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映画「アンダードッグ」森山未來&瀧内公美&北村匠海

2021-05-28 21:27:58 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「アンダードッグ」は2020年日本公開


長丁場の作品「アンダードッグ」をようやく観る。誰もが傑作と認める百円の恋監督武正晴、脚本足立紳のコンビが再度ボクシングを題材として制作した映画である。昨年の年間トップとしてあげる人も多い。前編後編それぞれ2時間を超える。前編は芸人ボクサーとの対決、後編は児童養護施設育ちで這い上がったボクサーとの対決が中心となる。ともかく長い。

寺山修司原作で菅田将暉主演のボクシング映画あゝ荒野も前後編に分かれる。前半戦の方が躍動感にあふれ、本来は後半のラストに向けて盛り上がるはずであったが、逆にだれた印象を持った。逆にこの映画の場合は、前半戦に八百長まがいの設定があったせいか馴染めない部分もあり、むしろ前半戦よりも後半戦のほうが数段良く見えた。

落ちぶれた格闘技選手というのはプロレスのレスラーのように映画の題材になりやすい。ただ、それだけでは面白くない。メインのキャストそれぞれ人生に葛藤がある。主人公末永が妻に息子を連れて逃げられたり、ライバルになる大村が児童養護施設出身でグレていて過去にとんでもない事件を起こしていたり、末永に挑戦するお笑い芸人宮木もスター俳優の父との確執があったり、ストーリーに重厚さはある。


長時間のドラマ仕立てで配信するのが基本だったというが、二本の映画にせずに140〜150分程度の一本にまとめて欲しかったな。もちろん後半に厚みを持たせながら盛り上げるように。そうすればもっと良かった。

一度は手にしかけたチャンピオンへの道……そこからはずれた今も〝かませ犬(=アンダードッグ)〟としてリングに上がり、ボクシングにしがみつく日々をおくる崖っぷちボクサー・末永晃(森山未來)。幼い息子・太郎には父親としての背中すら見せてやることができず“かませ犬”から“負け犬”に。一抹のプライドも粉砕され、どん底を這いずる“夢みる”燃えカスとなった男は、宿命的な出会いを果たす。

一人は、 “夢あふれる”若き天才ボクサー・大村龍太(北村匠海)。児童養護施設で晃と出会いボクシングに目覚めるが、過去に起こした事件によってボクサーとして期待された将来に暗い影を落とす。

もう一人は、夢も笑いも半人前な “夢さがす”芸人ボクサー・宮木瞬(勝地涼)。大物俳優の二世タレントで、芸人としても鳴かず飛ばずの宮木は、自らの存在を証明するかのようにボクシングに挑む。三者三様の理由を持つ男たちが再起という名のリングに立つとき、飛び散るのは汗か、血か、涙か。(作品情報引用)


⒈末永(森山未來)
元日本ランキング1位まで登りつめている。頂点直前にタイトルマッチで敗れた。妻(水川あさみ)は息子を連れて飛び出している。その息子はボクサーとしての父親を尊敬している。母親に隠れてTVで父のボクシング姿を見ている。未練もあり妻と復縁したい希望を持つが、バクチ好きの父(柄本明)と一緒に暮らす。


仕事はデリヘル嬢を溜まり場から送迎する運転手だ。キャバクラなんかでも、「送り」の運転手に送ってもらってと話には聞くが、そういう運転手が登場人物になるストーリーってあまり見たことがない。送る風俗嬢の中でも親しいシングルマザーのデリヘル嬢(瀧内公美)がいる。


そんな末永に、プロボクシングのライセンスを取ったお笑い芸人との試合がTV局から持ちかけられる。ギャラに目が眩んで、ボクシングジムの会長も無理やり勧める。でも、会長は終わったらボクシングをやめろと言う。相手になるお笑い芸人の宮木も所属ジムの先輩に厳しく鍛えられながら彼なりに頑張って試合に臨む。

⒉大村(北村匠海)
下位から上りつめていこうとするボクサーだ。すべて1ラウンドで相手をKOしている。家族に恵まれなかったのか?児童養護施設で育った。その時一緒だった女とずっと付き合って女は懐妊している。もともとは育ちの悪い奴にありがちに、不良グループの一員として悪さをたくさんしてきた。

実は、末永が飛び鳥を落とす勢いだった時に施設に来たことがある。その時生意気盛りだった大村が向かっていこうとして、あっさり返りパンチを喰らう。その時から末永が弱くなってもずっと追いかけていた。いつかは復讐してやろうと。


そんな大村も悪さの度を超していた時期があった。相手を半殺しにする目にも合わせていた。やられたことに長い間恨みを持っている男もいる。それが、突然遭遇する。そのことでストーリーが大きく急旋回することになる。

⒊デリヘル嬢明美(瀧内公美)
末永が運転手をやっているデリヘルで働いている。娘がいる。夜もくっついて、末永の車で待っている。いつも指名してくれる男は車椅子生活だ。金はありそうだ。男は母親の溺愛を受けていて明美はチップをもらっている。男はいたせないので、バイブで責められて明美はアヘアヘ言っている。そんな女が運転手の末永を誘惑する。

でも、この女も恵まれない。家に男がいるけど、度を超したDVだ。自然と幼児虐待にも向かう。後編の中でも重要な要素となる。


瀧内公美も大胆な濡れ場をこなした火口のふたりからいい女優になる素地を固めつつある。けだるい売春婦的雰囲気が表面に湧き出ている。かわいい娘がいながらもあまりに人生に恵まれず悲嘆する女にもなり切る。まさに適役だ。

⒋前編
そんなキャラクター3人とプロに挑戦するお笑い芸人ボクサーがいる。前編では、お笑い芸人ボクサーがジムの先輩にランキング1位に挑戦して勝てるわけないだろうと言われながら、末永に挑戦する。末永もTVディレクターから1回くらいダウンしたら面白くなるからやって見てと言われている。でも、決して強いわけないボクサーの挑戦は話としてはまったく面白くない。いくらパンチで倒れて立ち上がっても前半戦はどうものれない。


⒌後編
でも、そんな八百長じみた試合を戦って、一度はボクシングから足を洗おうとした末永が後半そもそもドツボに落ちているプライベート生活がむしろ悪い方向に進んでいく。その昔施設にいた時に末永のパンチでやられたことでの復讐に燃える大村の姿も追っていく。ボクシングどころじゃなかった末永も挑戦を受けて立ち上がる形になっていく。

でも、大村もここでとんでもない怨念に呪われる。末永が運転手をやっているデリヘルもグチャグチャ。ストーリーらしくなるのだ。映像にぐっと引き寄せられる。いろんな葛藤をそれぞれ通過して、対決に向かう。その始まる前の高揚感は「百円の恋」に通じる。

正直、芸人の話は弱めて後半戦中心に組み立ててくれればよかった気がする。
いずれにしても、しっかり鍛えられた身体に自らを仕上げた俳優たちはすごい!

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