映画とライフデザイン

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映画「浜の朝日の嘘つきどもと」高畑充希&大久保佳代子&タナダユキ

2021-09-12 08:55:56 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「浜の朝日の嘘つきどもと」を映画館で観てきました。


「浜の朝日の噓つきどもと」は福島南相馬を舞台にしたタナダユキ監督の新作である。映画に流れる独特の優しいムードがお気に入りでずっと追いかけている。四十九日のレシピが大好きで前作ロマンスドールも良かったが、今回も予告編で気になったので早々に映画館に向かう。

閉館しようとしていた福島の名画座に突然映画館を立て直すという若い女の子が現れ、オーナーとともに復活を目指そうとする話だ。南相馬が舞台ということで、無理やり震災話を組み合わせようとするのは若干強引かもしれない。

これまでのタナダユキ作品の主人公たちと比較すると、高畑充希演じる立て直そうとする主人公があまり礼儀正しくない女の子で共感も持ちづらい。ここでの「嘘」も意味はわかったがあまり良くは思えない。逆に、主人公の恩師役の大久保佳代子の活躍が目立った気がする。これはキャスティングに成功している。

ここのところ、セリフを最小限にして映像で見せるという外国映画を続けて観たので、ナレーターも含めて説明調のセリフが多いのも久々だ。最近流行の映画文法とは若干違う。それだけに何がなんだかよくわからない映画の展開ではない。逆に観客にはやさしい時間軸をずらしながら揺れを示すストーリーも悪くはないんだけど、傑作だというほどでもないかな?


福島の南相馬で約100年まえに開業した映画館、朝日座の跡継ぎ森田保造(柳家喬太郎)は、時代の波に押されて売却することを決め、祖父がここをはじめるきっかけとなった映画、D・W・グリフィス監督「東への道」のフィルムを映写して終えようとした。


映画館の前で、フィルムを焼却処分していた時に、見知らぬ娘浜野あさひ(高畑充希)が強引に止めようとする。名乗りもせずに、この映画館を立てなおすために来たと宣言する。すでに心を決めていたオーナーは驚く。名前を聞くと、茂木莉子=モギリ子と名乗る。浜野あさひにとって、朝日座再興は大切な恩人との約束だった。

恩人とは、あさひが通っていた郡山の高校の教師田中茉莉子(大久保佳代子)である。震災のあと父親(光石研)の仕事の関係で周囲から総スカンを喰らって1人ぼっちになって高校の屋上で1人ぼっちだったあさひを救ってくれた教師だった。その先生から朝日座をなんとか救ってくれと東京から南相馬に来たのであるが、売却を避けるためにあさひがいくつかアイディアを出すのであるが。。。


⒈高畑充希と柳家喬太郎
いきなり自分の名前も名乗らずに閉めようとしていた映画館の前で、立て直すとオーナーにかます言葉遣いがタメ口の礼儀知らずで、しかも偽名を使う。なんだこの女と違和感を感じる。でも、徐々に印象は変わる。江戸弁の福島南相馬の映画館の主というのも妙だが、噺家だけに柳家喬太郎の語りのテンポは軽妙である。2人の掛け合いは田舎人の会話と思えないスピード感だ。ワイドスクリーンを思いっきり使った2人の見せ方はうまい。


セリフにあるが「もともとは中流家庭出身」という主人公あさひは普通の運送業者の娘だった。父親が震災後の復興事業でカネ儲けしているとうわさされ、田舎なのでそれが高校にまで伝わり友達もなくすという設定だ。ある意味かわいそう。それを救うのが大久保佳代子演じる先生という訳だ。

先日観た明日の食卓では、高畑充希はカネがないのに親の援助を受けずに頑張る典型的なシングルマザーを演じていた。あまりに頻繁にみられる話である。でも、ネイティブ関西弁で演じる演技も悪くはない。土着の関西舞台の映画なんか出演させてみたらいいんじゃないだろうか。今回は回想シーンで、高校生まで演じてしまう。違和感はまったくない。

⒉大久保佳代子
高校の教師である。もともとは映画の配給の仕事をしていて、たまたま教員免許を取っていたので、採用試験を受けたら受かっちゃったという設定だ。映画好きで、マニアックな作品のDVDを家で見ている。男出入りは割と激しく、入れ替わり立ち替わり泊まりに来るが続かない。自分の馴染みの店に放火しようとしていたベトナム実習生を助けて、一緒に暮らすという設定だ。


人はいい。家庭の事情で周囲から白い目を向けられている高校生の主人公あさひを助ける。それでも、ドロップアウトしてしまうあさひに大学くらい出ないときついよと大検の試験を受けるのを勧める。教育者の見本のようなものだ。

タナダユキのキャラクター設定は成功しているし、アンバランスな部分を持つ教師に大久保佳代子を起用するのもうまい。彼女も良く応えている。千葉大学出身で庶民的国立大出である。教員になる人が多い大学だ。それなり以上に学があるけど、美人ではない。もともとお笑いでのスタートだけど、気がつくと性格俳優的使われ方をしている。ますますオーダーが増えるのではないか。


⒊世間知らずなのかな?監督は
朝日座は売却することが決まっていた。でも、450万円ほど借金がある。この借金というのが謎だ。購入希望者と土地建物の正式契約はしていないというセリフがある。ということは手付金ではない。事前に購入主から運転資金として借りていたということなのであろうか?これも妙だ。

しかも、すでに解体業者を手配しているので1000万かかっているので計1450万円返してもらえないとダメだと購入側から言われる。あさひの案ではじめたクラウドファンディングでは到底足りないという設定だ。でも、解体の業者を手配しているだけで、明日工事に入るというわけでないのに多額の損害金が発生するはずがない。準備だけでかかる費用はたいしたことない。逆にこれでそのまま費用請求したらぼったくりだ。映画でのお金のやりとりは超不自然だ。これで1450万円支払ったとすると、あきれるしかない。

毎度のことながらタナダユキ監督のセンスの良さは認めるが、プロデューサーも女性のようだし、もっと商慣行のわかる人に聞いた方がいいと思う。


今回、吉行和子さんが出演していた。日経新聞私の履歴書の連載にこの5月に登場していた。おもしろかった。その際、劇団民藝に入団して、労働歌とか歌わせられながら左翼思想に毒されたことが書いてあった。今でも演劇界には左翼が正義みたいな風土があるが、それは別としても経済取引についてはもう少し勉強してほしいという部分はいつも感じる。

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