淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

コーマック・マッカーシーの近未来小説「ザ・ロード」。気品と風格、さすがである。

2009年06月08日 | Weblog
 アカデミー賞を獲得した、コーエン兄弟による傑作映画「ノーカントリー」、その原作者でもあるコーマック・マッカーシーの近未来小説「ザ・ロード」。

 かなり評論家からも評価の高かった小説だ。
 昨年の海外小説ベストテンものでも、必ず顔を出していた。その小説がやっと読めた。
 作者であるコーマック・マッカーシーは、この「ザ・ロード」でピューリッツアー賞を受賞している。

 核戦争後の荒廃した未来世界なのか、それとも、地球の環境が何らかの影響で破壊され、人類がほとんど死滅してしまった後の冷え冷えとした世界なのか、コーマック・マッカーシーはその点を特に明かすことはしない。

 既に文明は消滅し、街は廃墟と化し、草木は枯れ果て、緑萌える豊かな大地などどこにもない世界が目の前に広がっている。
 その暗黒の荒野を父と幼い息子がふたりぼっち、ひたすら歩いている。生き残るために必要な最低限の食料や器材を入れた、ぼろぼろのカートを押しながら・・・。

 時々、憂鬱な空からは、灰色の雪が降る。
 生き残った少数の人間たちは、互いに争い、殺戮(さつりく)を繰り返し、極度の飢えから人肉を貪るまで落ちぶれていた。
 その中を、ひたすら父と幼い息子の2人は、南の地を目指して歩く。

 短絡的に言い切れば、ただそれだけの小説である。
 あとは何もない。
 ひたすら、今日食べる食物を探し、厳寒の中で、眠るべき場所を探してさまよい歩く。
 旅の途中で遭遇する、飢餓から凶暴化した人間たちを回避し、子どもを守るために暴力を使い、そして廃墟の街の中、食料を捜し求めて奔走する・・・。

 とにかく寒さと飢えが、読んでいるほうにも、ひしひしと伝わって来る。
 余りにも描写がリアル過ぎて、読んでいる途中で何度も居た堪れなくなったほどだ。息苦しくて辛くなってしまうのである。寒さが本から漂うほど。
 それほど、コーマック・マッカーシーの文章は巧い。驚嘆する。

 言葉が研ぎ澄まされていて、鋭い刃物のようだ。
 親子の交わす会話も、シンプルで、そして美しい。
 文章のお手本のようである。まるで教科書といってもいいだろう。それほど素晴らしい。
 ラストもいい。余韻が残る。悲しいほどに。

 「ザ・ロード」は、ハリウッドで映画化されるらしい。
 主演は、ヴィゴ・モーテンセンとシャーリーズ・セロンだとか。
 楽しみである。この小説は、映画にしても面白いだろう。そう思う。




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