映画とライフデザイン

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映画「猫は逃げた」今泉力哉&城定秀夫

2022-03-19 20:44:12 | 映画(自分好みベスト100)
映画「猫は逃げた」を映画館で観てきました。


「猫は逃げた」は公開まもない愛なのに監督城定秀夫、脚本今泉力哉のコンビで、担当を裏返して、今泉力哉がメガホンを取る新作である。題名に「猫」が入っていて、猫が中心の映画のイメージを持ったが、動物好きかどうかで客筋を選ばない作品だ。

愛なのに」では若き河合優実の大人びた高校生ぶりと共演女性陣の脱ぎっぷりの良さで単なる現代若者事情を伝えるだけの映画以上のレベルになった。エロチックな話題でここまで笑える作品は少ない。今回は、出演者にいくつかの作品で知っている俳優はいても、メジャー俳優がいない。それなのに、むしろ「愛なのに」よりよく見えた。

離婚寸前の夫雑誌編集者(毎熊克哉)、妻漫画家(山本奈衣瑠)の夫婦は、どちらが猫を引き継いで飼うかで離婚届を出すのをためらっていた。夫には雑誌社の同僚(手島実優)、妻には漫画の編集者(井之脇海)の不倫相手がいて、それぞれ離婚が確定するのを待っていた。そんな時猫の行方がわからなくなり、探し始めるという話の展開だ。

結果的に、今年入っていちばんおもしろかった。
最近ではいちばんのおすすめ作品だ。快適な時間を過ごせた。自分の琴線に触れたのかもしれない。会話のセンスがよく、別れる寸前の夫婦のちょっと際どい場面でもいやな感じがない。映像のショットの目線も適切で、ウディアレン監督作品を思わせるドリーショットなど遠近をうまく使った映像もよく見える。

⒈それぞれの不倫
夫は女性週刊誌で著名人のスキャンダルを追っている。もともとカメラマンを志していた彼女は次々に密会場面の証拠写真を撮ってくる。でも、一緒にコンビを組んでいると男女の間違いは起きやすい。気がつくと不倫関係で、彼女も結婚志向が強い。離婚届を出すのを今か今かと待っている。たかが、猫の養育権だけなら、奥さん側に渡せばいいのにと怒る。イライラして、夫が妻の待つ家に帰ろうとする時、歩道橋の上から飴を落としてちょっかいを出す演じる手島実優のいたずらっぽい姿がかわいい。


妻はレディースコミックでエロチックな漫画の連載物を描いている。コミック雑誌の担当編集者で、自宅で締切の原稿を首を長くして待っているのが彼氏だ。1人で描いているハードな漫画の仕事に疲れた時に、マッサージをしながら気がつくとメイクラブだ。すでに妻は離婚届にサインしていて、後は優柔不断の夫の返事を待つばかりなのである。


そんな不倫関係のベッドシーンは少しだけ用意されている。ピンク映画のベテラン城定秀夫監督の「愛なのによりはハードなエッチシーンは少ない。山本奈衣瑠、手島実優ともにお世辞にも豊満ボディとは言えない。ただ、ポルノタッチの映画やAVのように絡みを見せる訳ではないので、むしろリアル感があっていい気がする。逆に2人とも口は達者で、会話はおもしろい。

⒉離婚寸前の夫婦
いきなり、妻が離婚届にサインして、あとは夫が書けば終わりというシーンからスタートする。猫の所有権くらいでなんでサインしないのかなと思ってしまうくらいだ。その後も不倫関係のベッドシーンばかりで、早々に別れてしまうと思っていた。そんな時に猫がいなくなる。

2人が飼う猫は拾った猫だ。まだ結婚する前に2人の関係が微妙になりそうだった時期があった。カラオケBOXから夫が外に出ると箱の中に捨てられていた。その猫を大事に飼ってきたのだ。ここからの回想シーンとその時の心情について2人が語るシーンを見て、気がつくと不意に泣けてきた。ネタバレなのでこれ以上言わないが、いろんな映画で脇役として活躍する毎熊克哉に対応する無名の俳優山本奈衣瑠が奥の深い演技をする。


⒊転換期の驚き
猫がいなくなる。すでに離婚寸前の夫婦だったけど、2人にとってはかけがえのない猫だ。一緒になって懸命に探す。その猫がいなくなるにつれて、関係に少し変化が出てくる。

そこで、アレ!という転換点を迎える。
結果を見ると、そんなことだと思っていたという人もいるかもしれないが、意表をつかれた。そして、映画のクライマックスというべき修羅場が訪れる。そこでの長回しがなかなかおもしろい。掛け合いが見どころだ。フィックスした場面で静的なのに動的感覚だ。「街の上」の長回しはセリフに不自然さを感じるのが気になり、どうかと思う人物が多く共感が持てなかった。ここでは違う。女のいやらしさが表面化されるが、かなりの稽古を重ねたと推測する場面であった。


それにしても、猫をうまく手懐けたものだ。演出にうまく応えている。猫が家の外に出て動きまわる絶好のショットを導くために、カメラマンが時間をかけてほどよいタイミングを待ったのであろう。猫と教育した人とカメラマンに殊勲賞をあげたい。

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