淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「ユーミンの罪」③

2022年02月28日 | Weblog
 憧れの東京生活は惨めなものだった。

 ユーミンがそのアルバムで描く、心ときめく恋愛模様とも、ソフィスティケートされた街の匂いを胸いっぱい嗅ぐこととも、それはまったく無縁な生活だった。

 それでも、昼と夜が逆転して、今でいうところの「引き籠り」状態から脱出できたのは、友人の紹介で、皇居の真ん前に位置する場所にある某高級ホテルでアルバイトを始めてからのことだ。
 アルバイトをするということになると、きちんと時間通りの出退勤が求められたし、真夜中まで起きて音楽を聴いたり本を読むなんてことは、到底不可能になる。

 それでも、ユーミンを聴き、山下達郎(「シュガーベイブ」)を聴き、レッド・ツェッペリンを聴き、鈴木茂や大瀧詠一(「はっぴいえんど」)を聴き、ジョンレノンやポール・マッカートニーを毎日聴き続けることだけは欠かさなかった。
 音楽だけが描き出す、美しい風景とポジティブなライフスタイルを夢想しながら・・・。

 結局、いまだに現実が把握できない「夢見る少年」から抜け出せずにいる、叶いもしない妄想と理想に雁字搦めに縛られたおバカな田舎者のおのぼりさん状態は、それでもずーっと続いていて、悶々とした毎日を送っていたことに変わりはない。

 アルバイトをしていたホテルは「大手町」や「霞が関」や「銀座」が近いということもあって、毎朝のように「経団連」や「一流企業」の朝食会が開かれ、土日の結婚式ともなると、高級官僚と女性医師だとか大企業の御曹司とどこどこのご令嬢だとかの豪華絢爛な式が繰り広げられ、政治家たちも大勢訪れていた。

 少し横道にそれるけれど、とにかくアルバイト学生を含めたホテル従業員たちのお昼の食事が凄かった。豪華なのだ。加えて月一でスペシャル・メニューが出され、バイト自体も楽しく、時給もかなり高額で、色んな大学からやって来るバイト学生とも仲良くなって、今度はまったく大学に行かなくなった。
 やることが極端なのだ。ほんと、どうしようもない。

 僕は、アルバイト先の高級ホテルの高層階の窓から、一日何度も外を眺めていた。
 リネン係だったので、真っ白なクロス類を一括管理している部屋に居ることになる。会場の準備時以外はほとんどやることがない。つまり暇なのだ。
 だから、そこで何冊もの本を読み、何紙もの新聞を捲り、あとはぼんやり外を眺めて過ごした。

 遠く、東京タワーが見えた。美しく鮮やかな緑に囲まれている皇居東御苑も見えた。
 お堀の周りの車道にはたくさんの車が滑らかに滑り、日比谷公園や国会議事堂付近の高層ビルが明るい太陽に光り輝いていた。

 まだまだ時間はたっぷりとある。
 人生は始まったばかりだ。
 この街でずーっと生きていきたい。そして好きな分野で一等賞を獲りたい。公務員や民間会社になんて絶対勤めないぞ。
 そのことを心の底から願った。

 ユーミンが描く「朝陽の中で微笑んで」や「中央フリーウェイ」の世界・・・。山下達郎が描く「DOWNTOWN」や「雨は手のひらにいっぱい」の世界・・・。
 そんな煌びやかな世界なんて絶対にないとは知っていても、そういう世界を心の底から求めてしまう自分がいた。

 







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