画(自分好みベスト100)
映画「サマーフィルムにのって」を映画館で観てきました。


これはおもしろい!
高校生の映画作りって題材にしやすいが、その中でも「サマーフィルムにのって」飛びきりの青春映画である。東京オリンピックで20歳前後の女の子の活躍が際立つ。ついつい公開映画も老人系やネクラ映画でなく青春映画に目が向く。これは大正解だった。有名な俳優が出演しているわけではないが、若手俳優人のパワーに引っ張られる。

高校の映画部で、文化祭に向けてラブコメ作品の上映の準備をしているのに対抗して、部で浮いている時代劇オタクの女子高生がオリジナル脚本の主人公剣士にピッタリのキャストを見つけ、スタッフを集めてオリジナル時代劇を作ろうとする話である。

時代劇オタクの女の子なんて見たことない。オタク女の個性だけで引っ張る。映画部の主流派との葛藤はあっても、まったくいやらしくなく、高校生の仲間としての連帯感という方向に持っていって清々しい。自分は若い気力に押される一方であった。最終に向けては、しんみりするわけでなくジーンとする場面もあり、映画館で近くにいた自分と同世代のオヤジが泣いているのに気づく。

高校の映画部に所属するハダシ(伊藤 万理華)は時代劇オタクで勝新を敬愛していて、天文部に所属するビート板(河合 優実)や剣道部の女剣士ブルーハワイ(祷 キララ)とともにたまり場で時代劇を楽しんでいる。

文化祭に向けて、映画部では、主流派でかわいい系のかりん(甲田まひる)が監督・主演する「好き」を連発するラブ・コメディを製作中であった。ハダシの書いた脚本「武士の青春」は却下されくすぶっていた。


いつものように地元の名画座で時代劇を楽しもうとしたら、映画館で武士役にぴったりな凛太郎(金子 大地)を見つける。ハダシは早速アプローチしてみるが、断られる。でも、タダでは引き下がらない。悪友のビート板やブルーハワイを仲間に入れて、主流派に対抗して「武士の青春」を文化祭で上映しようと企む。しかも、照明や録音係にピッタリの男性スタッフを入れて撮り始めようとする。

でも、撮影が進んでいっても、凛太郎の様子がいつも変だ。実は彼には未来からやってきたタイムトラベラーだという秘密があったのだ。

⒈時代劇オタクの女子高校生と座頭市
ハダシは下校時にトレーラーバスのようなボロいバスに向かいその中に入る。このバスの存在が未だに謎だけど、ハダシたちのたまり場だ。そこには時代劇のポスターが貼ってあり、映画の資料が転がっている。そこで、三隅研次監督、勝新太郎の「座頭市物語をみる。渋いねえ。


これって座頭市シリーズ第1作だけど、最後に勝新太郎と剣を競うのは「非情のライセンス」天知茂だ。「座頭市物語」は自分もブログにもアップした。三隅研次監督作品は照明の使い方が巧みで夜のムードを出すのが天下一品だ。

その他にも「椿三十郎」の三船敏郎「眠狂四郎」の市川雷蔵の剣さばきのモノマネをハダシがする場面が出てくる。渋いねえ!墓場の奥から2人とも大喜びだろう。こんな女の子が実際にいたら会ってみてお話がしたい。オヤジはこういう子に弱いのだ。

⒉余計なキャストの省略
結局最後までハダシの両親って出てこなかった。今年公開でわりと面白かったまともじゃないのは君も一緒清原果耶の両親役が出てこなかったのと同様である。実は、ここでハダシの親が出てこないことで時間の短縮がはかれる。
伊藤万理華と清原果耶の演じている役柄も、積極的で自立している高校生ということでは似ている。性格もイメージもダブった。


その代わりに、個性豊かな仲間を用意する。天文部のリケジョは凛太郎がタイムトラベラーでやってくることで関わりを持ち、剣道部の女剣士は男性助演者たちに殺陣指導してしまう。キャッチングの音でどのピッチャーが投げるかを聞き分けるメンバーを録音係で野球部から連れてきて、ライトをつけまくる自転車を乗り回す男子生徒を照明にスカウトする。目線はあくまで高校の同期だ。そうやって大人を介入させないのもいい。あだ名だけなのもいいよね。


⒊SFファンタジー的要素
凛太郎は未来から来た設定だ。別に超能力があるわけではない。ある意味、ターミネーターと同じなのだ。あえてネタバレ気にせずに語れるのも、普通、こういうstrangerを映画に登場させるのは、ドラマではラスト寸前になることが多い。


ちょっと古いが「魔法使いサリー」だって、最終回で初めて本性が周囲にあからさまになる。ところが、わかるときが最後ではない。わかってからも映画づくりが続くのだ。それがこれまでと違う。そこからのいくつかの葛藤はネタバレで言わない。そして、すばらしいラストに向かう。

⒋ロケハン成功
地方都市が舞台だ。街の名前は出てこない。映画を観ていて、栃木県の足利市では?と推測したが、エンディングロールで改めてそうだとわかる。内陸部の人口約15万の街だけど、森高千里が「渡良瀬橋」をしみじみ歌っている街だ。30代から40代にかけて転勤で栃木にいたので、月に数回行った。すぐピンとくる。北関東の若干街が寂れてきている昭和的建物の要素と、遠くに小高い山が見える渡良瀬川の河岸の風景が映画とは相性がいい。


自分のようなオヤジでもこの映画おもしろかった。この映画を引っ張る伊藤万理華と共演の若者たちから気持ちの良いパワーをいただいていた。クズのような手のひら返しのリベラル老人の反対にも負けずオリンピックやって本当に良かったね。世間が思っている以上に今の若者はすばらしい。

松本壮史監督のセンスは抜群だ。全般的に音楽は良かったけど、エンディングロールに流れる主題歌で気分が高揚した。

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