
テレビで頻繁に流れている「ACジャパン」のCM、「たたくより、たたえ合おう」が秀抜だ。こう来たかと観るたびいつも唸ってしまう。このCMは本当に素晴らしい。
混雑するコンビニのレジで順番待ちをしている初老の女性と、その後ろに立っている怖そうなサングラスのお兄さん。女性はレジの前で慌ててしまい、焦りながら自分の財布を探しているその時、彼女の後方に立っていた強面のお兄さん(人気ラッパーの呂布カルマ)がラップに乗せて、「もしかして焦ってんのかおばーさん 誰も怒ってなんかない アンタのペースでいいんだ 何も気にすんな 自分らしく堂々と生きるんだ」と、ディスらず優しく問い掛けるのだ。
それに対してその初老の女性もまた、彼の方向へと振り返りながら、「迷惑かけてしまってるなって焦ったら まさかの優しい発言 アタシも反省 見た目で判断 もう要らないわ 色眼鏡なんか」とラップで答えてゆくCMだ。
上手い!
このCMを作った広告代理店、凄い!
何度観ても、グッとくる。アッパレだ。

高齢者をラッパーに見立てたかあとその奇抜な発想に唸っていたら、本当に72歳の女性ラッパーが活躍していることを知って、これまたマジで驚いてしまった。
テレビ朝日系月曜深夜のヴァラエティー番組「激レアさんを連れてきた。」、「ラッパーになりたい孫を応援しているうちに自分もハマってしまって孫とラップ・ユニットを組んでる人」である。
72歳になる女性が、ラッパーとして自分の孫とラップ・ユニットを結成し、ラップの「ラ」の字も知らなかった彼女が、MCバトルにまで参加して若いラッパーたちと過激な言葉のバトルをステージ上で繰り広げているという。
これまたビックリした。

実は彼女、18歳の頃、芸人の島田一門に弟子入りしていて、島田紳助の先輩にあたるらしい。ところが落語家を目指したものの、女は無理と言われ芸人の道を断念してしまう。
そしてその後、様々な仕事を経験したものの、60歳で肺がんとなり、過酷な闘病生活を送る中、心配して観に行った孫の初ライブで、見た目とは裏腹に、とても礼儀正しいラッパーたちに出会って衝撃を受け、残り少ない人生をラッパーとして生きていこうと決心したのだという。
それが、孫とは52歳差の異色ラップ・ユニット「赤ちゃん婆ちゃん」だ。

やはり、とことん遣り切り、徹底して突っ走ったその先にあるのは、辿り着いた人間だけが見ることの出来る、確かな希望の光である。
途中で諦めてしまったら見ることなんて叶わない。徹底して馬鹿になって我武者羅に走り続けるしかほかに道など存在しない。
一期は夢よ ただ狂え!