淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「若大将的憂鬱-僕の偽日記」そのⅦ

2005年06月27日 | Weblog
 夜明けの5時。あなたは目覚める。
 隣では、柔らかな寝顔の彼女が静かな寝息をたてて眠っている。
 あなたは、熱いシャワーを浴びて眠気を覚まし、素早くランニング用のパンツに着替えると、そっとマンションの重いドアを開く。
 新聞受けに挟まった朝日新聞と日本経済新聞をちらりと眺め、あなたはマンションのエレベーターまでの通路を、ゆっくりと軽いストレッチを繰り返す。
 東京タワーが朝靄の中に霞んでいる。
 その卒塔婆のように揺らめく横を、一羽の大鳥が横切る。それはまるで一枚の美しい絵画のようだ。
 高速道路を何台かの自動車が淋しそうに行き交い、街はまだ半分眠っている。
 あなたは走る。
 赤坂見附の駅を抜けて、青山通りへ。
 坂道を登る。人気のない路を下る。青山墓地の中に入ると、静謐で透明な大気にあなたは包まれる。ランニングシューズの、キュッキュッと擦れる音だけがあなたの耳に飛び込んで来る。
 やがて、汗が真っ白なトレーニングシャツを染める頃、あなたはキラー通りに入り、そのまま絵画館前で引き返す。
 梅雨入りした街は、それでも思ったほど湿気は少ないけれど、あなたは彼女の待つ高層マンションへの帰り道を急ぐ。
 今頃、あなたの彼女は目覚め、やがてランニングから帰って来るあなたのために、美味しい朝食の準備に取り掛かる頃に違いない。
 珈琲を沸かし、薄いパンを焼く。それから沢山の具が入った野菜のサラダも。あなたのためだけに、心を込めて。
 
 あなたは彼女の笑った顔を思い浮かべる。そして彼女の優しくて思いやりの籠もった言葉の全てを。
 全身の筋肉が、あなたの美しい肉体を誇示するように張り詰め、激しく鼓動する。あなたは生きている。あなたは、生を躯体の全てに刻み、絶えず内部を奮い立たせる。
 今、あなたの中に息づいている確かなもの。それだけをあなたは信じている。

 とても美しい朝だ。
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